昨日(14日)続いて15日(日)メインは3歳オープン馬による「第33回スプリングカップ」(水沢1600m)、12頭立て。
今年度、レース体系が若干変更され、このスプリングカップは5月13日、同じ水沢1600mを舞台に行われる重賞・阿久利黒賞のトライアル戦となった。昨シーズンまで阿久利黒賞は冬の重賞で実施されていたが、今季はスプリングカップ(特別)→阿久利黒賞(重賞)→岩手ダービー・ダイヤモンドカップ(6月10日 盛岡2000m)が基本路線となり、これに牝馬路線が加わって3歳路線が進んでいくことになる。
当初、550キロの重戦車・ネバーオブライトの登録があった。同馬はデビュー戦の水沢850mで49秒8という驚異のレコードを樹立。当時のレコードはニッショウウララの51秒1だったが、それを1秒3も上回り、夢の50秒を岩手競馬史上初めて突破し、各方面から一躍注目を集めた。
2戦目の盛岡・若松賞も順当に勝ち、続いて船橋重賞・平和賞へ挑戦し、キンノライチョウの4着。そして帰郷初戦に南部駒賞を選び、パラダイスフラワーの4着に敗れるや早々とシーズンを終了。昨年11月以降は遠野馬の里で英気を養って今年3月、水沢へ戻ってきた。
しかしシーズン初っ端から無理はさせたくないと陣営は判断し、今回のスプリングカップは見送った。戦列に復帰すれば、走るのは誰もが了解済み。この選択が今後の飛躍につながると確信して長い目で見守っていきたい。
このネバーオブライトの自重、そしてパラダイスフラワーは前日の牝馬・菜の花賞へと向ったため、今回のスプリングカップは難解な一戦となった。
それに輪をかけたのがセイントセーリングの前回凡走だった。1月2日、パラダイスフラワー相手に逃げ切り、ここでは実績断然の馬なのだが、3月26日、3歳A1戦で2番人気に支持されながら好位追走から退いて7着。レース内容にも不満が残ったが、久々にもかかわらず金杯からマイナス10キロの462キロ。馬体の張りがひと息で迫力面も物足りなかったのは否定できなかった。
しかしひと叩きされて気配アップは間違いなしだし、前日の3歳牝馬特別・菜の花賞よりメンバーが甘いのは明白。ここは前回のうっ憤を一気に晴らしたいところだ。
(写真は金杯1着・セイントセーリング 佐藤到)
逆転首位まで可能なのがソードだろう。父ブラックホーク譲りの好馬体と抜群の決め手の持ち主でデビュー前から注目を集めた1頭。案の定、3戦目で初勝利をマークしてそのまま勢いに乗るかと思ったが、夏以降はスランプに陥り、なかなか頭角を現せなかった。しかし終盤に見事に復活を果たして1、2、1、2着でシーズンを終了。今季に期待を抱かせるに十分の内容を披露した。
前走の特別開催は中団のまま5着に終わったが、先にも記したとおり500キロを超える大型馬で、元々が叩き良化タイプ。今回がパワー全開の局面と見ていいだろう。
(ソード 写真・佐藤到)
ダンストンリアルは大崩れしない堅実さを身上とし、デビューから一貫して入着。その半面、最後の詰めに課題を残して<1.3.5.2>と1勝のみに止まっている。
とは言え前回も乱ペースの中に戸惑うことなく3着入線したように堅実無比。よって上位扱いが妥当となる。
前回しんがり負けを喫したカネショウエリートは中央挑戦(1月14日 中山500万下11着)の疲れが残っていたのかもしれない。加えてメイセイオペラ産駒には珍しく芝、そして時計の速いダートを得意とし、前回のような砂の深い馬場に泣いた印象もあった。
しかし今回は中間に雨が降り、カネショウエリートには願ってもない馬場。また昨年、同条件(水沢1600m)の特別・寒菊賞を逃げ切ったこともあり、一転巻き返しの可能性は十分にある。
他では10月30日以来の実戦となるが、3戦2勝の実力馬ツルマルボストン、鋭い決め手が武器のハルサンヒコも軽視禁物だろう。
