エムエスドンはここまで9戦して3勝、2着3回、3着2回で、馬券にからめなかったのはゴールドウィング賞の4着だけ。常にトップレベルの相手と戦ってきて、セブンカラーズやトリマゴクイーンなど、これまで先着された馬は今回不在というメンバー。さらに前走古馬格付けされてのB2特別で勝ち馬とコンマ1秒差で3着というのもおおいに評価できるもの。今回のメンバーでは実績最上位。
セイジグラットは、デビューした門別では2戦着外だったが、笠松転入後3着、2着のあと、除外を挟んでの5連勝中はいずれも逃げ切り。前走は2着メイクストームに2馬身差だが、着差以上の楽勝で、ここにきての充実ぶりが目立つ。
門別でJRA認定アタックチャレンジ勝ちがあり、金沢に移籍して2連勝で兼六園ジュニアカップを制したのがノブノビスケッツ。前走金沢ヤングチャンピオンは8着だが、気性的に難しいところがあり、前走はまったく力が発揮できなかった。今回初めての輸送競馬がどうかだが、持てる能力を発揮できれば勝ち負けまである。
イグアスワークは、ラブミーチャン記念3着のあとの前走寒椿特別を勝利。その勝ちタイム1分30秒9(良)は、セイジグラットの笠松1400メートルの持ちタイムを上回るもの。
ジュニアキングでセイジグラットの2着メイクストーム、同3着のヒロチャンらも印上位とそれほど差はない。
◎5エムエスドン
○4セイジグラット
▲10ノブノビスケッツ
△9イグアスワーク
△2メイクストーム
△6ヒロチャン
定量戦ゆえまぎれは少なく、強い馬が勝つレース。過去5年の成績を見ても、勝ち馬は1番人気か2番人気。1番人気の2勝はともに牡馬で、負けてしまった1番人気はいずれも牝馬で、しかも馬券にはからめなかった。ばんえい菊花賞で牝馬が3着まで独占した昨年も、ばんえいダービーでは牡馬が3着以内を占めたように、素直に格上の牡馬が強い。
イレネー記念、ばんえい菊花賞など重賞4勝のキングフェスタは、メンバー中唯一のオープン格付け。そのオープンクラスでも一線級の古馬相手に差のないレースをしているだけに、同世代同士では能力が抜けている。
相手は A1格付けの3頭で、順にヘッチャラ、クリスタルコルド、ヤマカツエース。
ヘッチャラは重賞タイトルこそないが、重賞では2着3回、3着3回。唯一重賞で馬券圏内を外したのがばんえい菊花賞(9着)だが、その後は自己条件のA1で3、2、3着と僅差の勝負をしているだけに調子落ちはない。
クリスタルコルドは、ばんえい大賞典、はまなす賞を連勝と、今年春から夏にかけて充実を見せた。ばんえい菊花賞でもキングフェスタの次に重い720kgで3着に入った。ここ2戦は惨敗だが、重賞で賞金を稼いでクラスが急に上がったため。同世代同士なら互角にやれるはず。
ヤングチャンピオンシップを制したヤマカツエースは、その後、同世代同士の重賞では結果は出ていないが、ここ2戦の自己条件では5、3着と、クリスタルコルドには先着している。
イレネー記念やばんえい大賞典など重賞2着が3回あるトワイチロ、ばんえい菊花賞4着のあと自己条件で3連勝とここに来て調子を挙げているレグルスらも連下争いなら。
◎6キングフェスタ
○3ヘッチャラ
▲9クリスタルコルド
△10ヤマカツエース
△7トワイチロ
△2レグルス
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コロナの世になってから3年近く。遠方への移動の制限もなくなり、競馬場は入場人員の上限が設定されていることもあるが、ひとまず多くのファンが入場できるようになった。
我々の取材に関しても、まだ一部制限している競馬場はあるものの、多くの競馬場で以前と近いかたちで取材ができるようになってきた。
園田競馬場には、今年9月15日の西日本ダービーが、コロナ以降では初めての訪問だった。そして12月21日、兵庫ゴールドトロフィーが今年2度目の取材。
コロナ禍では、ありがたいことに多くの競馬場でむしろ売り上げが伸び、ネットでのLIVE配信なども盛んになって、おそらく新規ファンも増えたことだろう。しかし競馬場では無観客開催が続いたことなどで失われつつあるものも少なくない。それは古き良き競馬場の風景。
園田競馬場では、入場門を入って右側にある食堂街が、すべてシャッターを下ろしてしまった。ちなみに、そのだ・ひめじ競馬の公式サイトにある、園田競馬場の場内施設案内図には、まだ「食堂」という表記が残っているのだが。
シャッター街となってしまった入場門を入って右にある食堂
