重賞に格上げされ北海道との交流となってから過去8回の勝ち馬はすべて北海道。今年も北海道から遠征してきた4頭は強力だ。
スティールグレートは、デビュー2戦目のアタックチャレンジを圧勝したあとの4戦はすべて門別の重賞で、世代のトップクラスと戦ってきた。1200メートルの栄冠賞が惜しくも2着で、その後の中距離3戦でも勝ち馬からは1.5秒差以内で、それほど大きくは離されていない。門別には1400メートルというコース設定がないが、栄冠賞で2着ならここも対応できると見る。
スーパービンゴは9月とデビューが遅かったが、新馬戦で大差の圧勝。その後は2歳の条件戦5着、エーデルワイス賞JpnIII・10着だが、ともに1200メートルで1分14秒台は、重賞でも上位を争えるレベル。ホッコータルマエの初年度産駒では、27日の名古屋・ゴールドウィング賞でダイセンハッピーが産駒の重賞初制覇を果たしたが、それに続く可能性はある。村上忍騎手は、このレース北海道所属馬で過去3勝を挙げている。
エルヴァスはデビューからずっと1000メートル戦を使われてきたが、初めての1500メートル戦で2勝目を挙げた。距離適性面でもここは勝負になりそう。
グランフォロミーは、デビュー3戦目のアタックチャレンジを勝ち、前走1500メートルの2歳オープンで勝ち馬から0秒4差の4着と好走。林和弘調教師はこのレース過去8回で4勝を挙げており、地元の鈴木祐騎手とのコンビでは一昨年、ヤマショウブラックで勝利。注目の存在だ。
と、ここまで4頭はすべて北海道勢。地元勢では、ダートで3戦2勝、2着1回、芝の若鮎賞でもアタマ差2着と好走したゴールデンヒーラー、盛岡1400メートルのビギナーズカップで3着だったファイントリックが上位に食い込めるかどうか。
◎5スティールグレート
○2スーパービンゴ
▲3エルヴァス
△9グランフォロミー
△4ゴールデンヒーラー
△1ファイントリック
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3歳だがまだ底を見せていないユウキラフェールに期待する。レース経験はそれほど多くはないが、2走前には今回と同じ1700メートルの園田オータムトロフィーで2着。続く前走、古馬B1の丹波焼特別は1400メートルだが、3コーナーからまくって出て直線余裕で抜け出した。今回は牝馬同士で、A2特別でようやく勝ち負けというメンバー。1700メートルの距離をこなし、B1で楽勝という内容なら十分に勝利を狙える。
距離経験でいえばエイシンテースティに分がありそう。ここ5戦は1700メートル戦を使われ、兵庫サマークイーン賞こそ11着だったが、ほか4戦は2勝して3、4着が各1回。前走は1番枠からハナをとると、直線では後続を寄せ付けないままの完勝。A2特別で安定して上位争いなら能力上位。
佐賀から遠征のスーパージンガは1年以上勝ち星から遠ざかり、連戦連勝だった3歳時を思えばやや影が薄くなってしまった。ただ今年門別に一時的に移籍して3戦し、1800メートルのA1特別で4頭立てとはいえ2着、1600メートルのヒダカソウカップで4着という好走はあった。距離はむしろ中距離以上のほうが向いているだけに、昨年の佐賀三冠馬の実力を見せたいところ。
カリブメーカー、パリスハート、マコトパパヴェロらもそれぞれ近走、園田のA2特別かB1特別を勝っていて、能力的には差がない。ただ、いずれも実績は1400メートルかそれ以下。距離を克服できるかどうか。
◎1ユウキラフェール
○12エイシンテースティ
▲8スーパージンガ
△5カリブメーカー
△11パリスハート
△2マコトパパヴェロ
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大井からダノンフェイスが遠征。大井から、といっても中央オープンからの移籍初戦。今年1月にオープンのすばるステークスを勝って、5月にも欅Sで勝ち馬から0秒3差の5着。そのレベルの馬が、1着賞金500万円の地方重賞に出走するというのはちょっと反則的にも思える。今回は3カ月半ぶりの実戦となるが、1400メートルを中心に使われており、その能力の8割程度でも維持しているのであれば、このメンバーでは相手にならないだろう。
