石川ダービーを勝ったショウガタップリは、レース後、「しばらく地元では使えるような重賞がない」と話していた高橋俊之調教師だったが、ほぼ勝負付の済んでいる相手のここを使ってきた。地元の3歳牝馬同士なら負けられない。
ノトキリシマ賞でショウガタップリに馬体を併せて負い比べを演じたのがスカイピース。結局1馬身半差をつけられたが、直線を向いたあたりではひょっとしてという場面もあった。石川ダービーはスローな逃げに持ち込んだが、ぴたりとマークされて苦しくなった。吉原騎手に戻って距離短縮の1400メートルなら再び見せ場はあるかもしれない。
サザンフルーヴは、ノトキリシマ賞は4着だったが、その後3連勝。1500メートルでのタイムも詰めており、確実に力をつけた。
石川ダービーで5番人気ながら2着はダイヤモンドライン。好位の内を追走し、3コーナー手前で中島龍也騎手は思い切って内から仕掛けるという判断がうまくいった。ここまで12戦して3着以内をはずしたのは2回だけ。牝馬同士ならここも崩れることはなさそう。
浦和から転入初戦の1700メートル戦を勝ったクリスタルミリオンだが、浦和では1400メートルで好成績だっただけに、距離短縮で見せ場が期待できそう。
◎11ショウガタップリ
○1スカイピース
▲4サザンフルーヴ
△6ダイヤモンドライン
△12クリスタルミリオン
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兵庫には地方馬同士の古馬1400mの重賞が年間に2レースしかなく、以前からその距離を求めて東海地区での活躍が目立っている。今回も4頭が遠征してきた兵庫勢が強力だ。
内枠に固まったパールプレミア、ビナサクセス、イナズマテーラーは、いずれも近走ほとんど連対をはずさずという成績で、それぞれ勝ったり負けたりという3頭。
パールプレミアは、12月のオッズパーク2022杯でビナサクセスの2着に負けたが、前半かなり折り合いを欠く場面があり、そのうしろでスムーズに追走できたビナサクセスにクビ差とらえられただけ。続く姫路の兵庫ウインターカップでは、南関東からの遠征馬を相手に逃げ切った。佐賀に遠征した佐賀ヴィーナスカップは南関東からの遠征馬の2着。前走ではイナズマテーラーの2着だったが、それは1230メートル戦。遠征での1400メートルならパールプレミアが最上位とみる。
イナズマテーラーは中央1勝クラスから転入して6戦5勝、2着1回。前走でパールプレミアを負かしているが、ベストはここ3連勝の1230メートルと思われる。
ビナサクセスも中央未勝利から転入後、園田・姫路で17戦11勝と着実にクラスを上げてきた。唯一3着以内を外したのが園田チャレンジカップで差のある7着ということでは、重賞のメンバーに入ってどうか。
地元勢では南関東B級から転入して4戦3勝、飛山濃水杯でも3着と好走しているストームドッグが兵庫勢に割って入ることができるかどうか。
兵庫のもう1頭、バーニングペスカは中央3勝クラスから転入して姫路1500メートル、園田1700メートルで4戦1勝。中央時代はほとんど1400メートル以下を使われていたように、今回は1400メートルへの距離短縮ならチャンスはあるかもしれない。
重賞では掲示板もちょっと遠かったナリノクリスティーだが、今年2戦目以降6戦して2勝、3着4回と調子を上げてきた。重賞でも上位争いの可能性。
◎1パールプレミア
○3イナズマテーラー
▲2ビナサクセス
△6ストームドッグ
△8バーニングペスカ
△7ナリノクリスティー
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2歳シーズンに二冠と翔雲賞、3歳でも二冠を制したキングフェスタが実績的には抜けている。前哨戦ともいえるライラック賞では接戦となった2着争いを尻目にトップハンデながら完勝。昨年10月の秋雲特別で5kgハンデ差のヘッチャラに先着されて以降、同世代には先着を許していないことからも中心は外せない。
ヘッチャラは2、3歳シーズンの重賞で何度も2着3着がありながら、なかなか勝利に至らなかったが、キングフェスタ不在となったポプラ賞を4歳ながらトップハンデで勝ちきった。さらに前走オープン混合のシルバーカップでも古馬一線級相手に4着と好走。ここのきての充実ぶりは評価できるのだが、ライラック賞で接戦の3着だったときが10番枠で、今度は1番枠という不運。キングフェスタと同じトップハンデで果たしでどこまで迫れるか。
