ナムラダイキチにいよいよダートグレード制覇のチャンスが巡ってきた。ナムラダイキチに、というより金沢所属馬に、といったほうがいいかもしれない。現在、中央との交流重賞が行われている競馬場で、その所属馬が交流重賞を一度も勝ったことがないのは金沢のみ。白山大賞典JpnIIIでの2着は、ナムラダイキチのほかに、ジャングルスマイル、エイシンクリバーンなどがいるが、勝ち馬はまだ出ていない。かつてトラベラーという牝馬が馬名のとおり遠征を繰り返し、ダービーグランプリ、日本テレビ盃、東海菊花賞などで中央馬を相手に3着と健闘したが、勝利までは至らなかった。ナムラダイキチは、白山大賞典ではさすがにニホンピロアワーズには離されたものの、エーシンモアオバーを直線でとらえて2着を確保。中央の重賞勝ち馬が2年前にシリウスステークスGIIIを勝ったキングスエンブレム、兵庫チャンピオンシップJpnIIのオースミイチバンだけというメンバーなら、ナムラダイキチにとってはチャンスと見るべきだろう。
相手は当然中央勢だが、筆頭はエーシンモアオバー。昨年のこのレースでもニホンピロアワーズの2着で、鞍上はそのときと同じ岡部誠騎手。長丁場でスローに落として逃げれば今回も粘れる。
トリップはダート2戦だが、ジャパンダートダービーJpnIでは直線単独先頭で、最後はハタノヴァンクールに交わされたものの1馬身差2着。武蔵野ステークスでは7着とはいえ勝ったイジゲンからコンマ5秒差なら好走。日本ダービーでもコンマ5秒差の7着があり、距離適性もありそうだ。
キングスエンブレムは、7着に惨敗した川崎記念JpnI以来11カ月ぶり。どこまで仕上がっているか。
クラシカルノヴァはダートの準オープンを制して臨む一戦。初めての一線級との対戦でどこまで。
オースミイチバンは、秋2戦は古馬との対戦でともに二桁着順。叩き3戦目で上積みがあるかどうか。
◎ナムラダイキチ
○エーシンモアオバー
▲トリップ
△キングスエンブレム
△クラシカルノヴァ
△オースミイチバン
今シーズンのばんえい重賞はとにかく難しい。ここまで重賞は15レースあって、3連単が4桁配当だったのは、ばんえい十勝オッズパーク杯の40倍と、ばんえい菊花賞の90倍の2レースのみ。逆に10万円以上ついたレースが、ばんえい大賞典、銀河賞、ドリームエイジカップと3レースもあった。フルゲートが18頭とか16頭とかの中央競馬と違い、出走頭数が10頭以下のばんえい競馬で10万馬券というのは大波乱といっていい。つまりは常識にかからない馬が激走するのだ。まあそれがばんえい競馬のおもしろさでもあるのだが。
で、中心はブラックボス。2歳シーズン3冠は確実と思われたイレネー記念で惨敗の5着。それでも3歳1冠目のばんえい大賞典を制した。その後はまったくいいところがないが、賞金を稼いで不相応に高いクラスに格付けされているため。同世代同士で定量戦のここならと、陣営も狙ってくるのではないか。
人気になるのはニシキエーカンだろうか。ばんえい菊花賞ではトップハンデながらの2着は立派だ。前走は9着惨敗だが、これは古馬オープンとの対戦だから仕方ない。
ニシキウンカイは、牝馬ながらばんえい大賞典3着のあと6連勝でばんえい菊花賞制覇。断然人気に支持されたばんえいオークスはまさかの4着。巻き返しのかかる一戦。
そのばんえいオークスを制したのがタカラハヤヒメ。ばんえい大賞典、ばんえい菊花賞はともに5着だったが、当時より上積みがあるはず。
アサヒリュウセイは、前走の特別戦こそ6着だったものの、ばんえい菊花賞3着のあと4連勝の勢いがある。
テンカムソウは、とかち皐月賞2着、とかちダービー勝利、秋桜賞2着など、同世代同士の特別で好走歴があり侮れない存在。
◎ブラックボス
◯ニシキエーカン
▲ニシキウンカイ
△タカラハヤヒメ
△アサヒリュウセイ
△テンカムソウ
中央から転入してきたマイネルリボーンが6戦オール連対で3連勝中と底を見せていない。前走は2着と半馬身差とはいえ、道中は好位の内でじっとしていて、4コーナーで外に持ち出して前をとらえるという強い勝ち方だった。ほとんどの馬が1700メートルは初めてだが、マイネルリボーンは芝ではあるものの1800メートルの経験もある。1500メートルの持ちタイムでも、1分37秒台があるのは出走メンバー中でこの馬だけ。さまざまな面で優位に立っている。