兵庫のナリタミニスターは、重賞2勝を含め1400メートルで5連勝。前走はまさかの4着に敗れてしまったが、大外枠でスタートで負けした上に、水の浮く不良馬場のなか、単騎ハイペースで逃げた中央から移籍初戦の馬を追いかけて最後は一杯になってしまった。いわば度外視できる一戦。ダノンフェイスは1400メートルばかりを使われてきたとはいえ、コーナーを4つ回る小回りコースは今回が初めてで、そこに付け入るスキはあるかもしれない。
クインズプルートは、8月の笠松・くろゆり賞圧勝に続いて北海道からの遠征。◎○はそのときのメンバーよりも強力で、地方では初めての1400メートルもどうか。
ウラガーノは、中央2勝クラスから兵庫を経由して笠松に移籍。秋桜賞2着、新設のベイスプリント勝利と、名古屋1400メートルで2戦とも結果を残したが、今回はいかにも相手が強い。
ポルタディソーニ、メモリージルバという重賞常連組も、このメンバーに入るとどこまでやれるか。
◎2ダノンフェイス
○4ナリタミニスター
▲1クインズプルート
△7ウラガーノ
△11ポルタディソーニ
△5メモリージルバ
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かなりかなり日にちが経ってしまったが、10月4日に行われたダービーグランプリは、地元岩手のフレッチャビアンカが、1番人気の浦和・ティーズダンクに4馬身差をつけての快勝となった。
単騎で逃げた地元のグランコージーが直線でも先頭で見せ場をつくったが、4コーナーを回るところでまだ3馬身ほど差があった2番手で並んだ3頭の追い比べから突き抜けたのがフレッチャビアンカだった。ラチ沿ぴったりを回って抜け出したところなどは、さすがに今年岩手のリーディングを争う高松亮騎手の見事な騎乗だった。
さて、ダービーグランプリ今昔の前編(こちら)は、中央との交流になった最初の年、1996年まで触れた。
1998年のダービーグランプリで断然の注目となっていたのは、名古屋・名古屋優駿(GIII)、旭川・グランシャリオカップ(GIII)、中山・ユニコーンステークス(GIII)、大井・スーパーダートダービー(GII)と、当時行われていた3歳馬のダートグレードで破竹の4連勝としていたウイングアローだった。
そして迎えたダービーグランプリは、ウイングアローのダートグレード5連勝を見届けるレース、と思われていた。しかしその日の盛岡競馬場は雪が降り続き、第5レースまでで打ち切り(ダービーグランプリは第10レース)。当時、大井で行われていた交流GIIのスーパーダートダービーが10月30日という日程的な兼ね合いもあったのだろうが、山の上にある盛岡競馬場で11月23日という開催では雪のリスクもあった。
3週後に延期となった舞台は水沢競馬場。当時、ユニコーンステークス→スーパーダートダービー→ダービーグランプリが3歳ダート三冠となっており、ウイングアローは三冠馬に与えられる2000万円のボーナスは確実と思われた。しかし、早め2番手から直線で抜け出したナリタホマレをとらえきれず、3/4馬身差で2着。勝ったナリタホマレの鞍上マイケル・ロバーツ騎手は、前日の朝日杯3歳ステークス(当時)をアドマイヤコジーンで制しており、2日続けてのGI勝利となった。
3歳ダート三冠は逃したウイングアローだが、5歳になった2000年にはフェブラリーステークスとジャパンカップダートを制し、古馬になってまぎれもないダートのチャンピオンとなった。
中央との交流になって以降のダービーグランプリで地方馬が勝つことはなかったが、前出ウイングアローをはじめ、その勝ち馬からは、ダート・チャンピオン級の馬が何頭も出た。
2000年のレギュラーメンバーは、翌年の川崎記念、さらに第1回JBCクラシックの勝ち馬となった。
2002年のゴールドアリュールは、第4回を迎えていたジャパンダートダービーから3歳ダートGIを連勝。その年末には東京大賞典を勝ち、年が明けてフェブラリーステークスも制した。そして種牡馬となったゴールドアリュールは、ご存知のとおり日本のダート血統を塗り替えた。エスポワールシチー、スマートファルコン、コパノリッキーら、ダートGI/JpnIを制した産駒がすでに種牡馬として活躍をはじめている。地方馬ではララベルがJBCレディスクラシックを制した。さらに現役にはゴールドドリーム、クリソベリル、サンライズノヴァがいる。
