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馬券おやじは今日も行く(第46回) 古林英一

2008年5月22日(木)

大口騎手、ごめんなさいm(_ _)m

 「ばんえい情報局」の新企画・ジョッキーファイル。実にいい企画である。先日、この企画で大口泰史騎手を取材した斎藤友香さんが「大口さんが『乗り替わりの大口』のこと怒ってましたよ〜」と小生に伝えてくれた。原因は、今年度、競馬場等で無料配布しているパンフレットである。矢野さん、須田さん、旋丸さんらに混じって、恥ずかしながら、このパンフレットで小生も馬券術を公開させていただいているのであるが、そのなかで小生がばんえい界で有名な「乗り替わりの大口は買い」という格言を「珍説」として紹介したのである。

 多数派をしめる右利き騎手から数少ないサウスポーの大口騎手に乗り替わると、馬がびっくりして走るという説である。正直いって、小生もこの説は正しいような気もする。正しいような気もするが、数量的に実証された説ではない。実際には太って脂ぎっているとはいえ、痩せても枯れても小生は実証を重んじる学者なのである。昨今は「ホラ吹き馬券・車券オヤジ」になり果ててはいるが、本来の小生は謹厳実直で学問一筋の学究の徒なのである。科学的に論証されていないものをあたかも真実であるかのように紹介は出来ない。それゆえ「珍説」として紹介したのであった。

 そこで、いきなりではあるが、小生本来の姿に立ち返り、今回は数理統計学の講義をおこなう。あ、そこの君、いきなり読むのやめないように! テーマは「『乗り替わりの大口は買い』説の真偽」である。結論からいおう。数理統計学に基づく小生の分析によると、「乗り替わりの大口は買い」説は「びみょうー」に「真説」であることが判明した。どのあたりが「びみょうー」なのか、さらに「乗り替わりの大口は買い」説が馬券術として効果的かどうかについては、これから述べたいと思う。

 まず、検証に用いたデータである。昨年度(2007年4月から2008年3月)の競走実績を利用する。データが多ければそれだけ誤差も小さくなるが、いくらGW中暇を持て余していた小生でも、昨年度の150日間全レースをピックアップする時間も根気もない。そこでサンプルデータ(日本語の統計用語では標本という)として、150日間のメインレースをとりあげた。とはいっても、メインレース150競走のうち、9競走は乗り替わりがなかったのでデータから除外したので、サンプルは141競走である。141競走で延べ421頭が前走とは異なる騎手で出走した。

 さて、この421頭のうち、別の騎手から大口騎手に乗り変わって出走したケースが25頭あった。どうやって乗り替わりが有効だったかどうかを判定するか? 様々な考え方があろうが、今回はごく単純に前走に比べて着順がどれだけ上がったか(もしくは下がったか)をとりあげた。着順の変化をここでは着順上昇度とよぶ。前走8着、当該レースで3着なら着順上昇度は8-3=5、逆に前走3着で当該レース8着なら3-8=-5という具合である。乗り替わりで大口騎手が騎乗した25頭の着順上昇度の平均値は1.20、つまり平均1つ以上着順をあげているのである。なるほど、大口騎手に乗り替わると「平均的には」着順が上がるようにみえる。だが、大口騎手以外のケースをみないと、大口騎手が特別かどうかはわからない。

 では他の騎手への乗り替わりはどうか? 大口騎手以外への乗り替わりによる着順上昇度の平均値は-0.55。つまり乗り替わりは、平均的には、着順を下げる可能性の方が高いのである。メインレースで20頭以上に乗り替わりで騎乗した騎手は大口騎手を含めて11人いた。大口騎手を除く10人はすべて着順上昇度の平均値はすべてマイナスなのである。この結果をみるとますます「乗り替わりの大口は買い」説は正しいかにみえる。

