NAR『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』、『競馬総合チャンネル』などで地方競馬を中心に記事を執筆。グリーンチャンネル『アタック!地方競馬』『地方競馬中継』解説。1964年生まれ。
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2023年に始まった『ダート競馬の体系整備』では、高額賞金の2歳重賞・ネクストスター競走が各地に新設された。その効果として、南関東以外の地方競馬にも高額で取引された2歳馬(新馬)の入厩が目立って増えたことが話題となった。
たとえば佐賀には、2022年の北海道セレクションセールで1650万円(税込)で取引されたウルトラノホシが2歳になって入厩。新馬戦を勝ち、2戦目の九州ジュニアチャンピオンこそ4着だったが、第1回のネクストスター佐賀の覇者となり、続いてカペラ賞と重賞を連勝。ダートグレード競走にも果敢に挑戦し、3歳初戦のブルーバードカップJpnIIIでは地元南関東勢を差し置いて地方馬最先着の4着と健闘。"佐賀の星"として話題となった。そして地元に戻って、佐賀皐月賞、栄城賞と佐賀二冠を制覇。4歳になった昨年は、年末の中島記念で惜しくも2着。そして5歳になった今年は九州クラウン制覇を含め目下3連勝と活躍。ここまで6500万円近い賞金を稼いでいる。
地方競馬では2021年度以降、年間の総売得額が過去最高を更新し続けていることなどから、南関東以外の地区でも1000万円を超える賞金の重賞がめずらしくなくなった。これにより、ウルトラノホシの例だけでなく、地方に入厩する馬(中央からの移籍も含めて)のレベルが確実に上がってきている。
それを象徴する出来事のひとつが、7月16日に佐賀で行われた九州産馬による交流重賞・霧島賞だった。
6番人気だった地元佐賀のアイタカが4コーナー手前で先頭に立つと直線では後続を突き放し、1・2番人気に支持されたJRA馬を2着・3着に完封した。
アイタカは、中央所属として出走した一昨年の霧島賞が8着。佐賀に移籍して出走した昨年も同じく8着。しかし今年3度目の挑戦で見事に勝利。佐賀所属馬による勝利は、霧島賞が荒尾競馬場で行われていた2008年(1月)のナセ以来、じつに18年ぶり(年度でいうと19年ぶり)のことだった。
じつは地方馬優位は霧島賞だけでなく、前哨戦からのことだった。
霧島賞では第1回の1997年から、えびの特別、大隅特別という2つの前哨戦が行われているが(霧島賞が2008年1月に実施された2007年度は除く)、今年は、えびの特別を佐賀のカシノハンゾウが制し、大隅特別を高知のヒマワリクンが制していた。両トライアルとも地方馬が制したのは初めてのこと。
つまり、トライアルまで含めた霧島賞シリーズで地方馬の完全制覇は、霧島賞30回の歴史で初めてのことだった。
冒頭で触れた『ダート競馬の体系整備』の計画が発表される際、JRAからは、現状以上に中央競馬でダートの番組を増やす計画はないということがはっきり示された。つまりダート競馬は地方で盛り上げてほしい、ということ。
中央競馬では時期やクラスによって除外ラッシュが問題視されることがあるが、番組が限られるダートではなおさらのこと。特に準オープン以上はフルゲートになることが多く、上級クラスのダート馬は、よほど賞金を持っている馬以外、計画的に出走することが難しくなっている。また地方で行われるダートグレード競走は中央馬の頭数が限られるため、ある程度の賞金を稼いでいないと出走することが難しい。
であれば馬主としては、預託経費も中央競馬ほどは高くはなく、それなりの賞金額になった地方競馬に移籍してコンスタントに出走できたほうがいいと考えたのは自然なこと。そのため中央の上級条件から地方に移籍する馬が確実に増えてきたことで、近年、地方競馬が全体的にレベルアップしていると考えられる。
フォーエバーヤングのような世界トップレベルの馬が地方に移籍してくることはないにしても、中央在籍時に地方のJpnII・IIIで3勝を挙げたディクテオンは、大井に移籍して韓国に遠征してコリアカップGIIIを制し、東京大賞典GIまで制した。中央在籍時より地方に移籍して目覚ましい活躍を見せたのは、目標を定めて出走するレースが選択できたことが、少なからず要因としてあったと思われる。
今後願わくば、チャンピオン級の活躍馬が南関東だけでなく、ほかの地方競馬からも出てくることが望まれる。