ツガルノヒロイモノは、ヘッチャラが勝ったポプラ賞では前4頭からかなり離れた5番手から追い込み、差のない4着に食い込んだ。さらに4歳の特別戦、すずらん賞、ライラック賞でともにヘッチャラに先着。そして前走ゴールドトロフィーを勝利と、この馬もここにきての充実ぶりを感じさせる1頭。ただ10kg差でキングフェスタを負かすまではどうか。
クリスタルコルドは近走さっぱりだが、昨年3歳時は、ばんえい大賞典、はまなす賞を連勝。ばんえい菊花賞でも3着に好走した。世代限定重賞では、近走不振でも重賞実績馬が好走するパターンがよくある。
ヤマカツエースもキングフェスタと同じトップハンデでどうかだが、ヤングチャンピオンシップを制したほか、重賞2着1回、3着2回という実績はあなどれない。
ライラック賞で2着争い接戦の4着だったホクセイウンカイ、重賞2着3回のトワイチロらも連下でおさえておきたい。
◎7キングフェスタ
○1ヘッチャラ
▲6ツガルノヒロイモノ
△4クリスタルコルド
△2ヤマカツエース
△8ホクセイウンカイ
△3トワイチロ
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岩手の地元同士なら短距離では敵なしのキラットダイヤ。水沢850メートルが舞台の早池峰スーパースプリントでは危なげなく3連覇達成。岩手の1200メートル以下で負けたのはJBCスプリントだけ。そのときも1分10秒5というタイムをマークして能力は発揮した。昨年のこのレースでは2着を10馬身ちぎり、良馬場1分10秒1という好タイム。岩鷲賞では3年前の覇者プレシャスエースが1分10秒3で走っているがそのときは不良馬場。それ以前にこのレースを3回制したラブバレットは稍重〜不良で3度ともまったく同じ1分10秒0で走っているが、ご存知のとおりラブバレットはダートグレードで上位を争った実力。今年それほどのタイムが出るかはわからないが、キラットダイヤはこのレースでも3連覇濃厚といえそう。
相手筆頭は同厩舎・同馬主のディアリッキー。盛岡1200メートル以下ではここまで3戦3勝。昨年のスプリント特別、ヴィーナススプリント(ともに盛岡1200メートル)の勝ちタイムは1分13秒台と、キラットダイヤとの比較ではやや物足りないが、前走盛岡1000メートルで59秒1(不良)なら、キラットダイヤ以外のメンバーならスピード上位。
アップテンペストは、前走早池峰スーパースプリントがキラットダイヤに6馬身離されたものの2着。昨年盛岡1200メートルでは、ヴィーナススプリントが勝ったディアリッキーにコンマ6秒差の4着、11月8日のスプリント特別が1分12秒5というタイムで2着。今回も2番手を争う一角。
ハナレイはマイル前後を中心に使われてきたが、ここ2戦は盛岡1200メートル、水沢1300メートルのスプリント特別で1、2着と好走。ただタイム的には平凡で、連下争いまで。
やや格下ではあるものの盛岡1200メートルでは7戦して4勝、2着2回、3着1回というツルマルハナコ、距離短縮がどうかだが今年5戦4連対と好調のオンラインボスらも上位入着を狙えそう。
◎12キラットダイヤ
○7ディアリッキー
▲10アップテンペスト
△2ハナレイ
△5ツルマルハナコ
△6オンラインボス
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『全日本的なダート競走の体系整備』によって、今年で最後になる地方競馬のダービーシリーズには、全8レースのうち4つの"ダービー"に足を運ぶことができた。東海ダービー、東京ダービー、北海優駿、そして6月28日の石川ダービー。
コロナで社会生活がさまざまに制限された時期には競馬場に行くことも難しくなり、競馬場によっては取材も制限された。石川ダービーには、コロナによる無観客開催が始まった2020年はさすがに行くことができなかったが、2021年からは3年連続で現地取材することができた。
