先日久留米競輪で行われたルーキーシリーズ2022プラスを見事制した室井蓮太朗選手(徳島121期)。父は、室井健一選手(徳島69期)そして叔父が室井竜二選手(徳島65期)という徳島競輪界のサラブレッドが、デビュー前からどんなことを感じ、そして今後どこを目指して突き進んでいくのか。21歳の本音に迫りました。
橋本:まずは、ルーキーシリーズ1着を取っての感想から教えてください。
室井:あのメンバーで勝てたのは嬉しいです!
橋本:みんながびっくりしたのは並びだったのですが、どういう経緯で決まったのでしょうか。
室井:元々誰かには付こうと決めていて、最初は東矢選手(東矢圭吾選手・熊本121期)に付こうと思っていたのですが、熊本勢が並ぶことになり、埼玉勢が別線でやると聞いたので、多聞(山口多聞選手・埼玉121期)に付こうと思い「後ろについていいか」と確認したら「付いてくれた方が良いです」と言ってくれたので付きました。
橋本:養成所時代から、山口選手と親交が深かったんですか?
室井:別に浅くもなく深くもなく、普通くらいですね(笑)
橋本:それでも2人は親友じゃないのかなというくらい、山口選手は思いきって行ってくれました。
室井:そうですね。作戦では「(山口選手が)僕もジャンのところから勝負したいです。」と言っていたので、あとは僕ができることがあればする、というそんな感じですね。
橋本:ゴール線では後ろを突き離しての1着でしたが、道中で勝利の確信はありましたか。
室井:今だからこそ言えるのですが、ジャン(打鐘)では優勝はできるなと思いました。山口選手に付いていくだけいけば、後ろもいっぱいだろうなと。
橋本:山口選手の強さであれば、捲ってくる選手もいないだろうなという感じだったのですね。
室井:そうですね。山口選手のスピードであれば、誰かが捲ってきたとしても、合わせられると思いました。なので今終わってみれば、ジャンで出切った時には勝負があったのかなと思いますね。
橋本:少し話が戻りますが、メンバーが出た時に誰かに付けようと思ったのは、 今後、室井選手自身がマークで勝負しよう、という思いが強いということですか。
室井:そうですね。選手として高い位置で長く生き残っていくことを考えた時に、自分は先行力があったり、すごい捲りが出るような選手ではないので、やっぱり人に付いていくスタイルで勝負したいと思っています。
橋本:その辺りはお父さんの影響もありますか。
室井:そうですね。小さい時から見ていたものが父のレースだったので、やっぱり追い込み選手のレースのシステムがわかりやすかったですね。
橋本:そういう意味ではお父さんもそうなのですが、徳島には小倉さん(小倉竜二選手・徳島77期)という偉大な男がいるじゃないですか。そのスタイルでのかっこよさを追求しようと思った時に,小倉選手のことはどういう風に見ていますか。
室井:小倉さんはあまりにも偉大過ぎますね(笑)でも、父とか小倉さんのようになりたいとは思うので、いいところを盗んでいきたいですね。練習中に後ろに続いて、乗り方を見ると、やっぱり追い込み選手と自力選手ではセッティングも含めて差があるので、まだまだ遠いですけど、少しずつ近づいていきたいと思いますね。
橋本:今、自分に足りないもの、ここをさらに強化したいなと思う部分を1つあげるとしたらどこですか。
室井:もう、それは1つしかないですね。圧倒的にダッシュ力が必要ですね。
橋本:仕事をしようと思っても、ある程度の脚力、ダッシュ力がないと難しいというのもありますもんね。
室井:そうですね。やっぱり前の選手のタイミングで行くので、それに付いていかないといけないですし、今の競輪はスピード競輪なので、持久力も必要なのですが、カマしてきた時に飛びつくダッシュ力も必要だなと感じています。
橋本:確かに、相手の動きに反応した上で、仕事はその次の話ですもんね。その為に具体的に、ダッシュ力をつけていく為のトレーニングには取り組んでいるのですか。
室井:そうですね。自転車での瞬発力もそうですし、筋トレでも、筋肉の伸び縮みを意識しながらやってます。
橋本:追い込みのスタイルでやっていくとなると、やはり自力と違って怪我のリスクも高いとは思いますが、その辺りについてはどういうふうに考えていますか。
室井:怪我はもうこの世界に入る時には覚悟していて、こういうスポーツなんだなと。
橋本:追い込みのスタイルでいくには、そのぐらいの覚悟がないとということですね。
室井:はい、スポーツに怪我はつきものなので。
橋本:ちなみにお父さんは何と言っていますか。
室井:お父さんは多分、反対だと思います。ハッキリ言われたわけではないんですが、そんな感じがします。
橋本:まだそれについては、具体的に会話をしてるというわけではないんですね。
室井:そうですね、1~2回くらいですね。
橋本:その時に反対というようなニュアンスを感じたということですか。
室井:そうですね(笑)
橋本:正面切って、それは反対だ、と言われたらどうしますか。
室井:それを言われたら逆に反発しますね。それならとことん逆にやってやろう、と。
橋本:そのくらいの負けん気がないとやはり勝負できないですもんね。
室井:そうですね、一番大事なところかなと。
橋本:「アスリート+勝負師」のような感じですね。今の時代にはすごく貴重な、ハートのある選手だと感じます。
室井:そうですね。ハートがなかったら何に対しても負けるので。
橋本:その点に関しては、養成所時代から、同期の中でも「負けないぞ」と思っていたのですか。
室井:そうですね、ハートは高校生ぐらいの時にもう鍛えられていましたね(笑)
橋本:高校時代に何があったんですか(笑)
室井:地元の高校野球に所属していて、練習が厳しかったんですよ。あと、先輩から理不尽なことをやらされたり言われたり、なかなかひどい目に遭いました(笑)
橋本:結構昔に、もうそういうものは終わったものだと思っていましたが今の時代もあるのですね
室井:ありましたね。なかなかエグかったっす(笑)
橋本:それに耐えてきたというのが、今の精神的な柱になっているということですね。
室井:アマチュアの時の練習や養成所は、高校3年間とは比べものにならないと思っていましたね(笑)
橋本:今、競輪界全体の流行りが、スピード、アスリートのような方向に行っている中で、流行りに乗っかるのではなくて、持ち味はこれだ、という風にデビューの段階から決めて、それを貫いていくところを楽しみにしています。
室井:ありがとうございます。
橋本:お父さん、小倉さんという名前は先ほどありましたが、将来具体的にこんな選手になりたい、というものはありますか。
室井:お父さんはタイトルとれてないので(笑)やはり小倉さんが徳島で唯一タイトルをとっているので、小倉さんのようになれるよう頑張りたいですね。
橋本:やはり目指すはGIのタイトルですね。
室井:そうですね。やっぱりかっこいいですからね。
橋本:周りの見る目も変わってくるでしょうね。ここまではイメージ通りにデビューから戦えてる感じはありますか。
室井:落車もあったのでイメージ通りではないですね。 やっぱりもっともっと自分が思うようなレースをできるように努力していきたいと思っていますね。
橋本:私生活の面でも色々と自由に使えるようなお金も増えてきたと思いますが、うまく息抜きもできてますか。
室井:そうですね、うまく息抜きもできているとは思います。
橋本:練習の合間に行う1番のストレス解消法があれば教えてください。
室井:最近は同期の徳島の中野光太郎君(徳島・121期)と117期の久田君(久田裕也選手・徳島117期)と3人でご飯やお風呂に行ったり、久田君の家でゲームしたりすることが多いですね。
橋本:少しヤンチャ坊主の3人というイメージはありますね。
室井:一番真面目ではないのは久田君ですね(笑)僕が一番真面目です(笑)
橋本:年齢的にはどうなんですか。
室井:自分は21歳で、2人が1歳上の22歳ですね。
橋本:20代前半の1個上っていうのは結構大きいですか。
室井:徳島支部も結構緩い感じですし、あまり変わらないですね。
橋本:小倉さんもそうだと思いますが、徳島の選手は、厳しく言うような選手がいなくて環境は良さそうですね。
室井:はい、良いと思います。
橋本:今後、まずは怪我にも気を付けて、あとは反対のニュアンスを醸し出しているお父さんを納得させないといけないですね。
室井:そうですね。 やはり結果を出さないと納得してくれないと思うので。
橋本:今回、室井選手には芯が強そうな印象を受けたので、今後のレースが楽しみです、
室井:本当ですか。ありがとうございます。
橋本:これは1ファンとしてなんですけども、ハートの強さを持っている選手は、車券買いたくなりますね。良い意味で、諦めが悪い感じがするので、これからも車券を買いたくなるような選手になってください。
室井:頑張ってなります!