◎ ?セイントセーリング
○ ?ソード
▲ ?ダンストンリアル
△ ?カネショウエリート
△ ?ツルマルボストン
△ ?ハルサンヒコ
3連単は12、4の1、2着折り返しから6、5、1、7を3着流し
馬複は4−12、6−12、5−12、1−12、4−6
<お奨めの1頭>
9レース マイネルヘルシャー
抜群の破壊力で岩手10戦8勝2着1回。前回も豪快なマクリを決め、オープン入り間違いなしの逸材だ
14日(土)メインは3歳牝馬による1600m戦「第7回菜の花賞」、12頭立て。このレースの1、2着馬には4月29日、同じ水沢1600mを舞台に行われる3歳牝馬重賞・留守杯日高賞への優先出走権が与えられる。
(パラダイスフラワー 写真・佐藤到)
中心はパラダイスフラワーで断然だろう。前走(3月26日)3歳A1級戦では自らハイペースを形成しての逃げ。いつものパラダイスフラワーだったら、そのまま押し切るシーンだったが、直線で一杯となって2着。伏兵マツリダワルツに脚元をすくわれて波乱の幕開けとなった。
それでも陣営はそれほど落胆していなかった。というのはデビュー以降、最高体重の498キロでの出走で明らかに太め残り。あくまでも足慣らしのイメージが強かったし、歴戦の疲れもまだ残っていた。
しかし今回は中間の追い切りで併せ馬を消化し、馬なりで12秒台をマークするなどパラダイスフラワーは気配がガラリ一変した。ここは牝馬同士の戦いでもあり、しかも絶好の1枠。
昨年、G?・エーデルワイス賞(旭川)を制し、岩手競馬グランプリ2006最優秀2歳馬の栄誉も手にしたパラダイスフラワー。今日こそ本来の破格の強さを見せてくれるに違いない。
相手筆頭にマツリダワルツを指名する。前回は後方2番手にジックリ待機し、満を持して3コーナー過ぎからスパート。その戦法がズバリとはまり、直線大外一気を決めてパラダイスフラワーを破る金星をあげた。小柄な牝馬が走る場合、シャープな末脚が武器となるタイプが多いが、このマツリダワルツも同様のケース。
ちょっと気になるのはデビュー戦が419キロ、そして前走が389キロ。中央遠征(2月11日 東京500万下 芝1600m)が396キロで出走し、初めて400キロを割ったが、380キロ台に落ちるとなると不安がつきまとう。馬体重増加できるかが今後のカギを握るだろう。
シュクジャンヌの前回(3月27日 3歳A2)は強い!の一語だった。前半は3番手を追走し、3コーナーで逃げたリードチーフを交わして早々と先頭。直線に入ってもそのスピードは衰えず、後続の追撃を振り切った。
同馬はデビュー戦(水沢850m)2着後も安定した取り口を披露して着外に沈んだのはわずか1回のみ。抜群の安定感がセールスポイントだったが、その半面、最後の詰めが甘く15戦も未勝利が続いていた。
それを吹っ切ったのが前回の1着で、走破タイムも前日の3歳A1(1着マツリダワルツ)1分47秒0を0・7秒上回る水沢マイル1分46秒3をマークした。もちろん馬場差があるため単純な比較はできないが、ここは素直にそれを信じる手かもしれない。
そのシュクジャンヌに前走0・1秒差2着まで肉薄したのがサクラアリエルだった。牝馬ながら馬格に恵まれながら、昨シーズンはそれを持て余し気味だったが、1月3日に初勝利を飾った。父がグリーンデザート(その母アリーサは英3歳牝馬チャンピオン)、母父がアンバーシャダイならいわゆる奥手タイプ。前回2着はその片りんを見せたと解釈してもよく、ここで好勝負なら今後の飛躍も約束された。
