今回いわき平競輪場で行われました<令和六年能登半島地震復興支援競輪・大阪関西万博協賛/第78回日本選手権競輪(GI)>を優勝しました平原康多選手(埼玉87期)にシリーズを振り返っていただき、併せてこれからの競走への意気込みをうかがいました。
大村篤史:ダービー優勝ならびに年末のグランプリ出場権の獲得おめでとうございます。
平原康多選手:ありがとうございます!
大村:ダービー出走の直前は今年2つ目の地元記念(西武園GIII)でした。
平原:そのときにかなり昔の自転車のセッティングに戻しました。スピード競輪対応のものから元へ戻したことで感覚的にも戻ってきたというか。戦えるという感触、ようやく手応えが出てきた中でダービーの前検に入りました。
大村:なんでもフォームなど10年程前のものに戻されたとか。
平原:セッティングを変えれば自然と乗車フォームも戻るんですが、それによって怪我の影響が軽くなりました。うまく言えないんですけど練習中も痛みを感じながらだったのが力も入るようになり、噛み合ってきた感覚がありました。
大村:一走目(特別選抜予選)は眞杉選手(眞杉匠選手・栃木113期)をマーク。別線も皆さん動けるタイプでのコマ切れ戦でした。初手で関東ラインは前受けでした。
平原:事前の作戦でスタートは取れればと。なるべく前からレースを組立てる考えでしたね。
大村:赤板で眞杉選手が近畿ラインを突っ張り、深谷選手(深谷知広選手・静岡96期)、犬伏選手(犬伏湧也選手・徳島119期)の順に外を上昇。最終的に後中団に位置しました。
平原:眞杉には(前受けから)そのまま突っ張って逃げる考えもあったと思いますよ。自分はその時々の前の動きに遅れないようにしていました。
大村:関東ラインの反撃は最終HSからでした。
平原:いやもう、タイミングはバッチリ!抜群の発進でそのまま(前段との距離を)詰める勢いでスピードを殺さない仕掛けでした。絡まれないよう捲ってしまう感触は付いてる自分にもありましたね。
大村:4コーナーでの三谷選手(三谷竜生選手・奈良101期)の急追を振り切って1着でした。
平原:うーん...、眞杉を2着に残したかったんですが力が戻りきっていなくて牽制が全然巧く出来なかったですね。もう少し上手くやれるようにという課題が残りました。
大村:二走目のゴールデンレーサー賞は関東ラインは栃木&埼玉勢での4車連携の3番手。初手は後方からでした。
平原:数ある作戦の中でラインで決めるよう組み立ててくれたんだと思います。
大村:首尾よく4車で先手を打ちましたが古性選手(古性優作選手・大阪100期)がやってきて...。
平原:自分は(前の2人に)付いていくだけの位置だったんですけど内から来られ隙をつかれてしまい...情けないレースでした。技術的にここが古性に劣っている部分なんだと自覚しました。
大村:レース後の武藤選手(武藤龍生選手・埼玉98期)は「自分が止めきれず、入られてしまったのが全て。」の旨コメントされていました。
平原:龍生には龍生の、自分には自分の反省点があったと思います。古性の総合力が上回ったということでしょう。
大村:二走を終えた時点のコンディションはいかがでしたか。
平原:特選は雨の中でしたけど、元に戻したフォームや乗り方が競走にマッチしてきたなという実感がありました。只、GDR賞は道中の全てが向い風に感じるバンク状態に苦しんだなと振り返って思います。
大村:準決勝は関東ラインが前受けでした。
平原:コマ切れ戦ですから(初手は)なるべく前の方を、という作戦でした。
大村:菅田選手(菅田壱道選手・宮城91期)の強引イン斬りからレースが動きました。
平原:眞杉は(北日本ラインを)出すつもりはなかったと思いますよ。寺崎(寺崎浩平選手・福井117期)より先に先行態勢に入るには突っ張るのが手堅いですから。
大村:眞杉選手はすかさず叩き返し、今度は寺崎選手がカマシてきました。平原選手の牽制の後は寺崎選手を一車にして出すのかなと思ったんですが...。
平原:出さなかったですね。いやぁ、ここがまさに闘争心の表れ!気持ちの強さと先行選手の意地ってやつです。それを真後ろに居てヒシヒシと感じました。シビレましたね!
大村:眞杉選手のかかりは悪くないように見えたんですが。
平原:駆けながら寺崎を持っていって、そこに強い向い風を受けて一気に失速した感はありました。
大村:残り半周は山口選手(山口拳矢選手・岐阜117期)が猛スパート。迫りました。
平原:姿が見えたときには眞杉はタレていました。ラインは眞杉だけではないし、自分が4コーナーで踏まないと諸橋さん(諸橋愛選手・新潟79期)にもチャンスはないですから。結果はヤマケン(山口選手)に行かれてしまったんですけど、眞杉の走りを無駄に出来ないで思い切って踏みました。
大村:いよいよ決勝戦です。関東勢は5車勝ち上がり並びが注目されました。
平原:並びを一本にしてしまうと誰かが5番手を回らないといけません。それではあまりにチャンスがないですから。小林泰正(小林泰正選手・群馬113期)と諸橋さんでの上越ラインと吉田拓矢(吉田拓矢選手・茨城107期)に自分たち埼玉が続く並びに分かれてやればそれだったら...ってことで結論が出ました。
大村:レースは上越ラインが前段に変わる中で古性選手は踏み合いを避けつつ3番手に。清水(清水裕友選手・山口105期)・山口2選手が追走するような態勢でした。道中の心境はどうでしたか?
平原:自分は意外に落ち着いていました。(前を回る)吉田は打鐘で粘ろうかどうしようか判断しかねたようだったのでバックを踏んで入れました。
大村:態勢を立て直した吉田選手はすぐさま仕掛けました。
平原:ええ!迷いなく行ってくれたのは拓矢の距離だったんでしょうね。
大村:一気に捲って平原選手の展開へ。終盤は道中で埼玉勢の後ろに居た岩本選手(岩本俊介選手・千葉94期)と単騎の古性選手が外を、切替えた諸橋選手が内を突くも武藤選手がガードしました。
平原:あの時は正直、目の前に集中していました。それでも岩本はずっと見えていましたよ。それに何があっても龍生のことは信じて自分も走ってますから(笑)
大村:ゴールした瞬間、大歓声が起こりました!
平原:お客様からの声がタイヘンな勢いで湧き上がってヤバいくらい!本当に圧倒されそうでした。日本選手権はGI最高峰です。自分の中ではここを目指してずっと選手をやってきましたし、特にここ一年間は体調も戻らず...。そんな中、このタイミングでの優勝はいろんな感情が混ざりあいました。ゆっくりペダルを踏んでいるうちにファンの皆さんが自分のことのように喜んでくださっているのが分かりました。本当に幸せを感じたウイニングランでしたね。
大村:ゴール後にまず武藤選手と、そしてウイニングランでは吉田選手と肩を叩きあう姿も感動的でした。
平原:なかなかこんな経験はできないので...自分も胸がいっぱいでした。夢心地で肩をたたき合ったと憶えています。
大村:話が遡りますが3月の玉野記念(GIII)出走中に達成された500勝のインタビューで森田優弥選手(埼玉113期)といっしょに受けた動画を拝見しました。
平原:横で茶化してましたね(笑)。
大村:平原選手がスタンバイする間、森田選手がにこやかに待ってらしたのが本当にいい関係だなと思いました。
平原:まぁ、待ってくれてるのは自分が先輩だからなんだけど(笑)。でもそうやって後輩に祝福してもらえるのは幸せですよね(照笑)。
大村:ダービーの表彰式ではファンの皆様からの祝福を受けました。平原選手も感極まって...。
平原:そうですね。辛い時期が長かったですし、つまりはファンの皆さんに迷惑をかけて期待を裏切り続けてきたんだって想いがありました。
大村:平原選手の復活はまだ時間がかかりそうか?という声もありました。
平原:ええ。そんな状態の最中でどんなレースでも、それこそ負け戦でも自分のことを応援してくれてた方がいるんですが、実はその人が表彰台から見る目の前に居たんです!目の前で号泣されてたんです!それで自分ももうこらえきれなくなりました。ひと言では言えない色んな感情が混ざりあって我慢できなくなりましたね。ファンへの感謝の気持ちが優勝の実感と結びつきました。
大村:敢闘門の前では2回胴上げされました。別線で戦ったおふたりも笑顔でした。
平原:レースが終われば皆んなひとりひとりのアスリートですからね。最高の胴上げを2回もやってもらえました。
大村:ダービーの優勝で年末のグランプリ出場とS班復帰が約束されました。そしてグランドスラムに残るはオールスター競輪(GI)だけになりました。本格的な復活に向けて今取り組んでいることはなんですか。
平原:まずはケアです。この一年は痛みを抱えながら練習していましたし、怪我も治りきったわけではありません。自転車の上ではかなり力が入るようになりましたが、やりたいウエイトトレーニングなどは思うようにはまだまだです。
大村:フレーム、セッティング方面は?
平原:それは今回昔のに戻したことで方向性は固まりました。なので今はフィジカルを取り戻すことですね。整体も近くの先生だけでなく遠出もしています。飛行機で移動したりするくらいの。プライベートの時間を割いてコストもかけてます。自分ももう42(歳)になります。限られた時間で頂点をめざすからには時間は無駄にせず、お金は出し惜しみせずやってます。
大村:この先の中盤戦と少し気の早い話ですがグランプリへの意気込みをうかがえますか。
平原:今すぐの復活、優勝の二文字となるとまだ遠い段階ですが、とにかく諦めずに頑張ります!
大村:では最後にこの記事をご覧になったオッズパーク会員の皆様と全国の平原ファンへのメッセージをお願いします。
平原:一年くらい走りの内容でも結果でも迷惑とご心配をおかけしました。ですが今回こうやって念願のダービーで結果が、日本選手権で優勝が出来ました。ひとえに応援しつづけてくださったファンの皆様のおかげです。これからもしっかりといいレースを見せられるように努力をしていきます。引き続き応援をよろしくお願いします!
大村:ありがとうございました。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。
名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。
2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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