橋本:では、最後になりましたが、これからの目標も含めて、オッズパークコラムを読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。
室井:1日も早く上の舞台で戦っていける選手になれるように頑張るので、これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
今年、デビューから23年目にして初の競輪グランプリが視野に入っている荒井崇博選手(佐賀82期)。デビュー2年目にヤンググランプリを獲得してから、全くタイトルに縁のなかった男が現在どんな心境でいるのか?そして、44歳にして何故とてつもない覚醒が起こったのか?その理由についてたっぷりと伺った。
橋本:いやぁ、今年は凄いですね
荒井:凄いっすね
橋本:何故、こんなことになったんですか
荒井:何だろう、完全に狂い咲きか風前の灯ですね(笑)
橋本:この年になってタイトルやグランプリに手が届くかも(10月10日時点で賞金ランキング12位)という今の状況を荒井さん自身はどう感じてます?
荒井:もう獲りそびれた感しかなくて、どっちかって言うと雰囲気的にそろそろ引退なのかなっていうぐらいまで成績落ちてたんで、もう2班にも落ちそうやし、点数も足りてない状況が一年だか、それぐらい続いて、でもギリギリ取れてて、なんか嫌な感じがずっと続いてたから、とりあえずなんかやろうかと思ったのはありますけど
橋本:そこで新しいことに取り組んだんですか?
荒井:いや、新しい事っていうよりも、ここまでずっと前の感じを追い求めて、前はこうだった、昔はこうだったよなって思いながらずっとやってて、まぁ、過去の栄光ですよ。それに囚われてて、今ある現状をどうしたらいいのかっていう考えに至るまでが長かったですね。もううまくいかんから、辞めだ!って
橋本:荒井さん前にもう走るの飽きた!って言ってましたもんね(笑)
荒井:あれは負け惜しみやね(笑)練習も昔ならこれがやれとったのに。もう今はやれんくなったから駄目なのかっていう感じになるんですよね。それが面白くなくて。でも今、ココとココだったらもしかして勝負できるかもっていう頭に変換できたっていうのがでかいね今
橋本:ある部分においては潔く負けを認めたと
荒井:若い子と走ってまっすぐセパレートで走れば負けるっていうのは当然っていう考えに...いや、それは漠然とはわかってたんですよ。何ちゅうか、それを第三者的に見れるようになったっていうか
橋本:早いストレートでグイグイ押すピッチングからの脱却みたいな話ですね
荒井:今のレベルは何球も何球もストレートは投げられないけど、要所では投げられるんすよ。航続距離は短くなってるかも知れんけど、レースの中でココ!というポイントでストレートを出すみたいな感じで。何か、スプリントとかやっててそれっぽい兆しみたいなのがあって、ちょっと前からかな
橋本:必殺技を出すタイミングですね
荒井:こう、なんて言えばいいんだろう。2、3人なら自分の瞬発力で抜けるみたいな感覚っすね。三番手ぐらいからだったら前まで全部出れる。結果後は分かんないけど、で、出れるスピードは前よりもあるかなっていう感じかな。以前に比べるとチャンスは少ないけど、前を3人は抜けるんで、早い段階で抜いてしまって後は惰性でいくのか、最後のところでしっかり前を抜いて3着までを取りにいくのか、その辺ですね。
橋本:そして、若い人たちも最近はよく頑張ってくれてるじゃないですか
荒井:多分、最近一番デカかったと思うのは、誠一郎(中川誠一郎選手・熊本85期)が熊本のバンク使えずに俺のとこにちょくちょく来て一緒に練習したりして。で、誠一郎って熊本では無敵やったらしいんですよ。なのに、そんな誠一郎が俺に軽く負けてるっていう噂がたったらしくて。で、そんな噂を聞きつけて嘉永(嘉永泰斗選手・熊本113期)とかが来るようになったんですよ
橋本:おおっ!勇気をもって飛び込んできた訳ですね
荒井:今年の初めかなぁ、和歌山記念の時に、もう嘉永がボロボロで、ウェイトとか色々相談に乗って、知り合いのトレーニングのところも紹介してやったりとかして、色々やったらあいつが良くなったけぇ、そしたら、ほかの人間も来だして。特に嘉永とかは、ダメな所からもう一回這い上がってきた感じで、荒井さんにはお世話になったんで、連携したらもう僕がいきますよ!!みたいな、そんな流れですかね
橋本:荒井さんっていうと一見怖そうで近寄り難い雰囲気があるじゃないですか。そこが僕は好きなんですが(笑)
荒井:全員が全員にいい顔するわけじゃないですし、好き嫌いははっきりしてますからね(笑)慣れるまでが大変らしいっすね
橋本:嘉永選手とは結構性格的には合う感じなんですか?
荒井:いやぁ、性格的に合う合わないじゃなく、俺のところに来るっていうのは、よっぽど切羽詰まってるんだろうなと思って。だって利用価値が無かったら、俺みたいなタイプの人間のとこにわざわざ近づかなくていいじゃないですか(笑)他にいい先輩いっぱいいるのに。俺のとこに来るぐらいだから、よっぽど強くなりたいんだろうなと思って
橋本:何とも肯定しにくいですが、そうは正直思います(笑)で、それをきっかけに他の選手も来るようになったんですか
荒井:そうですね。松岡辰(松岡辰泰選手・熊本117期)とかその辺も来たりしますね
橋本:若い子に怒ったりはないんですか?