評価に迷うのはオーナーズスキャンだ。2歳牝馬重賞・白菊賞の勝ち馬(2着はクールビズ)でその後、東海へ移籍。実績比較ではパラダイスフラワーに次ぐ存在なのだが、笠松で4戦とも着外に終わって今年3月に再転入。初戦はパラダイスフラワーと同じレースだったが、絶好の2番手をキープしながら失速して4着に敗れてしまった。他の馬が休養明けで実戦を使われていた強味もあったはずだが、この0・8秒差4着には不満が残った。それでも格は生きているはずでノーマークにはできない。
他では昨年後半戦こそスランプだったが、久々の方が合うクールビズが不気味だ。
◎ ?パラダイスフラワー
○ ?マツリダワルツ
▲ ?シュクジャンヌ
△ ?サクラアリエル
△ ?オーナーズスキャン
△ ?クールビズ
3連単は1を1着固定に9、3の折り返しを厚め。3着押さえで10、8、5
馬複は1−9、1−3、1−10、1−8、1−7
<お奨めの1頭>
8レース ヤマニンエボニー
前回は先行馬にはきつい馬場だったが、逃げて3着に粘った。今回は単騎で楽に行けるメンバーで、勝機順当につかむ
水沢1300mは走路に向かって右手のほう、ちょうどテレトラックスタンドの前あたりからの発走になります。
発走時間が近くなると係員が昇降機の付いた車両に登り、赤旗を振って出走馬に知らせます。すると待避所や走路上に散っていた出走馬が集まってきてスタートゲートの後ろで輪乗りを始めるのですが、水沢千三の場合はこれがスタンドの目の前で行われ、観客と出走馬との距離が本当に近いです。手を伸ばせば外ラチに届きそうなほどで、その外ラチのすぐそばまで人馬が輪乗りで回ってきますからジョッキーの表情や馬の気合い乗りが間近に観察出来るほど。耳をすませば騎手と沓(くつわ)をとる厩務員の会話も聞こえてくるかもしれません。ただ、このとき騎手や馬の様子から何か閃いても、馬券を買い足しに行くのはかなり急がなければならないと思いますが…
やはりこの近さが地方競馬の良いところなのでしょうね。一方の盛岡競馬場でも1800mがスタンド前からの発走になりますが、高低差もあって水沢千三ほどの近さはありません。そういう意味では地方屈指の施設を誇るオーローパークは、良くも悪くも地方競馬離れしているということなのでしょう。
ひととき輪乗りを行った出走馬は、時間が来ると発走係員の「は〜い、奇数番からいくよぉ〜っ!」という声が掛かりゲートの中へ誘導されて行きます。このとき枠入りを嫌がる馬は尾をとられ、尻にベルトをまわされてなんとかゲート内に収められます。(係員は大変でしょうが、これも見もの) そして全馬の体勢が整うと、いよいよ昇降機上の係員がレリーズを引き扉がオープン。ほんの一瞬、静寂が通り過ぎたあと、筋肉が弾け、砂が空に向かって蹴り上げられて馬たちがダッシュしてゆくのです。1300m発走地点はこれも至近距離で見られますし、馬群が1周してくればゴールへ向かって最後の競り合いも見ることが出来ます。
というわけでここは水沢のおすすめ観戦ポイント。レースのたびにパドックとこの場所を往復している慣れたファンも多いですよ。
(文/写真・佐藤 到)
4月8日 特別・第19回栗駒賞(水沢1600m)
(写真・佐藤到)
1着 ダンディキング
逃げるケースも多いが、決してテンが速い訳ではない。草地騎手もそれは承知済みで1周目4コーナーに入るときは中団の位置取りだったが、スタンド前、逃げたジュリアがスローに落とすやいなや、馬なりで先頭に立ち、主導権を握る。2コーナー手前では後続を3馬身ほど離して逃げ、そこでうまく息を入れる。それが結果功を奏し、3コーナーで各馬がスパートをかけても余裕で先頭をキープ。
直線を向いてもダンディキングのスピードは衰えず、イン強襲トミケンマイルズを半馬身、外ブラーボウッズの追撃も0・2秒差封じて待望のオープンタイトルを手にした。
ダンディキングはアラブの女傑ミスハクギンを母に持ち(父ダンディコマンド)、05年のデビュー2戦を圧勝。その後は若駒賞2着、一息入れた寒菊賞は2着、続く金杯は8着で2歳シーズンを終了。
