これまで33回の歴史を数える岩手古馬最高峰の一戦「みちのく大賞典」。第24回(1996年水沢 1着ヘイセイシルバー)の他は、一貫して旧盛岡競馬場(緑ヶ丘)、新盛岡競馬場(オーロパーク)ダート2000mを舞台に覇を競い合ってきた。
このレースの勝ち馬(地元馬に限るが)の馬名は天皇賞と同様、水沢と盛岡を往復する馬運車に記され、ずっとファンの目にも記憶にとどまる。それもあって岩手のホースマンは、みちのく大賞典優勝が最大の栄誉と考えている。
2000年まで東北交流レースで実施されていたみちのく大賞典は、翌年から東日本へも門戸を開放。さらには九州地区へも枠を拡大し、2003年には帝王賞馬マキバスナイパーがみちのくの頂点に立った。
そして昨年、岩手の重賞は冬季の重賞を除いて全国の地方競馬に門戸を開放。その中で地元トニージェントが見事に優勝して同レース2連覇を果たし、今年はメイセイオペラ以来、史上2頭目の3連覇を狙って調整を重ねてきた。しかし残念なことにトニージェントは直前で出走を回避した。
トニージェントは時に凡走もあるが、ずっと岩手オープンの看板を背負ってきた1頭。過去、桐花賞、トウケイニセイ記念3連覇を果たし、それに続くみちのく大賞典3連覇の夢が託されたが、年齢的(9歳)なことを考えれば賢明な選択だったと言えるだろう。
昨年12月31日、桐花賞2着後、脚部不安が発生し、その後のレースを自重。ひとまずみちのく大賞典出走に間に合うよう、調教を積んでいたが、最終的に陣営は回避を決断した。今、願うのは無理せずじっくり乗り込み、元気な姿をファンの前で見せてくれること。それ以外にない。
今回、他地区から大挙6頭が参戦。迎え撃つ岩手勢も8頭がエントリーし、激戦必至。フルゲート14頭でみちのく王の座を争うことになった。
主役にエアウィードを指名したい。まんさく賞は5着に凡走したが、前走・シアンモア記念ではマイナス15キロに絞って出走。これはまんさく賞が馬体重以上に重いと判断した結果だが、エアウィードは陣営の読みがズバリ。終始4、5番手外を追走し、直線鮮やかに抜け出しを決めて快勝。いつもは単騎先頭に立つととぼけるクセがある馬だが、最後まで気を抜くことなく2着タイキシェンロンに0・2秒差。過去のレースの中での1、2番といってもいい強いレースを披露した。
今回、マイル(シアンモア記念)から2000mへ距離延長されたが、エアウィードにはむしろ大歓迎。左回りはとりわけ安心してみていられる。
(写真はシアンモア記念ゴール 1着エアウィード)
相手はホッカイドウ競馬・ビーファイターが演じる。11月、道営記念でバンブーボカの2着を確保し、船橋遠征・ふさの国オープンを快勝。また4ヵ月半ぶりの前走・オープン特別も2着にまとめた。輸送経験も豊富だし、鞍上はあの山口竜一騎手。オーロパークの舞台でどんな手綱さばきで魅せてくれるのかも興味深い。
南関東の古豪・コアレスハンターも不気味な存在だ。盛岡来訪は今回で4度目。3年前のG?・南部杯でアドマイヤドンの2着に入り、翌年はユートピアの7着。また昨年は北上川大賞典で来県し、イン強襲からエアウィードのタイム差なしの2着に突っ込み、健在ぶりをアピールした。現在、9歳の高齢馬だが、盛岡との相性は抜群だ。
タイキシェンロンも好調をキープしている。前走・シアンモア記念はコース適性の差が出てエアウィードの前に屈したが、2着確保が底力。反応ひと息の盛岡だが、そこは名手・菅原勲騎手が巧みなレース運びを見せてくれるはず。
そして最大の惑星馬となるのがマンジュデンツルギかもしれない。父がマンジュデンカブト、母がマンジュデンレディというコアなファンなら涙を流す血統。
岩手初戦は5月22日、A1級戦。相手がいかに楽だったとはいえ中団キープから4角先頭。2着に1・1秒差をつけ、ダート1800m1分54秒4の好タイムで圧勝。衝撃の岩手デビューを飾った。
中央時代、ダートで5勝をマークしているが、すべて1700〜1800m戦。中距離のスペシャリストで鳴らし、早くからみちのく大賞典出走を表明していた。おそらく盛岡なら2000mも守備範囲。移籍2戦目でみちのく王の座を射止めるか、注目を集める。
有力馬はある程度絞れるが、各馬の力量比較が掴みづらく非常に難解な一戦。その意味で馬券的にもおもしろいレースとなりそうだ。
3連単は14を1着固定で心中。2、3着は手広く8、1、7、9へ流したい
馬複は 8−14、1−14、7−14、9−14、1−8
<お奨めの1頭>
11レース ゲイリーエクシード
オープン特別・あすなろ賞で見せ場十分の3着。A2なら役者が違いすぎる