荒井:怒るのが俺の主軸でしょ。俺はまずこの人が怖いっていうところから入るから。だから逆に言えば俺から褒められたら正解なんだ感みたいな(笑)そこはあるんじゃないですか(笑)
橋本:あまり褒めないからこそ、褒めると効果的ですね(笑)
荒井:これまでは褒めたりはあんまりなくて、さっきの話じゃないけど、今まで通り昔の栄光を追い求めていってたら、どうにもならなかっただろうけど、何かそういう関係も今の俺自体にはプラスになってますよね
橋本:荒井さんの中にやっぱりこれまでプライドという壁があったのかもしれないですね。お前らなんてみたいなところが
荒井:うん。まあ良くも悪くもですね
橋本:要は丸くなったってことじゃないですか(笑)インタビューの最近の受け答えを見てても思いますよ。丸くなったなぁ。残念だなぁって(笑)
荒井:それは逆ですね。新聞記者とかインタビューする人が、俺から言われそうなことを先に排除し出したっていうか、点数が上がるごとに気を使い出したっていう。そんな感じが面白いっす
橋本:500勝の時はどうでした?若い選手もかなり意識していたように感じましたが
荒井:多分それだけだよね(笑)
橋本:で、長崎に移籍という流れになりますが
荒井:漠然とデビューした頃から、いつかは長崎に移ろうとは思ってたんだけど、意外とこの移籍って何かタイミングがないんですよ。成績も悪くなかったけ、で、30代になって時間が流れて...意外とチャンスって少ないですよね
橋本:確かに。荒井さんの場合、別に環境変わる訳じゃないですもんね
荒井:嫌な感じの時期に引退も考えてて、その時期に何とか踏みとどまったのが500勝まではとりあえず、とりあえずやろうか。500勝したら引退しよう!みたいな風に思ってたけど、そしたらこんな感じになってしまったけ(笑)じゃあ、引退しない代わりに、この状況で長崎に行くのが一番いいのかなと思って
橋本:いやいや(笑)これで目標設定が引退どころじゃなく、どうしましょう?
荒井:いや、どうしよっかなぁと思って(笑)
橋本:グランプリも見えている状況じゃないですか!!
荒井:いやぁ、全然もう意識しないってのは嘘になるけど、諦めじゃないですけど、いけないのが普通だからね。もうだって、今年この状況まできただけで、本当は「デカシなんですよ。一度は引退しよう思うとった人間ですからね。もうそれだけで十分で、そこにオマケがついてきたんですよ。だから、そこまで多分周りが思ってるほど執着がないっていうか、周りが騒いでるから本当そうなの(笑)っていう感じで
橋本:本人の前で言うのも失礼ですが、過去めちゃめちゃ強かったけど、タイトルに手が届くとこまで荒井崇博っていう男は行ったけど、惜しいところまでいった選手やったよね。っていう話で終わるストーリーですもんね。ぶっちゃけ(笑)
荒井:うんうん
橋本:別にダメならダメで、それでも今年一年これでもう万々歳やし、グランプリに行けたら行けたでラッキーやし位の感じなんですか
荒井:そのぐらいの感覚の方がうまいこといきそうな気もしますしね。なるようにしかならんけん(笑)
橋本:生活は変わってないんですか?飲みに行ったりとかはどうなんですか
荒井:いや、普通に行ってますよ(笑)1週間空いてたら3日ぐらいかな
橋本:マジっすか(笑)選手とかといくんですか
荒井:地元の方じゃ選手よりも普通の人の方が多いかな。みんな集まる行きつけの店みたいなところがあって、約束するとかじゃなくてフラフラっと一人で行ったら誰かいるみたいな。
橋本:長崎のほうで飲んでるんですか
荒井:そう。長崎、諫早が一番メインかな
橋本:生活が変わってないのに強くなるもんなんですね
荒井:でも、練習するリズムは変えてないけど、残りはなんか全部一新したかも。練習内容にしろ自転車にしろ。えーっと、どれぐらいだろう?二年ぐらい前から自転車のメーカーも寸法も
橋本:そういうのはやっぱりあるんですね。気持ちの面だけじゃなくって
荒井:自転車変えて強くなるんだったら、っていうのもあるんですけど、ずっと付き合いのあるビルダーさんだったら、昔はこれだったからこっちの方に戻した方がいいんじゃないかとか、新しい人に頼んで、前はどうだったのとか言われても、いやもう前は関係ないんで。今走る自転車を作りたいって言って
橋本:なるほど、もう完全に過去の強かった自分と決別するっていうのはそういうことですね
荒井:そう。それをするのが一番ほんと大変だったんですよ
橋本:積み上げてきたモノを一回全部更地にする感じですよね
荒井:そう。更地にするけど、その時に下地がちゃんと残ってくれとけっていう感じですよね。建物が無くなった状態でも下地が昔よりあって、それがどんどん上がっとってくれたら、そのうち兆しがあるかも的な感じでやってたんですね
橋本:今のアスリート的な競輪場の空気はどうですか
荒井:なんか異様だもん。だって昔と全然違うでしょ。八割九割の選手がレース終わったらプロテインのシェーカーを振りながら飲んでとか、いやいやいやいや、レース終わったらその辺でのたうち回ろうよって
橋本:荒井さんらしい(笑)そんな荒井さんはどうなんですか?
荒井:やっぱり昔と違って、腹減ったから腹いっぱい飯を食うってやってると成人病になる。だから、ちょっとこれぐらいで止めて、サプリでも飲んで栄養とっとかないといかん。太り過ぎての成人病には気をつけないと
橋本:単なるオッサンじゃないですか(笑)
荒井:一日三食食べたら成人病になるよって言われて、朝飯だけは抜くようにしました。それで、ここ2年痛風も出なくなりましたし、こないだやった身体検査も選手になって初めて何も引っかからないという
橋本:えぇぇぇぇっ!食事だけではそこまでいかないでしょ!飲みにも行ってるのに(笑)なんか他に荒井さんこそっとやってるでしょ(笑)めちゃめちゃ健康的なこと絶対にやってる
荒井:まぁ、変わったって言ったらパーソナルトレーナーを付けてやってウエートをやってますね
橋本:ほらやっぱり、あるじゃないですか(笑)いつからなんですか?
