先日久留米競輪で行われたルーキーシリーズ2022プラスを見事制した室井蓮太朗選手(徳島121期)。父は、室井健一選手(徳島69期)そして叔父が室井竜二選手(徳島65期)という徳島競輪界のサラブレッドが、デビュー前からどんなことを感じ、そして今後どこを目指して突き進んでいくのか。21歳の本音に迫りました。
橋本:まずは、ルーキーシリーズ1着を取っての感想から教えてください。
室井:あのメンバーで勝てたのは嬉しいです!
橋本:みんながびっくりしたのは並びだったのですが、どういう経緯で決まったのでしょうか。
室井:元々誰かには付こうと決めていて、最初は東矢選手(東矢圭吾選手・熊本121期)に付こうと思っていたのですが、熊本勢が並ぶことになり、埼玉勢が別線でやると聞いたので、多聞(山口多聞選手・埼玉121期)に付こうと思い「後ろについていいか」と確認したら「付いてくれた方が良いです」と言ってくれたので付きました。
橋本:養成所時代から、山口選手と親交が深かったんですか?
室井:別に浅くもなく深くもなく、普通くらいですね(笑)
橋本:それでも2人は親友じゃないのかなというくらい、山口選手は思いきって行ってくれました。
室井:そうですね。作戦では「(山口選手が)僕もジャンのところから勝負したいです。」と言っていたので、あとは僕ができることがあればする、というそんな感じですね。
橋本:ゴール線では後ろを突き離しての1着でしたが、道中で勝利の確信はありましたか。
室井:今だからこそ言えるのですが、ジャン(打鐘)では優勝はできるなと思いました。山口選手に付いていくだけいけば、後ろもいっぱいだろうなと。
橋本:山口選手の強さであれば、捲ってくる選手もいないだろうなという感じだったのですね。
室井:そうですね。山口選手のスピードであれば、誰かが捲ってきたとしても、合わせられると思いました。なので今終わってみれば、ジャンで出切った時には勝負があったのかなと思いますね。
橋本:少し話が戻りますが、メンバーが出た時に誰かに付けようと思ったのは、 今後、室井選手自身がマークで勝負しよう、という思いが強いということですか。
室井:そうですね。選手として高い位置で長く生き残っていくことを考えた時に、自分は先行力があったり、すごい捲りが出るような選手ではないので、やっぱり人に付いていくスタイルで勝負したいと思っています。
橋本:その辺りはお父さんの影響もありますか。
室井:そうですね。小さい時から見ていたものが父のレースだったので、やっぱり追い込み選手のレースのシステムがわかりやすかったですね。
橋本:そういう意味ではお父さんもそうなのですが、徳島には小倉さん(小倉竜二選手・徳島77期)という偉大な男がいるじゃないですか。そのスタイルでのかっこよさを追求しようと思った時に,小倉選手のことはどういう風に見ていますか。
室井:小倉さんはあまりにも偉大過ぎますね(笑)でも、父とか小倉さんのようになりたいとは思うので、いいところを盗んでいきたいですね。練習中に後ろに続いて、乗り方を見ると、やっぱり追い込み選手と自力選手ではセッティングも含めて差があるので、まだまだ遠いですけど、少しずつ近づいていきたいと思いますね。
橋本:今、自分に足りないもの、ここをさらに強化したいなと思う部分を1つあげるとしたらどこですか。
室井:もう、それは1つしかないですね。圧倒的にダッシュ力が必要ですね。
橋本:仕事をしようと思っても、ある程度の脚力、ダッシュ力がないと難しいというのもありますもんね。
室井:そうですね。やっぱり前の選手のタイミングで行くので、それに付いていかないといけないですし、今の競輪はスピード競輪なので、持久力も必要なのですが、カマしてきた時に飛びつくダッシュ力も必要だなと感じています。
橋本:確かに、相手の動きに反応した上で、仕事はその次の話ですもんね。その為に具体的に、ダッシュ力をつけていく為のトレーニングには取り組んでいるのですか。
室井:そうですね。自転車での瞬発力もそうですし、筋トレでも、筋肉の伸び縮みを意識しながらやってます。
橋本:追い込みのスタイルでやっていくとなると、やはり自力と違って怪我のリスクも高いとは思いますが、その辺りについてはどういうふうに考えていますか。
室井:怪我はもうこの世界に入る時には覚悟していて、こういうスポーツなんだなと。
橋本:追い込みのスタイルでいくには、そのぐらいの覚悟がないとということですね。
室井:はい、スポーツに怪我はつきものなので。
橋本:ちなみにお父さんは何と言っていますか。
室井:お父さんは多分、反対だと思います。ハッキリ言われたわけではないんですが、そんな感じがします。
橋本:まだそれについては、具体的に会話をしてるというわけではないんですね。
室井:そうですね、1~2回くらいですね。
橋本:その時に反対というようなニュアンスを感じたということですか。
室井:そうですね(笑)
橋本:正面切って、それは反対だ、と言われたらどうしますか。
室井:それを言われたら逆に反発しますね。それならとことん逆にやってやろう、と。
橋本:そのくらいの負けん気がないとやはり勝負できないですもんね。
室井:そうですね、一番大事なところかなと。
橋本:「アスリート+勝負師」のような感じですね。今の時代にはすごく貴重な、ハートのある選手だと感じます。
室井:そうですね。ハートがなかったら何に対しても負けるので。
橋本:その点に関しては、養成所時代から、同期の中でも「負けないぞ」と思っていたのですか。
室井:そうですね、ハートは高校生ぐらいの時にもう鍛えられていましたね(笑)
橋本:高校時代に何があったんですか(笑)
室井:地元の高校野球に所属していて、練習が厳しかったんですよ。あと、先輩から理不尽なことをやらされたり言われたり、なかなかひどい目に遭いました(笑)
橋本:結構昔に、もうそういうものは終わったものだと思っていましたが今の時代もあるのですね
室井:ありましたね。なかなかエグかったっす(笑)
橋本:それに耐えてきたというのが、今の精神的な柱になっているということですね。
室井:アマチュアの時の練習や養成所は、高校3年間とは比べものにならないと思っていましたね(笑)
橋本:今、競輪界全体の流行りが、スピード、アスリートのような方向に行っている中で、流行りに乗っかるのではなくて、持ち味はこれだ、という風にデビューの段階から決めて、それを貫いていくところを楽しみにしています。
室井:ありがとうございます。
橋本:お父さん、小倉さんという名前は先ほどありましたが、将来具体的にこんな選手になりたい、というものはありますか。
室井:お父さんはタイトルとれてないので(笑)やはり小倉さんが徳島で唯一タイトルをとっているので、小倉さんのようになれるよう頑張りたいですね。
橋本:やはり目指すはGIのタイトルですね。
室井:そうですね。やっぱりかっこいいですからね。
橋本:周りの見る目も変わってくるでしょうね。ここまではイメージ通りにデビューから戦えてる感じはありますか。
室井:落車もあったのでイメージ通りではないですね。 やっぱりもっともっと自分が思うようなレースをできるように努力していきたいと思っていますね。
橋本:私生活の面でも色々と自由に使えるようなお金も増えてきたと思いますが、うまく息抜きもできてますか。
室井:そうですね、うまく息抜きもできているとは思います。
橋本:練習の合間に行う1番のストレス解消法があれば教えてください。
室井:最近は同期の徳島の中野光太郎君(徳島・121期)と117期の久田君(久田裕也選手・徳島117期)と3人でご飯やお風呂に行ったり、久田君の家でゲームしたりすることが多いですね。
橋本:少しヤンチャ坊主の3人というイメージはありますね。
室井:一番真面目ではないのは久田君ですね(笑)僕が一番真面目です(笑)
橋本:年齢的にはどうなんですか。
室井:自分は21歳で、2人が1歳上の22歳ですね。
橋本:20代前半の1個上っていうのは結構大きいですか。
室井:徳島支部も結構緩い感じですし、あまり変わらないですね。
橋本:小倉さんもそうだと思いますが、徳島の選手は、厳しく言うような選手がいなくて環境は良さそうですね。
室井:はい、良いと思います。
橋本:今後、まずは怪我にも気を付けて、あとは反対のニュアンスを醸し出しているお父さんを納得させないといけないですね。
室井:そうですね。 やはり結果を出さないと納得してくれないと思うので。
橋本:今回、室井選手には芯が強そうな印象を受けたので、今後のレースが楽しみです、
室井:本当ですか。ありがとうございます。
橋本:これは1ファンとしてなんですけども、ハートの強さを持っている選手は、車券買いたくなりますね。良い意味で、諦めが悪い感じがするので、これからも車券を買いたくなるような選手になってください。
室井:頑張ってなります!
橋本:では、最後になりましたが、これからの目標も含めて、オッズパークコラムを読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。
室井:1日も早く上の舞台で戦っていける選手になれるように頑張るので、これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社