2022年5月に和歌山競輪場で開催された『オッズパーク杯』で見事デビュー初優勝をされた青木美保選手(埼玉118期)。初優勝の喜びとレースの振り返り、またデビューからここまでなどを振り返っていただきました。
山口:まずは和歌山での初優勝、おめでとうございます。
青木:ありがとうございました。
山口:初優勝をした率直なお気持ちを教えてください。
青木:まさか優勝できるとは思ってはいませんでした。びっくりです。
山口:予選の2日間は振り返っていかがでしたか?
青木:自転車のスピードが出ていたので、調子は良いのかなと思っていました。
山口:続いて決勝を振り返っていきます。戦法としては前々を意識されているように思いますが、ご自身ではいかがでしょう。
青木:そうですね。前の方にはいられるように意識しています。後ろから一気に捲れる脚はまだないので、前々を心掛けています。
山口:では先行した石井貴子選手(東京104期)の2番手は良い位置でしたね。そこからはどう組み立てようと思いましたか?
青木:後ろの選手の仕掛けに合わせて出ていこうと思っていたんですが、石井選手の先行が強すぎて、最後なんとか差せた感じでした。
山口:そうでしたか。石井選手も2着でしたもんね。
青木:何とか抜きたい!と必死に踏みました。
山口:後方の選手とはかなり車間が空いていましたが、把握されていましたか?
青木:いいえ、それは気づいていませんでした。久米選手が日野選手をおさえているな、くらいでその後は全く見えていませんでした。なかなか捲りにこないなあとは思っていたんですが、最後は前だけを見ていました。
山口:これまで何度か決勝2着がありました。1月の大垣では写真判定タイヤ差で2着でしたね。
青木:そのレースはすごく悔しくてよく覚えています。
山口:接戦でした。
青木:はい、でも最後は差されたのがわかったので、思わず「あぁ~」と声が漏れてしまいました。
山口:初優勝、というのはどのあたりから意識していましたか?
青木:優勝したいとはずっと思っていましたが、「和歌山で今回こそ優勝するぞ!」という気持ちはありませんでした。まだ先だろうな、と。
山口:そうでしたか。優勝して周囲の皆さんの反応はいかがでしたか?
青木:いろんな方から「おめでとう」と言っていただけて、すごく嬉しいです!
山口:SNSでもいろんなガールズ選手が「初優勝おめでとう」と投稿しているのを拝見しましたよ。
青木:そうだったんですね!それは知らなかったので、嬉しいです。
山口:では、ここで選手を目指したきっかけなどもお伺いします。青木選手はお父様、お祖父様が選手だったんですね。
青木:はい。でも「普通よりは競輪を知っている」くらいで、選手になりたいとは思っていなかったです。
山口:きっかけは何だったんですか?
青木:ずっとバレーボールをしていたんですが、ガールズサマーキャンプ(自転車初心者でも気軽に参加できる夏合宿、プロ選手を何人も輩出)で初めて競技用の自転車に乗りました。その時に「楽しい!」と思ったのがきっかけです。
山口:初めて乗った時はいかがでしたか?
青木:自分の想像以上にスピードが出て、とても楽しかったです。そこから父に「ガールズケイリンをやってみたい」と話しました。最初は反対されたんですが、いつの間にか「適性試験受けてみたら?」と許可してくれて合格できました。
山口:師匠の茨木基成さん(元選手・東京所属)との出会いはどんな形でしたか?
青木:父の練習仲間で、その縁で面倒を見てもらうようになりました。
山口:師匠と同じく東京登録にしよう、とは考えていなかったんですか?
青木:それは全く思っていなかったです。父も埼玉でしたし、茨木さんは東京登録ですが西武園で練習をされていたんです。
山口:どんな師匠ですか?
青木:私が自転車初心者だったので、1から全部教えていただきました。すごく優しい師匠です。何もわからない私の面倒を見てくれて、茨木さんは引退されましたが、今でもバイク誘導など練習を見てもらっています。感謝しかないです。
山口:良い報告ができましたね。
青木:はい。「ありがとうございます、やっと優勝できました」とお伝えしたら喜んでくれました。
山口:適性出身ということですが、卒業記念レースでは決勝進出でした。養成所での手ごたえはいかがでしたか?
青木:結果は出ていたかもしれませんが「これからやっていけるな」という自信はなく、不安の方が大きかったです。同期で一緒にいた方も自転車経験のある選手が多く、自転車のいろんなことを聞いて教わり、入所時よりは成長できたなとは思いました。
山口:デビュー戦のルーキーシリーズ(広島)では連勝で決勝に勝ち上がりましたね。
青木:自分でもびっくりでした。思っていた以上に成績が出ました。決勝は7着でだめでしたけどね。
山口:ルーキーシリーズだと同期たちとのレースですから、デビュー初日に1着を取れる選手は限られている中での1着は素晴らしいと思います。
青木:同期たちだけだったので、「あの選手はこう組み立てるかな」という予想はつきやすかったのもあると思います。走りやすかったです。
山口:本デビューをして丸2年ですが、ここまでを振り返っていかがですか?
青木:もっともっと脚力をつけてパワーアップしたいですね。
山口:昨年は初めて後輩期もでてきましたが変化はありましたか?
青木:特に大きな変化は感じませんでした。私は相手が誰でも、特に戦法が大きく変わらないので、後輩が出てきても普段通りにレースができていると思います。
山口:その戦法を確立しだしたのはいつ頃ですか?
