平成25年10月から適用される全国ランキング上位10選手について簡単な短評を添えたい。
まず1位は永井大介(船橋)。全国ランク制になってから常に上位に位置していたものの、1位になったのは今回が初めて。本人の実力を考えれば、もっと早く1位になっていても全くおかしくない。それは永井の能力に死角が見当たらないからだ。スタートが早く、独走力もあり、捌きもある。雨も苦にせず、夏場や冬場など季節において苦手な時季がない。なるべくしてなった全国1位と言える。
2位は青山周平(船橋)。全国ランク上位20位くらいまでは大きな変動はないことが多いが、青山は前回のA級87位からの大幅アップ。それは前回のランクの採点期間が2級車に乗っていた時期のため。今回のランク付けは1級車に乗ってからの半年間の採点結果であり、急激なランクアップが実現した。デビューしてからの活躍は周知のとおりである。SGを獲ってない選手の中で、最もSG奪取に近い選手だと思われる。
3位は浦田信輔(飯塚)。前回の5位から2ランクアップ。全レース常に全力投球でファンからの信頼は厚い。オートレースの醍醐味である追い込みを堪能させてくれる選手だ。苦手の雨走路も以前よりは多少良くなっている。もっと乗れるようになればランク1位も十分射程内にあると言える。
4位は前回と変動なく荒尾聡(飯塚)。オールマイティ型で、これと言って死角がない。スタートに関しては全国3位には入る巧者である。一番の魅力は勝負強さ。オープン戦なら同じレースの中でエンジンが多少劣勢でも、スタート一発から逃げ切るシーンも多く見られる。再びSGを獲るためにはもう少し独走力が欲しいところか。
5位は前回から2ランクダウンの中村雅人(船橋)。強烈なイン突っ込みが武器で、競り合いに強い選手。有名になる前から強豪相手でも名前負けしない走りをみせていた。近況は良いエンジンが長続きしない傾向あるが、エンジンさえ仕上がれば迫力ある戦いを見せてくれる。
6位は金子大輔(浜松)。前回から1ランクアップとなった。若手ながら落ち着いてレースできているのが最大の魅力。攻めが強烈なわけでも、スタートがとても早いわけでもないが、レース中盤から終盤になるといつのまにか先頭争いをしていることが多い。記念レースの優勝戦などで周回が延びるのは本人にとってプラス材料なので、大舞台での更なる活躍に期待できる。
7位は高橋貢(伊勢崎)。前回ランク1位から大幅ダウンとなってしまった。その理由はエンジン。現在も続いているが、なかなか納得いく仕上がりにならずに苦しんでいる。エンジンが良くないと当然、スタートの出て行き方も違うし、前の車を捌きづらい状態になってしまう。しかし、長年ランク1位を歴任してきた実績があるので、いずれエンジンを立て直して再び1位に返り咲いてくるだろう。
8位は松尾啓史(山陽)。前回ランクが25位なので大幅アップと言える。落車の影響で戦線を離れている時期もあったが、復帰してからは以前と同様の活躍ができている。魅力は捌きの的確さだ。エンジンが互角なら前を走る選手が2人重なっていても、割って行ける技量がある。雨もそれほど苦にしてない。外枠からでも飛び出して行けるスタート力が身に付けば、もっと優勝回数を増やせていけるだろう。
9位は木村武之(浜松)。前回が6位だったので3ランクダウン。2級車時代も含めて、常に強豪との戦いに揉まれてきた精神力の強さがある。ここ一番のスタート、走りには定評がある。船橋で開催されたSGオートレースグランプリでの走りが記憶に新しい。これからはエンジンを常に戦える状態に保つことができれば、安定感も更に増してくるだろう。
10位は有吉辰也(飯塚)。かつてはSG連続優出記録を作るなど安定感が光っていた。当時からスタート力は全国区で、選手の中でナンバー1に疑いの余地なしの時期が長かった。現在でも3本の指に入るほどスタートは巧者だ。またオープン戦なら試走タイムがあまりよくなくても、スタート先行からゴールまで抑え切ってしまう走りができる。現在は怪我の療養中。早く戦線復帰し、ファンを賑わせてくれることを祈っている。
ただ今成長中、31期全選手についての簡単な評価
船橋地区
まずはなんといっても31期生筆頭の青山周平。デビューしてからの活躍は周知の通り。初優勝まで負けなしは新記録だし、1級車に乗り替わってからの快進撃も見事。ロード時代の経験がモノを言ってるのは間違いないが、オートレースの走りにもうまく転用できているのが凄い。整備に対しても真面目で、レース直前まで何回もエンジン音を聞きながらの調整を繰り返している。バイクの経験だけではなく、その努力が好成績に結びついていると言える。