 だが、以上の結果はたまたま今回抽出した421頭のサンプルの話であり、このことが一般的に成り立つかどうかを考えないといけない。ここから先が推測統計学の議論になるのである。サンプルから導きだされた結論には必ず誤差がある。そこで、統計学の手法に基づいて、「乗り替わりの大口」の誤差を含んだ着順上昇度を推定する(いわゆる区間推定というやつである)と、信頼度95%で着順上昇度は1.81から-1.57という結果が出た。つまり、大口騎手に乗り替わった場合、前走に比べて着順の上昇度は95%の確率で1.81から-1.57の範囲にあるということである。大口騎手以外についても同様の推定をおこなうと、95%の確率で-0.21から-0.88着順が変化するという結果が出た。つまり、大口騎手に乗り替われば着順があがる確率がかなり高いのに対して、大口騎手以外に乗り替わった場合は着順が前走より下がる可能性が95%以上あるということだ。

 こういうと、ますます「乗り替わりの大口は買い」という気がしてくる。実は、大口騎手は小生の大のごひいき騎手であるから、こういう推定結果が出るとうれしい。だが、今回の小生は「ホラ吹き馬券オヤジ」ではなく、「真理を追究する学者」である。心を鬼にして、意地の悪いデータも敢えて紹介せねばならない。「大口への乗り替わり」ではなく、「大口からの乗り替わり」も検証してみた。すると、平均着順上昇度は何と0.13。95%信頼区間を推定すると、2.19〜-1.94と出た。サンプル数が少し小さい分、誤差の幅が大きくなるが、「大口への乗り替わり」も「大口からの乗り替わり」も同じような結果なのである。つまり「乗り替わりの大口は買い」というのは、「大口への乗り替わり」と「大口からの乗り替わり」の両方を考えるべきということなりそうだ。

 大口騎手についてはさらに面白いデータを発見した。当該競走の着順と前走の着順の関係を相関係数という指標を用いて分析してみた。すると、乗り替わりで大口騎手が騎乗した競走の着順は前走の着順と統計的に全く無関係という結果が出た(相関係数は-0.07)。対照的に、乗り替わりで大河原騎手や藤本騎手が騎乗した場合は、前走の着順とそのレースの着順はある程度相関がみられる(大河原騎手の相関係数は0.57、藤本騎手は0.46)。つまり、大河原騎手や藤本騎手は乗り替わりで騎乗しても前走の結果に近い結果を出す可能性が高い、つまり前走で好成績だった馬は今回も好成績を出すし、前走凡走だった馬は今回も凡走しがちであるということだ。それに対して、大口騎手の場合は前走の成績と全く関係がみられない。大きな変わり身もあるし、逆に、期待を大きく裏切る可能性も小さくないということである。

 最終的な結論である。大口騎手への乗り替わり、もしくは大口騎手からの乗り替わりは、他の騎手への乗り替わりに比べて、着順をあげる可能性が高いように思われる。その意味で「乗り替わりの大口は買い」である。だが、実は、大口騎手への乗り替わりと他の騎手への乗り替わりの着順上昇度の差は統計学的には有意な差とはいえないという結果も出た(有意水準5%)。また、さらに、着順上昇度が1とか2だと、前走が5着以下なら馬券的にはあまり関係ない。つまり、「乗り替わりの大口」を過度に信用してもいけないということだ。ここいらあたりが「びみょうーに正しい」という所以なのである。

 それとついでにいっておくと、推測統計学では95%の信頼度というのがひとつの基準となっている。世間一般的には95%の確率というのは「ほぼ確か」という意味で使われる。だが、95%の信頼度ということは、逆にいうと5%の確率ではずれるということだ。5%って、無視できる? 無視できない? どっちだろうか。ごく簡単にいうと、5%の支持率というのは、馬券のオッズでいうとたかだか1,500円(15倍)程度なんである。決して大穴とはいいがたい。せいぜい「ちょい荒れ」程度だろう。こうなると95%の確かさなんていうのは馬券戦術には殆ど無意味であるといえよう。

 いずれにせよ、乗り替わりの大口はどうやら統計学的には「びみょうー」に正しい。「びみょー」ではあるが、真説であると小生は判断する。大口さん、珍説扱いしてごめんなさいね〜m(_ _)m