いちばん手前にあったのが『ポニー』というお店。店内には騎手のサインや、昔の重賞の口取り写真などが飾ってあった。ここで食べた記憶は、そばめし。10年以上前だったか、そばめしが全国的なブームになったことがあり、冷凍食品としてスーパーなどに並んだこともあった。たしかそのブームが去ったあと、ここでそばめしを食べたのだが、店員のおばちゃんが言うには「そばめしは関西では昔から普通にあった」という関西のソウルフード。そしていつも食後にはコーヒーをサービスしてくれた。
『ポニー』のそばめし、500円(2014年9月)
この食堂街の一番奥にあったのが『三木屋』。あまり目立たない場所なので、カウンターに座っているお客さんの多くは常連さん。このお店で出色だったのが、プルコギライス。これがワインコイン、500円で食べられるのはありがたかった。
『三木屋』のプルコギライス、500円(2016年9月)
これら、おそらく昭和の時代から営業していたと思われるお店が相次いで閉店したのは、コロナだけが要因ではない。店主や店員さんがみな高齢となり、跡を継ぐ人もなく、引退という感じで閉店したお店は、園田競馬場に限らず全国の競馬場で、少なくない。
園田競馬場には、パドック奥にも食堂街がある。こちらはシャッターが降りているところもあるが、半分くらいは元気に営業している。
向かって左、コースから一番遠いところにあるのが、園田競馬場名物、タコ天で有名な『明石屋』。隣に『日高』という表記があるが、このお店は食堂街の真ん中あたりの広い店舗に移動して営業している。そしてホルモン専門の『西ホルモン』。
さらにその右にあるのが『園田屋』で、いちばん右のコースにもっとも近いところにあるのが、わりと最近(といっても10年くらいは経っていると思われる)オープンした『串勝や』。
園田競馬場で、定食やら麺類から、おでんなど酒のアテになるようなものまで、さまざまな食を提供しているのが『園田屋』だ。
ここで僕がよく食べたのは、焼きそば定食。
『園田屋』の焼きそば定食、750円(2018年7月)
炭水化物の二乗ということでは、関東では「ありえない」という人もいるが、ラーメンライスは普通にあるので、それと変わりないと思えばいいのではないか。僕は学生のころ、家でスパゲティ+ご飯とか食べてたし。ちなみに関西では、焼きそば定食というメニューがわりと普通にどこでもあって、お好み焼き定食というのもある。
久しぶりにその焼きそば定食が食べたくなって、この日、いざ園田屋へと入ったのだが、なんと。メニューから焼きそばが消えていた。ショック。そういうわけで、食べたのが親子丼。ここの親子丼は、玉子には完全には火を通さず、そして青ネギを使っているのが特徴。
『園田屋』の親子丼、700円(2022年12月)
さて、この園田屋さんはいつから営業しているのか、聞いてみた。すると......
「90年」と。
ん?1990年から?と思ったが、そんな最近のわけがない。なんと!90年前から、3代に渡って受け継がれているのだそうだ。ああ、びっくり。
仮にちょうど90年前とすると、1932年は昭和7年。園田競馬場の歴史を地方競馬全国協会発行『地方競馬史 第一巻』で調べてみると、戦前の地方競馬規則のもと、旧・園田競馬場が兵庫県川辺郡園田村(当時)に開場したのが昭和5年(1930年)とある。「90年」というのは、おそらく「ちょうど90年」ということではないだろうから、園田屋は、旧・園田競馬場の開場とほとんど時を同じくして営業を始めていたことになる。
当時、庶民の食べ物として親子丼というメニューがあったかどうかわからないが、とにかく90年の歴史を重ねた親子丼かと思うと感慨深い。
さて、園田競馬場で忘れてはならないのが、吉田勝彦アナウンサーだ。
実況を引退されてほとんど表に出ることはなくなったが、実は今でも開催日には毎日、実況席に"出勤"して競馬を見守っておられる。
この日も吉田さんはお元気にしておられた。
吉田さんの実況最後の日となったのが、2020年1月9日。その日の第6レースが最後の実況となり、その後、そのたんショップの前で行われたサイン会はたいへんな行列となって、並ぶ人数が制限されるほどだった。引退セレモニーには、小牧太騎手や岩田康誠騎手も来た。
マスコミのカメラもズラリと並んだ吉田勝彦さんのサイン会(2020年1月9日)
中国ではすでに新型コロナウイルスが発生していたが、大型客船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客から感染者が確認されたのは1月下旬のことだから、まだまだ日本ではコロナはほとんど知られていない存在だった。
しかしその後、コロナが日本にも上陸してあっという間に広がり、各地の競馬場が無観客開催となったのが2月下旬のこと。
1月9日が最後の実況となったのは、その翌週から姫路開催となり、「園田で実況を終えたい」という吉田さんの思いからだった。
