10日(日)メインは2歳馬による水沢1600m戦「第5回寒菊賞」、12頭立て。このレースの1、2着馬には年明け1月2日、正月恒例の3歳重賞・金杯への優先出走権が与えられる。
当初、パラダイスフラワー、ボスアミーゴの登録もあったが、前者は全日本2歳優駿へ参戦、後者は中央遠征の疲労を考慮してこのレースを見送った。それため確たる軸馬は不在だが、逆に馬券的には面白いメンバー構成となった。
有力馬はひとまず絞ることができる。出走予定表の上からセイントセーリング、アンダーボナンザ、クールビズ、ダンストンリアル、ウツミコランダムの5頭だが、各馬が死角を抱えていることを頭に入れていただきたい。
主軸にアンダーボナンザを指名したい。前走、同条件で行われた重賞・南部駒賞(11月12日)でパラダイスフラワーの2着を確保したが、レース後の沢田騎手のコメントが「まだまだ子供で道中、ふらついてラチにぶつかったりして危ない場面もあった。それでも能力を信じて直線勝負に賭けたらいい感じで伸びてくれた」だった。
このコメントがアンダーボナンザのすべてを物語っているといっても過言ではない。デビュー2戦は7、3着に敗れたが、地元水沢に戻って鮮やかな逃げ切り勝ちを決め、続く一戦ではスタートで出遅れ、これが致命傷かと思ったら豪快なマクリを決めて2連勝。このスケールの大きい内容から将来を嘱望された。
ところが、盛岡2戦は人気を集めながら若松賞3着、若駒賞4着と伸びひと息。それで南部駒賞では7番人気まで評価を下げたが、先に記したように大外から豪快にまくって北海道トランプに先着、2着に食い込んだ。
これで水沢3戦2勝2着1回とし、一見、信頼性が増すばかりと思うのは早計。まだ常識にかからない面がいろいろと残っているからだ。参考までに祖母アンダーカラード、アンダースワローの系統は“岩手の華麗なる一族”の本流だが、管理する村上昌幸調教師は騎手時代、祖母アンダーカラードにも騎乗。同調教師が当時を振り返り「アンダーカラードはすばらしいスピードの持ち主だったが、コーナーをうまく回れないで苦労した。下手をすると、そのまま真っ直ぐ走ってラチにぶつかりそうになったことがあった。それでコーナーに入る前、一旦外に膨らませてコーナーを回る角度を楽にしてやった。そこからまともに競馬ができるようになった」と語ったことがある。
やはり血は争えないものだなぁ、とアンダーボナンザを見てつくづくそう思うが、そんな死角を承知の上で同馬の潜在能力に賭けてみたい。
逆転筆頭格はセイントセーリングだろう。デビュー戦でパラダイスフラワーをアッサリ切って捨て、若鮎賞は同じくパラダイスフラワーのタイム差なし2着。そして前々走・黄菊賞を貫禄の優勝。この戦績を見れば断然の主役なのだが、それらはすべて盛岡芝が舞台。
ダートでは若駒賞(1番人気)3着、そして前走・南部駒賞5着ともう一つ伸び切れないでいる。父がキングヘイロー、母父がダマスカスならダートでも問題なしだと思うのだが、今のところ芝馬のイメージが拭い去れない。
しかし前走・南部駒賞では、トランプ陣営が戦前から逃げを宣言。そうはさせないとセイントセーリングが執拗にマークした結果、直線失速して5着だったとも解釈できる。おそらく今回は深追いするとは考えられないし、しかも前をにらんでレースを運べる大外11番枠。ダートが本当に合わないのか、その意味でも真価が問われる戦いと言えるだろう。
ダンストンリアルは一戦ごとにレース勘を身につけ、前回待望の初勝利を飾った。デビュー戦でボスアミーゴの3着に入り、以降も大崩れなくすべて4着以上。これまで最後の詰めに課題を残していたが、前回快勝でようやく吹っ切れたのも心強い。
また初の特別挑戦となった4走前・若駒賞ではネバーオブライトの4着ながら、盛岡ダート1400mを1分27秒6の好タイムをマーク。例年ならば勝っても不思議のない走破タイムだった。
牝馬重賞・白菊賞で1番人気に支持されながらオーナーズスキャンを詰め切れず2着に敗れたクールビズ。本来、あのメンバーなら勝たなければならなかったが、馬体重が前々走・プリンセスカップからプラス14キロの476キロで出走。プリンセスCでも太目が目についたが、体は締まったとは言え大幅な馬体重増が一番の敗因。
能力の高さはデビュー戦・水沢850m戦をレコードタイ(当時)で圧勝したことでも証明済み。馬体重が絞れれば牡馬相手にもアッサリの可能性は十分にある。
終いの脚がしっかりとしたウツミコランダムは展開次第で台頭するシーンもあるし、逃げたい馬が絶好の1枠を引き当てたカネショウエリートも侮れない存在となる。
以上のように荒削りだが、魅力タップリのメンバーがそろった寒菊賞。ダイヤモンドの原石はどの馬か、興味は尽きない。
◎ ?アンダーボナンザ