青木:最近です。
山口:そうなんですか。安定して決勝にのっているイメージがあるので意外です。
青木:以前のよくあるパターンが、初日は着が良くて2日目が悪く、成績が安定していませんでした。予選でも2日間、確定板にのれるようになったのは、本当にここ最近です。自分のやりたいことが徐々にできていると思います。
山口:競走得点も近況はずっと50点を超えていますが、意識はしていますか?
青木:もちろん高い方が良く、上がれば上がるほど良いですが、それよりも目の前の一走という気持ちの方が大きいです。
山口:118期の選手たちは、デビュー時から無観客のレースが多かったと思います。お客様の前で走るのはいかがですか?
青木:名前を呼んで応援をしてくれるのは、力になるし本当に嬉しいです。
山口:優勝インタビューもたくさんのご声援ありましたよね。
青木:慣れていなくて緊張したんですが、たくさんいらっしゃっていました。
山口:優勝を経験されて、次の目標は何ですか?
青木:もっと優勝を積み重ねていきたいです。
山口:今の強化するところはどこですか?
青木:ダッシュ力です。飛びつくレースもイメージはしているんですが、理想はもっと「スッ」といきたいんです。5月弥彦の初日は3番手にいたんですが、自分のスピードより後ろから捲る選手のスピードが速く前にはいけませんでした。
そんなレースを少なくしていきたいです。なのでトップスピードも上げたいです。
山口:狭いコースでも突っ込んでいくイメージがあります。それは大丈夫ですか?
青木:はい。全然怖くはないですね。道が空いていたら「空いてる!」とチャンスに感じるタイプです。
山口:それだけ他の選手の動きが見えているんですね。
青木:そうかもしれません、徐々に落ち着いて見えてきていますね。緊張もしているんですけどね。
山口:そうでしたか。では、選手になっての大きな目標は何ですか?
青木:最近は、競輪祭に出たいと思っています。決勝には進めるんですがそこでの着が大きいので、決勝でしっかり確定板にのれるようになりたいです。
山口:理想の選手はどなたかいらっしゃいますか?
青木:強い選手がたくさんいらっしゃるので、いろんな先輩方の良いところを見習っていきたいです。
山口:バレーボールを長くされていましたが、活かされている部分はありますか?
青木:メンタル面ですかね。小学校からバレーボールを始めたんですが、そこの指導が厳しかったので、メンタルを鍛えられました。プレッシャーがかかる部分でも折れなかったり、叱られた時にも「なにくそ!」と踏ん張れているのはバレーボールのおかげかなと思います。
山口:負けず嫌いなのは大切ですね。
ではここからは少しレースから離れた質問です。オフの日は何をされていますか?
青木:ほとんど家にいます。出かけたい気持ちもありますが、のんびりしているといつの間にか時間がなくなってしまいます(笑)。あとは猫を2匹飼っているので、遊んで癒されて、家でも充実しています。韓国ドラマを見るのも好きです。
山口:レースに持っていくものはありますか?
青木:ケアグッズとDVDは持っていきます。
山口:同期で仲良しはどなたですか?
青木:永塚祐子さん(神奈川)です。落ち着いたら一緒に遊びに行きたいです。
山口:ではまたガールズケイリンの話に戻します。練習はどのようにされていますか?
青木:レースの2日前から調整をするんですが、それまではしっかりと練習をしています。
山口:バンクの周長は気になりますか?
青木:33バンクは展開が早くて仕掛けを迷ったら遅れてしまうから特に注意しています。でも特に周長によって苦手なところはないですね。
山口:理想の戦法は?
青木:現状は前々にいて強い選手よりも先に動くのが成績の良いパターンですが、もっと脚力がついてきたら先行で勝てるようになりたいです。自分でレースを組み立てていけるように、ダッシュなどを磨いていきたいです。
山口:拝見できるのを楽しみにしています。それでは最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
青木:確定板に安定してのれるように頑張ります。応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
2022年5月いわき平競輪場で行われた『第76回日本選手権競輪(GI)』の3日目に『ガールズケイリンコレクション2022いわき平ステージ』が行われました。
柳原真緒選手(福井114期)が見事ビッグレースを初優勝!レースの振り返りを中心に、今の練習状況や今後の目標などをお伺いしました。
山口:『ガールズケイリンコレクション2022いわき平ステージ』優勝おめでとうございます!
柳原:ありがとうございます。
山口:優勝して少し時間が経ちましたが、現在のお気持ちはいかがですか?
柳原:優勝後、川崎のレースを走りましたが「負けられない」という気持ちが強かったです。
山口:そうでしたか。でも見事な完全優勝でしたね!ではコレクションについてお伺いしていきます。
今回補欠からの繰り上がりでしたが、繰り上がった時はどんな気持ちでしたか?
柳原:高木真備さんの引退の情報が出てから、自分が補欠なのはわかっていたので繰り上がるんだとは思っていました。率直な気持ちとしては「児玉(碧衣)さんと再び戦えるな」と嬉しかったです。
山口:四日市でのトライアルレース決勝3着でしたが、その開催はいかがでしたか?
柳原:決勝は自分の心の弱さが出ましたね。先行をしたんですが、バックストレッチで思い切り踏み込めず力を出し切る先行ではありませんでした。四日市競輪場は直線が長いので、着を意識しすぎてしまいました。
山口:もっと踏み込んでいれば、逃げ切る、もしくは2着までには残れたかなということですか?
柳原:はい。もし出し切れていたら、残れていたと思います。
山口:いわき平のバンクは2年前のガールズケイリンフェスティバル以来2回目でしたが、どんな印象を持っていましたか?
