北海道から転入初戦のポップディーヴァは、フレッシュチャレンジを勝ったあと2歳オープンの2戦はともに着外だが、前走ペリドット特別の勝ち馬ソロユニットは、その後重賞のリリーカップで圧倒的な強さを見せた。ポップディーヴァはペリドット特別で6着だったが、その馬から1秒1差ならむしろ評価できる。あとは1400メートルの距離と、門別とは逆周りの盛岡コースが合うかどうか。
スターサーバルも門別からの移籍組。移籍初戦となった若鮎賞は、逃げて直線失速したが、初めての芝に加えてペースが速かった。門別では未勝利勝ちのみの実績だが、未勝利馬が何頭かいる今回のメンバーなら能力上位は間違いない。
デビューから芝で2連勝としたのがマツリダスティール。前走若鮎賞は出遅れて最後方からとなったが、3〜4コーナーから直線にかけて外をまくって出ると、2着ゴールデンヒーラーとはアタマ差の接戦だが強い勝ち方を見せた。さて、初めてのダートがどうだろう。
ダート2連勝から芝の若鮎賞で3着だったのがリュウノシンゲン。2戦目に盛岡ダート1400メートル戦を勝っているが、北海道から転入した◎○を相手に勝ちきるには、さらなる成長があるかどうか。
リュウノイサベルも門別からの移籍組だが、ここまで未勝利。前走水沢1300メートル戦の2着で上昇のきっかけをつかんだかどうか。
◎10ポップディーヴァ
○7スターサーバル
▲5マツリダスティール
△2リュウノシンゲン
△11リュウノイサベル
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昨年までは10月下旬に1200メートルで行われていたが、時期が2カ月ほど早まって未来優駿の指定からはずれ、距離も1700メートルに延長され、サンライズカップの前哨戦という位置づけとなった。
ラッキードリームは前走芝のコスモス賞こそ通用しなかったが、1700メートルのターフチャレンジでは直線で逃げ馬をとらえると、楽々と突き放し余裕があっての完勝。稍重1分50秒0というタイムも速い。
ブリーダーズゴールドジュニアカップで勝ち馬と接戦の2、3着だったのが、ノットリグレット、トランセンデンス。ノットリグレットは直線を向いたところでは勝ったような勢いだったが、ブライトフラッグに粘られてアタマ差及ばず。ゴール前脚を使って一気に迫ったトランセンデンスは半馬身差で3着。このあたりは展開ひとつで能力的に差はない。
ブリーダーズゴールドジュニアカップ5着だったスティールグレートは、前半かかるような場面があった。栄冠賞2着から能力面で劣るところはないが、この距離は長いような気がする。折り合いをつけてどこまで。
ターフチャレンジでラッキードリームから離されての4着だったシビックドライヴだが、同じ1700メートルのウィナーズチャレンジでは1分50秒6という好タイムで快勝。さらなる上積みがあれば逆転も。
◎4ラッキードリーム
○8ノットリグレット
▲5トランセンデンス
△3スティールグレート
△7シビックドライヴ
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中央1勝クラスから転入したエイシンガネーシャに期待する。転入初戦は古馬B1に格付けされ惜しくも2着。負けたとはいえ、3歳のこの時期にそのクラスで好勝負ということでは、能力上位と考えてよい。続くトライアルのクリスタル賞では、ガミラスジャクソンやイチライジンら重賞勝ち馬を一蹴した。中央では未勝利戦を勝ったのみならず、1勝クラスでも掲示板内が3回。それがいずれもダート1800メートルということでは、距離的にもベスト。
2歳年末から菊水賞まで圧倒的な強さで5連勝としたステラモナークだったが、のじぎく賞では他馬の厳しいマークに遭って5着、兵庫ダービーでは、逃げたディアタイザンを3コーナー過ぎで一旦はとらえたものの、直線で振り切られ半馬身差で惜しくも2着。目標にされる立場ゆえ、厳しいレースが2戦続いた。今回そこから約3カ月ぶりの実戦で、春からの成長があるかどうか。
勝つ時は強いが負けるときはあっさりというガミラスジャクソン。菊水賞は11着大敗で、兵庫ダービーは勝ち馬から1秒差で5着。しかしながら前走トライアルのクリスタル賞では、勝ったエイシンガネーシャより1キロ重い57キロを背負ってクビ、アタマ差の3着。それが今回は定量56キロとなれば、逆転も期待できそう。高知から呼ばれた赤岡騎手がどんなレースを見せるかにも期待だ。
のじぎく賞9着も、その後3連勝で古馬B2特別まで制したユウキラフェールも成長がうかがえる。クリスタル賞では逃げてエイシンガネーシャのクビ差2着に粘ったポリバレント。前走園田では初めての1700メートル戦を快勝したジョウショーカーブらも、それほど能力差はなさそう。
◎5エイシンガネーシャ
○9ステラモナーク
▲7ガミラスジャクソン
△8ユウキラフェール
△4ポリバレント
△10ジョウショーカーブ
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ストーンリバーは2歳時以来重賞勝ちがないが、南関東でもオープン特別で上位を確保していた。兵庫に移籍してからのここまで4戦も勝ち星がないが、名古屋に遠征しての名港盃2着、園田の摂津盃4着は、いずれも地方同士ならレベルの高いメンバーが相手。今回、メンバーに恵まれたとまでは言えないものの、久々の重賞制覇を期待したい。
