出走15頭に南関東から半数近い7頭が遠征。まるで南関東クラシックの延長戦を盛岡で戦うようなメンバーになった。
とはいいながら、狙ってみたいのは門別・王冠賞で逃げ切り圧勝を見せた北海道のエンリル。今年の北海道3歳戦線では、南関東から戻ったシルトプレが、北斗盃、北海優駿の二冠を制し、三冠は確実かに思われた。しかし王冠賞ではハナをとったエンリルが3コーナーから徐々に後続との差を広げ、シルトプレを8馬身ちぎって圧勝。シルトプレは2歳時、北海道所属のまま遠征した鎌倉記念を制し、全日本2歳優駿JpnIでも5着と健闘。その後、船橋に移籍し2戦したのみで北海道に戻ってきたが、南関東三冠の前哨戦では雲取賞3着、京浜盃5着。この世代、主役不在だった南関東3歳戦線でその成績なら、シルトプレは南関東に残っても三冠で好走できたはずで、それを難なくちぎって見せたエンリルは、ここに来て相当充実したと見る。北海道所属馬としては2017年のスーパーステション、19年のリンノレジェンドに続くダービーグランプリ制覇なるか。
黒潮盃では、デビューから短距離のみを使われ優駿スプリント2着だったエスポワールガイが、初めての1800メートルにもかかわらず逃げ切ったのには驚かされた。経験してなかっただけでもともとそういう素質はあったのだろう。今回はさらに200メートルの距離延長。エンリルと先行争いになるのかどうかと、前半の折り合いがカギになりそう。
東京ダービー2着、ジャパンダートダービーでも地方馬最先着の5着だったクライオジェニックは、黒潮盃では1番人気に期待されたものの、エスポワールガイをつかまえきれず1馬身半差でまたも2着。今回は地元岩手の村上忍騎手が鞍上となってどんなレースを見せるか。
同じく期待されながら好走続きで南関東ではタイトルに手が届いていないのがナッジ。黒潮盃でも3着だった。能力上位は間違いなく、あとは展開と運が味方するかどうか。
東京ダービーを6番人気で制したカイル、クラウンカップを制して東京ダービー4着だったフレールフィーユ、惜しくも北海道三冠を逃したシルトプレも前述の通り南関東で好走歴があり、南関東のこの世代の混戦をそのまま持ち込んだような争いになりそう。
◎14エンリル
○9エスポワールガイ
▲3クライオジェニック
△6ナッジ
△1カイル
△2フレールフィーユ
△5シルトプレ
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9月25日に佐賀競馬場で行われた3歳馬によるロータスクラウン賞は、人気にもなってはいたが、高知勢のワンツー。3コーナー過ぎで先頭に立ったガルボマンボをヴェレノがとらえにかかっての直線一騎打ち。ヴェレノがゴール前でとらえてのハナ差は見ごたえのあるレースだった。
4コーナーでは地元のザビッグレディーもこの争いに加わったものの、結果は8馬身離されての3着。今の高知の勢いとレベルの高さを感じさせる結果でもあった。
高知の三冠では、一冠目の黒潮皐月賞をヴェレノが制し、二冠目の高知優駿、三冠目の黒潮菊花賞をガルボマンボが制していたが、これで高知から佐賀への計四冠で、高知の3歳2強が二冠ずつ星を分け合うこととなった。
高知の勢いといえば、9月はそのほかにも他地区に遠征しての活躍が目立った。
15日、園田競馬場で行われた西日本ダービーは、勝ったのは7連勝中だった金沢の二冠馬スーパーバンタムだったが、逃げた高知のフィールマイラヴが直線でも食い下がり、惜しくもクビ差2着。黒潮皐月賞では勝ったヴェレノから3秒も離されての10着で、その後は1勝を挙げたのみ。8番人気という低評価は当然で、それでいて接戦の2着と言う結果は、ここでも高知の3歳世代のレベルの高さを示したと言っていいだろう。
翌週23日、再び園田の園田チャレンジカップでは、佐賀・サマーチャンピオンJpnIIIで2着に好走した地元のコウエイアンカが1番人気に支持されたが、自慢の末脚不発で5着。7番人気のダノンジャスティスが逃げ切り、10歳でも衰えを知らないダノングッドが2着で高知・別府真司厩舎のワンツー。ダノンジャスティスは地元で近3戦連続で掲示板を外していたため人気を落としていたが、6月の園田FCスプリントでは、ダノングッドが5馬身差で圧勝し、ダノンジャスティスは2着。今回は1、2着が逆になってという決着だった。