柳原:フェスティバルの2日目に追い込んで2着という記憶があったので、「そんなに焦って仕掛けなくても伸びるかもしれない」というイメージがありました。
山口:レースの想定などは前々からしましたか?
柳原:組み立てはレースに行く直前に考えました。それまでは、いわき平に自分のベストコンディションで臨めるように練習をしていました。
山口:言える範囲で、どのような調整をされましたか?
柳原:体調面ももちろん重視しました。練習面では、トップスピードを上げることを重視して今までずっと練習をしているので、それは変えずに練習をしました。
山口:単発レースはガールズフレッシュクイーンを含めると4回目ですが、単発レースはいかがですか?
柳原:好きな方だと思います。一走に向けてだけ集中できるので、自分はコンディション調整などもうまく持っていけると思います。
山口:最初のコレクション出場は2年前の伊東温泉でしたが、その経験は今回活かされましたか?
柳原:そうですね。初めてのコレクションでは、緊迫感や空気などコレクション独特のものを感じました。今回はその経験があった分、少し余裕がありました。前日に入った時もインタビュー収録なども緊張することなく終えられました。
山口:レースについてお話をお伺いします。7番手での周回でしたが、どう考えていましたか?
柳原:7番車だった時点で「良い位置は取れないだろうな」と想定はしていました。でも近くに児玉さんがいたので、「位置は悪くない、ここで良いな」と。児玉さんがきっとどこかで動くと思い、それにのって仕掛けようと考えて構えていました。
山口:打鐘が過ぎてもほぼ動きがありませんでしたが、焦りはなかったですか?
柳原:自分でもびっくりするくらい焦りはありませんでした。
山口:そうでしたか!児玉選手が2コーナーあたりから捲って行った時はいかがでしたか?
柳原:自分が「どこから仕掛けようか」と思う前に児玉さんの仕掛けがあり、自分の想定より早かったのでラッキーでした。
山口:児玉選手がまず捲りきって単独で先頭を走っていました。届くだろうというのはどのあたりで感じましたか?
柳原:自分はバックストレッチから思い切り踏んだんですが、まだ踏み込んだ時は児玉さんが遠くて届くかはわからなかったです。でも迷いなく思い切りいきました。
良い感じに4コーナーから吸い込まれ伸びていったので「とらえられるかも」と思い、抜いた時は本当に嬉しかったです。
山口:達成感があったんですね。優勝後、周囲の方の反応はどうでしたか?
柳原:一緒に走っていた選手たちからおめでとうと言ってもらえたのが、すごく嬉しかったです。
山口:ビッグレース初優勝を達成されて、気持ちの変化はありますか?
柳原:「やっと一つ優勝できた」というほっとした気持ちもありますが、それ以上にこれからのレースがプレッシャーのかかる負けられない戦いになるなと感じています。
山口:直後の川崎のレースを拝見して、構えたりはしていなかったように感じました。
柳原:いえ、そんなことはないんです。初日2日目はちょっと構えてしまいました。
山口:初日もなんですね。残り1周では仕掛けてBをつける捲りでしたが、それでも?
柳原:はい。もっと先行した選手の上を越えられるように、一気に仕掛けるレースが理想でした。
山口:そうでしたか。決勝は後ろを大きく離しての優勝でしたね。
柳原:予選2走の状態があまりよくなくて、最終日になんとか修正ができました。決勝は、自信を持って仕掛けての結果だなと思っています。
山口:ビッグレースを1つ優勝して、「もっと勝ちたい」など欲は出てきましたか?
柳原:はい!もっと勝ちたいし、勝ち続けたいと思います。
山口:柳原選手は競輪学校(現・日本競輪選手養成所)時代から好成績を残してこられました。ビッグレース優勝までのプレッシャーはありましたか?
柳原:114期で在校1位と卒記クイーンになり、デビューした直後は肩書きに見合った走り、結果を残さないといけないと感じていました。でもだんだん気にならなくなり、今は自分なりに淡々と練習して成長できているのかなと思います。
山口:戦法の変化もありましたよね。
柳原:そうですね。デビュー直後は先行にこだわっていましたが、師匠(元選手・市田佳寿浩さん)から「そんなに先行にこだわらなくてもいいんじゃない?」と言ってもらってからは、捲りなども増やしました。
山口:練習の変化も、戦法の変化に伴ってありましたか?
柳原:はい、ウェイトトレーニングを取り入れたり、いろいろ変えていきました。
山口:今の強化ポイントはどこですか?
柳原:ナショナルチームの選手たちのトップスピードがすごいので、まだまだトップスピードは強化したいです。
山口:賞金ランキングが取材時(5月半ば)では1位ですが、年末のオッズパーク杯ガールズグランプリのことは考えますか?
柳原:そうですね、まったく考えないことはないですが、それよりも11月の競輪祭までしっかり走りきらなきゃなという気持ちです。
山口:去年までのグランプリへの意識と、ビッグレースを優勝した今の意識は違いますか?
柳原:1月からしっかり賞金を積み重ねてグランプリに出場したいとは毎年思っていますが、今年は1つビッグレースを勝てたので去年までと比べて少しだけ出場が近づいているのかなと思います。
賞金の面で少しだけ余裕は持てていますが、さっきも言ったように怪我無く11月まで走りきりたいですね。
山口:今後の目標は何ですか?
柳原:毎年7月のガールズケイリンフェスティバルでなかなか結果が残せていないので、そこで良い成績を残したいです。そして今年はしっかりグランプリ出場を決めて、その後にグランプリに向けて対策していきたいです。
山口:レースについてお伺いします。レースの組み立てなどはいつ頃考えますか?
