昨年の悔し涙を嬉し涙に変え、悲願のGI優勝を達成した新山響平選手(青森107期)。「感謝」という言葉を何度も口にされました。朝日新聞社杯競輪祭を制した新山選手にお話を伺いました。
大津:競輪祭優勝おめでとうございます。
新山:ありがとうございます。
大津:改めて優勝のお気持ちはいかがですか。
新山:本当にラインの皆さんに感謝の気持ちでいっぱいですし、応援してくださったファンの皆さんのおかげで優勝できたので、感謝の一言ですね。
大津:優勝してから気持ちに変化はありましたか。
新山:本当に何か1分1秒を無駄にできないような気がして、無駄にしないようにと思って生活してます。
大津:優勝した日の夜にご自身のTwitterでカップラーメンを食べてましたが、その後なにか美味しいものは食べましたか。
新山:いやぁ、まだ食べてないです。レース終わるとちょっとジャンキーなものを食べたくなって、こういうご時世なので打ち上げも控えて、ホテルの自販機でカップラーメンを買って食べました。幸せでした。
大津:あの更新はTwitterでの反響も凄かったですね。
新山:いやそうですね。本当に今までないくらいあんなくだらないツイートにいいねしてくれて、コメントもすごいきてて返そうと思ってたんですけど、あまりにも多いので返せませんでした。
大津:「おめでとう」の声もたくさん届いていました。
新山:やっぱり変な走りをすると厳しい言葉とか送ってきてくださったりするんですけど、今回はそういうコメントが一つもなくて、本当にみんな称えてくれて感謝しかないです。
大津:師匠の坂本勉(坂本勉選手・青森57期(2011年引退))さんとはお話をされましたか。
新山:勉さんも連絡くれて「感動した」と。自分のレースでは泣いたことはなかったけど、僕が優勝したのを見て泣いてくれたらしくて、勉さんに拾ってもらわなかったら今の僕はないので本当に感謝しています。
大津:師匠やファンの方にも最高の恩返しができましたね。
新山:そうですね、優勝したことで少しでも恩返し出来ていたらなって思います。
大津:今節は初日から気迫溢れるレースを見せてらっしゃいました。
新山:作戦的には石原(石原颯選手・香川117期)の上、そのまま叩きたかったんですけど、石原もスピードよくて自分もスピードあっちゃったような形だったんで、一回中段に収まろうとしたんですけど古性さん(古性優作選手・大阪100期)というのもありましたし、内からしゃくられて中段の位置は厳しいなと思ったので、ちょっと後ろが本当に付きづらいレースしたんですけど、そのまま外踏んで石原を叩けて1着に残ったので調子良いなと感じました。
大津:小倉バンクを得意とされてる印象があります。
新山:ドームなんで、天候に左右されないっていうのもありますし、僕みたいなペースで先行するようなタイプっていうのは風の影響も受けやすいので、そういう面で自分に展開が向いてくるんだとは思います。
大津:2走目の突っ張り先行も本当に強かったですね。
新山:一次予選はポイント制のレースなんで、2走目の時に自分のポイントと相手のポイントが分かるじゃないですか。初日に一着を取っていた僕は有利に運べるっていうか、強気に仕掛けられる状況だったんです。
逆に初日に大きな着を取っていた吉田(吉田有希選手・茨城119期)はもがき合いを避けたいっていう心理だったのかなと。そういうのも相まって逃げ切れたんだと思います。
大津:GIの勝ち上がりで突っ張って押し切るのは容易でないと思います。
新山:今の若い選手達は長い距離もがけるんで、僕もそれに負けないようにしていかなきゃいけないと思ってやってます。
大津:そこから順調に勝ち上がって迎えた決勝戦。北日本の並びに驚かされた方も多くいらっしゃいました。
新山:準決勝が終わって守澤さん(守澤太志選手・秋田96期)と話した時に「優勝したいなら番手を回ったほうが良い」って言ってくださって、僕も本当に優勝したかったので確実に獲れるのはどっちかって考えた時に、新田さん(新田祐大選手・福島90期)の番手が一番優勝に近いって感じたので僕から新田さんにお願いしました。
大津:新田さんの反応はいかがでしたか。
新山:一秒くらい間があったんですが、「分かった。」って言ってくれました。
自分のほうが若いのにグランドスラマーでもある新田さんの後ろを回るなんて普段では考えられないんですけど、新田さんに「優勝したいです」という思いを伝えたら、前で頑張るって言ってくださって、成田さん(成田和也選手・福島88期)もグランプリ出場がかかってたんですけど4番手を回るって言ってくださって本当にラインの皆様のおかげです。
大津:決勝戦前日の夜は眠れましたか。
新山:夜はぐっすり寝ました。緊張はするんですけど寝るときはあまり考えないようにしています。
大津:当日もいつもと変わらず過ごされたんでしょうか。
新山:正直ぼんやりとしか覚えてないのですが、最終日って帰る支度とかが大変なので色々やってたらあっという間にアップの時間が来て、アップしてたら気づけばレースの時間になってって感じでした。少しだけいつもより早く時間が流れたようにも感じます。
