桐花賞というレース、大晦日に行われるその年の“〆”の一戦(大晦日でない時も何度かありましたが)という位置にあるせいか、他の重賞よりもずっとレースの印象が強く残っています。
トウケイニセイの3連覇、優勝で飾ったそのラストラン。メイセイオペラの復活。ハスカップボーイの一世一代の大激走。トーホウエンペラーのサクセスストーリー。バンケーティング対トーヨーリンカーンの3歳ワン・ツー。トニージェントの3連覇。そして昨年の、マツリダパレスの歓喜のV。逃げ切りあり、差し切りあり。人気馬の完勝があればはたまた大凡走もあり。いろいろなレースがありましたね。
前回も書いたように地方競馬は年度単位の日程になっていますから、12月31日だといってもシーズン最終日ではなく、その点は有馬記念でシーズンラストを迎えるJRAとは雰囲気が異なります。しかし、やはり1年の区切りの日に行われるレース。桐花賞が大晦日に行われるという事が、印象をより強くしているように思います。
もちろん、単にお祭り的なレースというに留まりません。勝ち馬の名を見ていくと不思議と、その年の岩手競馬がどんな1年だったかが分かるような馬の名前が並んでいるんですよね。トウケイニセイの3連覇の頃はまさにトウケイニセイ・モリユウプリンスの“TM対決”の時代でしたし、その次の年のプレザント優勝はTMが不在となった後の混戦の象徴といえました。昨年なんかも、古馬の有力どころがしっかりしなかったシーズンを3歳馬が締めくくってしまった。いかにも、という感じです。
今年の岩手競馬がどんな1年だったか。その雰囲気を体現するような馬はどれか?そんな事を考えながら予想してみるのも面白いと思いますよ。そんな事を考えて、あなたの頭の中に真っ先にひらめいた馬。案外そういう馬が勝つような気がしますよ。
私の感じた今年の印象は「有力古馬不在・3歳馬の台頭」でした。オープン級の重特勝ち馬がコロコロ変わり、前に勝った馬が次には簡単に凡走する。そんな古馬勢に比べ、3歳馬には牡・牝ともにこれからの岩手競馬を引っ張るであろう逸材が登場しました。
であれば、やはり3歳馬が古馬勢を押しのけて勝ってこそ、今年の岩手競馬らしい締めくくりになるのではないでしょうか。
今シーズンのサイレントエクセル対オウシュウクラウンの戦いは、6月のダイヤモンドカップではオウシュウクラウンが先着、9月のダービーGPではサイレントエクセルが先着と、今のところ1勝1敗の五分。オウシュウクラウンも経験を積んでいるが、サイレントエクセルの成長度も凄い。今の直接対決ならサイレントエクセルにも逆転の目有り、と期待を込めてのサイレントエクセル本命・オウシュウクラウン対抗ですが、オウシュウクラウンの力も当然ながら相当なもので、両者互角と考えて検討するのが、馬券的には正解でしょうね。
もう一頭はニッショウウララを挙げてみたいところ。前走のオウシュウクラウン撃破も見事でしたが、なにより今年のこの馬は大きく変わりました。デビュー戦で水沢ダート850mのレコード(当時)を出したようにスピード馬のイメージが強かったのですが、年と共に落ち着きを増し、距離や戦法のレパートリーを増やしてきました。2000mは久々、単騎逃げも簡単には望みがたいメンバーですが、今年のこの馬の変わりように敬意を表して1票。
以下、もう一頭の3歳馬テンショウボスと、メンバー中最年長・9歳のゲイリーエクシード。まずテンショウボスですが、水沢よりは盛岡の方が合うタイプという点がありますし、馬体がなかなか絞れず、ここのところずっと太めで出走しているという点も気になりますが、対オウシュウクラウンとの成績からすれば好走しておかしくないはず。もし520kg台前半まで絞れていたら勝負。
ゲイリーエクシードは9歳の冬ながら安定した成績をキープ。有力どころが先行するし、ペースが速くなる、この馬向きの展開になる、というチャンスもあるでしょう。
買い目はフォーメーションで、1着・2着にサイレントエクセルとオウシュウクラウンを並べ、3着に1、4、8。強気に行くならサイレントエクセル1着・オウシュウクラウン2着固定で。
●出走各馬短評
1 ゲイリーエクシード:年齢的に上積み期待薄も末脚堅実。連下までありうる
2 ミサキノハンター:距離不問・水沢得意も、水の浮くコースは苦手。当日注意
3 オウシュウクラウン:ここ通用の力。極端なコース悪化なければなお良し
4 ニッショウウララ:前走ほど楽はできそうにないが、逃げれば粘る
5 サイレントエクセル:中間順調。地元で前走の雪辱狙う
6 チュードサンデー:堅実さ評価できるが、重賞では少し及ばず。距離も長い
7 ブラーボウッズ:典型的な穴馬。距離も合い、人気にかかわらず穴党は押さえるべし
8 テンショウボス:距離好都合も小回り水沢はやや苦手。馬体重マイナス体重が前提
9 マツリダパレス:ここに来て復調気配も、昨年ほどの勢いはなく
10 マツリダブロッコ:さすがに連戦の疲れ出たかの前走。掲示板圏内までか
◇お奨めこの一頭/9R:メタモルキング
ここ2戦は強力な同型がいて楽なレースができず。しかし今回は単騎逃げ可能ですし、1800mという距離、その4枠という点も後押し。