柳原:単発のレースだと組み立ては考えて行っていましたが、普通の3日間の開催だとある程度の想定だけです。後は初手の位置や他の選手の位置などで先行なのか捲りなのか組み立てています。
山口:組み立てがうまくいったベストレースはありますか?
柳原:まさに、いわき平のコレクションです。今までにないくらい、今思い出して自分でありえないと思うくらい、冷静に走れました(笑)。
山口:(笑)大事なところにピークが合わせられたんですね!
柳原:はい。気持ちのピークもうまく合わせられたと思います。
山口:普段は緊張するタイプですか?
柳原:はい、ものすごく緊張します。だからいわき平は「ありえないくらい緊張していなかった」のがびっくりでした。
山口:そうでしたか!普段はどうやって緊張をほぐしていますか?
柳原:自分はある程度の緊張とプレッシャーがある方が力を発揮できます。そのバランスの一番いい部分を、ガールズケイリンで4年間走ってきた中で調整して、ようやくわかってきたな、という感じです。
山口:良い意味での対処の仕方がわかってきたんですね。ではここからはレースから少し離れた質問です。オフの日は決めていますか?何をして過ごしますか?
柳原:はい、決めています。今年に入ってからは、グランプリが見えるような賞金ランキングの位置にいるので、オフの日はマッサージをしてダラダラして、と体を休めています。
山口:意識が変わったんですね。では、今年はそのような過ごし方が続きますね。
柳原:そうですね。しっかり休めてまた頑張りたいです。
山口:先ほど少しお話が出ましたが、師匠の市田さんから「弟子の練習メニューを考えている」という話を聞いたことがあります。柳原選手も練習メニューは考えてもらっているんですか?
柳原:いえ、基本的には自分で考えて、それを市田さんに確認、修正していただいています。
山口:どんな存在ですか?
柳原:父親のような存在で、公私ともにお世話になっています。
山口:コレクション優勝をご報告した時はどんな感じでしたか?
柳原:いわき平から直接、師匠のもとへ行き優勝を報告させていただきました。「よかったな」と言ってくださって嬉しかったです。
山口:そうですか。素敵なお話ありがとうございます。では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
柳原:今回ビッグレースを一つ優勝することができましたが、これで満足はしていないので、もっと普通開催で1着をしっかりとり車券に貢献して、皆さんに信頼してもらえるような選手になろうと思います。また応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
かつてはアジア選手権などの大きな大会で金メダルを獲得するなど、持ち前のスピードでファンを魅了してきた河端朋之選手(岡山95期)。しかし近況はヘルニアとの戦いもあり、思うような成績を残すことができなかった。
そんな中で、先日の青森記念は優勝。自身初のGIIIのVをどのように受け止め、そして今後河端選手はどこへ向かっていくのか。話を伺いました。
橋本:あらためて青森記念おめでとうございます。日が経ちましたが、今はどんな思いでしょうか?
河端:今回の優勝は実力というより展開と運に助けられたな、という部分が大きくて、結果としては嬉しいのですが、正直、まだまだ上で戦うには力が足りないな、と感じています。
橋本:開催前の段階でご自身の手応えとしてはどうだったんですか?
河端:正直、優勝どころか、決勝戦に乗ることすら厳しいだろうなと思いながら青森入りはしていました。
橋本:具体的にどういうところが、しっくりこないな、という感じだったのですか?
河端:去年の冬から4ヶ月くらいヘルニアでずっと休んでいて、2月の高知で復帰したんですけど、7着7着6着で。誰一人抜けずに終わった開催からスタートだったので(苦笑)その時よりは少し前でゴールできるようになってはきたのですが...とはいえ、以前であれば一周くらいだったらラインで出切って決められたのですが、今はカマシにいっても叩けなかったり、ペースで駆けても粘れず、最後失速したり、これまでの自分の組み立てで勝負してもうまくいかない、という部分は感じていました。
橋本:なかなか厳しい状況ですね。
河端:そうですね。ただ、短い距離だったり、人の力を使っての展開ならある程度自分のスピードは生かせたので、今回の青森記念はたまたま、それがいい形でハマってくれましたね。
橋本:腰の痛みなどは今はどうなんでしょう?
河端:今、腰が痛いか?と言われると、そんなにめちゃくちゃ痛い訳ではないのですが、左脚に坐骨神経痛があったりして、ただ、それもかなり改善はされてきています。が、やはり、痛かった時期にしっかりトレーニングが出来ていなかったので、長い距離を踏めば踏むほど体のバランスが崩れていってしまうというか、そんな感覚ですね。
橋本:なるほど、確かに今回の青森記念は誰かと並走しているというシーンが多くて、落ち着いているな、よく河端選手は耐えているな、と思いながら見ていました。
河端:本調子だったら、並ばれて一旦後ろまで引いても巻き返せるな、というのはあるんですが、今は自分に出来ることが少な過ぎて、そこにいるしかできない。いなきゃ仕方ない。という感じでしたね。
橋本:内で被った状態というのは、コースがなくなるリスクがあるのですが、つまりはある種の開き直りというか、そんな感じなんでしょうか?
河端:そうですね。今回4日間は確かに開き直って走っていましたね。あと、ヨコの出来る人なら僕の外なんて簡単にキメにいけると思うのですが、並んできた選手も自力だったので、そこはやっぱり僕も引けないなと。
橋本:それが好結果に繋がりましたね。
河端:そうですね。初日なんかでも前がやり合ってくれる展開でしたし、決勝戦も同じような感じでしたし...無欲って訳ではないんですけど、とにかく今、自分に出来ることが少ないので、それだけをしっかり出来るようにしていこう!というのが、うまく噛み合ってくれたって感じですね。
橋本:今後の戦法について何か青写真のようなものはありますか?