荒井:ちょうど二年前くらいからですね
橋本:ようやく完全に繋がりましたよ。それだ!全部更地にして一からってのはそれじゃないですか
荒井:簡単に言えば若い頃は、午前も午後も自転車に乗ってみたいな。もうとにかく自転車に乗りっぱなしみたいな感じで、それが年を取るとできなくなってくる訳じゃないですか。で、それを続ければ故障も出るし。だからもう午前中だけ目いっぱい自転車に乗って、午後はそれに代わるものがないかなと思って、一人でやってたウエートを人から見てもらおうと。とにかくプレートすら自分でつけたくない。だから、パーソナルトレーナーを付けたら、金はかかるけど片付けも全部やってくれるし、メニューも全部、お前らに任せるから考えろって言って、とにかく俺はジムに行って言われた通りに揚げるだけ。それ以外は何もしない。強度だなんだって色々あるみたいなんですけど、時代に合わせたトレーニングはお前らが勉強してやれと
橋本:荒井崇博、狂い咲きの秘密はそれじゃないですか。ようやく出てきた(笑)
荒井:いや、全部任せてるんで。どう変わったかって言われても説明できないんですよ。言われた通りにしかやってないから
橋本:それだ!!そのトレーナーさんの努力もデカいじゃないですか
荒井:そうそう(笑)年はまだ27とか6とか、それぐらいの子が2人、俺についてくれてて。で、今、そのジムが俺のスポンサーになってくれてるんですよ。で、スポンサーになったら大体、ジムの料金はタダになるじゃないですか。機械の使用料とかパーソナル代とか、でも、それだと横暴が言えんけぇ、俺はジム代は払う。スポンサーは入ってもらってて全然大丈夫だから、金は払うと、その代わり腹いっぱい俺のワガママを聞けと(笑)
橋本:横暴って(笑)でも、そのトレーナーさんも喜んでるでしょ。荒井さんにこれだけ結果が出ると
荒井:いや、競輪分かってないんですよ。それよりも、荒井さんの口コミみたいなのでやたら競輪選手のお客さんが増えたのをビビってんじゃないですか(笑)
橋本:レースも見てないんですか
荒井:レースの日程だけは伝えるくらいで。もう、それに合わせていつ、どんなトレーニングをやるのか。予約も全部そいつらに入れさせるから
橋本:そりゃ、どうして強くなったかと聞かれても、荒井さんは分からんわ(笑)でも、欲張りでしょうけど、2年前に気付いてやり始めたことを10年前とか5年前とか、そのくらい前から始めていたら、もっと早い段階で凄いことになってたかもですね
荒井:う~ん。でも、その年では気付ききらんようなことやしね。弱くなってるって言うのはまだ気付いてなかったから無理ですね
橋本:確かに
荒井:あと、40代から強くなることに挑戦したやつっていう前例がないじゃないですか。もしかしたら前例がないからワンチャンあるかもしれないってのはありましたね
橋本:今後はどこに向かっていくんでしょう
荒井:どうだろう。まぁ、とりあえず落ちてくるにしても高いところから落ちる方が長く持つから。鳥人間コンテストでもなんでも、どうせいつかは落ちてくるんだから、とりあえず高いところから落ちた方がいいかなと。高さがあればもしかすると琵琶湖を横断できるかもしんないで(笑)
橋本:体調面、特に古傷の膝はどうなんですか
荒井:膝は、もう治らないから気にしない。もう賞味期限切れに近いから(笑)
橋本:賞味期限切れって(笑)円熟期に入ったということにしておきましょうよ。まぁ、そういう意味で言うと、例えば同世代の佐藤慎太郎選手(福島78期・45歳)とは常に同じステージで戦い続けて、今なお進化を続けているという意味では共通すると思うんですが、荒井さんから見て佐藤選手ってのはどんな存在ですか
荒井:慎太郎さんには申し訳ないんですけど、僕は正直、小倉さん(小倉竜二選手・福島77期・46歳)の方が気になりますね。慎太郎さんは、言い方悪いですけど周りが強いもん。昔でも結構勝ててたのは、北に強い自力型がいっぱいいたしってのもあるし、北がいなかったら南関でも番組で引っ張ってこれたし。でも小倉さんは地区的に厳しい中であのレベルでずっとやってきて、やっと今ですよ。中四国にいいのが出てきたから。それまでずーっと、足場がないところであの成績ですよ。だから、ちょっと意識するって言うか、小倉さんはどうしてるんだろう?っていうのはありますね。慎太郎さんには聞きにいかないけど、小倉さんには聞きたいっていうのはありますね
橋本:今、中部の追い込み陣にとっては冬の時代なんて言われてますけど、確かに北日本はそんな時代はなかったと言えばなかったですもんね
荒井:そう、小倉さんはずっとこれまで南極に住んでたから(笑)
橋本:確かに(笑)そのくらい厳しい時代でしたね。そういう意味では九州も厳しい時代。今もかもしれませんが、なかなか大砲という存在が少ないですね
荒井:少ないし、もう若いのが中途半端なことを言いよったら俺が前回るもん。今年の静岡記念の時もそうだったもん。あぁ、名前なんだっけなぁ、あの~名前ド忘れしたなぁ。熊本の、なんとかあさひ
橋本:あ!伊藤旭(熊本117期)選手ね
荒井:そうそう、それ。何か、お願いしま~す!ってきて。はぁ????って。お前、俺が付くと思ってんのか馬鹿かお前はって(笑)
橋本:まぁ、伊藤選手は自在のスタイルですもんね(笑)
荒井:で、結局そのレースは俺が深谷(深谷知広選手・静岡96期)を捲って1着だったもんね。まぁ、要は俺からついてもらえないっていうのを恥ずかしく思えよ。馬鹿かって。でも、わかってないでしょうね。それを周りが見てくれないから
橋本:荒井さんの場合はそういうところで誤解が生まれるみたいなところはありますよね(笑)まぁ、でも今、表面的にはいい事しか言わなくて、裏で何言ってるか分からないみたいな人も多い中で、実に貴重な存在だと思います。何よりお世辞がないのがいいと思います。そんな荒井さんが認める若手ってなると誰になりますか
荒井:まぁ、発展途上にはなるけど嘉永とかは心中してもいいって思えるかな。他誰だろう。庸平(山田庸平選手・佐賀94期)はちょっと違って、山田英(山田英明選手・佐賀89期)かな。悪かったら悪いなりに気持ちで走るタイプで、どうにかしてっていうレースをするけど、庸平は悪かったらもう全然自分の着を取りにいったりするから
橋本:高松宮記念杯の決勝はいくのかな、というのはありましたが・・・
荒井:いや、もう切り替えりゃよかったかなって(笑)いやいや、他誰かなぁ、信用してつけるっていうのとはちょっと違うけど、上で戦うなら翼(北津留翼選手・福岡90期)につきたいかなってのはあるよね。黒か白かはっきりしてるってのは裏を返せば50%はチャンスがあるってことやけん
橋本:荒井さんの場合は積み上げてきたものを見てるって感じですよね。今の勢いだけとかそういうものではないところで判断しているような
荒井:というより、勝つための武器を持ってるやつ。もしくは勝つ位置を絶対取れるやつ。今、一番多いのは勝つレースをしたいけど、しんどい組み立てはしたくないっていう。勝つレースがしたいなら後ろから抑えればいいのに、それは嫌で、結局、前で受けて捲れずに中途半端みたいな。そういうやつが一番ムカつくよね(笑)
橋本:お客さんもそう思ってたりします(笑)ところで、何か荒井さんの中で明確な目標ってあるんですか
荒井:いやぁ、何と言うか色んな事がホワっとしてるんですよ。例えばタイトル獲ってグランプリへ行くっていう目標があったとして、その目標ってホワっとしてるじゃないですか。そういうのではなく、ホワっとしたものをなくしていこうというのは思ってますね。年を取ってくると、午前中最低ノルマ10本って決めてても、ちょっと感じよかったからもう3本で今日は終わりにしよう、という考えになってくるんだけど、そうじゃなくて、10本って決めたら必ず10本やる!みたいな、とにかくホワっとしたものが多い中で、これと決めたらきちんとやろう、というのは思ってますね
橋本:甘え、妥協はしないと、そういうことですね。そんな、この年で決めたことを貫く荒井さんのモチベーションっていうのは何になるんですか
荒井:う~ん、何だろうね。俺の周りの同い年ぐらいのやつって、これからなんですよ。若い時にやりたいことができなかったけど、会社に勤めてるやつとかでも権限が出てきてやりたいことが徐々に出来るようになってきて。だけど、競輪選手って、もう俺らの年になってくると終わりじゃないですか、普通は。だけどそういうやつらと接してると、俺も負けられんないという気になりますよね