今週の見どころ(5/23〜5/25)

 今季開幕から、帯広競馬場1階スタンドに仮オープンしていたカフェ・ド・ペルシュロンが、5月23日ついにグランドオープンします。競馬場でしか味わえないメニューも多数取り揃えているとのことで、競馬場に行く楽しみが増えそうです。
 なお今週末は、金曜・土曜・日曜とも全12レース制で行われます。第1レース発走予定時刻はいずれも14:30となっておりますのでご注意ください。

 5月23日(金)のメイン第11レースはカフェ・ド・ペルシュロン特別(300万円未満)
 出走9頭中4頭が前開催の若葉特別(300万円未満)を使われていました。今回のメンバー中、そこで最先着だったのがスギノディアス。登坂力を生かし先頭で障害を抜け出すと、追い込んできたタケノホウシュウ(1着)と同タイムの2着に粘りました。勝ったタケノホウシュウは昨季ばんえい記念に挑戦し、今季は開幕から300万円条件を2連勝していた格上馬だけに、負けて強しの内容だったといえます。強敵が昇級で抜けたここはチャンスでしょう。
 200万円条件を4連勝中と勢いに乗っているニシキタカラが、今回昇級戦です。初戦から特別戦と見込まれましたが、もともとは04年のばんえい菊花賞を制している実績馬。昨季は旧500万円条件で勝ち負けしておりここも通過点です。
 ほか、特別戦の重量増は歓迎の障害巧者コブラダイオー、若葉特別(4着)で末脚に見どころがあったアオノキセキ、この条件を2連勝中のイッスンボウシなども争覇圏でしょう。

 5月24日(土)のメイン第11レースはシャクナゲ特別(500万円未満)
 ここは4月26日の藤丸カップ(オープン混合)では離れた障害クリアから追い込んで2着だったバンゼンに期待します。第2障害で体勢を崩したのが響き最下位だった前開催の緑風特別(500万円未満)は参考外。障害さえスムーズならここは巻き返してくるはずです。
 その緑風特別を制したのがキョクシンオー。いつもは後方追走から決め手勝負にかける同馬ですが、前走は先頭で障害をクリアするとそのまま押し切りました。キレる脚があるだけに積極策に出られては他馬に出番はありません。障害もキレているいまなら引き続き好勝負可能でしょう。
 こちらも末脚自慢のアローコマンダー、前走で連勝は2で途切れたものの好調を維持しているトカチタカラ、障害巧者のヒロノドラゴンらが続きます。

 5月25日(日)のメイン第11レースはシルバーカップ(オープン)
 前開催のさつき特別(オープン)の1、2着、マルミシュンキナリタボブサップが再び一騎打ちを繰り広げそうです。
 2頭ともスピードタイプだけに、ハイペースでレースを引っ張ることが予想されます。そのため、一角崩しの候補としては、ミサイルテンリュウニシキユウなど両馬から離されずに追走できる馬の名前が挙がります。
 馬場水分5.1%と軽い馬場だった前走じゃらんカップ(オープン)で、スーパークリントンが10カ月ぶりの勝利を挙げました。もともとは時計のかかる馬場でじわじわ伸びてくるタイプだけに、馬場状態としては今回のほうが向くはずです。久々勝利の勢いを駆ってみるのも面白いかもしれません。

 

ばんえいジョッキーファイル(3) 大口泰史

2008年5月21日(水)

第3回 サウスポーのプライド  大口泰史

 3回目のばんえいジョッキーファイルは、サウスポー・大口泰史(ひろし)騎手です。左ききの騎手は現在、大口騎手と船山蔵人騎手の2人がいます。

 インタビューかい、ちょっと待っててね。

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軍手をしたまま、きれいに手を洗う大口騎手

--- なにをしているんですか?