河端:同地区の後輩がいる時などは任せると思うんですが、やはりいけるところまでは自力でいきたいな、という思いです
橋本:若いイキのいい選手が中国地区、多いですからね。
河端:そうですね。自力で頑張っている選手だったら付かないといけないな、という思いはありますね。ただ、例えば僕が前で、後輩が後ろに付けるほうが、ライン全体の総合力が上がるのなら、それも選択肢に入れて考えたいですね。
橋本:ヨコの対応というのはいかがですか?
河端:僕は、同地区でも小倉さん(小倉竜二選手・徳島77期)に強烈にブロックされて止められたこともあって、あんなに簡単に勢いって止まるんだ!と思ったこともあるんですが...(笑)ああいった援護というよりは車間を斬って残していく、というようなサポートが後ろの時にはできればいいなと思っています。
橋本:ただ、やはり基本は自力だと。
河端:はい、そう思っています。
橋本:青森の優勝で気持ち的にはノッていけそうですか?
河端:まあ、万全ではないのですが、初の記念制覇だったので、そこは弾みにしたいですね。
橋本:でも、不思議なものですね。過去、河端選手の中で万全に仕上がったっていう開催は何度もあったはずなのに、こういった時に優勝してしまうという...(笑)
河端:自信満々でいけるぞ!って思った時は全然ダメだったりしたこともあるし...何なんでしょうね?? 自分でもわかりません...(笑)
橋本:そんなもんなんですね〜
河端:ほんとに何なんでしょうか?(笑)
橋本:しかし、中四国地区は若手選手もどんどん出てきて、王国みたいな雰囲気ですね。
河端:若い選手が強すぎて、もう河端には付かないって言われることもありそうですが...(笑)それでもしっかり頑張っていきたいです!
橋本:これから気温が上がることによって、いい方に向かっていくといいですね。
河端:今回、冬に発症して、まだ夏を経験していないので分からないのですが、これから気温が上がることによって良くなってきてくれたらいいな、とは思っています。でも、動かし過ぎて再び痛めないようにしないといけないですね。
橋本:体のケアもしつつ、開催もあって、そして勿論トレーニングと大変だと思いますが、是非!また、あの国内トップレベルのスピードを見せてください。
河端:まだまだ長い距離というわけにはいきませんが、できるだけまた、元のようになれるように頑張っていきたいと思います。
橋本:では最後に、オッズパーク会員様に向けてメッセージをお願いいたします。
河端:まだまだ本調子ではないのですが、これから上のレベルでもっともっと戦えるようにしていきたいと思っていますので応援よろしくお願いいたします!
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
大きな怪我を乗り越え、GI戦に復帰した福井の脇本雄太選手(福井94期)。自身にとって今年初出場となった第76回日本選手権競輪(GI)。喜びの声を伺いました。
大津:日本選手権競輪優勝おめでとうございます。
脇本:ありがとうございます。
大津:お気持ちはいかがですか。
脇本:今年は特に出場出来るGIは少ないというのもあって、より優勝したいという一心で練習をしてきたので、そこで結果を出せたのでホッとしているというか純粋に嬉しいです。
大津:今回のダービーにはどのようなテーマで挑まれたのでしょうか。
脇本:ラインでしっかり決めて決勝に乗ろうと思ってました。
決勝に関しては最後ラインで決めることは出来なかったのですが、勝ち上がりの段階ではしっかりとラインで決めることが出来たので自分の中では目標として一つ達成出来たのかなと感じています。
大津:GIの勝ち上がりで全てライン決着というのは並大抵なことではないと思います。
脇本:そうですね、特にいわき平競輪場というのも先行で決まりにくいバンクですので厳しい戦いにはなるなとは思っていたのですが、それも自分の中で跳ね除けた上でレースをするっていうのが出来て本当に嬉しく思います。
大津:4月はFIを2本走りました。ダービーを迎える状態面はどうだったんですか。
脇本:4月は6走中5走が番手戦だったので、調子も含めてレースに対する意気込み自体がちょっとずつ変化してるのかなと感じていたので、正直不安はありましたね。
大津:本音としては全6走自力で走りたいという気持ちでしたか。
脇本:それはありましたが、でもそれを言ってしまうのと僕のワガママになってしまうので「任せてください。」って言った意気込みには応えていこうと。
大津:前検日に競輪場に入った時には、どんな感情が湧き上がってきましたか。
脇本:ダービーに関しては参加人数の多さも普通の開催とは違いますし、トップ選手が沢山いる中で僕がそこに入れたってことに対して、ようやくこの舞台に帰ってきたんだなという思いはありました。
大津:今回の舞台はいわき平競輪場でした。脇本選手はバンクの相性は気にするタイプですか。
脇本:バンクの相性はそこまで気にしないのですが、大会の相性というのは凄く気にするタイプです。ダービーは2019年には松戸で完全優勝もしたこともあって相性は凄く良いと感じていました。
大津:初戦ですが、これぞ脇本選手という競走を見せました。
脇本:僕が走るまでのレースで先行逃げ切りを含め、先行選手が苦戦していたので「うわっ、大丈夫かな。」という心配はありました。レースは後ろ攻めになった時点で先行しようと決めました。
ただ、前受けになって引くタイミングが遅れたりしたら捲りに構えていたかもしれないです。
大津:脇本選手から三谷選手(三谷竜生選手・奈良101期)への2車単が1.5倍と圧倒的に支持を集めていました。
脇本:GIだとしても僕に対するオッズって関係ないんだなって思いました。
僕が今年復帰した奈良記念でもそうでしたが、オッズが極端になりがちなのでそれに応えなきゃいけないんだというプレッシャーはあります。
大津:選手によってはオッズは見ないという方もいますが、脇本さんは確認するほうなのですか。
脇本:見ようとはしてないんですが勝手に目に入っちゃうんですよね。でも、だからこそ目を背けることはしないです。自分を支持してくれるオッズときちんと向き合うようにしています。
大津:初日走り終えて感触はいかがでしたか。