橋本:ちょっと使える金も増えてきて楽しくなってくる頃で、本当の意味で人生楽しめるってのはあるかもしれないですね
荒井:そうそう。そういうやつらと話してると、そんな気持ちになりますね
橋本:そういう意味でいくと、週に3回の飲み会も刺激になっている訳ですね(笑)本当に長い時間になりましたが、これからも荒井さんのその考えを貫いて、戦う姿を見せてください
荒井:いつまで続くか分かりませんけど、まぁやれるだけ。なるようにしかならんけど戦っていきたいと思います
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
名古屋競輪場で行われた共同通信社杯を優勝し、年末のグランプリ出場に向け弾みをつけた郡司浩平選手(神奈川99期)にお話を伺いました。
大津:共同通信社杯優勝おめでとうございます。
郡司:ありがとうございます。
大津:完全優勝を達成しました。お気持ちはいかがですか。
郡司:優勝できたことはうれしいですし、やっぱりかなりグランプリにも近づいたということで、本当にここがかなり大きな分かれ道になるんだろうなって思ってます。
大津:賞金ランキングの意識というのは、郡司さんの中では結構ありましたでしょうか。
郡司:自分自身ではまだGIも2つ残されてましたし、そこまで気にはしなかったんですけど、やっぱり周りの方からも言われることも多くて、共同通信社杯はGIIですけど、獲ればかなり賞金的には変わってくると思ってたので、優勝したことでかなり大きく前進できた気がします。
大津:青森記念から中3日での参戦でした。
郡司:ちょっと調整部分は疲れだったり難しいところがあったんですけど、その前の段階から共同に目標を置いてやっていたところもあったので、そこら辺の不安というのはなかったです。
大津:共同通信社杯は、郡司さんは相性がいいように思うのですがいかがですか。
郡司:そこまでは気にはしないんですけど、やっぱり自分の中でも何となくちょっとそういう相性いいなっていうのは競輪場とかによってもそうですけど、多少はなんかやっぱり頭のどこかにそういう意識はあるので、そういう面でいえば相性がいいという大会だなと思います。
大津:初日は自動番組の中で眞杉選手(眞杉匠選手・栃木113期)の後ろを選択されましたが、どのような経緯があったのでしょうか。
郡司:後ろに付いてくれる鈴木裕さん(鈴木裕選手・千葉92期)と話をして、空いてるなら全然付いてもいいんじゃないっていう風にも言ってくださいましたし、自分自身もちょっと行きたいなっていう気持ちもあったので、そういう話し合いの中で眞杉とも話をして、空いているようであれば付かせてもらっていいかなって眞杉に頼んで付くことになりました。
大津:眞杉さんからではなく、郡司さんからアプローチをされたのですね。
郡司:そうですね。周りの選手のコメントとかも、ちょっと気になってたところだったんですけど、そんな中で眞杉の後ろも空いてましたし、ちょっと自分自身も多少は悩んだ部分もあったんですけど、メンバーをパッとみた中で、自分自身が付いてみたいなって思ったので、そういう中での判断でした。
大津:この時の眞杉選手のリアクションとかっていうのは何かありましたか。
郡司:「ホントっすか」みたいな感じで「付いてもらえるなら嬉しいです。頑張ります。」っていう風な感じで対応してくれたので、僕もその中で何かスイッチが入ったっていうか、ラインとして決めたいなっていう気持ちが強くなりました。
大津:普段は敵として戦う眞杉選手ですが、どのような所に魅力を感じていたのでしょうか。
郡司:対戦は割と少ない方だったんですけど、先行選手としては本当にもうトップの魅力的な選手で、最後まで垂れないとかスピードが落ちないので、どういうペースで行けばああいうスピードが維持できるのかとか、先行の考え方だったりとか、そういうところは気になっていたので、聞いてみたかったり感じてみたかった選手だったので付いてみてプラスでしかなかったです。
大津:こういう連携の時はどちらが作戦を決めるんでしょうか。
郡司:基本的には前の選手の意見を聞いて尊重したい部分もありますし、自分が言えることっていうかアドバイスできることがあれば、こういう展開だったらこうしたほうが良いよとか、こうしたほうが多分もっとやりやすいんじゃないっていうような意見っていうのは伝えてはいます。
大津:レースは眞杉選手がしっかりと主導権を握っていきましたね。
郡司:もう本当に強いの一言でした。やっぱりかなりいい先行するなっていうか、自分じゃ真似できないような先行力でしたし最後のゴール前でもスピードが落ちないし、バックでかなりスピードも踏み上がっていく感覚があったんで、後ろに付いている選手からすると安心して付いていけました。
それにプラスして、後ろの選手も仕事をしやすいような先行だったんで、本当に何か残しやすいとか、ラインで決めやすいような先行力だなって感じでしたね。
大津:二次予選では脇本選手(脇本雄太選手・福井94期)を始め、かなり強力なメンバーとの対戦になりました。
郡司:やっぱり今は脇本さんがレースにいると、脇本さんを中心としたレースの組み立てになってますからね。二次予選であたるのは「早えなぁ」って思いましたけど(笑)
でもいつかは倒さないと勝たないと優勝とか上のレースに行けないですし、遅かれ早かれ戦って勝たなければいけない相手ですから。その前のオールスターでも対戦があったんですけど、あの時は完敗してしまったので、いかに対抗出来るかっていうところのメンバーでした。
大津:レースを振り返ってはいかがですか。
郡司:太田(太田竜馬選手・徳島109期)がかなり気っ風良くというか、もう腹をくくって、あの脇本さんが来る前に掛けてくれたっていうのもそうですし、ちょうど僕が行きたいタイミングで宿口さん(宿口陽一選手・埼玉91期)も仕掛けたので、そこで僕が無理やり、その外へ行ってもちょっと脇本さんの展開になってしまうなって思ったので、ちょっと我慢して、最後ゴール前勝負ってなってしまったんですけど、それが結果としてはうまく脇本さんを引きつけられて1着になれた勝因だったのかなって感じています。
大津:太田選手の掛かりも見極めないといけないですし、後ろの脇本選手の動向も警戒しなければいけない中で、かなりタフなレースにも思えるんですが。
郡司:勝つためには自分のことを考えて、なるべく脚力だったり、脚を削らないようにとかっていう部分で正直他の人のことを考えてる余裕はないんですけど、でもその中で脇本さんだったり、相手を倒すためにはどうしたらいいかっていうところで少し足を削られながらも、後ろを気にしたり、前の掛かり具合を気にしながらレース運びをしなきゃいけないレースでしたね。
大津:準決勝も快勝で無傷での決勝進出となりました。脚の感触としてはいかがだったんでしょうか。
郡司:状態としては、8月に落車があって不安を抱えながらの小田原記念だったんですけど、そこからちょっとフレームとかを変えてみて、今回3場所目だったんですけど、ちょっとずつ良くなっている所もありながら、もうちょっとだなっていう部分もありながら、ずっと迷いながらレースをしてたんですけど、今回の2日目にやっとなんか身体と自転車がしっくりきて、ちょっと踏む距離は短かったんですけど、これだったら3日目、4日目と長い距離も行けそうだなっていう手応えをかなり掴めたので、その中で準決勝を捲りで勝てたっていうのは大きかったです。
大津:心と体もマッチしてというような感覚ですか。
郡司:そうですね、自転車の面も不安なく、体もずっといい状態は続いてたので、かなり自信を持って決勝戦には臨めました。
大津:その決勝戦ですが、郡司選手、平原選手(平原康多選手・埼玉87期)、松浦選手(松浦悠士選手・広島98期)とレースの中で何でも出来る選手が揃いました。
郡司:いや、本当にみんな多分考えるようなことは同じだったと思うんです。
あとは僕が外枠っていうところもあったので、内枠の二人がかなり攻めやすいような組み立てになってしまうのかなっていうところで決勝戦は考えたレース運びをしました。
大津:最終日は台風の影響もありまして、かなりコンディションも良くはない中だったんですけれども、決勝戦を迎えるまでにレースを見ながら郡司さんの中でプランの変更などはあったんですか。