平塚雅樹は、モトクロスの経験を活かし2級車時代も活躍していた。ケガで1級車デビューが遅れたが、当初は連続で優出するなど期待を裏切らない走りを見せていた。近況は機力がやや落ち気味で成績が安定しないが、立て直してくればいつでも初優勝できる技量はある。
古木賢は1級車に乗り替わった当初はなかなか苦しい時期があったが、最近はだいぶ慣れてきたのか結果を残すようになってきてる。雨走路を苦にしないので雨走路での連対率が高い。
川口地区
ロード時代の経験がある岩田裕臣は2級車時代も活躍していたが、1級車になってからも噂に違わぬ活躍を見せている。優勝回数3は誇れるモノだし、エンジンさえ仕上がれば同地区主力級にも名前負けしないハートがある。
佐藤摩弥はスタートが早く、逃げて粘り強いのが特徴。後ろの選手にイン覗かれても抑え込む技術がある。当面の課題は捌きか。人を抜いていくレースでは苦しむシーンが多いが、徐々に腕も磨かれていっている。
中山透は独走でペース上がる選手。単独0ハンからのレースならそのまま逃げ切ることが多い。スタートがやや散発気味なので、安定してくれば成績ももっと上がりそう。
小原望はデビューが遅れた関係で1級車乗り替わりも多少遅れてしまった。しかし、2級車時代から独走には定評があったし、1級車に乗ってからも着実にキャリアを積んでいる。捌くレースが増えてきた時にどう対処するか注目したい。
伊勢崎地区
大月渉は2級車時代こそ苦しんでいたが、1級車になってからは少しずつ成長が見られる。混戦になるようなレースでも巻き返してくることが多々ある。
木村享平は、今はやや伸び悩みか。試走タイムは出ない傾向あるが、レースでは大駆けがあるタイプで人気薄の時に穴党向けと言える。
栗原俊介はケガなどの影響で1級車乗りが遅れている。2級車時代は優勝経験もあり、逃げで良い走りを見せていたので、1級車に本格的に乗るようになったら更に注目したい。
浜松地区
筆頭は渡辺篤。同期の中では最年長だが、ロード時代に培ったスピードを武器にオート界でも着実に力を付けている。まだまだ成長の余地はあるので今後の活躍が楽しみだ。
藤波直也は2級車時代からスピード自体はかなりよいモノを持っていた。1級車になってからも逃げの展開でよい走りをしている。捌きがもっと身についてくれば成績ももっとよくなってくるだろう。
辰巳裕樹もスピードはそれなりのモノを持っている。2級車時代もそうだったが、追走が特に巧い。捌きについても徐々によくなっており、着実な成長が見られている。
飯塚地区
鐘ヶ江将平は2級車時代はソコソコだったが、1級車に乗ってから才能が一気に開花した形。優勝戦に何回も乗って、徐々にハンデが重くなってきてる。ちょっと前はやや低迷していたが、近況は再成長を見せており、初優勝する日も遠くないだろう。
中尾貴志はすでに優勝回数3と実績は十分。2級車時代から快速を発揮している。1級車になってからも同じようにスピードを生かして結果をだしているが、目下の課題はスタートを含めた序盤の展開か。ここを巧くこなせれば記念レースでも結果がついてくるようになると思われる。
森本優佑は、独走で持ち味を出せるタイプ。近況は成績も上向いてきており、今後の成長に期待。
山陽地区
筆頭は春本綾斗。2級車時代からスピードの豊かさでは定評あったが、1級車になってからはたびたびの落車でなかなか思うように行かず苦しんでいる。ただ、持ってるセンスは高いモノがあるので、いずれ山陽を代表する選手になるのでは、と踏んでいる。
丸山智史は、近況急成長が見られている。道中の走り、スタートが改善されて最内に置かれた際は枠ナリにキッチリ出ている。スピードもソコソコ高く、雨走路も得意なので天候に関係なく狙える。
矢野正剛は、2級車時代にかなり苦しんでいた印象が強い。ただ、本人が真面目で真剣にオートレースに向き合っているので、だいぶ力を付けることができた。
オートレースの楽しみ方(中級編)
オートレースで車券を買う際、予想の材料となるものはいくつかある。選手の実力、番組のハンデ構成、車の状態、そして走路状況。もちろんほかにもいろいろあるとは思うが、今回は走路状況に的を絞って述べてみたい。
まずは、晴れでの良走路。同じ良走路と言っても大きく分けて2つある。それは、タイヤが食い付く走路とタイヤが滑りやすい走路。一般的に、滑る走路は軽ハンの選手が有利で、食い付く走路は追い込みが有利と言われている。
では、どういう時に食い付く走路になるのか。元々、食い付きの良い走路(例えば、船橋レース場)もあるのだが、基本的には曇ったり気温が低くなって、走路温度が低くなった場合に食い付く走路となる。逆に、陽が出てカンカン照りになるなど、暑くなって走路温度が上がると滑る走路となる。