 こうやって、使ったあとはきれいに軍手を洗っておくの。こうしたら何度でも使えるしょ。ものは大事に、だな。
 (ばんえい)ガイドブック見た? 古林先生がさ。珍説って……。失礼だよな。左からぼったら(追ったら)走るっていう。

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古林先生の愛馬「ミヤビライコウ」の主戦は大口騎手です

 今年のばんえいガイドブックの中で、「馬券おやじは今日も行く」の執筆者・古林先生は、サウスポーの大口騎手への乗り替わりは買い?とこいうことを「珍説」と説明しています(P17参照)。

 (古林先生の写真を見て)学校の先生じゃないみたいだな。
 (その下の自分の写真を見て)これいい写真だな。こうやって映ったらたいして太ってるように見えねえな。

--- 古林先生に伝えておきます(笑)。さて、ばんえいの世界に入ったのはどうしてですか。

 うちのオヤジが好きだったんだ。出身? 陸別。

--- 陸別は帯広と北見の間にありますが、どちらも見に行かれてたんでしょうか。

 北見かな。オヤジはかなりの競馬ファンだったんだ。

--- 騎手になりたくてばんえいの世界に入ったんですか?

 そうそう。中学卒業して厩務員として入って18から試験受けたのかな。19で学科受かったけど落とされたんだ(次の年に合格)。

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--- 思い出に残る馬と期待の2歳馬を教えてください。

 やっぱりユミタロウだね(旭川記念で初重賞制覇)。期待の2歳は、その弟のプロンガー。

--- 今、自宅は北見ですよね。帯広一市になって、いかがでしょう。

 帯広からだと北見まではゆっくり行って2時間半くらい。
 一市になってかい? 単身赴任だし、経済的にはやっぱり辛くはなったけど、仕事が続いたのでとりあえずはよかったと。みなさんの協力を得て、つながって仕事があるわけだから。

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--- ご家族は奥様と……お子さんは何人ですか?

 娘がひとり。今年入学したんだ、小学校(ニコニコ)。

--- ところで、全部左ききですか?

 そう。ご飯食べるもの左。野球も左投左打。字を書くのは直されたけどね。サッカーは、あまりやったことないけど……多分左でないか。

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--- 左の騎手は大口さんが騎手になった当時いましたか?

 いや、いない。入って何年かして夏井さん(元騎手)が受かったのかな。

--- 左ききのよさは何でしょう。

 やっぱり、ズブい馬にはちょっと効くんじゃねぇか。

--- 右ききの騎手がバックハンドのようにするのと同じではないんですか?

 そりゃあ、違うって!!

--- すいません……やっぱり違いますか。
 
 違うさ! 今さらそんなこと言われるとはなぁ(笑)。

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--- 競馬場を好きにしていいと言われたら大口さんならどうしますか。

 自分が主催する!
 まず、生産馬を増やして。施設をきれいにして。そして場内の飲食店をもっと多くして。そして市の協力を得て道の駅にして。観光客呼んで。
 今やってるって? そういう夢はね、昔から俺ら
(騎手同士)で言ってた話なんだよ。

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--- はい。ではファンに一言お願いします。

 まぁ、一番今が苦しい時だけども、せいいっぱい頑張りますので応援よろしくお願いします。
 ありきたりだけど。なんとかこれを乗り越えるから。

 昔、騎手同士で「こうすれば競馬場はもっといい」という話をしていたのを聞いたことがあります。
 その後も存続活動の場でよく大口騎手の姿を見かけました。ファンあっての競馬、という話題の時に、そうだ、と強く頷いていた姿が印象に残っています。
 取材のあと、私が売上一覧の表を見ていると「入ってるー?」と聞いてきた大口騎手。ばんえいがいい方向に進むようにと、いろいろ心配し、考えているのですね。
 サウスポーは、レース中にスタンド側を向いている騎手でもあるのです。


取材・文・写真/斎藤友香

今週の見どころ(5/16〜5/18)

2008年5月15日(木)

 先週から始まったナイター開催ですが、場内ではとかち海おでんを販売する屋台(6月29日までの開催日17:00〜20:00・各日限定50食)が人気のようです。
 おでんの具材には地元十勝産の新鮮な海産物がふんだんに使用されているとのこと。まだ夜は肌寒いこの季節、温かいおでんを食べながらホットなレース観戦を楽しみください。

 5月16日(金)のメイン第10レースは、ばんえい青葉特別(400万円未満)
 中心は今季開幕から2戦連続連対中のグレートサンデー。今季初戦の400万円未満(4月26日)では、差のない障害3番手から馬なりのまま残り30メートルで抜け出す盤石のレースぶり。昨季は準オープンで活躍していた底力をいかんなく発揮しました。この相手関係なら実力・実績とも一枚上だけに、今回も連対を伸ばしそうです。
 前走勝入混合400万円未満(5月5日)でグレートサンデー(2着)を破っているマックスセンプーが相手筆頭。この2頭を含めた5頭がほぼ同時に先頭で障害を越えての叩き合いから、残り20メートルで抜け4頭を突き放しました。前走はグレートサンデーより10キロ軽かったのが、今回は昇級により同重量の戦いとなりますが、好走の期待が高まります。
 そのほか、前走の4歳オープン戦を圧勝したコーネルフジや、前開催の春駒特別(400万円未満)で大接戦の2着争いを繰り広げたハマナカキングチヨノキングらも争覇圏でしょう。

 5月17日(土)のメイン第10レースは緑風特別(500万円未満)
 好調馬が揃い大混戦が予想されますが、前走ばんえい十勝オッズパーク杯で5着に健闘したキョクシンオーに期待します。その前走は400万円条件からの格上挑戦でしたが、トップハンデ馬と20キロ差と恵まれたわけではありません。しかし最後はきっちり末脚を伸ばしてきました。今回のメンバーの多くは、昨季600万円・混合700万円未満戦などでしのぎを削ってきた相手たちだけに、昇級戦でもまったく格負けしません。
 5月4日のスーパージョッキー賞(混合500万円未満)で開幕2連勝を飾ったトカチタカラや、同レース2着ストロングペガサス、1番人気を裏切った(5着)フクノカミカゼらも上位進出の可能性は十分。
 4月26日の藤丸カップ(オープン混合)で、やや離れた障害クリアからぐいぐい追い込んできたバンゼン(2着)、アローコマンダー(3着)の2頭も差はありません。

 5月18日(日)のメイン第11レースは、さつき特別(オープン)
 前走で、ばんえい十勝オッズパーク杯か、大雪賞(オープン)を使った馬がメンバーの多くを占めます。
 ばんえい十勝オッズパーク杯で惜しくも勝ち星を逃したナリタボブサップ。カネサブラック(1着)と並んで先頭で障害をクリアしマッチレースを展開。ゴール前、わずかに脚色で劣り2着でしたが、相手が悪かったというほかありません。勝ち馬不在のここはチャンスです。
 そのレースで3着だったマルミシュンキは離れた位置からよく追い込んで、あわやの場面を作りました。馬体重・前走比プラス55キロの影響があったのかもしれず、今回は絞れてくれば勝ち負けの期待がかかります。
 前述2頭が有力ですが、割って入るなら大雪賞では1番人気で3着だったホクトキングに注目。その前走は、1着ヤマノミントは馬場水分4.1%とスピードが生きる馬場状態、2着ニシキダイジンは他馬に絡まれずに逃げられた、とそれぞれの好走条件にハマったと考えられます。その点、ホクトキングは好走にあまり注文がつかないタイプ。目下障害もキレているだけに、一発逆転の可能性を秘めているといえるでしょう。

ばんえいジョッキーファイル(2) 西弘美

第2回 パパはばん馬が大好き  西 弘美

 2回目のばんえいジョッキーファイルは、今年3月のばんえい記念をトモエパワーで制した西弘美騎手です。昨年、息子である謙一騎手がデビューを果たしました。背が高くて笑顔の優しい西騎手ですが、レースの時は表情ががらりと変わります。

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 身長? 178センチ。謙一は……175かな。高く見える? 髪立ってるからな(笑)。
 この冬に500グラム太ったけど、今はもう大丈夫。調教で体力使ってるから(笑)。

