フリーランスで仕事をしている者にとって、常につきまとう恐ろしい問題があります。それは仕事道具が壊れること。仕事道具というと、流しの板前なら包丁、ゴルゴ13ならライフル、タレントやアナウンサーなら身体そのものということになりますが、我々カメラマンはもちろんカメラをはじめとする撮影機材一式となります。
本来、フリーの人間は道具の故障に備えて、バックアップ用の機材と修理費用の蓄えを常に準備しているべきなのですが、私のような生活するのでやっとやっとの零細カメラマンはそこまでの余裕もなく、頼むから壊れないでくれよと祈りながら仕事を続けることになります。ところが相手がキカイである以上、その日が突然やってくるのを避けることはできません。ましてや雨や砂埃という相当に厳しい環境で働かせているのですから…
昨年暮れ、このブログでレンズ故障の話を書きました。あれから9ヶ月。今度はカメラボディ本体が逝ってしまいました。その症状は撮影した画像に、まるで格子の向こうを写したように無数の黒い縦線が入るというもの。競走馬を写せば、写真判定のスリット写真かと思ってしまいます。私以上にカメラに詳しいよこてん氏も見たことがないという奇妙な状態ですが、画像処理のコンピューターが一定の法則で計算間違い(?)をしていると考えれば、デジタルカメラでは有り得そうなトラブルです。
ところで、私はこのカメラを既に問題のある状態で使っていまして、それはシャッター関係の故障でした。こちらは高速でシャッターを切ると、画面の一部が黒く何も写らなくなるというものでしたが、症状の出るシャッタースピードが4000分の1秒以上という、晴天の競馬場でも使わない速度だったので、気にせず放置していました。
さて、今回の故障でキヤノンのサービスセンターにカメラを送った際、私も慌てていたのかシャッターの問題の方は伝えるのを忘れて預けてしまったのですが、しかしキヤノンの修理職人さんはさすがにそれを見逃しませんでした。結果、シャッターユニットとコンピューター、加えてレンズマウントやフロントパネルまで交換することになり、ほとんどオーバーホール級の重修理。そして先ほど、電話で修理見積りの連絡が来ました。
87,000円…
う〜ん、死にそう…
びっくりするような金額ですが、それでもプロ仕様デジタル一眼レフカメラは元の値段がじゅうぶんに高いので、「新しいの買った方が」とはなりません。予備の機材も十分ではないので、修理するより他ないんですよね。
考えてみると、キシンやテンメイ(馬じゃないほうですよ)のような超有名カメラマンも我々も、カメラは各メーカーの上位モデルとなりほぼ同じクラスの物を使っている訳です。しかもあちらは壊れる前にどんどん新しいのに買い換えるのでしょうね。いや、買い換えるどころか、メーカーの人が「先生!これ使って下さい」と新製品を持ってくるのか…
底辺の者ほど苦しいという現代社会の構図は、ここでも当てはまるのですね。。。。
(文/写真・佐藤到)