4日、九州ダービー栄城賞から始まった「Derby Week」。小生も全国のダービー観戦(ついでに馬券も少々)を楽しんでいる。ダービーといえばその競馬場最大のイベント。「ダービー馬を持つのは一国の宰相になるよりも難しい」というイギリスの言い伝えがあるが、これまで地方競馬は自分らが誇るダービーの価値をあげていなかったのでは…と思えてならなかった。一番、感じていたのは地元だけで完結し、他場にアピールしなかったこと。それぞれ競馬場の将来を担っていく3歳馬を全国に発信できる絶好のチャンスにもかかわらず、である。もったいない話だ。
で、今回、おもしろい傾向だと思ったのは、4日、九州ダービー栄城賞・ユウワン(父ロイヤルタッチ)、6日、札幌ダービー北斗盃・フジノダイヒット(父バトルイニシャチブ)、7日、東京ダービー・ビービートルネード(父タヤスツヨシ)、8日、兵庫ダービー・チャンストウライ(父ブラックタキシード。ついでに2着ジョイーレは父がメイセイオペラ)。
そう、お気づきになった方もいると思う。父内国産馬が全国各地のダービーを制していたの。しかも一般論で言うが、生産界では決してメジャーな種牡馬でなかった(失礼)のも興味深かった。9日、東海ダービーは断然の1番人気に支持されたデヒア産駒ホウライミサイルが圧勝し、その流れは終わったが、これぞ地方のダービーらしい結果だったのではないか。
ちょっとディープな競馬ファンなら『私はあなたの父を知っています、見ています』だろう。改めて言うが、そんな地方競馬をアピールし、生産界、ファンを喜ばせて欲しいと思っているのだが。
さて本題。冒頭に書いたことに反するようで大変恐縮なのだが、岩手ダービー・ダイヤモンドカップのいち押しはオウシュウクラウンだ。
(写真はオウシュウクラウン=はまなす賞)
彼はUAEドバイ生まれのジェイドロバリー産駒。日本で生まれた産駒でもヤマカツスズラン、オースミジェット、タイキシャーロックなど活躍馬が多数いるが、彼は生粋のドバイっ子。2歳時に千葉のセリで売買された。
実は記者仲間と毎年、POG(ペーパーオーナーゲーム)をやっているのだが、デビューする遥か前、厩舎でスタッフと雑談している時、目の前をオウシュウクラウンが通り、思わず何という馬だ?と聞いてしまった。いわゆる一目ぼれ状態だった。青毛を光らせ、馬格もすばらしく大物感たっぷり。オーラがこちらにビンビンと伝わってきた。
小生、迷わずオウシュウクラウンを指名し、デビュー戦芝1000mを59秒4の好タイムで完勝。小林俊彦騎手をして、この馬はちょっとスケールが違うよと絶賛してくれた。小生、もう有頂天になってしまったのだが、以降は股関節炎のために伸び悩み、夏に2ヶ月の休養を余儀なくされた。
復帰後ももうひと息のレースを続けたが、12月、水沢の寒菊賞でようやく復活宣言。金杯3着後に南関東へ移籍し、初戦のブルーバードカップを快勝。続いてしらさぎ賞5着、クラウンカップ4着と使って岩手へ里帰りした。
再転入戦は5月15日、3歳B1級戦で有力馬がやまびこ賞、岩鷲賞へ回って手薄なメンバーだったこともあって1・8秒差の圧勝劇。これは当然と言えば当然だったが、盛岡ダート1600m1分39秒5は前々日の特別・やまびこ賞の勝ちタイム1分39秒7を上回る破格のものだった。続く芝特別・はまなす賞も出遅れながら、ブラックショコラを直線でアッサリ交わして快勝し、俄然、注目を集める存在となった。今回、コース替わりがカギを握るだろうが、寒菊賞でダンディキングを抑えて快勝しており、それも心配ないだろう。
一方、ダンディキングは懸念された盛岡コースで岩鷲賞2着。待望の重賞獲りを逃がしてしまったが、ムーンプライドと競り合い前半34秒台の超ハイペース。これではどんなスピード自慢でも終い一杯になるのも仕方なしだった。ここは得意の地元に戻って心機一転、マイペースの逃げに持ち込めば逆転のシーンも十分に考えられる。ちなみに父は渋い血統ファンには嬉しいダンディコマンド(その父はニホンピロウイナー)だ。
ティンバーカントリー産駒の大型馬テンショウボスは前走・やまびこ賞で待望の特別タイトルを獲得。一戦ごとにメキメキ力をつけてきた。現時点での完成度はともかく馬格、血統背景などを考えると、今後さらに飛躍する可能性を秘めている。
そのやまびこ賞で2着に敗れたのが牝馬サイレントエクセルだった。この時はテンショウボスに徹底的にマークされ、末をなくしたが、意外にも盛岡ダートは初だった。主戦場は水沢だけに巻き返しを考えておきたい。ちなみに父はダートで大活躍したウイングアローだ。
他はちょっと水をあけられた格好。押さえならファインゴール、ゴールデンパンジーあたりだろうが、今回は4頭に絞ってみたい。
3連単は2、7を1、2着折り返しに3着は4、1に流したい
馬複は2−7、2−4、1−2、4−7
<お奨めの1頭>
2レース トップクォーク
岩手3戦目でようやく初勝利を飾ったが、これは遅すぎたとも言える素質馬。2連勝は疑いないところ。
(文・松尾康司/写真・佐藤到)