そして27日、名古屋の秋の鞍。デビューから6連勝で園田オータムトロフィーを制した兵庫のエコロクラージュが断然人気に支持され、4コーナー手前で一旦は先頭に立ったものの、高知の牝馬アンティキティラが内から抜け出して勝利。地元名古屋のコンビーノがゴール前でエコロクラージュをとらえ2着に入った。
アンティキティラは、2歳秋から6連勝で佐賀・花吹雪賞、名古屋・若草賞を勝利。高知三冠では最有力候補と期待され、黒潮皐月賞では1番人気に支持されるもヴェレノにアタマ差2着。その後調子を崩して高知優駿では5着。夏は休養して立て直し、9月10日の栴檀特別では3着に入って復活のきざし。そして再び名古屋に遠征した秋の鞍で約7カ月ぶりの重賞制覇となった。
高知勢のこのような遠征しての活躍は、最近始まったことではない。打ち上げがドン底だった時期にも高知の馬は他地区に遠征して活躍した。
たとえば2010年。中央1000万条件(現2勝クラス)から高知に移籍したグランシュヴァリエは、その初戦として1月3日の川崎・報知オールスターカップに遠征し、8番人気ながら2着に入る健闘。さらにその年、盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIに遠征すると、4コーナーでは先頭に立とうかという行きっぷりで、12頭立ての11番人気ながら3着に激走。3連単132万馬券を演出した。
時間は前後するが、2008年4月25日の笠松・オグリキャップ記念では、前年の高知県知事賞を制していたスペシャリストが3番人気で勝利。3着には8番人気だった高知のサンエムウルフが入り、3連単は20万円の配当がついた。
当時、もっとも積極的に遠征を重ねていた調教師のひとりが、グランシュヴァリエを管理していた雑賀正光調教師で、「高知の賞金が安かったから、遠征して稼ぐしかなかった」と振り返る。
その後、高知の売上がV字回復を遂げると、高知から他地区への遠征が目に見えて減った。なぜか。「高知の賞金がよくなったから、遠征する必要がなくなった」と雑賀調教師。
ところがここ2、3年、再び高知から他地区への遠征が増えてきたのは、地方競馬全体の売上上昇にともない、重賞レースを中心に、全国的にかつてないほど賞金が上昇しているためと思われる。
前半で触れた9月の高知所属馬の活躍だが、ロータスクラウンこそ高知の2頭に人気が集中していたため堅い決着だったが、西日本ダービーは、勝ったのが断然人気のスーパーバンタムでも、2着フィールマイラヴとの馬連複は2170円。園田チャレンジカップでは、勝ったダノンジャスティスの単勝が2550円で、馬単9920円、3連単は10万2360円もついた。
高知からの遠征馬は、ときに高配当も連れてくる。
5月の兵庫大賞典以来となるジンギ、シェダルの直接対決が注目となる一戦。南関東から3頭の遠征があっても9頭立ての少頭数は、それゆえだろうか。その兵庫大賞典は、スタートから先頭に立ったジンギをシェダルがぴたりと追走。3コーナーからは3番手を離しての一騎打ちとなり、直線を向いて外のシェダルがやや遅れをとったものの、ゴール前でもう一度差を詰めた。しかしジンギがクビ差で振り切っての勝利。さらに兵庫所属馬として重賞最多勝記録を更新し続けているエイシンニシパが6馬身離れての3着、という結果。さて、今回は......。
6月の六甲盃以来4カ月近くぶりとなるジンギだが、ここ1年で負けたのは名古屋大賞典JpnIIIでの3着だけ。という成績なら、やはりこの馬が中心だろう。
一方のシェダルも、昨年末に中央オープンから移籍し、負けたのは名古屋に遠征した梅見月杯(3着)と、前述の兵庫大賞典のみ。重賞初制覇となった摂津盃では、ゴールを過ぎたあと「待ってろ、ジンギ」という三宅アナウンサーの実況が印象的だった。
さらに注目は、昨年の北海道三冠馬ラッキードリームだ。南関東でオープン特別を2勝し、転入初戦の特別戦を6馬身差で圧勝。2頭の間に割って入る可能性もある。
南関東からの遠征馬では、金沢のイヌワシ賞を連覇しているアイアムレジェンドに食い込む余地があるかどうか。
◎9ジンギ
○3シェダル