郡司:多少はありました。でも選手紹介でバンクを走った時に、先行して全然無理だっていう感じのバンクコンディションとは思わなかったので、これだったら先行してもいいところまで行けるなって感じました。台風云々というよりは、ああいう作戦っていうのは走る前からある程度自分の中では固まっていましたね。
大津:初手は後ろ攻めになって郡司さんからレースを動かしていったんですが、いつもより仕掛けが遅かったように見えたのですが振り返っていただけますか。
郡司:自分の中ではそこの切るタイミングだったり、切るスピードが一番の肝になってくるなと思ったので、ゆっくり切ってを出させてその上をもしかしたらカマされちゃうかもしれないとかって考えた時に、やっぱりああいう仕掛けの方が自分にチャンスあるんじゃないかなと思ってました。前へ出てからは、その時の自分の判断に任せたいなっていうところもあったので、前を切るタイミングやスピードだけを意識していました。
大津:先頭に立ってからは何度も後ろを振り返っていましたが何を確認されていたのですか。
郡司:前に出てからは自分のスピードや相手の動きを見て、ここからだったらゴール前まで勝負できるっていうようなところで掛けたかったので、踏み切れる位置からってのを確認する意味で後ろを見ていました。それでも行かれてしまうようであれば、前々に踏んでしっかり勝負圏のある位置にいたいと思っていたのでホームでは松浦も来ていましたけど自分の中では腹をくくって併せて先行するつもりではいました。
大津:掛かり具合としては、しっかり併せ切れるぞっていう感触はありましたか。
郡司:ある程度自分の中では余裕を持って走れましたし、バックに掛けてかなりスピードのノリも自分の中で踏み上がっていった感じもあったので、バックぐらいではもう少し我慢できるなというところの感覚はありましたね。
大津:最後はアクシデントもありましたが、決勝戦振り返ってはいかがですか。
郡司:アクシデントがあったので残念な面も大きいですけど決勝で南関でとか同県で3人並ぶっていうのはかなり心強くて、だからこそああいう思い切ったレースができたのかなって、本当にラインというものを大切にしていきたいなって思いました。
大津:こういう舞台で郡司さんは先行もあるぞ、と思わせるのは戦う相手にとって与える印象も変わってくるような気がいたします。
郡司:決勝戦もそうですけど、大きい舞台で先行するとなかなか優勝できなかったり、着が取れないっていうようなスピードレースになってきてるんですが、その中で気持ちを出したレースができたっていうのは今後に繋がってくるんじゃないかと思います。
大津:今年はグランプリの舞台が平塚というのも気合いが入るところじゃないですか。
郡司:やっぱりどこかでは、そういうところも意識してますし、現状少し苦しかったんですがその中で優勝できてかなりグランプリ近づけたっていうことは後半戦のレースを気持ち的には余裕を持って自信を持って臨めるかなと思います。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
郡司:おかげさまで優勝することができました。まだ残りGIも2つあるので、そこを優勝出来るようしっかり精進していきたいと思いますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
5月の日本選手権に続いて今年2度目、通算7度目のGI制覇 を成し遂げた福井の脇本雄太選手(福井94期)にお話を伺いました。
大津:オールスター競輪優勝おめでとうございます。
脇本:ありがとうございます。
大津:今年2度目のGIタイトル獲得となりました。
脇本:自分が4連勝したあたりぐらいから、徐々に完全優勝へのプレッシャーだったりとか、期待が高まっている中でのレースだったので、すごく緊張はしましたけど良かったなと思います。
大津:GIでの4連勝も凄いのですが、5連勝での完全優勝というのはよりハードルが高いように思うのですが。
脇本:特に僕は自力ですし、その調子の良し悪しですぐ結果に出てしまうので、その辺も含めてかなり難しい開催だったのかなと思いました。
大津:その中で今回の開催は台風で順延というアクシデントがありましたが、順延したことによって脇本さんの中でプラスに働いた部分や、ちょっと逆に嫌だったのかっていう部分は何かありましたか。
脇本:そうですね、唯一自分の中でプラスだなって思ったのが、シャイニングスター賞が終わった時点で順延というのがもう確定していたので、しっかりその次の日の休みのスケジュールを組むことができたのかなと思うのと、そこに向けてしっかり調整もできたのかなっていう風に思ったのが唯一のところです。
個人的には走りたかったというのが正直な話です。
大津:オールスター競輪の前にジャパントラックカップにも出場されました。参加を決めた理由はなんだったんでしょう。
脇本:そうですね。国内の競技に関しては、自分の日本の競輪のスタイルにある程度負担のないような形で出させてもらって、あくまでもその競技の競輪っていうのは、僕が今まで培ってきた中での経験となるところが多いので、走ることによって自分に何か得るものがあるのかなって 思ったので出場しました。
大津:(競技ではない)競輪にもプラスに働くということですね。
脇本:1日に何本も走りますし、その辺りの体力づくりとか、そののレースに対する気持ちの入れ方だったりとか、その辺はしっかり参考になりますね。
大津:そこからオールスター競輪を走るにあたって状態面はいかがでしたか。
脇本:オールスターはしっかり優勝したいなって気持ちの中でしっかりと調整はできました。
初日のドリームから気持ちを入れないといけないと思っていて、そのあたりもうまくいったのかなという気もします。
大津:ドリームレースは近畿勢は後ろからの組み立てになりました。
脇本:動くラインとしても、深谷君(深谷知広選手・静岡96期)の先行なのか、僕の先行なのかという形の二分戦だったので、どういう形を取るのが正解なのかなと思いながら走っていました。
大津:オッズパークLIVEでもオールスター競輪の様子を放送してたのですが、視聴者様からのコメントで「ワッキー後ろ攻め?」「ワッキー後ろからなんだ!」とビックリしている方も多かったです。
脇本:基本的には僕は後ろから攻めるタイプの人間なんですよ。
最近はやっぱりみんなけん制して僕が前を取らされるレースが多いので、そういう風に見えてしまうのかなというふうに思います。
大津:スタートを取りたくて取っているわけじゃないんですね。
脇本:本来が僕は後ろからカマしに行くスタイルなので、基本的にはやっぱり前受けから引く動作っていうのはいらないかって思ってます。
僕は初めから後ろ攻めでカマシにいくスタイルを取りたいんですけども、それをさせてくれないから僕が前を取って早めに下げる形が定番化してるというか。
大津:本来のスタイルで押し切った初日ですが、手応えはいかがでしたか。
脇本:やっぱり深谷君の突っ張りをどこまで警戒するかで、やっぱりその結果っていうのは全然違ったと思うんですけども、その警戒の中で自分がしっかり先頭に出て先行出来たっていうのは、凄く感覚としては良かったですね。
大津:レース後、脇本さんの踏み直しが凄かったと古性選手(古性優作選手・大阪100期)もコメントを残していました。
脇本:僕自身もあのジャンのところで一旦流して先行態勢を取るなんてけっこう久しぶりにやったので、そのあたりも感覚として忘れてなかったかなって思います。
大津:初日のレースが終わった時にオッズパークLIVEのコメントやSNSとかで、もうワッキーの優勝でいいんじゃないかみたいな反応がかなり出てました。
脇本:いやいやいや、そりゃダメですよ(笑)
大津:初日もそうですが、シャイニングスター賞でも強さが際立ったように感じます。
脇本:メンバー構成的にもウィナーズカップの決勝みたいな感じだったので、本当は後手を踏みたくないっていう気持ちだけだったのですが、ジャンのところで深谷君が前出た時点で、僕の中でラッキーっていうような感じでした。
ジャンのところで動きがなくて、あのままレースが運ばれていたら、僕自身もちょっと怪しかったのかなと思ってました。