2003年のユートピアは、その後04、05年とマイルチャンピオンシップ南部杯を連覇。そして06年、はじめての海外遠征となったゴドルフィンマイルを制し、モハメド殿下率いるゴドルフィンに400万ドルでトレードされた。その後アメリカでG3を制し、種牡馬としてアメリカ、のちにトルコでも繋養された。
2005年のカネヒキリもジャパンダートダービーからの連勝。6歳時、屈腱炎による2年以上のブランクから復帰2戦目でのジャパンCダート制覇は"奇跡の復活"と言われ、続く東京大賞典、川崎記念も勝ってGI/JpnIを3連勝。ダートGI/JpnIで計7勝を挙げた。種牡馬としては、産駒のミツバが川崎記念父仔制覇を果たしている。
しかし中央との交流だったのは2006年まで。累積赤字が嵩み、その年度末には岩手競馬の存廃が論議された。一旦は廃止が決定されたが、最終的に議員の多数決1票差で存続となった。2007年のダービーグランプリは馬インフルエンザのため岩手限定となり、08、09年は休止された。
それでも2010年には地方全国交流として復活(1着賞金800万円)。その年の勝ち馬ロックハンドスターは、岩手三冠馬ともなった。その後、11年カミノヌヴォー、12年ロッソコルサと地元馬が制したが、13〜16年は南関東所属馬が4年連続で制した。
2017年からは地方競馬で『3歳秋のチャンピオンシップ』のシリーズがスタート。ダービーグランプリは、そのファイナルとして1着賞金も1000万円に増額され、注目度が高まった。雪が降る中で行われたその年のダービーグランプリは、のちに北海道で不動のチャンピオンとなるスーパーステション。翌18年は、6年ぶりに地元岩手のチャイヤプーンが制し、3歳秋のチャンピオンシップのボーナスも獲得した。
地方全国交流として復活して以降、その2018年までは11月下旬の水沢開催(18年は延期されて12月)だったが、19年からは大幅に開催時期が繰り上げられ、10月上旬の盛岡開催となっている。これは地方の3歳の代表馬をJBCクラシックへの参戦を促そうというもの。ダービーグランプリ優勝馬が、その年のJBCに出走した場合、JBC出走奨励金として200万円が支給される。
そして今年は1着賞金がさらに1500万円へと増額。その舞台で、冒頭のとおり、地元のフレッチャビアンカが勝ったという価値は大きい。フレッチャビアンカは北海道でデビューして船橋を経由し、岩手転入後は6戦5勝、2着1回と充実ぶりを見せた。
かつて岩手競馬からは、メイセイオペラ、トーホウエンペラーがGI馬となって全国区で活躍したが、また強い岩手の時代が来ることを期待したい。
まだ底を見せていないといえそうな成績がダイセンハッピーとブンブンマルで、これに北海道から転入初戦のミッドナイトクロス、この3頭の争い。
ダイセンハッピーは、2戦目でベツセタイに6馬身差をつけられて2着に敗れたが、これは3コーナー最後方からの一気のまくりという相手が強かった。続く3走目が2着ヌーベルアヴニール、3着ハーピーマロンらに大差をつけて圧勝。一方のブンブンマルはデビュー戦でハーピーマロンの3着に敗れ、前走セレクトゴールドは勝ったものの2着ヌーベルアヴニールに3馬身差。
それら、対戦相手との比較からも、このメンバーではダイセンハッピーが頭ひとつ抜けている。ホッコータルマエの初年度産駒として重賞勝ちの第1号となる可能性も高そう。
門別から転入初戦のミッドナイトクロスは、1000メートルのデビュー戦は出遅れて後方からの追走も、ゴール前で抜け出し力の違いを見せた。2戦目のウィナーズチャレンジは見せ場をつくれなかったが、デビュー戦の勝ち方を見ればそれが実力ではない。4カ月半ぶりの実戦で名古屋初戦、1600メートルへの距離延長など未知な要素は多いが能力は高い。
笠松から参戦のアリスパレスは、前走秋風ジュニアでは向正面で一杯になってしまい、それを度外視なら◎○に食い下がる場面もあるかもしれない。
◎○と勝負付が済んだ感じのロジータミニスターは3着争いまで。
◎1ダイセンハッピー
○3ブンブンマル
▲8ミッドナイトクロス
△12アリスパレス
△6ロジータミニスター
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