日本は夏が暑くなり、冬が寒くなるから、夏場は軽ハンが有利で冬場は追い込みが有利と捉えてよい。ただ、夏場でも曇って気温がそれほど上がらない場合や、冬場でも晴天で気温が上がるような時はその限りではなくなる。
また、良走路でも風が強い時は選手の力関係もほんの僅かだが変わってくる。1年を通して風の強い日が多い伊勢崎や浜松の選手は、どこのレース場で走る場合においても、普段慣れているぶん強い風にも対応して乗ってくる傾向がある。
次に、重走路について述べたい。
重走路では良走路の時とは選手の力量関係が全く変わってくる。良走路では強烈な走りをする選手でも、雨が降ると動きに精彩を欠いてしまうシーンがよく見られる。どうしてそうなってしまうのかは分からないが、「雨もセッティングがしっかり合わないと乗れない。」というコメントもあるし、一方、「雨は気合一本!」という捉え方をする選手もある。
いずれにしても、重走路での得手不得手は、新聞やインターネットなどで情報を手に入れられるので、重走路のレースを予想する際には参考にしてみるといいかも知れない。
最後にもう一つ独特な走路状況について述べたい。それはブチ走路と言われるものだ。これは一回濡れた走路が、乾きだしてるけどまだ良走路とは言えないような、良と重の中間の走路状態のことだ。実際的には走路が白く乾いてる所と、濡れて黒い所がまだら模様のようにある状況である。
このような状態の時は、試走が終わってからレースが始まるまでの間にも走路状況が変わるので、試走タイムは参考になりにくい。これこそ得手不得手な選手がハッキリしてくる。ほとんどの選手は、このブチ走路は嫌いと言うが、逆にこの走路を苦にしない選手もいる。オート歴を重ねる上でそういう選手を見つけていければ車券を買う時に大いに参考になると思われる。
オートレースの楽しみ方(初級編)
オートレースの競技の特色を3点挙げてみたい。1、ハンデ戦。2、6周回。3、試走。
1、オートレースでは選手間で実力の差がハッキリしている。通常1レースを8車で走るわけだが、全員が同じ位置からスタートすると、実力上位の選手が毎回先着する事が予想される。そこで、ルールに用いられたのがハンデ。それは、選手の力量を考慮してスタートラインをずらすというものだ。選手の力量が上がるごとにスタート位置が後ろになっていく。こうすることによって、全選手に1着を取れる可能性を生むことができる。車券を買う側からすれば予想が難しくなるのだが、レース自体は見応えあるものになる。ただし、同じレースで走る8選手が同じような力量なら、オープン戦と言って8車同じラインからのスタートとなる。
2、オートレースでは楕円形のコースを通常6周走って勝負が付けられる。1で述べた通り、実力者が後ろの方から追いかけるのが基本スタイル。ハンデの軽い選手達も必死に抵抗するが、最重ハンの選手が6周回を目一杯使って先頭まで行くのを見るのがレースの醍醐味だ。他の公営競技と比べると、競馬なら最後の直線、競輪なら「ジャン」が鳴ってから、競艇ならスタート後の1マークが見所となるのだろうが、オートレースはスタートからゴールするまでの6周全部が見所となる。これが、他の公営競技との最大の差であり、オートレースの魅力の特長ではないだろうか。
3、最後に試走。試走とはその日レースをする前に選手が全力で1周走り、そのタイムを発表することによってエンジン状態を把握するための行為だ。タイムは1周を走った時計を5で割った数字が発表される。と言うのは、オートレースは1周が500メートルで、1周走った時計を5で割ると、100メートルあたり何秒で走ったかのタイムになるからだ。当然、数値が低ければ低いほど、100メートルあたりを速く駆け抜けた事になり、エンジン状態が良いと判断されるわけだが、それがそのままレースに当てはめられるとは限らない点でオートレースの魅力や難しさがある。試走は周りに競りかけてくる選手もなく、自分のリズムで走れるが、レースでは8人一斉に走るので自分の通りたいコースを走れるとは限らないし、自分のグリップ操作で走れるとは限らない。更に、試走が苦手な選手もいる。試走タイムはあまり出ないものの、レースでは好走する選手も多数いる。これらは選手の特徴なので、オートレースを長く見ていればだんだんと分かってくることだが、オートレースは知れば知るほど面白い競技だし、この試走だけに特化して見てみてもかなり奥深さを感じられると思う。
その人なりにオートレースの魅力を感じてもらえれば幸いである。