脇本:状態は良くなかったです。レースが終わった後にブレスコントロールの時間が10分間あるんですが、10分では息を整えるのが足りなくて起き上がれずに倒れこんでしまってました。おかげで勝利者インタビューでは迷惑をかけてしまいました。
大津:2走目は4日目の5月6日でした(1走目は3日)2日間走らないというのは影響はありましたか。
脇本:予選スタートだったので、2次予選は3日目か4日目というのは分かっていたのですが、それでも3日目の2次予選の番組に自分の名前がなかったので緊張はしましたね。あっ、自分が最後なんだって。
大津:レースを走らない間はどのようにして過ごしているのですか。
脇本:その日は走らないからといって身体をケアしたり休ませたりしようとはせずに、もし仮に今日僕が走るとしたら、というのを想定して一日を過ごしています。睡眠のサイクルなどが崩れるのが一番まずいと考えているので、そこだけは絶対に崩さないようにしていますね。
大津:決勝戦を迎えるにあたり、節間の中でポイントになったレースはありますか。
脇本:初戦のレースですね。初戦を先行でクリア出来たことで2次予選、準決勝を先行で頑張ろうという心意気になりましたし、先行出来たことで他のラインに与えるプレッシャーも大きくなっていったんじゃないかというのはあります。
大津:決勝戦を走るにあたって、それまでのレースと心や身体の違いはありましたか。
脇本:心の違いがありました。先行に対する恐怖心がなくなったので、そこが大きかったですね。
大津:決勝はどこがレースのポイントになっていくと読んでましたか。
脇本:やっぱり眞杉君(眞杉匠選手・栃木113期)の動きですよね。レースの展開上、間違いなく僕が後方の7番手になりますから、そのタイミングで眞杉君がどういう走りをするのかって考えてました。
大津:その眞杉選手ですが早めに仕掛けていきましたね。
脇本:赤板の2コーナーくらいからフルスロットルでしたね。あれだけ踏まれるとジャンのタイミングでは僕の中では行けるところがなかったです。
大津:そこからはどのように考えていたんですか。
脇本:自分が行けるってタイミングがジャンの4コーナー過ぎであったんです。ここで仕掛けないと後悔するぞってところが。でも行く場所としては最悪でした。
だけど実際に直線で全て乗り切らないといけないってありましたから、横に強い選手があれだけいる中でコーナーで自分が外にいるのは不利になりますからね。
不利な状況を作らないように走るっていうのは僕の中でもポイントだったので、あそこで仕掛けていきました。
大津:そこからは壮絶な踏み合いになりました。
脇本:平原さん(平原康多選手・埼玉87期)を通過しないと優勝は絶対にないって思っていたので、平原さんから肩が一個出た瞬間くらいから全く余裕がありませんでした。それだけお互いが力を出し切った証拠だと思いますし、良い勝負が出来たと感じています。
大津:ゴールした後というのはいかがだったのでしょうか。
脇本:正直目を開けていられませんでした。余裕がなかったので自分がゴールを通過して2コーナーくらいでようやく優勝に気づいたって感じです。
大津:レースが終わった後に佐藤選手(佐藤慎太郎選手・福島78期)や荒井選手(荒井崇博選手・佐賀82期)から声をかけられていたようにも思うのですが。
脇本:おめでとうって言ってもらいました。同じ地区や同じラインの人なら祝福してくれるのも分かるのですが、他地区で敵として戦ったラインの選手から祝福をもらうというのは本当に嬉しかったです。お互いが良いレースをして全力を尽くしたら、敵だとしても相手を称えたいっていうのは僕の中でもあるので他の方からもそのような祝福をもらえて良かったです。
大津:少し話が逸れるのですが春日賞では宿口選手(宿口陽一選手・埼玉91期)にアドバイスを送られたそうですね。
脇本:他地区だから強くなる方法を教えないってのは僕の中にはないんです。お互いが強くなるために情報交換をしあって競輪界が盛り上がっていけば良いなと。
自分だけが強くなれば良いじゃないと思うんですよね。皆で強くなったほうが、観てるお客さんも楽しいじゃないですか。僕はそういうのも目指してやりたいなって思ってます。
大津:シリーズ通してファンの声援はいかがでしたか。
脇本:徐々に僕に対する声援が大きくなったイメージはありました。
初めてタイトルをとったいわき平競輪場だから所縁もありますし、去年古性君(古性優作選手・大阪100期)と決めたオールスターもここでしたから、自分にとって何かしら縁のある競輪場だなと思ってました。その中でお客さんが盛り上げてくれて嬉しかったです。
大津:大きな怪我を乗り越えてのタイトル獲得となりました。
脇本:怪我から復帰しての優勝、と特にドラマチックには捉えてないです。常に怪我する前と同じ感覚でレースを走っているという気持ちがありますので。
ただ、その中で目に見える形として結果を残せたのは良かったです。
大津:これでGP出場も決まりました。
脇本:ダービーを獲ったからといって自分自身満足することもないですし、まだ前半戦も終わってませんから。
今年は出れるGIも少ないので自分の出来ることをやった上でGPに向けて、身体をしっかりと作っていこうと思っています。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いします。
脇本:僕にとって今年最初のGIで優勝することが出来て嬉しいんですけど、この結果に満足するのではなく、今年S級1班で特別競輪や記念競輪だけではなくFI戦も走る中でしっかり自分の走りをアピールし、年末のGPで勝てるように調整していきたいと思っています。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
3月宇都宮競輪場でのウィナーズカップで行われた、今年最初のガールズケイリンコレクションを優勝したのは石井寛子選手(東京104期)でした。
レースの振り返りを中心に、この後決まっている5月のコレクションへ向けての話、また今の練習状況や今後の目標をお伺いしました。
山口:「ガールズケイリンコレクション2022宇都宮ステージ」優勝おめでとうございます。
石井:ありがとうございます。
山口:入る前の調整はどのようにされましたか?
