昨日美浦トレーニングセンターの検疫馬房にある手術室で、大井所属の【ティーケーストーム】の手術が行なわれました。右前膝の剥離骨折のため、骨片を摘出する手術です。その一部始終を取材して来ました。
今回は、あまり気持ちのよくない写真も出てきますが、「競走馬は骨折すると安楽死」という間違った見解を持っている人もいるようだし、どんな風にして競走馬の手術が行なわれているか、獣医さんたちや関係者の姿も見てほしいので、載せることにしました。
まずは、馬運車の中で準備が出来るまで待機しているストームくん。
初めての場所で緊張していると思いきや、なんとか私の手にかぶりつこうとやんちゃな面を見せてます。
準備が出来たので、手術準備馬房へ移動。
馬運車から降りた開放感か、着いてすぐに放尿してます。
この辺まではまだリラックスムード。
でも。。先生たちがレントゲンを撮ろうとすると、「やめろ〜」と暴れ出しました。
なんとか撮った写真がコレ。
どこが剥離骨折してるかわかりますか〜??
こっちは膝を曲げて撮ったバージョン。
矢印の先です。本当に小さい骨片。
身体や脚の汚れや埃をブラシで落として、うがいします。
そして、抗生物質と痛み止めの注射。
意外と注射はおとなしく打たせるストームくん。これで手術前の準備完了!麻酔に入ります。
いよいよ麻酔。こんなに大きな注射で打ちます。。痛そうだ。
麻酔を打つと、数分で朦朧として来ます。倒れる時に馬が怪我をしないよう、細心の注意を払います。
人間と違い、ベットの上で・・ってわけにもいかないし、510キロの身体が一気に倒れたら、それだけで骨折する可能性までありますから。ここは安全に安全に、獣医さんだけでなく、付き添いで来た関係者も力を合わせます。
安全に倒れたら、クレーンを使って運ぶのです。あまり気持ちいいことじゃないけど、馬に負担はかからないそうだし、510キロのストームくんを人間の手で運ぶことも出来ないし・・
手術台に固定したら、脚にビニールをかぶせていきます。
40分後、目が覚めたストームくんは大興奮。鼻をフウフウさせ、人間を威嚇するほどパニクっていました。
5分くらいしたらだいぶ落ち着いたけど、まだ麻酔のせいで少しボーっとしてます。
時間を置いて、馬運車へ。無事帰路に着きました。
今後の回復にもよりますが、全治は約3ヶ月。ここからはゆっくり休養し、回復を待ちます。
日本国内では内視鏡を使っての競走馬の手術ができる施設が、今私の知る限りでは3つしかないので、今回の美浦手術室では年間約100頭の手術をするということです。内視鏡による手術ができるようになり、劇的に回復率が上がったそうですよ。人間もそうですもんね。
獣医さんたちの技術の高さと経験の多さは素晴らしいし、関係者のストームくんに対する愛情も深い。
【ティーケーストーム】の怪我が一日も早く完治することを願っています。
昨日の安田記念のために、来日した香港の馬たちの調教を取材に行ったんですけど(馬女のひとりごと参照)、たった2日間でしたが、馬に対する考え方、扱い方などに感銘を受けました!!
1番印象に残ったのが、【アルマダ】を管理するジョン・サイズ調教師。
「12ヶ月休養させたのは、馬がウツのような状態になってしまったからなんだ。」
この発言をした時、日本のマスコミには笑いが起こりました。悪気は全くない。競走馬のウツなんて、聞いたことがないし考えたこともないだけ。
ここが、日本と外国の大きな違いなんだと思う。ジョン・サイズ調教師は、中でも特別『馬優先主義』が強い方ですが。
食欲が落ちて、やる気がなくなったのは、昨年の3月【グッドババ】にレースで負けた後なんだそうです。プライドが傷ついて、心が折れてしまったんでしょうか・・。それでも、肉体的に全く異常がないのに競走馬を12ヶ月も休養させるなんて、私は聞いたことがないです。
考えたら、競走馬はかなりの数が胃潰瘍。ストレス社会に生きているんです。
たくさんのお金が発生する生き物ですから、簡単に休ませることは出来ないけれど、こういう考え方もある、ということを教えていただきました。