7年半ぶりに姫路競馬が再開したのは、まさにその2020年。姫路がなければおそらく1月9日という年初の慌ただしい時期での引退とはなっていなかったはずで、仮にそれが年度替りの3月までということであれば、すでにコロナの無観客開催となっていて、引退セレモニーなどは不可能だった。
「最後の実況に日には、たくさんのお客さんに来てもらって、ほんとうによかった」と吉田さんが、懐かしく思い出すように語ってくれた。
そんなあれやこれやを思い出すと、吉田さんの引退のタイミングというのは、ほんとうに幸運だった。と、しみじみ思う。
ユメノホノオはデビュー2戦目から圧倒的な強さで3連勝。期待された黒潮ジュニアチャンピオンシップは4着だったが、スタート後に外からかぶされて砂をかぶると位置取りを悪くしてしまった。直線で伸びは見せたが、時すでに遅し。続く前走土佐寒蘭特別では3コーナーから1頭だけ明らかに違うスピードで先頭に立つと、直線半ばからは抑える余裕で8馬身差の圧勝。今回、ほかにこれといって目立った成績を残している馬はおらず、引き続き鞍上が吉原寛人騎手なら、よほどのことがないかぎり負けないだろう。
相手筆頭は、土佐寒蘭特別でユメノホノオの2着だったエムティドン。黒潮菊花賞は5着だったが、1番枠で最初の直線では包まれる形になって、後方まで位置取りを下げざるをえず、ユメノホノオ以上に苦しい競馬を強いられた。ここまで8戦して6連対。今回は真ん中6番枠で、すんなり好位をとってユメノホノオにどこまで食い下がれるか。
逆に黒潮ジュニアチャンピオンシップで、すんなり2番手をとってスムーズに競馬を進められたのがハチキンムスメ。逃げたマリンジェミナイと直線追い比べとなって半馬身差で勝利。3番手追走のシュペールミミがそのまま3着で、結果的には前残り。土佐寒蘭特別では、逃げたマリンジェミナイが最下位に沈み、ハチキンムスメは2着エムティドンから3馬身差の3着。デビュー戦で5着に負けた以外はすべて3着以内と安定した成績だが、黒潮ジュニアチャンピオンシップのように楽な競馬はさせてもらえないだろう。
さらに連下争いには、黒潮ジュニアチャンピオンシップは11着も、その後2戦連続2着のリワードジョン、デビュー10戦目の初勝利から充実を見せ、前走で2勝目を挙げたミズワリヲクダサイ。
◎8ユメノホノオ
○6エムティドン
▲10ハチキンムスメ
△11リワードジョン
△2ミズワリヲクダサイ
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岩手から川崎を経由して転入したリュウノシンゲンは、ここまで佐賀で7戦5勝。負けたのはJpnIIIのサマーチャンピオンと、距離不安のあった九州大賞典だけ。その九州大賞典は1番人気に支持されたものの、早め2番手から2周目向正面で先頭に立ったが、終始グレイトパールにマークされる厳しい展開で、最後の直線を向いたところではすでにお釣りがなかった。適距離はマイルあたりと思われるが、1800メートルも守備範囲。佐賀では吉野ヶ里記念に続くタイトル奪取の期待だ。
シャンパンクーペは中央オープンからの転入初戦となった前走、準重賞の宝満山賞を勝利。2着アエノエンペラー、3着コンカラーと、タイム差なしの接戦をしのぎきった。中島記念と同じ1800メートルで、2分00秒8(良)という勝ちタイムは物足りないが、馬体重プラス10キロの太め残りもあり、転入2戦目で前走以上のパフォーマンスが発揮できれば勝ち負けまでありそう。
中央オープンから大井を経由して転入したスパーダは、ここまで佐賀での3勝はすべて1400メートル。佐賀オータムスプリントを制したように、1400メートルの持ちタイムは重賞級だが、中央時代に一度だけ経験した1800メートルの距離でその能力を発揮できるかどうか。
九州大賞典4連覇を果たしたグレイトパールは、この中島記念にも2連覇がかかる。ただ1800メートルという舞台では相手候補まで。
コンカラーは中央オープンから転入した昨年、1800メートルと2000メートルで勝利を挙げたが、今年は1300メートルで1勝のみ。ただ3走前の韓国岳特別ではリュウノシンゲンの3着で、良馬場1分57秒6というタイムで走っており、展開次第で上位食い込みの可能性はありそう。
3歳で挑戦のタケノサイコウは、2歳時に1800メートルのカペラ賞を制しているが、あらためて距離適性が試される。
◎8リュウノシンゲン
○3シャンパンクーペ
▲9スパーダ
△1グレイトパール
△5コンカラー
△10タケノサイコウ
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