ランガディアは中央オープンから岩手に移籍して快進撃。当初はダートの適性が疑問視されたが、むしろダートのほうがとも思われるレースぶりを見せ重賞3連勝。中央相手のマーキュリーカップJpnIIIでも1、2着馬から離されたとはいえ3着に健闘。マーキュリーカップJpnIIIで地元岩手所属馬が3着以内に入ったのは、じつに2001年のトーホウエンペラー(3着)以来のことだった。水沢コースで結果を出しているように、同じようなコース形態の金沢でも能力を発揮できそう。
3歳時に道営記念まで制したリンノレジェンドだが、4歳になって重賞ではやや苦戦。マーキュリーカップJpnIII(7着)でも手綱を取った吉原寛人騎手が金沢の舞台で巻き返しなるかどうか。
このクラスが揃うと地元勢はさすがに劣勢だが、地元同士ならまず崩れることがないティモシーブルー、利家盃を制したサノサマーらが地元の意地を見せられるかどうか。
◎4ストーンリバー
○8ランガディア
▲5リンノレジェンド
△3ティモシーブルー
△1サノサマー
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地方競馬の各地に根ざした重賞レース名について紹介する第4回(最終回)は、ホッカイドウ競馬とばんえい競馬(過去の回はこちら、第1回、第2回、第3回)。
ホッカイドウ競馬でその地の象徴といえば、赤レンガ記念。『赤レンガ』とは北海道庁旧本庁舎のこと。1888(明治21)年に建てられたレンガづくりの建物は、1969(昭和44)年に国の重要文化財に指定され、見た目のとおり『赤れんが庁舎』と呼ばれ親しまれている。
日本中央競馬会理事長賞という名称で1964(昭和39)年に始まった重賞だが、赤レンガ記念となったのは1988(昭和63)年から。今年が第57回で、ホッカイドウ競馬では道営記念(今年で第63回)に次いで、歴史を重ねた伝統のレースとなっている。
当初は函館や札幌(JRAではなく道営の開催)で行われ、赤レンガ記念となってからも、旭川、帯広、岩見沢、門別で行われたこともあるが、札幌を代表する観光スポットでもあり、門別単独開催となる2010年以前は札幌競馬場で行われることが多かった。
なお札幌観光協会のウェブサイトによると、北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)はリニューアル工事のため2019年10月1日から2022年度まで休館となっている。
旭岳賞の『旭岳』は、旭川市と同じ上川支庁にある火山。旭川の近くということでは、旭川競馬場がある当時に始まったのかとも思ったが、まだ今年で第6回。門別単独開催となったあとに新設された。標高2291mの旭岳は、北海道ではもっとも高い山。そういう意味では北海道のひとつの象徴ともいえる。
そして今年新設されたのが、ウポポイオータムスプリント。今シーズンのホッカイドウ競馬の開催日程が発表されて初めて見た時は、『ウポポイ』って何?と思った。
ウポポイとは、アイヌ文化の復興・発展のため今年オープンした『民族共生象徴空間』の愛称で、一般投票によって決められたもの。新型コロナウィルス感染拡大防止のため開業が延期されていたが、7月12日にオープンしている。
場所は白老町で、新千歳空港から車で約40分。門別競馬場からもそれほど遠くないだけに、道外から門別競馬場に行くという方は、訪れてみてはいかがだろうか。
最後は、ばんえい競馬。
ばんえい競馬の象徴といえば、年に一度1トンのソリで争われるばんえい記念だが、レース名としてばんえい競馬の歴史を伝えるのは、旭川記念、岩見沢記念、北見記念、帯広記念という4つの重賞。
ばんえい競馬は2007年度から帯広競馬場での単独開催となったが、それ以前は旭川、岩見沢、北見、そして帯広の各競馬場を移動しながら行われていた。
その4市の持ち回りで開催されていた時代、それぞれの競馬場を代表する古馬重賞が、それぞれの"記念"レースだった。それゆえもっとも歴史の浅い北見記念でも、今年度の回次が41回という伝統の重賞だ。
ちなみに4市で行われていた当時、旭川記念だけは4歳馬限定の重賞で、古馬重賞は旭王冠賞だった。それが帯広での単独開催となった2007年度からは"記念"レースとして統一する形で旭川記念が古馬重賞となり、旭王冠賞というレース名は廃止された。
現在でも4つの記念レースは、古馬の主要重賞として「4市記念重賞」などと呼ぶ人もいる。
3・4歳混合の重賞・はまなす賞の『ハマナス(浜茄子)』は北海道の花。またWikipediaによると石狩市をはじめ北海道の3市9町の花ともなっている。
個人的なことだが、はまなすといえば、「知床の岬に はまなすの咲くころ」という歌詞で始まる『知床旅情』という歌を思い出す。俳優の故・森繁久彌の作詞・作曲によるもので、のちの1970年代初期に加藤登紀子の歌で大ヒットした。
2歳シーズン三冠の一冠目、ナナカマド賞の『ナナカマド』は、Wikipediaによると旭川市をはじめ北海道の9市17町の木とされている。
ばんえい競馬で忘れてはならないのが、イレネー記念の『イレネー』。日本でも世界でも、顕著な活躍馬の馬名をレース名にしたものはめずらしくないが、ばんえい競馬におけるイレネーは特別なもの。競走歴はなく、1908(明治41)年にフランスから輸入された種雄馬(重種馬では種牡馬ではなく種雄馬という)。家畜改良センター十勝牧場のウェブサイトによると、イレネーは18年間で579頭の産駒を出し、そのうち196頭が種牡馬になった。またその直系の子孫を合わせると、イレネーの系統からは559頭もが種雄馬になったという。
日本の重種馬の改良に偉大な功績を残したことで、帯広競馬場の入口にはイレネーの銅像が建立されている。