▲4ラッキードリーム
△5アイアムレジェンド
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過去5年で岩手所属馬が3勝と、地元馬の活躍が目立つが、遠征馬では北海道が1勝、2着3回で、3着4回の南関東より活躍が目立っている。
今回北海道から唯一遠征のケイアイサクソニーは、中央では芝1200から1400メートルで4勝。オープンクラスから今年春に門別に移籍し、勝ち星こそないものの1200メートルのA1特別で2着2回。1000メートルのグランシャリオ門別スプリントでも、勝ったアザワクから0秒5差の4着と好走した。芝1000メートルは絶好の舞台だろう。
川崎のプリモジョーカーは、ここ2年以上、南関東では川崎900メートルのみを使われ、その中にはA2特別勝ちもある。川崎スパーキングスプリントもでも勝ち馬から0秒8差の6着。芝は2歳時、北海道所属時代にJRA函館・札幌で2戦してともに着外だったが、それだけで芝不適とは判断できず、むしろ相手が強かったと考えるべきだろう。あらためて持てるスピード能力を芝で発揮できればチャンスはある。
浦和のスターオブケリーは盛岡ダート1200メートルの3歳重賞ハヤテスプリントを逃げ切った。名古屋に遠征した東海クイーンカップ(1700メートル)でも2着があったが、ハヤテスプリントのあとの繁田健一調教師のコメントでは「1200メートルが一番合う」とのこと。芝は今回が初めてだが、3歳牝馬の軽量53キロでそのスピードが生かせれば。
地元勢では前哨戦のハーベストカップで1、2着だったスギノヴォルケーノ、リンシャンカイホウが、遠征勢を相手にどこまでやれるか。
浦和のコパノキャリーは南関東での4勝が800〜900メートルという超短距離志向。2歳時に盛岡芝のJRA認定フューチャーステップで2着があった。
川崎のエールヴィフは、地方のダートでは結果が出ていないが、中央では芝1000〜1200メートルで2勝。芝での変わり身に期待だ。
◎8ケイアイサクソニー
○1プリモジョーカー
▲4スターオブケリー
△3スギノヴォルケーノ
△12リンシャンカイホウ
△10コパノキャリー
△7エールヴィフ
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それにしても遠征しての高知勢は強い。25日のロータスクラウン賞でのヴェレノ、ガルボマンボの一騎打ちは人気にもなっていたが、西日本ダービー(園田)でクビ差2着のフィールマイラヴは、黒潮皐月賞10着など、地元の重賞では勝負になっていない馬だった。
黒潮皐月賞2着だったアンティキティラは、その後の2戦が案外だったが、3カ月ぶりの復帰戦となった栴檀特別では3〜4コーナーで内を突いて見せ場たっぷりの3着は復活と見る。旧名古屋競馬場の若草賞では2着レイジーウォリアーに4馬身差で圧勝しており、新名古屋競馬場の舞台でも期待したい。
エコロクラージュは園田オータムトロフィーではラチ沿いからしぶとく抜け出し、デビューから6連勝で重賞初制覇。1230メートルから1700メートルまで距離にも自在性を示している。今回は初めての遠征に加え、初めての地方全国交流で相手強化となるだけに、ここも勝てるようなら本物だ。
コンビーノは今年春以降に急激に力をつけて、5連勝のあと岐阜金賞ではタニノタビトと接戦となってアタマ差での2着。MRO金賞を制していたイイネイイネイイネ(3着)に6馬身差をつけた。その充実ぶりならここでも通用する可能性は十分。
大井から遠征のヒストリックノヴァは東京2歳優駿牝馬で2着があるが、あらためてこの距離でどうか。
兵庫ダービーを制したバウチェイサーは、前走園田オータムトロフィーでは1番人気と期待されたものの6着。立て直してくるかどうか。
東海ダービー5着以来3カ月半ぶりの実戦となるレイジーウォリアーも正月に新春ペガサスカップを制した実績があり、復活が期待されるところ。
◎4アンティキティラ
○5エコロクラージュ
▲2コンビーノ
△12ヒストリックノヴァ
△9バウチェイサー
△1レイジーウォリアー
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