大津:今までの決勝戦はどちらかと言えば新山選手の後ろを走る選手から売れていましたが、今回は自身が一番人気に推されました。
新山:「あ~、オレから売れるんだ。」ってちょっと意外だと思いました。けっこう僕は番手回り失敗することもあったので、みんな買わないかなぁって思ってたんですが、自分から売れていたので気合いを入れなきゃなって感じました。
大津:GIの決勝戦で一番人気はなかなか味わえるものじゃないですもんね。
新山:前回りだと絶対ないことですが、やっぱり新田さんの番手っていうのが大きかったですね。
大津:オッズを見て更に燃えるものもありましたか。
新山:凄く緊張もしたんですが、上手く身体が動くような感じがして、けっこう心地いい感じがしてレースにのぞめました。
大津:入場時からかなり声援も多かったんじゃないですか。
新山:そうですね、本当にたくさんの方から声援がありましたし、より気持ちが入ってって感じになりました。
大津:スタートからかなり激しい攻防になりましたね。
新山:新田さんもスタートが早いので前を取りに行ってくださったのですが、やはり内に平原さん(平原康多選手・埼玉87期)や郡司さん(郡司浩平選手・神奈川99期)もいたので、なかなか前は取らせてくれないだろうとは考えていました。
だけど、そんな中でも新田さんが出ようとしてくれて本当にありがたかったです。新田さんにおんぶにだっこでした。
大津:ご自身としては、どんなところに注意して走っていましたか。
新山:僕は勝負所で新田さんが行ってくださったとしたら出るタイミングを躊躇しないようにと思ってました。後ろにも先輩2人が付いてくださってますので、迷惑をかけないように躊躇してはいけないと。
後は自分の位置が狙われる可能性というのもあったのですが、万が一来られたら絶対に敗けないように番手の仕事に徹しようとは思ってました。
大津:後ろ攻めにはなりましたが、新田選手の巻き返しはいかがでしたか。
新山:ダッシュする前に自分の心拍は200を超えてました(笑)
「新田さんはすげぇダッシュするんだろうなぁ。」ってドキドキしてて、そしたら本当に凄いダッシュでした。
大津:周回中は新田さんの背中はどのように映ってましたか。
新山:なんか見たことないくらいデカかったです。風も全然来なくてすげぇなって思いました。
大津:最後は2コーナー辺りから自ら踏んでいきました。
新山:新田さんもジャンから全開で行ってくれてたので少しスピードが鈍った感じもありましたし、内に坂井(坂井洋選手・栃木115期)も居て隊列も少し短くなって、郡司さんがすかさず巻き返してくるのは分かったので、踏まないと遅いと思い、踏ませてもらいました。
新田さんも僕が踏み出したタイミングで内外線間を空けてくれて、走りやすくしてくれましたし、そこで坂井も引っかかった感じで外に持ち出せなかったと思うんです。本当に全部新田さんにやってもらいました。
大津:そこから優勝に向けての数100メートルはどんな思いで走ってましたか。
新山:脚にすごい余裕があってこれはイケるなって思って走りました。でもなんか後ろでずっと車輪の音が聞こえるような気がして一瞬も緩められなかったです。
大津:ゴール後は守澤選手や新田選手にも声をかけられていましたね。
新山:僕なんてただ番手捲りをしただけなのに、皆さん「おめでとう。」「おめでとう。」と言ってくれてありがたかったです。
大津:今まで新山選手が北日本の前で引っ張ってくれたのを選手が感じてらっしゃるからではないですか。
新山:僕は先行しか出来ないので先行してただけで、後ろの選手も番手の仕事をしてくれて、各々がそれぞれの役割をきっちり果たした中でのレースだったので、僕が特別に何かをしたという意識はないのですが、今回のようにそうやって声をかけてもらえたことに感謝しかないです。
大津:今年は同期の吉田選手がSSになりましたが、どのように感じていましたか。
新山:元々強かったんですが、真っ赤なパンツを履いてるとより一層強くなってて、赤パンを履くべき人間なんだろうなって見てました。
大津:吉田選手とは優勝後に何かお話はされましたか。
新山:優勝おめでとうと言ってくれました。後は経費の作り方とか聞きました(笑)
大津:グランプリ出場が決まっての思いを教えてください。
新山:実感はまだ湧かないのですが、絶対にその日は来るものなので毎日を無駄にせずグランプリに向けて生活していきたいなと思っています。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願い致します。
新山:皆様の応援のおかげで優勝することが出来ました。 それを少しでも恩返し出来るように来年SSとして頑張っていきますので応援よろしくお願い致します。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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