○ ?セイントセーリング
▲ ?ダンストンリアル
△ ?クールビズ
△ ?ウツミコランダム
△ ?カネショウエリート
3連単は8、11を1、2着折り返しに7、6を厚め。2、1も3着押さえは必要だろう
馬複は8−11、7−8、6−8、7−11、6−11
<お奨めの1頭>
11レース ニホンピロゼン
前々走6着は4ヶ月ぶりの実戦で6着。岩手で初めて連対を外したが、久々では仕方なし。前走2着にまとめ、今回は走り頃の休み明け3戦目
9日(土)メインはB1級馬による水沢1900m戦「第7回セプテンバーカップ」、12頭立て。このB1級トップグループはA級入り目前、活きのいい3、4歳馬が目白押し。今回も非常に興味深いメンバーが顔をそろえた。
主軸にマチカネダイキチを指名する。中央3戦0勝から昨年12月に岩手に転入。最下級C3スタートでメンバーにも恵まれたが、無類の堅実さを誇り岩手<7.7.3.2>。4着以下に沈んだのは7月30日、B3級盛岡ダート1600m7着、10月14日、B1級盛岡芝1600m4着の2回のみ。その他はすべて3着以上にまとめている。また前走・錦秋湖特別でも大器ホブノブに逃げ切りを許したが、早めスパートをかけて2着を死守し、依然底を見せていない。
カギは1900mの距離。過去、中央時代にダート1800mを使って13、7、11着。これは層の厚い中央での成績で度外視していいだろうが、ちょっと気になるのが母父ウッドマン。父は菊花賞馬マチカネフクキタルなので長い距離も問題なしだと思うが、母父の血がどうでるか。
ブラックオーメンの充実度ぶりは目を見張るものがある。浦和1戦0勝(2戦目は出走取り消し)から昨年4月に岩手入り。当初は凡走を繰り返していたが、徐々に当地の水に慣れ始めて今シーズン半ばから本格化。格下B3から東北産馬JRA交流(A2以下)4着で自信をつけ、その後は先差し自在脚で目下3連勝中。楓賞、寒風山特別(いずれもB2級)と特別2連覇をやってのけた。今回はB1昇級戦となるが、前回タイムもすばらしく、ここも突破する可能性が高い。
調子の良さならジュリアも負けていない。前々走・岩木山特別は不得手の芝が舞台で10着大敗を喫したが、前回・水沢1400mを逃げ切り勝ち。通算6勝目をマークした。今回のネックは距離1900mになるが、同条件の3歳重賞・ひまわり賞で3着。すんなりの流れになれば渋太さを発揮するタイプで乱ペース、もしくは揉まれない展開になればアッサリのシーンまで考えられる。
B1級の常連アドマイヤウイングの差し脚も軽視できない。今季は意外にも未勝利だが、ここ2戦は直線で持ち味の末脚を生かして連続2着。今回は上がり馬が多いが、強いメンバーと戦ってきた実績は見逃せない。
その他にも前回、マイペースの逃げから2着に1・4秒差の大差勝ちを収めて、ようやく吹っ切れたヘライカントリー、B3から2ランクアップでも決め手強烈アクトジローも侮れず、激戦必至となった。
◎ ?マチカネダイキチ
○ ?ブラックオーメン
▲ ?ジュリア
△ ?アドマイヤウイング
△ ?ヘライカントリー
△ ?アクトジロー
3連単は8、6、9のボックスを厚めに。2、5、10も押さえたいところ
馬複は6−8、6−9、2−6、5−6、8−9
<お奨めの1頭>
9レース マルカクール
前回は惜しくも2着に敗れたが、今回メインで人気の一角ブラックオーメン相手では仕方なし。ここは恵まれた組み合わせとなった
ついに!今年もやって来ましたよ雪景色。きれいですよね〜好きですよ雪景色。もう何も言うことはありませんね。
ということで今週はこの辺で。また来週〜\(^O^)/
……と、そういうわけにはいきませんか。ダメ?…ですよねぇ。実はこれを書いているのは月曜の深夜。水沢で皆川麻由美騎手が初の特別制覇をしたシルバーステッキ賞を撮影し、盛岡に帰って夜中に書いた原稿を木曜日にアップしてもらっています。明日は列車に乗って南を目指し、船橋競馬場で行われるクィーン賞へ前日入り。いよいよサイレントエクセルが牝馬グレード競走へ殴り込みです。相手も牝馬路線の常連や中央クラシック組、それに昨年の全日本2歳GIでアテストを負かした馬もいて手強いですが、しかし岩手のファンならご存じのようにサイレントエクセルの強さも相当なもの。どんなレースになるのか、楽しみでなりません。
これがアップされる時点では結果が出てしまっているんですよね。そう考えるとちょっと複雑ですが、3日前の時空に存在している私は、そろそろ休ませて頂きます。
あ、でももうひとつだけ。月曜のメインレース・シルバーステッキ賞は、若手騎手が抽選で決定した騎乗馬を駆って腕を競う名物レースですが、これを現在、岩手競馬の紅一点・皆川麻由美騎手が見事な逃げ切りで制しました。普段からとっても明るい麻由美チャンは、いつも顔文字の(^^)←これそっくりな笑顔をしているのですが、このときばかりは半分、嬉し涙の号泣状態が混じって複雑な顔に。でもすぐに「やったぁー!!うれしいぃーっ!!良かったぁぁぁぁ!!」と弾けました。
