10月10日、東京競馬場で行われた『南部杯』。
岩手の星【ロックハンドスター】が、スタート直後に競走中止し、予後不良というとても残酷な結果となってしまいました。
パドックでのロックは、並み居る強豪の中に混じっても臆することなく落ち着いて歩いていました。
生でロックを見たのは昨年の『JDD』以来。
前はお腹回りやクビ回りなどが、少し線が細い感じでしたが、今回はお腹回りがムッチリとしていて、全体的にパワーアップしている印象でした。
返し馬では、今回初のパートナーとなった菅原俊吏騎手が、何度も芝とダートの切れ目を通って、ロックに見せていました。
それでも、レースでは切れ目を嫌ってジャンプしてしまい、その影響で骨折...予後不良と判断されてしまいました。
初めてロックに会ったのは、2009年の未来優駿『若駒賞』。
まだあどけない表情をしていましたが、すでに圧倒的な強さを見せて、これからの岩手を背負って立つ雰囲気を持っていました。
年が明けて、2010年の『岩手ダービー・ダイヤモンドカップ』。
この時には、すでに勝つことは当然で、それよりもどう勝って南関東に乗り込むか...ということが重要になっていました。
「ダービーを勝つことが当然」というプレッシャーは、計り知れなかったと思います。
もともと、そんなに強い体質ではなくとても繊細な面があって、食も細くなかなか体が大きくならないという課題がありました。
そんなロックを、陣営は細心の注意を払いながら鍛え上げ、岩手ダービーを圧勝!
大井『ジャパンダートダービー』へ駒を進めました。
しかし、初の南関東遠征では見せ場なく、ロック本来の輝きを見せることは出来ませんでした。
この時菅原勲騎手は、
「強い相手に揉まれて強くなるのか、心が折れていじけてしまうかは馬次第。ロックがどっちになるかは、この後の走りでわかる」
と仰っていました。
繊細な馬だけに、くじけてしまうんじゃないか...そんな不安が心を過ったと、後になって話してくれました。
続く『黒潮盃』では、『JDD』の時よりもペース慣れして5着入線。
地元に戻ってからの初戦は古馬と戦って2着。それでも、3着以下を9馬身以上突き放してのもの。
このレースで、ロックはくじけずに成長している...そう感じました。
『不来方賞』を圧勝し、迎えた『ダービーグランプリ』。
岩手三冠がかかったこのレース、大井『羽田盃』を勝った【シーズザゴールド】が遠征して来て、1番人気の座を奪います。
レースは4番手外の位置から進み、直線では前に粘る金沢【ナムラアンカー】、すぐ後ろには【シーズザゴールド】がやって来ましたが、力強く抜け出して三冠を達成☆
ロックは見事に壁を乗り越え、大きな成長を見せてくれたのです!
水沢のファンの大声援、そして大熱狂が、中継を通しても聞こえて来ました。
その後12月の『桐花賞』で古馬一蹴し、名実ともに岩手の星として君臨しました。
骨折後も一生懸命走り続けるロックの姿に、本当に胸がいっぱいになりました。
陣営や、岩手のファンの悲しみを考えると...
でも、ロックの残した功績は、ずっとずっと消えません。
ありがとう、ロックハンドスター
安らかに...