--- 謙一君の騎乗ぶりを見ていかがですか。

 う〜ん。どうだろね。最近はやっと見れるようになってきたけどね。ぎこちなさがなくなってきたんじゃないの。

--- ここ最近活躍していますが、さすが厳しいようですね。

 フフフ……1年や2年で乗れたら苦労しないもんな。思いっきり乗ってるようだからいいんでない。

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ばんえい記念・トモエパワー

--- 西さんの場合、思い出の馬は、ばんえい記念を勝ったフクイチ、イエヤスなどたくさんいると思いますが。

 カネミフロンテイア(ばんえいダービー、チャンピオンカップなど重賞7勝)。あの馬に一人前にしてもらったんだよね。今現在も収得賞金の……3歳の時の記録だけどね、抜かれていないわ。うん。

--- 期待の2歳馬はいますか。

 ソトガハマモリウチかな。

--- 乗っていて違いを感じますか。草ばん馬で強かったそうで。

 うん、まあ今の時期はね。早くから調教されてるし。

 ばんえい競馬のルーツともいわれる「ばん馬大会」は西騎手の出身地・岩手県を含む東北地方でも行われています。東北では「馬力大会」といい、そりには乗らず馬の前で引っ張る扱者と、後ろから追いたてる助手の2名で行います。以前私が東北のばん馬大会で、日程に一番詳しい方を紹介してほしいと周りの方に聞くと、「それは弘美だ」と言われました。

--- 西さんはよくばん馬大会に行かれるんですか?

 小学校上がる前から丸太引っ張る手伝いしてたし、ほとんどのばん馬大会に行ってたから、近所の子と遊んだことない(笑)。日曜日っていったら、ばん馬行ってた。
 いろいろなところでやってるよ。同じ日に2カ所でやってたりさ。
 この前も、三沢(青森県)行ってやってきた。舟形(山形県)もポスター送ってもらって、日程表ももらって。そうそう、西根(岩手県八幡平市)のまつりも行ってきた。
 扱者と助手は、どっちでもできる。普段は一人で調教とかやってるからさ。前で引っ張って、慣れたらもう馬が引っ張ってくから。声かけるだけで止まるし。

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--- ばん馬大会の魅力は?

 馬もそうだけどさ、馬好きが集まるからね。なかなか交流の場ってないでしょ。

--- 北海道に来て、違いはありました?

 最初こっちに来たときは、とまどってさ。なんでソリに乗って馬が言うこと聞くのって。後ろにいて、言うこと聞くのが不思議だったもの。手綱なんかも、持ち方わからなかったし。

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--- すぐにはばんえいの世界に入らなかったんですよね?

 最初は弟(西康幸調教師)が入って、それからオレもやるって。最初は大工してた。3年大工やって、あとは好きなことやってみっかなーって。

--- 西さんから見た、ばんえいの魅力はなんでしょう。

 やっぱり、おっきな1000キロクラスの馬が、騎手のかけ声で走ったり、止まったりするから、力が入るよね。
 好きなところ? 障害だよね、やっぱり。駆け引きとか、間合いっていうの。乗ってるのは先行が多いけど、追い込みの方が好きなんだ。

--- では、ファンに一言。

 レースは見てほしいね。レースが終わって興奮状態にある馬の、筋肉の張ったボディビルダーみたいな、あれが一番かっこいいよね。いかにも1着獲って勝ったぞっていう、あれがすごくいいよね。

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--- 個人的に不思議に思っていることがあるのですが、鈴木勝堤騎手と生年月日が同じですよね? 全く違うように感じるんですが(笑)。

 そんなに違う? (俺は)酒あまり飲まねぇからかな(笑)。

 優しい口調でぼそぼそっとしゃべる西騎手。口数は少ないのですが、ばんえいやばん馬大会の話になるととても楽しそうに話してくださいました。心からばん馬が好きなんですね。
大騎手であることを忘れて、すっかり癒されてしまいました。

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取材・文・写真/斎藤友香

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