
ゴール間際の大逆転劇
前年2024年にSG初制覇した黒川京介に続いて、またも川口からニューヒーローが出現! 佐藤励がSG初制覇を成し遂げた。
青山周平が2枠から好スタートを放って逃げ態勢。4枠の黒川京介はその外に付けるが青山周はブロックを駆使して抜かせない。1枠の青山周が2枠の黒川を完封して8周回を逃げ切った今年3月の特別G1プレミアムカップ決勝戦を再現するようにレースは始まった。ただプレミアムカップと異なっていたのは、今回の決勝戦には佐藤励も出走していたことだ。
2周目、黒川に詰まってスピードの下がった鈴木圭一郎を捲って佐藤励が3番手へ上がると、3周回ホームストレッチで黒川の内へ入って2番手へ。そして4周回バックストレッチで青山周へイン差しを仕掛けて入れず、黒川と鈴木圭に捲り返されて4番手まで後退したが、そこまでの一連の走りから、まだチャンスはあると手応えを掴めたのではないか。
8周回2コーナー立ち上がりで佐藤励は今度はインから鈴木圭を攻めて再び3番手に上がり、依然として先頭集団を形成していた青山周と黒川へ車間を詰めると、クライマックスは10周回のラストに待っていた。最終周回3コーナー、乾坤一擲の捲りを打ってきた黒川に、青山周は渾身の突っ張りで抵抗。両者はゴール寸前コースを大きく外へ取る形になった。そのガラリと空いたインを1本の白い矢が風のように駆け抜けた。佐藤励がSG初優勝を決めた瞬間だった。
準決勝戦を追えて今節無敗の5連勝。レース後に『10周戦向きのエンジンです』と語った佐藤励は、枠番選択でみずから選び取った1枠からスタート先行できなくても、道中いったん黒川や鈴木圭に抜き返されても、決して諦めなかった。デビュー3年あまりでSG初制覇した鈴木圭の最短記録を抜くことはかなわなかったが、デビュー5年目での戴冠は、6日制を完全優勝したことと合わせて素晴らしい記録だ。
今後の川口レース場、未来のオートレースを支えるスターが、また1人誕生した。
文/鈴木
筒井健太が4年半ぶりに優勝
スタート後1コーナー少しもつれる場面があり、このことが筒井健太にとっては有利に作用した。
0ハン2車並び外枠の小林頼介が発走直後に内線寄りへ降りてきて、10線に4車いたうち浅野浩幸と鈴木健吾はややコースをふさがれる形になり、直後の1コーナーでは稲川聖也が小林頼に外へ振られてスピードに乗りきれなかった。そのとき、10線最内枠の筒井健太だけがスムーズに1周目を乗りきり、同ハン3名に10メートルほどのリードを作れた。そして2周回ホームストレッチで下平佳輝を捌いて先頭を奪うと、あとはペースを上げるのみ。速攻抜け出しから逃げに持ち込むのが得意なレーススタイルである筒井にとって願ってもない絶好展開となった。
後続は3周回で浅野浩が2番手、少し離れて稲川が3番手へ。5周回1コーナーで稲川が浅野浩を差して2番手まで進んだが、単独20線から追ってきた中野憲人が浅野浩を捲り、5周回4コーナーからの立ち上がりで稲川を切り返して2着に浮上した。
筒井は2020年10月以来の通算7V。次節の地元浜松G1『開場記念ゴールデンレース』へ良い形で挑めそうだ。
文/鈴木
初優勝への執念が実った
0ハン2車並びの内枠から1級車の本田仁恵が持ち前のスタート力を発揮して先行。外枠2級車の田中崇太はスタートライン過ぎに内から西村義正、外から松井大和に叩かれて苦境に立たされた。
まず展開が動いたのは4周回1コーナー。松井を引き離して単独で本田を追撃していた西村義がイン差しで先頭へ抜け出す。レーサー44年目・通算850勝を誇る西村義に対して本田はまだ7年目と経験が浅く、逆転は難しいか、初優勝はまた先送りか、と思われたが、本田は勝負を諦めていなかった。
5周回1コーナーで車を大きく外へ振った本田は2コーナー立ち上がりにかけて、いわゆる三角を切ってインへ車を向けられる角度を作ると、3コーナーの突っ込みで西村義の内を攻めて先頭を奪還。その流れで小原望も西村義の内へ入って2番手へ浮上。本田は残る1周あまり先頭を守り抜いて1着ゴール。通算8度目の決勝戦挑戦で見事に初V。4名いる34期ガールズの中では最初の優勝者となった。
文/鈴木
ヒーローになる時、それは今
自分以外7名全員がSGタイトルホルダー、キャリアも自分が最も浅い、そんな逆境を跳ね返してSGを獲れる可能性を持っている佐藤励は、今節ここまでの推移も「持っている」と感じさせる。準決勝戦11レースは道中の展開がもつれたが、影響軽微だった佐藤励は間隙を突いて先頭に立ち今節無敗の5連勝。黒川京介が昨秋の『日本選手権』でSG初制覇した際と成績もムードも似通っている。勝ち続けたことで勢いを持続できて、メンタルも高いレベルでフラットに保てる。心技体が三位一体で充実している今こそ壮挙を成し遂げる好機だ。
2枠ならスタートで好位置を取れる青山周平と、4枠からでもトップ旋回がありうる黒川京介、そのダッシュに乗って出られる鈴木圭一郎による番手争いとなろう。佐藤貴也は準決勝戦の7枠から好スタートを切ったが、ここまでメンバーが強力になると内枠勢の前へ出ることは至難の業に見える。今回まだ復帰2節目ながら長距離戦の展開づくりは長年の経験により身体に染み込んでいる中村雅人の方が、10周回をフル活用して追い上げてくるか。
◎ 1 佐藤励
○ 2 青山周平
△ 4 黒川京介
▲ 5 鈴木圭一郎
× 6 中村雅人
おすすめの買い目
1=2-456
穴なら
6=2-541
文/鈴木