石井:久々に時間がとれたので追い込んだ練習がしっかりでき、その後も調整もうまくできました。
山口:今年最初のコレクションでしたが、どんな気持ちで臨みましたか?
石井:1月に私が参加したレースも含めて、開催の中止や打ち切りが続いていたため、年末のオッズパーク杯ガールズグランプリへ向けて「今年は普通開催で賞金を積み上げるのは難しいかもしれない」と思っていました。
私はこの3月の宇都宮、5月のいわき平でのコレクションの出場は決まっていたので、「まずは最初のコレクションを優勝する、ここにかけるしかない」という思いで入りました。
山口:ビッグレースの優勝は賞金争いには重要ですよね。
石井:そうですね。一気に賞金の積み上げができるので大きいです。
山口:宇都宮のメンバーを見て、どう感じていましたか?
石井:ナショナルチームのメンバーが多くいたので、とても緊張していました。「大敗するんじゃないか」という不安があったからです。昨年のグランプリも7着でしたし、ナショナルメンバーのスピードは凄いので、このメンバーでのレースはすごく緊張しました。
山口:レースの展開を振り返っていかがですか?
石井:前をとる選手がいないと思っていたので、私はいつも通り前から組み立てようと考えて、もし前をとる選手がいたらそこからまた考えるつもりでした。
実はいつも前日には全部作戦などを決めるんですが、今回は決められなかったんです。「後ろからの方が良いのか、いやでもいつも通り前からのが良いのか...」と。結局スタートして、誰も前にいかなかったので、前からと決めました。
山口:一瞬で組み立てられるのはすごいですね!勝負所での位置は2番手、前が尾方真生選手(福岡118期)でしたね。
石井:道中で尾方選手が上がってきたので、それなら、と後ろに入りました。結果としてとても良い位置でしたね。
山口:誘導員が退避しても動きがなかったですが、想定はしていましたか?
石井:500mバンクは仕掛けが難しいバンクなので、早い仕掛けはそこまでないかなとは思っていました。先行したら優勝はできないかもしれない、というのは皆さん思っていたのかもしれないですね。
山口:最後に一気に仕掛けあいになるイメージだったんですね。
石井:はい。昨年のグランプリもそうでしたが残り半周からすごいスピードで仕掛けてきていたので、今回もその辺りから一気にくるんだろうなと思っていました。そのイメージがあったから緊張して体が固まってしまい、一切後ろを振り返れませんでした。でも残り半周を過ぎても「あれ?誰もこないな」と思ってからは、前の尾方選手を追い「ここだ」と決めた所から抜きに行って必死でゴールを目指しました。
山口:ゴール前は外側の佐藤水菜選手(神奈川114期)との接戦でしたね。
石井:それも見えていませんでした。いつもの感覚だと「この辺りにゴール線がある」というのが無く、抜きに行ってからもまだ遠くて500mバンクの直線の長さを痛感しました。宇都宮は得意バンクのひとつなんですが、初めて「ゴールが遠い、遠い!」と感じて必死でした。
山口:喜びをかみしめた優勝だったんですね。
石井:いや、最後は差されたと思ったんです。私が内側、佐藤選手が外側と離れていたので、決定放送で私が優勝だとわかりました。
山口:そうでしたか。レースの展開の話なのですが、今回はナショナルメンバーが多く走りました。その時には仕掛けは遅くなる傾向にあると思いますか?
石井:いえ、それは関係ない気がします。実際、去年私が優勝した7月のガールズケイリンフェスティバル(函館)では佐藤水菜選手は1周先行をしています。今回仕掛けが遅かったのは500mバンクだからかな、と思いました。今回も佐藤選手がカマシていくかもしれないと想定していたので、あそこまで仕掛けが遅いのは珍しいかもしれません。
山口:ありがとうございます。ではその後、3月末の岐阜では完全優勝でした。予選1、2では「逃」での1着でしたね。
石井:参加選手自体に自力タイプの選手が少なかったんです。レースも動きが少ないし、位置を取り合うくらいなら仕掛けることもあるだろうなとは思っていました。
初日は少し疲れも残ってのでコメントでは「先行はしない」と出していたんですが、展開的に逃げる形になりました。雨、風が強く私の得意な天候だったので逃げ切れると自信を持って仕掛けました。
2日目は想定通りで、前を取らされて逃がされる形でした。予想はしていたので「自分のもつ距離から踏み込んで他の選手を合わせたら、誘導員が退避した1周半は逃げ切れるかな」と前日に気持ちを決めて走りました。
山口:前日から気持ちは固めていたんですね!