2021年5月25日、第5回石川ダービー。コロナの蔓延がはじまってから1年とちょっと。まだまだコロナは拡大していた時期で、往復の北陸新幹線はガラガラ。そして多くの競馬場がそうだったように、ファンの入場は再開していたが、かなり人数を制限してのものだった。「密を避ける」ということが呪文のように言われ、ひとりおきに座るようにスタンドのベンチに貼られたバツ印のテープは今も残されたままだ。
5月下旬といえども暑いほどの陽気だったが、石川ダービーのパドックでポツリポツリと雨が降り出した。返し馬をおえたあたりで、怪談などでよく言われる「辺り一変にわかにかき曇り...」という状況になり、吹く風が急に冷たくなった。そしてゲートインのあたりでは突然の横殴りの雨。まさにゲリラ。直線、アイバンホー、ビルボードクィーンという人気を集めた2頭が、3番手以下を離しての一騎打ち。しかし小柄なビルボードクィーンは強風に煽られ大きく外によれ、アイバンホーがクビ差で勝利。北日本新聞杯からの二冠制覇となった。
ときは緊急事態宣言のさなか。駅の回転寿司は19時閉店。その15分ほど前に滑り込み、軽く寿司をつまんで新幹線で帰宅。飲食店が時短営業だったのも、ずいぶん前のことのように感じる。
2022年6月21日、第6回石川ダービー。コロナはまだ収まってなかったものの、新幹線にも飲食店にも少しずつ客が戻ってきた。
その年の石川ダービーは、単勝1.3倍という断然人気に支持された牝馬のスーパーバンタムが3コーナーで先頭に立って後続を寄せ付けず、2着に3馬身差をつける完勝。スーパーバンタムはその後、園田に遠征して西日本ダービーも制する活躍を見せた。
それにしても競馬場にお客さんが入るようになったとはいえ、当時まだ制限はされていて、場内売りがほとんどという地方競馬の専門紙はよく生き残ったものと思う。しかしながらコロナ前と同じというわけにはいかず、金沢ではコロナの無観客開催が始まった2020年3月、それまであった3紙、『カナザワ』『キンキ』『ホープ』が合理化を目的として新会社を設立し、新聞制作が一本化された。また3紙とは独立して発行していていた『ホクリク』は2022年末で残念ながら休刊となった。
コロナは存在し続けるものの、それによる制限がほとんどなくなった今年の石川ダービー。金沢へと向かう北陸新幹線は、平日の昼頃という時刻にもかかわらずほぼ満席。コロナ制限の期間中はほとんど見ることのなかった、外国人観光客もちらほら。金沢駅の改札を出ると外国人で溢れていた。が、そんな外国人観光客とは無縁の無料送迎バスで金沢競馬場へ。
今回は、石川ダービーの取材以外にもうひとつ、どうしても叶えたい目的があった。それは、金沢競馬場内のあるものを食べること。
地方競馬は、コロナの無観客開催や人数を制限していた時期に、閉店してしまった食堂や売店がいくつもある。それは、昭和の時代に競馬場に入ったお店の方々が高齢となり、後継者もいないところにたまたまコロナ禍がきたというタイミングも少なからずあったと思われる。しかしながら、徐々にお客さんが戻ってきているタイミングで、若い人が空き店舗で新たに始めたお店もある。
金沢競馬場の『馬笑屋(ばしょうや)』さんもそのひとつ。そこで「店主のおすすめ!」と書かれているジャンボチキンフライと、タルタルチキンフライ丼が、盛岡競馬場のジャンボ焼鳥のように、金沢競馬場の名物になるようにがんばっているらしいのだ。
そのジャンボチキンフライがこれ。なんとこれで300円! なのだが、じつはこれ、昨年10月の白山大賞典のときに食べたもの。次は、タルタルチキンフライ丼と思っていたのだが、しかし。いまだありつけていない。今回も、競馬場に到着したのが午後3時すぎという時刻では、チキンフライは最後の1個。それも、1串ではなく1ピース。すでにご飯もなくなってしまったと。
というわけで目標のひとつは達成できず。石川ダービーは、断然人気となったショウガタップリが危なげなく勝ってデビューから10連勝。吉原寛人騎手は今年7回目となった石川ダービーで4勝目とした。
さらに、吉原騎手は今年のダービーシリーズでは全8戦のうち5戦に騎乗し、高知のユメノホノオに続いて2勝目。コロナによる制限中は、騎手にとっても所属場以外での騎乗がかなり制限されていた。吉原騎手を全国の競馬場であたり前のように見るようになったことでも、3年にも及んだコロナの制限から開放され、日常が戻ってきたことを思わせた。