松尾康司 1958年青森県出身。「テシオ」編集長 。思い出の馬は伝説の名馬トウケイニセイ。横川典視 1969年高知県出身。『いわて競馬マガジン テシオ』編集記者として活動中。東北の馬産地との繋がりも深い。
さあ!いよいよ来週は南部杯。みちのくレース岩手競馬唯一の(に、今年からなってしまいました)GI競走を目前にして、気分はいやがおうにも盛り上がって参ります!!
と、その前に。今年の南部杯ポスターには、南部家の家紋である『向い鶴』が描かれていますね。この紋、よくよく見ると向かって左の鶴は嘴が閉じているのに対し、右は開いているのにお気づきでしたでしょうか?私はこれまで全く気が付きませんでしたが、これはいわゆる“阿吽”を表しているのだそうです。ということはこれがもし両方閉じていたら、鶴が対になっているデザインの意味が半減してしまいますね。ところがそう思って観察すると、口を閉じた鶴が描かれている場面にもたまに出会います。みなさんも向い鶴を見かけたら、その真偽を確認してみて下さい。
そもそもなぜ、南部家は鶴なのか?一説には室町時代に南部一族が秋田を攻めた際、二羽の鶴が陣中に飛来し、その後、戦に勝利したというエピソードが伝えられています。これには伏線があって、先陣を担った南部光経が戦勝祈願に家臣を出羽の霊場・月山と湯殿山へ使わしたところ、ほどなく夢の中で月山から二羽の鶴が飛んで来るのを見たのだそうです。その鶴が現実に戦場に現れ、一躍勇気づけられたのだとか。
またそのときの夢には続きがあり、9つの星が天空から落ちてきてそれを懐に入れたのだそうです。いかにも縁起の良さそうなシーンですが、この「9つの星」は秋田9万石と、陰陽道などで用いられる「九曜」をかけていると思われます。そしてこの星は、家紋の鶴の胸にもしっかりと輝いているんですね。これもワタクシ初めて知りました。
(文/写真・佐藤到)