昨3歳時は七時雨賞、スプリングカップと連勝し、一躍首位戦線に躍り出たが、盛岡・岩鷲賞2着以降は体調を崩して7月、ガーベラ賞6着から4ヶ月の休養に入った。その判断は正しくオープン重賞・早池峰賞、トウケイニセイ記念3着。以降に期待を抱かせて冬期休養に入った。
前走(3月27日)は4番手インの競馬から4コーナーで一旦2番手まで進出したが、最後の伸びを欠いて3着。この時は前走比プラス9キロと太目残りの影響もあったかもしれない。今回はひと叩きされてマイナス3キロの472キロで出走。そして草地騎手の好判断も後押ししてタイトル奪取を果たした。
「ピリッとした脚がない替わりにバテもしないタイプ。自分の競馬ができるかどうかがすべて」と草地騎手がダンディキングを評したとおり、今回のようなレース運びができれば重賞・シアンモア記念でも好走は約束された。
2着 トミケンマイルズ
転入初戦の前走(3月25日)はヤマニンエグザルトの2番手を追走したが、直線で伸びを欠いて0・7秒差3着。2月28日に笠松でレースを使われた強味もあって2番人気に支持されたが、内容に若干不満が残って今回は10番人気まで落ちていた。しかし4番手インをずっとキープし、直線インを鋭く伸びて2着を確保。やはりアフター5スター賞(大井)、グランドマイラーズ(船橋)のマイル2重賞制覇はダテではなかった。
3着 ブラーボウッズ
例によって最後方待機策から向正面でまくって3コーナーでは3番手まで進出。最後の直線は脚色がいっしょになったが、先行競馬で決まった今回のレースでも豪快なマクリを披露。マイルは気持ち短い印象がない訳ではないが、シアンモア記念も展開次第では一気突き抜ける可能性もでてきた。
4着 ニューベリー
終始3番手外をキープしていつでも交わせる態勢で道中を進めたが、勝負どころの3コーナーでは反応がひと息。転入初戦でヤマニンエグザルトを一完歩ずつ詰め寄ってクビ差2着まで肉薄した末脚を評価され、単勝2倍の1番人気に支持。ところが今回は伸び切れずに4着止まり。これで評価は微妙になったが、岩手では群を抜く実績を誇り、本番での巻き返しを期待したい。
7着 オウシュウクラウン
馬体重こそ川崎記念からマイナス5キロの494キロと大幅な増減はなく、毛ヅヤも上々に映ったが、レースでは後方に位置し、直線では一瞬いい脚を見せたが、差を詰めただけの7着に終わった。
今回は遠征の疲れが残っていたため急仕上げを避けて出走。様子見の感が強く、本格的な始動はもう少し先になりそうだ。
この日曜日、5Rで菅原俊吏騎手がデビューしました。“デビュー”と書いたからには新人騎手なのですが、出馬表を見ても彼には減量マークが付いていません。他地区からの移籍でもありません。彼はオーストラリアで騎乗した経験を持つ“ベテラン”新人騎手なのです。
菅原俊吏騎手は03年11月〜04年4月までの間、オーストラリア・ゴールドコーストを中心に騎乗して通算24勝を挙げました。その後日本に戻って厩務員を務めながら改めて騎手を目指し、今年1月1日付でついに念願の日本の騎手免許を手にしました。
今回の“デビュー戦”は「しばらく実戦から遠ざかっていたのでカンが戻っていませんでした」と語った俊吏騎手ですが、レース運びはやはり実戦経験を持つだけの事はあると思わせるものでした。日本での初勝利、そう遠くないように思えます。
◇お奨めこの1頭
1R・ノボトゥーリオ
転入2戦を2着・2着。しかしこれは相手が強すぎただけでこの馬の能力も相当なもの。馬体重が絞れていればだまって頭。
8R・ベリーメリーホーク
前走は3着でしたが、休み明けながらまずまずの仕上がりが目に付きました。鞍上替わって人気にはなるでしょうが、必ず押さえておきたいところ。