12月23日、荒尾競馬場最後の開催が行われました。
当日はたくさんのファンが詰めかけて、午前9時過ぎには特別観覧席のチケットが完売、名物のラーメン屋さんの前には常に大行列が出来ているほどでした。
この日の入場人員は8,935人、売り上げは102,328,800円。
改めて、荒尾競馬を愛しているファンがたくさんいることを証明してくれました。
メインレースは第8Rに組まれた『肥後の国グランプリ』。
『九州記念』をレコード勝ちした【テイエムゲンキボ】と、このレース3連覇を果たしている【タニノウィンザー】の対決は、5馬身の差をつけて【テイエムゲンキボ】が完勝。
荒尾最後の重賞制覇を飾りました。
管理する平山良一調教師は、他競馬場への移籍が叶わず、この日で調教師を引退。
『肥後の国グランプリ』が、最後の勝ち星となりました。
「馬は最高の状態だったし、いい締め括りが出来て嬉しいです。
ゲンキボはこの後JRAへの移籍が決まったし、荒尾最後の重賞を勝てて良かったですね。
本当はまだ辞めたくないですよ。6年連続でリーディングを獲らせてもらって、今シーズンもチャンスだったけど...。
世の中の流れもあって、仕方ない部分もありますね。
続けたい気持ちはあるけど、今まで競馬をやらせてもらって、本当に幸せでした」
厩舎関係者から、「オヤジ」と呼ばれて慕われていた平山調教師。
2,082勝を挙げて、長年荒尾競馬を牽引してきただけに、63歳という年齢での引退は、とても残念です。
たくさんの管理馬がいるし、地方競馬にとっても大きな痛手でしょう。
ラストは第9R。
荒尾所属の騎手は13人で、このレースは12頭立て。
唯一乗り馬がいなかった西村栄喜騎手と、騎手候補生の小山紗知伽ちゃんが誘導馬を務めました。
荒尾には何年も前から誘導馬がいません。
この馬たちは、阿蘇の乗馬クラブの馬たちで、当日はファンの方とのふれ合いのために場内にいました。
そして、最後のレースの誘導馬も務めることになったのです。
荒尾の騎手全員で、最後のレースを締めくくった形。
馬場入場では、全馬厩務員さんたちが馬場の中まで引いて来て、スタンド前を歩かせてファンにお披露目をしました。
この光景に、たくさんのファンから大きな声援が飛んでいましたよ。
荒尾最後の勝利を飾ったのは、牧野孝光騎手。
戻って来た時は、本当に嬉しそうな眩しい笑顔を見せてくれました。
この後は、騎手を引退して北海道の牧場に就職が決まっている牧野騎手。
引退を決めるまでにはさまざまな葛藤があったそうです。
「30年乗って来て、いい締め括りが出来ました。悔いはないです。
これからは気持ちを切り替えて、中央のGIに出走出来るような馬を育てたいです」
新たな目標を掲げて、30年間の騎手生活にピリオドを打ちました。
すべてのレースが終了した後は、ジョッキーや調教師、関係者がウィナーズサークルに集合して、ファンにご挨拶。
廃止を決断した前畑淳治市長。
とても残念だったのは、前畑市長がレースを観戦しなかったことです。
第8Rの表彰式の時点でまだ到着しておらず、プレゼンターは代理の方が務めました。
最終の第9Rが終わった直後に競馬場に到着し、最後の挨拶を行ったわけです。
廃止に関しては、市長一人の責任ではありませんが、せめて最後の雄姿を見届けて欲しかったなと思いました。
グランドフィナーレでは、ファンの方たちと関係者で写真撮影。
岩永千明騎手が、声を詰まらせながら、
「私は荒尾競馬が大好きです...」
と言った言葉が、今でも耳に残っています。
すべてが終わった後は馬場開放が行われ、寒い中、1周歩いて回っている方がたくさんいらっしゃいました。
この日は、たくさんのことがあって、ファンの方で賑わっていたし、なんだか廃止になったという実感をあまり感じませんでした。
でも次の日の朝厩舎に行った時、半分以上の馬房が空いているのを見て、初めて実感がわいて来ました。
JRAに移籍する馬たち。
他の競馬場へ移籍する馬たち。
乗馬クラブへ行く馬たち。
牧場へ行く馬たち。
そして、星になってしまう馬たち。
荒尾競馬の廃止に伴って、馬たちが旅立って行きます。
関係者の戦いは、まだ終わっていません。