石井:2日目はそうですね。でも初日はまったく想定していなかったんですよ。
山口:そうでしたか。レースを見ると初日の方がカマシていたので、逃げる作戦だったのかなと思っていました。
石井:残り1周で仕掛けた時に永禮美瑠選手(愛知118期)も一緒に仕掛けていました。想定では永禮選手が先行し、私が2番手に飛びつけると思っていたんですが、逆の展開で私が先行でした。レースの展開を予想して作戦を立てるのは得意なので、予想外で驚きました。
山口:作戦の話はなかなか伺えないので、貴重なお話ありがとうございます。今後も「逃げ切れそうだな」という時は逃げも考えているんですか?
石井:今回はそうでしたが、そういう時は滅多にないと思います。誰かはきっと仕掛ける選手がいると思うので、今後はあまりないと思ってください(笑)
山口:次のコレクションは5月いわき平競輪場です。トライアルレースを勝ち抜いた選手が出られるコレクションですが、石井選手が走った岸和田は2日目以降中止でしたね。
石井:参加選手も中止になったら権利がどうなるかわからなかったんですが、「もし中止になった場合は1着の2名がコレクション出場」という決定がきて、そこで初めて知りました。
山口:ご時世的に突然の中止もありますもんね。
石井:そうですね。ガールズケイリンはポイント制で初日より2日目の方がポイント数が多いです。選手は優勝するために、初日は思い切り力を出し切るレースをして調子を見て、2日目以降に修正という選手もいますが、私は昔から常に1着を目指すレーススタイルなので、この日も「1着をとるぞ」とレースに臨み実際に1着もとれました。その気持ちだったので今回はイレギュラーでしたが、コレクションの権利もいただけたんだなと感じました。
山口:いわき平のコレクションメンバーも発表されましたが、見て印象はいかがですか?
石井:グランプリのメンバーとも、前回の宇都宮のメンバーとも少し変わって、自在の選手が多いという印象です。位置取りが厳しい選手も多いので、私は3月のコレクションよりは戦いにくいメンバーですね。
山口:いわき平も得意と以前仰っていましたね。
石井:そうですね。優勝もしていて良いイメージがありますし、直線が長いので追い込むには有利かなと思います。
山口:宇都宮の優勝の時もですが、賞金の寄付をされています。どういう思いでされていますか?
石井:ビッグレースを優勝したらしようと決めています。私は今、レースに走れていてそれはとても幸せなことだと思うんです。でも一方で私みたいに幸せと感じている人ばかりではありません。日々流れてくるニュースを見ていると思うことがあります。「たくさんの方が大変な思いをされているのに私だけが良いのかな」と心が痛みます。
レースを走れることに感謝をしながら、他の方に恩返しがしたいといつも思っているので、自分にできることはしたいと思ってやっています。
山口:素晴らしい活動だと思います。大切な気持ちを聞かせてくださってありがとうございます。
では次はトレーニングについてお伺いします。毎年お話を聞くたびに「次へ次へ進化していこう」と新しいものを取り入れているイメージがありますが、今年も言える範囲で何かされていますか?
石井:はい。今年から新しい体の使い方を聞き、自転車が進む感覚が違うんだと教わりました。私は自転車歴22年目なのですが「単純な力だけで進むんじゃないんだ」と教わってビックリです。でもできる時とそうでない時がまだあるんです。できる時に感覚の違いに驚いたけど、3日後にはできない、とまだ習得中ですね。
山口:それが発揮できたなというレースは最近ではどれですか?
石井:体の使い方を考えて走るのはまだ難しいので、レース中に取り入れるのはできていないです。後から「あの時はできていたよ」と言ってもらうことはあるんですが、自分で意識してはまだまだですね。
あ、でも今思うと、さっき話にでた3月岐阜の2日目のレースは「教わったように走ろう」と意識していたんです。結果として逃げ切れていて、タイムも良く、自転車も伸びている感じはありました。でも、ハッキリとわかった訳ではないですね。
山口:体にしみこませている途中なんですね。他の選手からもいろいろ聞かれますか?
石井:たまに男子の選手に聞かれるくらいです。過去に教わったことは説明ができるんですが、今習っているものについては自分でまだ説明できないのでまだ私も勉強中です。
山口:現在の勝利数487勝(取材時)と500勝も見えてきていますね。
石井:はい!300勝を達成した時に「次の目標は500勝」とすぐに言いました。300勝で表彰をしてもらったんですが、次の表彰は500勝の時なんです。それを目指して頑張っています。 後は、大きな目標として神山雄一郎選手(栃木61期)の勝利数に並びたいです!
山口:神山選手に!
石井:神山選手はずっとトップで活躍されていて、まもなく900勝という凄い選手ですが、私もその選手に並びたいと思っているんです。尊敬しています。
私が並ぶには今の倍の勝利数を重ねないとだめですよね。そう思うと神山選手の凄さがより際立ちます。
山口:ぜひその日を楽しみにしています。では直近の目標は?
石井:はい、500勝といわき平のコレクションへ向けて、ですね。
山口:今の練習状況はいかがですか?
石井:3月のコレクションが終わってすぐに岐阜の開催があったので、それを終えて今は疲労がどっと出てしまい最近は休養していました。徐々に次の開催に向けて追い込んだ練習をしていきます。
山口:それでは最後に、オッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
石井:いつも応援ありがとうございます。今は自在で戦っているんですが、今後も私のいろんな戦法や技を見てほしいと思っています。レースを楽しんでいただけたら嬉しいです。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA