12日の函館10レース『横津岳特別』で、10番人気の低評価を覆し、見事逃げ切り勝ちを収めたシンボ(北海道)。地方競馬所属馬のJRA勝利は2018年8月のハッピーグリン(STV賞)以来です。まだ3歳のシンボですから、今後の動向も含めとても気になりますね。管理する齊藤正弘調教師にお話を伺いました。
赤見:JRAでの勝利おめでとうございます!!古馬相手の2勝クラスで勝ったというのがまたすごいですね。
齊藤:ありがとうございます。オーナーと共に、「地方から中央に挑戦したい」という想いでやって来たので、とても嬉しいですね。いろいろなことがすべて上手く行きましたし、調教師をしていて負けることの方が多いわけですが、こんなに上手く行ったのは初めてではないでしょうか。オーナーはじめこの馬に関わってくれた方々、そして頑張ってくれた馬に感謝しています。
赤見:10番人気でしたが、レース前から手ごたえはありましたか?
齊藤:もちろん勝つことを目指して使っていますが、まさか本当に勝ち切ってくれるとは...。勝った要因はいくつかありますが、降級制度がなくなって、上のクラスから下がって来る馬がいなかったというのも大きいと思います。この馬自身のことで言えば、前走前々走と逃げる競馬をして、門別の長い400mの直線で粘りが増すような競馬が出来ました。結果的にこの時には負けたんですが、函館のフラットコースで、短い直線はプラスになるなと感じていました。
実は以前からJRAに挑戦しようと思っていたのですが、コロナの影響で遠征が出来ず...。その頃は1勝クラスへ挑戦する予定だったんですけど、北海優駿で賞金を加算したので今回は2勝クラスへの挑戦になりました。それでも勝ってくれたので、この馬が秘めていた能力の高さを改めて感じました。
赤見:北斗盃から逃げる競馬をしていますが、先生からの指示ですか?
齊藤:そうですね。これまでも先行して揉まれない方がいい競馬をしていましたし、今シーズン初戦の牡羊座特別で後ろから行って最下位だったんですよ。この時は休み明けと言っても当初はJRAに使いに行く予定で、体はしっかり作っていました。それなのにまったく走れなかったことがショックで、次の北斗盃は内回りでしたし「行ってみよう」と言ったのがきっかけです。
赤見:今回のレースでは、ポンとハナを奪って、向正面でプレッシャーを掛けられる場面もありましたが、最後までしっかり粘ってくれました。
齊藤:古川(吉洋)くんが上手く乗ってくれましたね。いくら人気薄の馬といってもペースが遅かったら突いて来るのは当たり前で、そこは古川くんの好判断で、一度突き放してからまた溜めを作って息を入れてくれました。直線は力が入りましたが、初めての2600mでよく粘ってくれましたね。
赤見:シンボはどんな性格ですか?
齊藤:名前の通り、とても辛抱強い馬だと思います。北海優駿はかなりのスローペースだったんですけど、レース後に競馬ブックの高倉克己さんに言われたのが、「ここまでスローのラップで掛からずに折り合いがつくのはすごい」と。我慢強くて溜めが作れる馬なんだと再認識しました。それに、2歳の頃から遠征に行っても大きく馬体重が変わらないのはメンタルの強さだと思います。今回のレース後も大きなダメージもなく、元気に過ごしていますよ。
写真は水沢の金杯で勝利した時のもの(当時は岩手の齋藤雄一厩舎所属)
赤見:今後の予定は決まっていますか?
齊藤:距離の選択肢として札幌日経オープンを目指したいと考えています。シンボはJRA認定競走を勝っていないので、これまでの規定だったら中央に挑戦することは出来なかったんですけど、今年はJRA認定競走を勝たなくても、賞金の規定を満たせばJRAに挑戦出来ることになった最初の年なんですよね。そういう形で門戸を開いていただけたことがありがたいですし、そこで結果を出せたということは、自分たちだけではなく、今後に続く馬たちにとっても大きいことなんじゃないかと思っています。今年だけではなく来年もチャレンジ出来ますから、長い目で見て一つ一つ足場を固めていきたいです。
赤見:では、ファンの方々にメッセージをお願いします。
齊藤:門別は先日一日の売り上げレコードを更新し、いつも応援してくれるファンの方々には感謝の気持ちでいっぱいです。これからも地元はもちろん、JRAにもチャレンジしていきますので、応援宜しくお願い致します。