3歳時のダイヤモンドカップ以来重賞タイトルがら遠ざかっているグランコージーは、南関東から戻っての初戦シアンモア記念が2着だったが、勝ったヴァケーションに3/4馬差で、1馬身半差3着がゴールデンヒーラーというメンバーなら負けて強しの内容。今回は明らかにメンバーが楽になった。2、3歳時の重賞3勝がいずれもマイル戦で、前走もマイルのA一組特別を勝利。2020年から21年にかけての冬は連日のように雪で開催が取り止めとなり、マイル重賞の白嶺賞、トウケイニセイ記念が実施されたなかったのは、グランコージーにとっては残念だったことだろう。あらためて水沢マイルの好条件で3歳時以来の重賞制覇に期待がかかる。
中央3勝クラスから転入したヴォウジラールは、3戦目の晩秋特別では、逃げ切ったグランコージーにゴール前1馬身差まで迫った。初めての小回り水沢コースがこなせれば逆転まである。
大井からの転入初戦として臨むノーブルサターンは、1年半ほど掲示板から遠ざかり、特に近走は後方ままというレースが続いているが、それでも南関東の重賞やオープン特別で勝ち馬から1秒程度の差はたびたび。ここならいきなりでも通用しそう。
セイヴァリアントも大井から転入して水沢コースは今回が初めて。盛岡ではマイル戦を中心に7戦して6連対。青藍賞では1番人気の評価を受けており(4着)、ここでも能力的に差はない。
8歳のリリーモントルーはここ1年ほとんど連対を外すことなく、2走前の金華特別で4着があっただけ。マイルの距離も実績十分。
短距離を中心に使われてきたカミノコだが、今年7月の大井から転入初戦となった盛岡マイル戦ではリリーモントルーに1馬身半差の2着。3着馬には8馬身差をつけた。この馬も水沢コースは初めてとなるが、スピードが生かせる馬場になればチャンスはありそう。
◎5グランコージー
○3ヴォウジラール
▲8ノーブルサターン
△4セイヴァリアント
△6リリーモントルー
△10カミノコ
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10月9日の有明海特別、10月30日の佐賀オータムスプリントで勝ち星を分け合ったスパーダ、タガノキトピロに、大井から再転入初戦の筑後川特別を楽勝したダイリンウルフと、3頭甲乙つけがたい争いとなりそう。
タガノキトピロは2020年秋に中央1勝クラスから転入し、佐賀では18戦14勝。3着以内を外したのは昨年の吉野ヶ里記念(7着)だけ。ここ2走、向正面で位置取りを上げていくときの手応えが抜群で、特に有明海特別では馬が行きたがるのを田中純騎手がなんとか抑えてというレースぶり。安定して能力を発揮し崩れることがないが、スタートに不安があり、前走2着はスタートで後方に置かれてしまったぶんもあった。普通に走れば能力最上位。
スパーダは中央オープンから大井を経由して転入し、5戦3勝、2・3着各1回。前走佐賀オータムスプリントは直線タガノキトピロとの一騎打ちで競り落とした。◎との勝ち負けは展開ひとつ。
ダイリンウルフは大井から再転入初戦だった前走が、抜群の手応えのまま3〜4コーナーを大事に外を回して直線後続を振り切った。大井ではB2クラスまでだったが、確実に力をつけて戻ってきた。
ミスカゴシマは、一昨年、昨年と吉野ヶ里記念連覇があるように、古馬になってからは1400メートルの舞台で高い能力を発揮してきた。ただここ3戦が案外の結果だけに、調子を戻しているかどうか。
サンドスピーダーは、前走筑後川特別ではゲート内膠着したかというほど出遅れたが、4コーナーからはダイリンウルフを追うように伸びて2着を確保。連下争いなら。
キタカラキタムスメはムラのある成績だが、今年の吉野ヶ里記念で2着があったように、得意のこの距離なら穴として狙うのもおもしろそう。
◎3タガノキトピロ
○2スパーダ
▲1ダイリンウルフ
△10ミスカゴシマ
△5サンドスピーダー
△8キタカラキタムスメ
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定量戦ゆえ格付け上位馬が当然有力となり、過去5年の成績を見ると、1〜3番人気馬のうち2頭が馬券にからんだのが4回と、まずは上位人気馬が中心。ただ毎年1頭は5番人気の以下も馬券にからんでおり、ヒモ荒れも考えておきたい。
今回のメンバーで格付け最上位はピュアリーナナセ。B2特別を勝って、メンバー中唯一B1格付けでの出走。黒ユリ賞を制し、ばんえい大賞典でも3着と、重賞実績でも最上位。ただ能力的に抜けているというほどでもなく、10コースということもあり、あくまでも連軸。
相手筆頭はサツキヤッテマレ。黒ユリ賞3着に、イレネー記念では牝馬最先着の5着という重賞実績。夏以降、着実に入着を重ねてB4からB3へとクラスを上げてきた。
ピュアリーナナセが勝ったB2特別のサロマ湖特別は3歳牝馬が3着まで独占し、2着シンエイアロイ、3着ニシキマリンは、ここでも上位争いが期待できる。
ホクセイサクランボは、B3クラス3連勝でB2昇級戦となった前述サロマ湖特別は8着だったが、障害次第の面があり、すんなり越えられれば上位を狙える。
ダイヤカツヒメはB3昇級初戦の前走が5着だったが、黒ユリ賞で2着の実績があり、人気がなければ穴としての魅力あり。
◎10ピュアリーナナセ
○3サツキヤッテマレ
▲5シンエイアロイ
△7ニシキマリン
△4ホクセイサクランボ
△2ダイヤカツヒメ
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姫山菊花賞は、好ダッシュから逃げたタガノウィリアムが直線を向いても先頭で、人気のジンギはこれをとらえきれなかったばかりか、転入2戦目のラッキードリームにまとめて差し切られてしまった。前もうしろも気にしながらという展開で、タガノウィリアムの淀みのないペースに惑わされたかもしれない。ジンギにとっては、2020年の姫山菊花賞でエイシンニシパの2着に負けて以来、じつに2年ぶりに兵庫所属馬に先着を許した。今回はあらためて兵庫の古馬中距離ナンバーワンをアピールしたいところ。
姫山菊花賞を制したラッキードリームは、ジンギ、シェダルに続く3番人気で、それほど警戒されることもなく、下原理騎手も気楽な立場で臨めたかもしれない。今度はライバルからある程度マークされる立場になってどんなレースを見せるか。
タガノウィリアムは、2走前の摂津盃ではスタートでダッシュがつかず、後方からとなって見せ場なく最下位。やはりこの馬は快足を飛ばして逃げるしかなく、前走姫山菊花賞以上に他馬のマークは厳しくなるかもしれない。
スマイルサルファーは佐賀に遠征した鳥栖大賞こそ前をとらえきれず3着だったが、地元に戻っての前走は見事に逃げ切り。今回のメンバーでは好位に控えてという展開になりそうで、前が競り合ったときに勝機をつかめるか。
エイシンニシパは、得意の佐賀・はがくれ大賞典を今年も勝って4勝目。その後、地元に戻っての兵庫大賞典はジンギの3着で、前走A1A2特別は、勝ったスマイルサルファーに3馬身差をつけられての2着。今回は年明けの新春賞5連覇、6勝目に向けて格好をつけておきたい一戦。
◎8ジンギ
○6ラッキードリーム
▲4タガノウィリアム
△5スマイルサルファー
△3エイシンニシパ
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ばんえい競馬のトップジョッキーとして活躍してきた松田道明騎手が調教師試験に合格(12月1日付免許)、11月28日がラストライドとなった。
重賞での最終騎乗となったのは、前日27日のドリームエイジカップで、コウシュハレガシーに騎乗して5着。最終日となった28日の第7レースではダイヤディープで勝利を挙げた。
そして最後の騎乗となったのが最終レース。3番手で第2障害を越え、一旦は前に迫る見せ場があったが、5着でゴール。1990年4月のデビューから、通算21,673戦2,630勝という成績を残した。
その最後の騎乗のゴール後には、騎手たちからの胴上げとなり、その様子はばんえい十勝の公式YouTubeの動画で見ることができる。
引退セレモニーなどは、本人の意向により残念ながら行われれず、引退に際してのコメントは、ばんえい十勝の公式サイトに掲載されている。
松田道明騎手といえば、思い出されるのはカネサブラックだ。ばんえい記念2勝を含め重賞21勝は、その後オレノココロに更新されるまで、ばんえい競馬の重賞最多勝記録だった。
松田騎手がカネサブラックの主戦となったのは、2007年5歳時の9月から。その後は一度も他の騎手に手綱を譲ることがなく、松田騎手では重賞18勝。カネサブラックが古馬路線の中心勢力となってからのほとんどの時期のパートナーであった。
2011年、1度目のばんえい記念制覇が、松田騎手にとっても初めてのばんえい記念制覇でもあった。
翌2012年のばんえい記念は、残念ながら馬インフルエンザの影響で出走できず。前哨戦とも言える帯広記念を勝っていただけに、もし出走できたらと思わざるをえない。
そして2度目のばんえい記念制覇は2013年で、これがカネサブラックの引退レースでもあった。第2障害を先頭で越え、何度か止まりながらも単独先頭をキープ。しかしゴール前10mで一杯に。松田騎手は体がうしろに倒れそうなほどバイキ(手綱を大きく引いて反動をつけること)しても、カネサブラックは前脚を突っ張って動かず。いよいよギンガリュウセイが迫ってきたとき、カネサブラックはそれに気づいたのか、最後の力を振り絞って歩き出し、先頭でのゴールとなった。
2013年3月24日、引退レースとして臨んだばんえい記念を制したカネサブラック。松田道明騎手の渾身のバイキでゴールを目指す
この年のばんえい記念の1着賞金は300万円。バブル期の1989年以降、ばんえい記念の1着賞金は長らく1000万円で続いてきたが、売上の減少にともない2003年以降、賞金も徐々に減少。この年はばんえい記念の賞金がもっとも落ち込んだ年でもあった。
その後、2017年に再び1000万円に復活するのだが、カネサブラックはばんえい競馬のどん底の時期を王者として支えた存在でもあった。
松田騎手はその後、2016年にもフジダイビクトリーでばんえい記念を制した。
ばんえい競馬は2006年度に売上げの減少による廃止の危機があり、しかし翌07年年度からは帯広市の単独開催で存続。その後も経営的には苦戦を続け、先行き不透明なことから引退する騎手はいても、あらたにデビューする騎手が出てこないという時期があった。
2011年1月には、赤塚健仁騎手、島津新騎手、西将太騎手など4名の騎手がデビューし、2012年1月には舘澤直央騎手(引退)がデビューしたが、その後はしばらく新人騎手のデビューが途絶えた。
8年近くの空白があって新人騎手となったのが、2019年12月にデビューした林康文騎手。カニ漁師からの転身で、38歳でのデビューということでも話題になった。
2020年12月には金田利貴騎手が続き、そして今年12月には、今井千尋騎手、小野木隆幸騎手、中村太陽騎手と、3名の騎手が新たにデビューすることになった。
ここ10年ほど、地方競馬全体で売上が回復を遂げたなかで、ばんえい競馬も順調に売上を伸ばしてきた。そして今年、多くの地方競馬主催者で、売上の伸びが頭打ちになったかという状況にありながら、ばんえい競馬は今年度10月末現在、総売得額で前年同期比115.3%、1日平均で同114.0%と、いまなお伸びを見せている。
とはいえ、厩務員不足や、後継者不足による重種馬の生産頭数の減少など、ばんえい競馬をとりまく環境は、まだまだ憂慮すべきことは少なくない。
それでも新人ジョッキーが増えることでの騎手の世代交代は明るい話題といえる。