そういえば先月、荒尾競馬場で開催されたレディースジョッキーズシリーズでは、2戦を終えて5位というポジション確保に加え、その日の2レースで勝ち星をあげるオマケつき。先日11/27には12番人気のミステリーチューンを2着に導き、百万馬券の片翼を担ぎました。いま彼女なりにノッてる皆川騎手、今週末はLJS第2ラウンドの高知へと向かいます。ライバル達は今や飛ぶ鳥を落とす勢いの山本茜騎手をはじめ強力ですが、逆転を祈ってみなさんも応援して下さいね。
(文/写真・佐藤 到)
12月3日 第16回白嶺賞(水沢1600m オープン)
(写真・佐藤到)
1着 ニッショウウララ
好ダッシュを決め、枠差も利して果敢に先行。前半36秒前後のハイペースを形成したが、直線を向いても余力十分。「1300mのゲートあたりで後ろから来る馬がいなかったので、これは勝ったかな」と村松騎手。その言葉どおり、4コーナーでオウシュウクラウンがジワジワ差を詰めたが、ラスト100m地点から脚色がいっしょになったのを尻目に、まんまとゴール。この強力メンバーを相手に大金星をあげた。
今シーズン、7歳を迎えたが、ズブさが逆にプラスに作用。控える競馬もできるようになって、このレースに臨むまで3勝をマークしていた。
デビュー戦で水沢850mのレコード(51秒1:当時)を叩きだし一躍注目の的となったが、気性難が災いして好、凡走の落差が激しかった。それでも04年からずっとオープンで走り続け、平場戦を中心に白星を稼いでいた。
それが今季、G?・クラスターカップ7着、青藍賞8着以外はすべて電光掲示板に載る堅実派に変身。前回、あまり得手かからない水沢戦を快勝して弾みがついたことも好走要因かもしれない。とは言え、いきなりこのメンバーを相手に勝ったのにはビックリ。
「ずっと良馬場でも結果を出していたが、ベストは今日のような水が浮かぶ不良馬場。それも味方したと思うが、まさかオウシュウクラウン相手に勝てるとは思わなかった」と村松騎手はレース後に語っていたが、それがすべてを物語っていたと言えるだろう。
2着 オウシュウクラウン
前走・阿久利黒賞(11月19日)からレース間隔がなかったので、中間は追い切りを控えた調整。加えてこの1週間で急激に冷え込んだ影響も少なからずあったようで前走比プラス9キロの502キロで出走。これはダービーグランプリ明けの古馬A1級戦と同じ馬体中で、この時も「体が重かった」と小林騎手がコメントしていた。
ニッショウウララが快調に飛ばしていたのを見て、3コーナー手前から早めにスパート。その時の行き脚はいつもどおりだったが、あとの伸びがひと息。ニッショウウララもラスト200mは13秒8と脚が上がっていたが、それも捕らえきれずに2着。とすれば敗因は太め残りに尽きることになりそうだ。
気になる次走だが、今年はアクシデントもあったので無理をさせたくないと東京大賞典は自重。地元のファン投票・桐花賞(12月31日 水沢2000m)へ駒を進める、と櫻田浩三調教師。
3着 ミサキノハンター
北上川大賞典(11月5日)3着から直行は当初の予定どおり。仕上がりも万全で、しかも最も真価を発揮できる水沢マイルという条件もあって、オウシュウクラウンとの馬複が2倍台の一本かぶり。過去実績ではエアウィードの方が上回っていたが、最終的に単勝2番人気もミサキノハンターとなった。
ニッショウウララが果敢に逃げたので2番手に控える。これは想定内だったが、3コーナーでオウシュウクラウンに外から被せられて手応えが怪しくなる。それでも3着に入線したが、2着オウシュウクラウンから4馬身差と完敗。これも混戦といわれた岩手古馬オープンを象徴する結果となってしまった。
6着 エアウィード
道中は6番手インにつけ、3コーナーからスパートをかけたが、本来のシャープさがまったく見られず。パドックでも馬体の張り、気合いも不足も目につき夏以降のスランプを引きずっている印象。
今年の冬はなかなか雪が降らないし、それほど寒くもならないし、暖冬だなあなんて思っていたら、12月に入った途端一気に寒さが厳しくなりました。こうして原稿を書いている水沢競馬場でも今日は雪。先日までは晩秋の名残もあった景色が、あっという間に白い世界に様変わりしてしまいました。いよいよ北国の長い冬の始まりです。
とまあ、こうして白い水沢競馬場を眺めながらふとオッズパークの画面を見ると、そこには雪のない、太陽のさんさんと照りつける九州の競馬場が映っていたりして・・・。まあ、日本は小さいようで広いって事ですね。