大津:3走目は台風の影響でコンディションも結構悪かったように思えるんですが、この辺の対応っていうのはいかがですか。
脇本:雨は強かったんですけども、風はギリギリなかったので、その辺もちょっと救われたのかなって思います。
普段の練習も最近は雨降っててもパンクに取ったりとか、ロードに乗ったりとかしてるので、雨への対応は全く問題はないんですけども、雨と風が両方重なった時の練習っていうのは、さすがにやってないですね。
大津:脇本選手でしたら雨風も関係なく切り裂いて行きそうな気もするんですが。
脇本:みんなそういう風に思っていますけど、内心僕自身はそれもしっかり対応しないといけないってプレッシャーがありますね。
大津:どんなコンディションになっても、やっぱり脇本選手にかけられる期待っていうのはオッズとして表れますもんね。
脇本:その辺はどんな悪条件でも評価が変わらないって認識を持っているので、そこに出ているオッズを見てこうやっぱり数字が低いよなと思いながら走っています。
大津:決勝戦で並びに至るまでの経緯はどうだったんでしょうか。
脇本:寺崎君(寺崎浩平選手・福井117期)に一声かけにいったら、寺崎君は僕が言う前に「前で頑張らせてください」って言ってきたので番手につこうと思いました。
僕自身も初めてGIの決勝戦に乗った時も、このぐらいの熱い気持ちで先頭を走りたいって先輩方に言ったので、寺崎君の気持ちもしっかり受け止めて、僕自身も番手を固めるっていう認識をしていました。
大津:確かに脇本さんの時も後ろが村上義弘選手(京都73期)と市田さん(市田佳寿浩選手・福井76期)でしたもんね。
脇本:そうです、そうです。
大津:寺崎選手としても後ろが脇本さんで、更にその後ろがGP王者の古性さんですから本当に似たような感じですね。
脇本:多分気持ちの認識としては同じかなっていうように思いました。
大津:今節の寺崎選手の動きはどのように映りましたか。
脇本:かなり強気のレースをしつつも、しっかり勝ち上がっている印象はありましたし、特に3走目のナショナルチームの3分戦の中でもしっかり勝ち上がれているので、力はしっかりつけているなっていうのが印象ありました。
大津:寺崎選手としては初のGI決勝でしたが何か特別なアドバイスはされたのでしょうか。
脇本:アドバイスはしない方がいいって思ってましたので、実際に寺崎君にはアドバイスをしてないです。寺崎君の気持ちを僕が受け止めるだけなので。
どういうレースをしても僕自身をしっかり後輪だけ見ないといけないですし、寺崎君は僕たち2人を付けてどういうレースをするのかっていうのがお互いの心境みたいなのがありますし、そこはお互いを信頼してこういうレースをするって感じです。
大津:あえて何も言わないっていう選択をとられたっていうことなんですね。
脇本:僕自身もGIの決勝戦に上がった時は特に村上さんと市田さんと話もしてなかったですし、「しっかり前で頑張ります」としか言ってなかったです。
寺崎君には位置取りをどこから攻めるかっていうのだけ聞いて後はもう本当にそれに対して任せるみたいな感じですね。
大津:その近畿勢ですが前受けを選択しました。
脇本:寺崎君が前から攻めたいって要望だったので、それに対して古性君や僕が対応するって形でした。
大津:勝負所を振り返っていただけますか。
脇本:やっぱり松浦くん(松浦悠士選手・広島98期)の動きだったりとか、守澤さん(守澤太志選手・秋田96期)の動きだったりとか、やっぱり僕自身がすんなり番手を回ってしまってはいけないっていう心境がフルに働いてるなって印象はありました。
大津:決勝インタビューで松浦さんが「自力自在」ではなくて「自在」っていうコメントを残していらっしゃったんですけども、あの辺っていうのは脇本さんの中で考えたり感じたりする部分というのはありましたか。
脇本:いや、コメントに関しては特に意識はしてなかったんですけど、選手紹介の時に僕たちのラインの後ろにぴったりついていたので、策を考えているんだろうなぁくらいでした。なので選手紹介の段階から警戒はしていました。
大津:その中で松浦さんは分断を狙ってきましたね。
脇本:警戒はしていたんですが、外から攻めてくるのかなって意識が僕の中にあったんですね。新山君(新山響平選手・青森107期)の上昇に対して一緒に出て、僕のところに来るのかなっていうのはちょっと思ってました。内からじゃなくて、外から締め込みにくるのかなって思っていただけに「内っ!?」って思いました。
大津:来るなら外からって意識が強かったってことですね。
脇本:実際に寺崎君が突っ張る態勢を取った時に外を見たら松浦君がいなくて新山君しかいなかったので、しっかり付ききればって思ってたんですけども、誘導退避で内を見た瞬間に松浦君が上昇してることに気付かなくて、すごく不意を突かれた感じでした。
大津:そこからのご自身の中での気持ちの切り替えっていうのはどうでしたか。
脇本:引き切ってから自分がしっかり勝ちに行くための立ち回りをするっていうところに至るまでの時間がかかってしまったなっていう印象はやっぱりありますね。
大津:一番人気になってましたし勝たなきゃいけないっていう使命感も凄かったんじゃないですか。
脇本:やっぱりオッズを見ても、それだけ期待度は高いなと思いますし、その中で慣れない番手戦の中で勝たないといけないっていう中での戦いも、ちょっと僕の中でも動揺はやっぱりありました。
大津:オールスターっていうのは、脇本選手にとってはどんなシリーズになりましたでしょうか。
脇本:オリンピック終わって日本の競輪にしっかり戻ってきた中でのオールスターだったので、優勝はしたいっていう気持ちもありましたし、僕が初めてタイトルを取ったのもオールスターですから、そのあたりはやっぱり意識はしてました。
大津:以前オッズパークのインタビューでお答えいただいた時に競輪場の相性っていうよりも、大会の相性を重要視するって仰ってましたもんね。
脇本:僕は大会の相性が良ければ、バンクの相性も覆すことができるっていうような感覚があるんですよね。
もともと西武園自身は相性の良くないバンクなんですけど、オールスターっていう相性がいい大会だったので何とか優勝できたのかなと思いました。
大津:今年は連勝記録もそうですし、年間獲得賞金もお客様はかなり注目していると思います。
脇本:一番言われるのが3億円はもう固いなってことですが、それは言い過ぎです。
大津:本当に言い過ぎですか。
脇本:言い過ぎです(笑)
大津:脇本さんに常識という言葉は通用しない気がするのですが。
脇本:いや、もうそのプレッシャーだけが僕の中でのしかかっていくので大変です。
大津:僕たちは勝手にも期待してるけど、言われる側の重圧もちょっと考えてくれよって思いますもんね。
脇本:いやぁ、言うのは簡単なんですよ。まぁ、でもそういう立場にいさせてもらっているので、そこは僕自身の役目だと思ってますし応えられるように頑張りたいです。
大津:競輪界における「脇本雄太」はそういう存在ですもんね。
脇本:勝っていく中で、プレッシャーとの戦いにもなるのですが、それを跳ね除けて頑張りたいです。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
脇本:何とかオールスターは完全優勝をすることが出来て、連勝記録も打ち立てることができたんですけども、これもまだまだ満足せずに伸ばしていってグランプリに向けて、またしっかり頑張っていきたいなと思ってます。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
8月に西武園競輪場の『オールスター競輪』にて2日目にアルテミス賞レースが行われました。
ガールズケイリン総選挙2022にて上位に選ばれた選手たちによるレースを優勝した小林莉子選手(東京102期)にお話を伺いました。また今後の意気込みなども聞いておりますので、ぜひご覧ください。
山口:まずはアルテミス賞レース、優勝おめでとうございました。
小林:ありがとうございました。
山口:以前お話を聞かせてもらった時に「コレクションを勝てていない」という話題がありましたね。
小林:アルテミス賞レースの出場も今回で6回目だったので、素直に嬉しかったです。
山口:メンバーも強力でしたが想定はありましたか?
小林:走ってみて流れの中で戦うしかないかな、と思っていたので、「展開は早くなるかもな」くらいであとは特に想定はしていませんでした。
山口:尾方真生選手(福岡118期)の後ろにいましたが、残り2周からの仕掛けに乗っていかず、梅川風子選手(東京112期)の後ろへいきました。あのあたりの判断はどうでしたか?
小林:前を奥井迪さん(東京106期)がとっていたので、もしついていって踏みあいになった場合、自分が外に浮いてしまう可能性があると思いました。
もし踏みあいになったら梅川さんの捲りが一発あるだろうなと思って、瞬時に切り替えました。
山口:ドンピシャの判断だったんですね!
小林:そうですね。本当に良かったと思います。
山口:梅川選手が仕掛けていった時はいかがでしたか?
小林:踏み出していった時のスピードがかなり良かったので、追走して足をためられれば優勝はあるかもなと思いました。でも梅川さんがすごくかかっていたので、きつかったです。
山口:差し切っての優勝、素晴らしかったです。周りの反応はいかがでした?
小林:ゴールしてすぐにお客さんが「おめでとう」と言ってくれたり、名前を呼んでくれて嬉しかったです。
山口:アルテミス賞の前、7月の大宮から取材時も連続優勝中ですが、好調の要因は何かありますか?
小林:特に練習の感じがすごく良い!というのはないんです。でも流れがとても良いですね。
今年の初めは苦戦をしていたんですが、徐々に自分がやりたいこと、練習で課題にしていることをレースで出せてきている気がします。その達成感もあり、良い流れができているのかもしれません。
山口:言える範囲で構いません。やりたいこと、課題というのは何ですか?
小林:特に弱点と思っているのがダッシュのなさです。
後はレースの中でだと、良い位置が取れなかったときにどう対処するかです。「よくない位置からどうリカバリーをして1着に繋げるか」は今年課題にしていたことなので、それをうまく対処できて、結果に繋がっているのかなと思います。その気持ちの変化は大きいですね。
山口:良い流れができてきたんですね。
次にフレームについて伺いたいです。変えて結果が出ている選手もいると聞いていますが、小林選手はいかがですか?
小林:みんなフレームを乗り換えて結果が出ているので、乗ってみたい気持ちはあります。でも、自分の感覚として乗りこなすパワーがまだないのかなと思って、今は変えていません。
山口:小林選手のレースを拝見して、先行の後ろからより捲りに乗って追い込む方が得意なのかなという印象を受けました。その辺りはいかがでしょう?
小林:最近のガールズケイリンは、ガンガン逃げる選手よりもスピードを一気にあげてタイムを出す捲りを得意とする選手が増えています。
さっき話したレースの中の課題の一つに「短い距離の中で前をとらえられるか」というのもあります。その結果がレースで出始めて「これが勝ちパターンだな」と思ってからは、そっちの方が得意かもしれません。
山口:一瞬のスピードを磨きつつも、それ以外のパターンでどう勝つかというのが課題なんですね。
小林:そうですね。その辺りを重点的に取り組んでいます。
山口:大宮の決勝は、日野未来選手(奈良114期)の捲り追い込みを差しての優勝でした。まさに、のレースでしたね。
小林:あれは自分でも、差しているかわかりませんでした。でも良い感じで踏めた感覚はありましたね。優勝できてよかったです。
山口:逆に武雄は3日間「B」をつける、早めの捲りのレースでしたね。そちらはどんな思いだったんですか?
小林:しっかり自力を出せる時には出したいと思っています。それがうまく出た3日間でした。
山口:特に決勝は飛びつきからの捲りが素晴らしかったです。高木佑真選手(神奈川116期)のカマシに飛びつく時、高木選手を追走していた選手もいた中で、スッとスムースに切り替える動きがなめらかでしたね。
小林:内に包まれないことと、自分が踏めるタイミングで仕掛ける、という2つはあのレースの前に意識をしていたことでした。
飛びつくタイミングを逃していたら内に包まれてしまっていたので、一瞬の判断でしっかり外に踏めたのは良かったです。
山口:強引に並走することもなく取りきるのは技術なんでしょうか。
小林:予測して前に踏んでいると、結構飛びつけるなと感じています。仕掛けが見えてから踏むと、それについてきている選手もいるので並走になってしまうんですが、予測して踏んでおいて「仕掛けが来なかったら自分でいこう」という気持ちでいるのが良いのかなと思います。
山口:なるほど。好調さもインタビューの中からも伺えますが、今の一番の課題は何ですか?
小林:トップスピードが他の選手に比べてないので、タイムを出しての捲りを出せるようにトップスピードを上げていく走りをしたいです。
山口:次走が共同通信社杯(名古屋)内で行われる「ティアラカップ」ですね。
小林:新しいレースなので、優勝したいという気持ちも強いです。でもメンバーもみんな強く、タイムも出やすい名古屋のバンクなので、まずは位置取りをしっかりしてそこからの勝負かなと思っています。
山口:位置取りにこだわる選手も多くいそうですね。
小林:本当に、、、位置取りは厳しい選手ばかりです。流れの中で、初手からではなく勝負所で良い位置にいられるように、自分で動きながら取っていくしかないですね。
山口:名古屋のバンクの印象はいかがですか?
小林:最後に走ったのは雷でレースが中止になった時なんです。なので、レースがうんぬんより「怖かった」という印象ですね(苦笑)
山口:あの時!確かに、そうですね。でもミッドナイトではなく今回は昼間ですもんね!
小林:そうですね。まだ明るい時間帯なので、荒天にならないことを祈ります(笑)
(補足:そのミッドナイト競輪は2走目に雷で中止になりましたが、決勝は奥井選手の捲りを差して優勝しています!)
山口:賞金ランキングは取材時は6位ですが、今後に向けてはどうですか?
小林:もっと取りこぼしなく、年末のオッズパーク杯ガールズグランプリに繋げていくような走りをしないといけないと思っています。気を引き締めて今後も走ります。
山口:ガールズグランプリはもう意識していますか?
小林:もちろんのりたいです。でも考えすぎると硬くなってしまうので、考えないようにはしているんですが、やっぱり意識して賞金ランキングは見ちゃいますね。
山口:そうですよね。一戦一戦の積み上げですね。
小林:そうですね。
山口:ありがとうございます。では最後にオッズパーク会員の皆様へ今後の意気込みをお願いします。
小林:ティアラカップは新しい試みのレースなので、優勝目指して走ります。そしてグランプリにより近づけるように頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA