緒方浩一が2年ぶりに優勝
緒方浩一が20線の最内枠という好位置から先制ダッシュ。長田恭徳はみるみる離され、雨の連対率が低い人見剛志は1周目で最後方7番手まで後退してしまった。
春本綾斗も雨は得意な方ではなく、田中崇太が引き離して独走態勢。しかし終盤にペースが下がり、良走路の準決勝戦ゴール寸前に角南一如に差された時と同じようにこの決勝戦でも最後の直線で緒方に内から伸びられて勝利を逃がした。
その角南は道中はイン走る岡部聡に対して大外捲りで応戦し、田中崇に迫る3着まで追い上げた。
文/鈴木
黒川京介が新時代の扉を開くか
キャリアの浅い頃からグレード戦線に参入し、2019年には『SGオールスター』にデビューから丸2年経たずして優出、山陽G1『スピード王決定戦』でグレード初優勝するなど非凡な才能を表していた黒川京介。それでも現在の躍進へとつながるきっかけの1つは、2023年4月に浜松デイレースで開催された『G2ウィナーズカップ』を5戦5勝の完全Vで制したことではなかろうか。この開催までの黒川は、2022年末の『スーパースター シリーズ戦』を最後に3か月間、優出できないでいた。それが浜松V後は年末までの7か月間に15度も優出。暮れには自身2度目の『SGスーパースター王座決定戦』進出も果たした。
平成後期から令和の今に至るまで、鈴木圭一郎と青山周平が全国ランキングトップのS1を交互に奪い合う『2強』の状態が続いている。この状況に黒川がクサビを打ち込み、第3の男として名乗りを挙げられるか。今大会も黒川が再び2強をくだして優勝するようなら、次に3名が集結する『スーパースター王座トライアル』の結果次第では『3強』時代が到来する未来まで見えてくる。
地元浜松のエースにして今期S1の鈴木圭は、今年は浜松10節に出場して全て優出。決勝戦の着順は1着が6度、2着が3度、残る1度は2月に4着と、ほぼ完璧に近い。『G2若獅子杯争奪戦』と『SG日本選手権』で優出を逸するまさかの流れから臨んだ前節の山陽デイレース『G2オートレースメモリアル』は、初日~準決勝4連勝と勢いを取り戻して準優勝。
本大会は『秋のスピード王決定戦』を含めて過去4度制覇。第60回から第62回まで3連覇し、今回は今年1月の第65回からの2連覇をめざす。
今年9月以降の青山周はG1を2度、G2を1度優勝し、SG準優勝も1度。9月から10月にかけて16連勝し、今大会を迎える時点で鈴木圭に大きく差をつけて今年の獲得賞金トップを快走している。この大会を終えた数日後には40代となるが、むしろ走りは30代に入ってから今に至るまで進化し続けていて、スピードもここ数年の方が上がっている印象だ。浜松は今年5月以来ちょうど半年ぶりとなるが、その開催は1・1・2・1・2着とオール連対で準優勝している。
SG日本選手権の2日目、前述した青山周の連勝をストップさせたのが鈴木宏和。8月SG『オートレースグランプリ』決勝戦では1枠青山周・3枠鈴木圭の外5枠からトップスタート。このレースは1周回で青山周に抜かれたが、同じく0メートルオープン戦で実施された選手権2日目の対決は、またも5枠からダッシュを放つと、4枠から2番手発進し追撃してきた青山周をまるまる6周回ブロックして先頭ゴール。夏の経験が秋の収穫、成長につながったと捉えたい。その日本選手権は決勝戦まで進んで4着。次節に臨んだ今月18日~21日の浜松デイレース一般開催は3日目の準決勝戦が雨に見舞われて大敗したが、他の3走はいずれも快勝している。
今年度の浜松グレード開催は『G1ゴールデンレース』『G2浜松記念曳馬野賞』ともに優出は果たしながら優勝には手が届かなかった。初のタイトルを、ぜひとも地元で。掛ける想いは人一倍強いはず。
佐藤摩弥も先週の浜松デイレースに出走し、鈴木宏と同様に良走路3戦全勝。前回のスピード王決定戦は決勝まで勝ち上がり、有吉辰也や佐藤貴也に先着しての3着と活躍を見せた。昨年の秋に浜松デイレースで開催されたG1プレミアムカップとSG日本選手権、今年6月のG2曳馬野賞にも優出しており、浜松走路との相性はかなり良いと言えそうだ。
第57代のスピード王でもある金子大輔が切れ味を増してきている。今年の浜松は6月にアーリーレース2節・7日間を無敗で駆け抜けて完全Vの2連発。そして再開なった先週のデイレースは岩科鮮太に振り切られたが準優勝。その決勝戦の2周回、3コーナーから4コーナーにかけて永井大介と斎藤正悟へ対して放った長距離の突っ込みが実に鋭かった。
有吉辰也は今年3節、荒尾聡は今年2節、浜松に参戦して全ての節に優出。中村杏亮は今年1月の浜松デイレース3日制オール2着で準優勝。吉原恭佑は今年お正月の浜松でいきなりV。通算して今年4節に出場して3節に優出と、走路との相性がいい1車。松尾啓史は3月に3日制1節のみ出場して1着・1着・優勝戦3着。2023年も2022年も11月に浜松で優出しており、近年の浜松では総体的に見て春夏よりも秋冬の方が着取りが良い。
シリーズの惑星となりうる若手も何名かピックアップしたい。
地元浜松のホープ栗原佳祐は9月下旬の飯塚ミッドナイトから高い機力をずっとキープしている。今節を迎えるまでの18走で着外たったの2度と素晴らしい安定感で、山陽デイ若獅子杯は準決勝戦まで進んだ。浅倉樹良は若獅子杯は予選モレとなったが、続く伊勢崎ナイターから上昇気流に乗った印象だ。この両者ともごく最近、1級車に対して内から攻撃を仕掛けるシーンが見られて、やはりポテンシャルが高い。
早津康介は先月までは目立った動きはなかったが、最重ハンで戦ったSG日本選手権では持ち前の先行力を発揮して、節の後半は3着・3着・2着と好走。そして次節、先週の浜松デイレースでも良走路3戦はオール3着以内に入った。2日目は今年4月以来、その半年間の夜開催でも出なかった試走タイム2秒台を計時して、本走も3.383秒と優秀な時計で快勝。10メートル前の選手がしっかりスタートを切っても割り込んでいける強烈なダッシュ力を武器に、今節も活躍を見込める1車だ。
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主な出場予定選手
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鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
金子 大輔〔浜松 S-3(29期)〕
佐藤 貴也〔浜松 S-7(29期)〕
鈴木 宏和〔浜松 S-15(32期)〕
伊藤 信夫〔浜松 S-19(24期)〕
木村 武之〔浜松 S-22(26期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-2(31期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-4(25期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-11(31期)〕
松尾 啓史〔山陽 S-13(26期)〕
永井 大介〔川口 S-18(25期)〕
文/鈴木
佐藤励が飯塚ミッドナイト2節連続の完全V
ズバ抜けて速い試走タイムを計時した佐藤励が冷静沈着に車を押し進めて5周回1コーナーで首位に立ち、今月13日の飯塚ミッドナイトから連続となる完全Vを成し遂げた。
0ハン2車は内枠の中村颯斗がスタート先行。福岡鷹は節間のコメントからエンジン状態に自信を持てていた様子だが、2級車の特性としてスタート力や道中のパワーが1級車に劣るぶん中村颯をマークし続けながら交わすには至らなかった。佐藤励を除く川口3名は離れた4番手以下に置かれて優勝争いはできなかった。