5月28日に行われた3歳馬による特別・はまなす賞(盛岡芝1600メートル)は、見ごたえのあるレースだった。もちろん現場で見たわけではなく、ネットの映像配信であとから見たわけだが。
そういえばこの日は日本ダービーで東京競馬場にいたので、岩手の場外発売所で見ようと思えば見ることもできた。しかしはまなす賞の発走時刻は日本ダービーが終った後で、勝利騎手・調教師の共同記者会見を待ってるところだったので、申し訳ないことにすっかり忘れていた。
ところで東京競馬場内の岩手場外は、メインスタンド1階という便利な場所に移ってからけっこうお客さんがいるようで、これはとってもよかったと思う。
と、だいぶ話がそれたが、はまなす賞の話に戻る。
馬券的には馬連複150円という、よほどの大金を賭けられるような方でないとおもしろくない配当だが、決着した2頭、オウシュウクラウンとブラックショコラの能力の高さをあらためて知らしめるレースぶりに納得だった。
4コーナーではブラックショコラが先頭に並びかけ、オウシュウクラウンは外に持ち出したがまだ中団。馬群はほとんど一団で、このあたりでは2強の決着にはならないのかと一瞬思ったが、直線半ばで2頭が完全に抜け出し一騎打ち。ゴールでは、後ろから仕掛けたオウシュウクラウンが半馬身先着した。2着ブラックショコラと3着馬との差は4馬身だが、上位2強はともに他馬より3キロ以上重い58キロだったから、やはり3着以下とは着差以上の能力差がある。
これで現時点での岩手3歳の勢力図がほぼ確定した。今回の2頭に、岩鷲賞でブラックショコラの2着だったダンディキングを加えた3頭が完全に抜けた存在。
オウシュウクラウンは父ジェイドロバリーのUAE産で、昨年の千葉サラブレッドトレーニングセール(船橋競馬場)にダーレー・ジャパンから上場されていた馬(主取り)。冬季間は船橋に移籍していたが、岩手に戻ってこれで2連勝。重賞タイトルはまだないが、昨シーズンの岩手在籍時より格段に力をつけている。
ブラックショコラは、中央遠征の1戦を除けば地元岩手では10戦4勝、2着4回、3着2回と安定した成績で、重賞も金杯と岩鷲賞を制した。2歳時の盛岡開催では芝コースのみを使われ、今回は、その後JRA東京に遠征して以来の芝のレース。父ブラックホーク、母の父リアルシャダイという血統からも、芝ダート兼用なのだろう。
そして今回出走しなかったダンディキングだが、重賞タイトルはないものの、4月23日のスプリングカップ(水沢)でブラックショコラ(3着)に決定的な差をつけて勝った。デビュー勝ちは盛岡の芝コースだったが、以降はダートのみを使われている。母はアラブのミスハクギンだけに、ダートのほうがいいのかもしれない。父は北九州記念を勝ったダンディコマンドだが、その父はニホンピロウイナー。母のミスハクギンもマイル以下で好成績を残した馬で、ダンディキングの適性はもしかしたらダートのマイル以下である可能性がある。
さて、6月11日に行われる岩手ダービー・ダイヤモンドカップだが、もちろんこの3頭が中心。舞台がスプリングカップと同じ水沢ダート1600メートルならダンディキングにとっても適性面での不安はない。
気になるのは、はまなす賞から中1週しかないというローテーション。ダンディキングの出走は間違いないだろうが、はまなす賞に出走した2頭は、果たしてどうだろう。
3強のうち2頭しか出走しないなら、馬連はまた200円前後のオッズになるだろう。ダンディキングしか出ない場合は、2着争いが混戦で馬券的にはおもしろいだろうが、そんなレースは望まない。
岩手ダービー・ダイヤモンドカップは、馬券よりも、3強の動向、そしてレースぶりに注目したい。
今年、新たな試みとして行われる「ダービーWeek」が近づいてきた。念のため日程を掲載しておく。
6/4(日) 九州ダービー 栄城賞(佐賀)
6/6(火) 札幌ダービー 北斗盃(札幌)
6/7(水) 東京ダービー(大井)
6/8(木) 兵庫ダービー(園田)
6/9(金) 東海ダービー(名古屋)
6/11(日) 岩手ダービー ダイヤモンドカップ(水沢)
ぼくは今のところ、九州ダービーと東京ダービーに行く予定だ。
レースはもちろんだが、中でもやはり佐賀競馬場で行われるオープニングイベントが楽しみ。わざわざ佐賀まで行くのは、このオープンニングイベントの取材のためといってもいいくらいだ。
あの関口房朗氏が来場するというから、何が起こるかわからない。
そして、ぜひとも食べてみたいのが、777個限定販売の「ゴールデンバーガー」(500円)だっ!!!
佐賀競馬場の開催日にワゴン車で販売している「からつバーガー」と、関口会長とのコラボレーションということらしい。
自慢じゃないが、ぼくは佐賀競馬場でこの「からつバーガー」を今までに2度食べている。プレーンのハンバーガーは230円だが、写真はもっとも高価な380円也の「スペシャルバーガー」。食べかけなのは、まことにまことに申し訳ない。
「からつバーガー」は、注文するとまずバンズを温めるところからはじまって、卵や肉もそのつど焼いているので10分ほど待たされるが、間違いなくできたてが食べられるのはうれしい。かなりのボリュームがあり、手作り(たぶん)の上に、新鮮なレタスもたっぷりなので、街中のハンバーガーチェーンのものなどと違ってヘルシーな感じがする。
で、佐賀ダービー当日に販売される「ゴールデンバーガー」だが、特別に高級神戸牛を使用し、なんと金粉入り。普段の「からつバーガー」は写真のような包装紙なのだが、これが関口会長の顔写真入りになるらしいというから、なんともシュールだ。
『佐賀ダービー栄城賞』当日、第1レース前に佐賀競馬場に着いてまずやることは、限定777個の「ゴールデンバーガー」を食べること。これに決まり。
笠松のミツアキタービンが、いよいよ復帰する。
一度は4月に能検(能力検査)を受ける予定だったものが延期となり、あらためて5月19日の能検に登場。1400メートルを1分28秒3という実戦並みのタイムで駆け抜け、合格した。
ミツアキタービンは、もともと上山競馬でデビュー。2歳時に2戦して笠松に移籍してきた。3歳前半は重賞にこそ出走していたものの、それほど目立つ存在ではなかった。最初に注目を集めたのは重賞未勝利のまま出走したダービーグランプリ(盛岡)。6番人気ながら、ユートピア、ビッグウルフの3着に入った。
今考えてみれば、この年の3歳世代は中央も地方も高いレベルで上位拮抗のメンバーが充実していた年だった。ジャパンダートダービー(大井)は、この年のダートグレードの中でも1、2位を争う名勝負と言われたレース。ビッグウルフ、ユートピア、ナイキアディライトの直線で叩き合いは見事だった。
そしてダービーグランプリでは、この1、2着が入れ替わり、出走しなかったナイキアディライトに代わり、地方勢で台頭したのがミツアキタービンだった。
ユートピアは、あらためて書くまでもないが今年、ドバイ・ナドアルシバ競馬場のゴドルフィンマイルを制し、その後ゴドルフィンにトレードされた。
ビッグウルフは残念ながらジャパンダートダービーが最後の勝ち星。昨年兵庫に移籍し、3戦目となった12月の園田金盃では向正面で競走中止。大事には至らなかったものの、脚部不安が解消せず、5月はじめに登録抹消となった。
ナイキアディライトは、GIにこそ手が届いていないものの、現在に至るまで常に中央の一線級と互角に戦っている。
そしてミツアキタービンだが、全国のファンにその存在を知らしめたのは、4歳時のフェブラリーステークスだろう。直線では一瞬あわやというレースぶりで、勝ったアドマイヤドンからわずか0.2秒差の4着と好走した。
そしてGIIのダイオライト記念(船橋)とオグリキャップ記念(笠松)をいずれも堂々の1番人気で圧勝して見せた。GI制覇に大きな期待がかけられたものの、脚部不安での戦線離脱はほんとうに残念だった。
昨年6月には、地元の準重賞で約1年ぶりの復帰戦を勝利するも、再び休養入り。以来、再度1年の休養をはさんで戦線に復帰することになった。
近年のダートグレード戦線は、地方勢が完全に劣勢。2歳戦を除けば、互角に闘い続けているのは、船橋のアジュディミツオーとナイキアディライトくらいしかいない。
5月31日の準重賞・ローレル争覇(笠松1800メートル)に出走予定のミツアキタービンには、再びGIやGIIで上位をにぎわす存在としての期待もかかっている。
仕事がら、たまにではあるが、地方競馬全主催者のホームページを順番にチェックしたりすることがある。