勢いならガッツオブトップも負けてはいない。プリンセスカップを5番人気で制したあと、2歳選抜戦を1番人気で勝利。以前はなかなか勝ちきれないレースが続いていたが、ここにきて連勝と充実してきた。
フレアリングメテオは、4走前と3走前の連勝でガッツオブトップを負かしているが、ここ2走はともにマイネルリボーンの3着。力的にそれほど差はない。
ハイパーエンジェルは、プリンセスカップでガッツオブトップの2着があるが、前走はマイネルリボーンから離されての6着。ややムラ駆けの面があるだけに、持てる力を発揮できるかどうか。
それ以外の馬はこれまでの対戦からも、ちょっと差がありそう。
◎マイネルリボーン
◯ガッツオブトップ
▲フレアリングメテオ
△ハイパーエンジェル
シャイニーハリアーのこの秋以降の安定ぶりに賭けてみたい。重賞はこれまで、今年1月のトウケイニセイ記念で3着、シアンモア記念でも3着、そして前々走の絆カップでは4着と、好走するもなかなか勝ち切れない。しかしここ4戦ではA級一組戦を3勝。絆カップの4着も、地元勢で先着されたのは2着のトーホクキングのみ。そのトーホクキングや、絆カップで期待されたカミノヌヴォー(9着)が不在というメンバーなら、いよいよ初重賞タイトルが狙えそう。
相手にはコパノマユチャン。前走栗駒賞は6番人気での勝利だが、トーホクキングらと直線で競り合って勝利には価値がある。JRA時代、さらにその後の大井在籍時にも、使われていたのはほとんどが右回り。岩手移籍後は前走の栗駒賞が初めての水沢コースで、右回りで力を発揮するという可能性はある。
かつては常に重賞で上位を争っていたゴールドマインだが、昨秋の青藍賞以降勝ち星がない。今シーズンは長期休養を挟み4戦して一般戦で3着が最高という成績。しかし前走栗駒賞は着順こそ5着だが、ゴール前は接戦で、勝ったコパノマユチャンから0秒5差。復調気配はある。
クレムリンエッグは栗駒賞で3着、前走A級一組でもシャイニーハリアーの3着と、ともにそれほど離されていなかった。
スーパーワシントンは7月の岩鷲賞で3着、芝ではあるもののOROターフスプリントで3着など、馬券圏内を狙える力はある。
この秋に大井から転入したタケノトレジャーは、岩手ではまだオープンクラスとの対戦はないものの、B級一組からA級二組で5戦して3着を外していないという安定ぶり。上のクラスでも勝負になりそうだ。
◎シャイニーハリアー
◯コパノマユチャン
▲ゴールドマイン
△クレムリンエッグ
△スーパーワシントン
△タケノトレジャー
トップハンデがカネサブラックの790キロで、牡馬は30キロ差以内。牝馬のエンジュオウカンが50キロ差だが、近走の成績からはこの重量差があってもさすがに馬券の対象としては厳しい。
ばんえい競馬もシーズン後半になってくると、「強いのはカネサブラックということはわかっているけど、さてこの重量差はどうだろう」と、重賞の予想でまったく同じ思考回路になるのがもう何年続いているだろうか。つまりはそれだけ絶対的な王者に君臨し続けているというわけだ。そういう意味でカネサブラックは、東京大賞典を最後に引退が発表されているフリオーソと同じような立場といえるかもしれない。
とはいえ、狙ったレースにはきっちり仕上げてくるギンガリュウセイで今回もイケるのではないだろうか。実際にばんえいグランプリではカネサブラックを10キロ差でしりぞけている。問題は、このメンバーにしては700キロ台という軽い重量になっていること。前走知床賞は惨敗だったが、第2障害手前で息を整える前にナリタボブサップやカネサブラックに行かれてしまい、まったく勝負には程遠かった。それでも今回はさすがに勝負がかりで来るだろう。それにしても、ばんえいグランプリが5番人気、北見記念が4番人気での勝利で、三度めの正直があるだろうか、と考えるとちょっと不安にはなるのだが。
10歳でも安定感抜群のカネサブラックも軸としては当然外せない。
キタノタイショウも惨敗は前走だけで今シーズンは堅実な成績。岩見沢記念4着、北見記念4着ならそろそろ順番がまわってきてもいい。
ここ2走はイマイチのフクドリだが、岩見沢記念2着、北見記念3着と、いつ重賞を勝ってもおかしくない。
ナリタボブサップは知床賞でカネサブラックと接戦を演じたが、重賞で勝つまでというイメージは沸かない。
ホクショウダイヤは近走不振だが実力は確か。
◎ギンガリュウセイ
◯カネサブラック
▲キタノタイショウ
△フクドリ
△ナリタボブサップ
△ホクショウダイヤ