昨日は笠松競馬のところで「あっ」と目が止まった。
「坂口重政騎手引退について」
引退すること自体についてもだが、その伝えられ方が、あまりにもなにげなくされていることにちょっと寂しさを感じた。
地方競馬通算12,855戦1,812勝。
笠松にはきわめて近い年代に、安藤光彰・勝己兄弟、兵庫に移籍した川原正一騎手、昨年10月に2,000勝騎手の仲間入りを果たした濱口楠彦騎手がいる(いた)。坂口重政騎手を含めたこの5名は、いずれも1959年か60年の生まれ。これほど優秀な騎手がまとめて出た年代というのも珍しいのではないか。
地方騎手としてのひとつの大きな区切りである2,000勝には届かなかったものの、同世代のこれらのライバルと勝ち星を奪い合いながら残した成績としてはきわめて優秀なものだろう。
坂口重政騎手といえば、何と言ってもルイボスゴールドだ。
ルイボスゴールドは95年の3歳(旧4歳)時、金沢のサラブレッドチャレンジカップと、盛岡のダービーグランプリを連勝。普通の年ならNARグランプリの3歳最優秀馬に選ばれただろうが、この年は「交流元年」と言われた年で、幸か不幸か同じ3歳世代には中央の牝馬3冠すべてに出走したライデンリーダーがいた。
ダービーグランプリは翌96年から、サラブレッドチャレンジカップは99年から中央との全国交流となるのだが、ともに地方のみの交流だった時代、10月に行われていたサラブレッドチャレンジから11月のダービーグランプリへという路線は、地方の3歳チャンピオンを決める王道だった。
ぼくはたまたまこの年、両レースとも現地でレースを見ていたので、特に印象深い。
そしてこの両レースと同じくらい印象に残っているのが、96年の阪神大賞典だ。
GIIながら、歴代の名勝負として必ず投票などでベスト10に入る、ナリタブライアンとマヤノトップガンの、あのレースだ。
4コーナーでルイボスゴールドは好位に上がってきた。しかし直線では、前の2頭が後続をどんどん突き放し、3着争いははるか後方。テレビの画面にはまったく映ることがなかった。
しかしルイボスゴールドは、前の2頭から9馬身も離されはしたが、見事に3着。鞍上はもちろん、坂口重政騎手だった。
あれからもう10年もたった。
機会があれば、あのレースのこともご本人から聞いてみたいのだが。
14日に盛岡競馬場で行われる3歳馬による重賞・岩鷲(がんじゅ)賞は、一応は全国交流だが他地区からの遠征馬はなく、地元岩手所属馬による争い。
この時期は地方競馬でも各地でダービーに向けた重要なレースが行われるためか、さすがに遠征する余裕がないのだろう。いきなり余談だが、たとえ他地区からの遠征がなくても、重賞レースくらいは門戸を開いておくという姿勢は、ほかの主催者にも見習ってほしいもの。
さて、今年の岩鷲賞は、4月23日のスプリングカップ組と29日の留守杯日高賞組の対戦というメンバー構成。
ここはスプリングカップを圧勝し、今シーズン2連勝と力をつけたダンディキングが断然。母は現役時重賞12勝を挙げたアラブの女傑、ミスハクギンということでも2歳時から注目されていた。2歳時の若駒賞は2着、年明けの金杯は8着と惨敗したが、レースぶりも安定し、ようやく重賞制覇を果たせそうだ。
相手はスプリングカップ3着のブラックショコラ。
留守杯日高賞を勝ったサイレントエクセルはここには出走せず、その日高賞6着以下のメンバーでは、前記2頭とは差がありすぎる。別路線組のディアブロハンターやエスエスブライアンも、よほどの変わり身がない限り実績的には厳しい。
ここはダンディキングとブラックショコラの1点勝負だが、さてその組み合わせの馬券がいくらになるだろう。ブラックショコラが捨て身でダンディキングを負かしにいったりした場合は伏兵の台頭もあるだろうが、素直に実績を評価するなら、この2頭が抜けている。
オッズを見てどんな馬券を買うかだが、3連単の3着馬を見つけるのはちょっと難しいかも。