昨日、地方競馬全国協会から発表になった、『平成22年度 第2回調教師・騎手新規合格者』。
すべて兵庫所属で、調教師3名、調教師補佐1名、騎手1名が見事合格し、9月29日付けで免許が交付されます。
今回、新たに騎手免許試験に合格したのは...松浦政宏騎手。
1991年に兵庫所属でデビュー。
地方通算786勝を挙げ、2006年、32歳で騎手を引退しました。
そして、36歳になった今、再び騎手免許を手にしたのです。
地方競馬の騎手免許試験を受ける資格は、〈16歳以上〉という規定はあるものの、上限はないそうです。
(ちなみに、地方競馬教養センターの騎手課程を受験出来るのは20歳まで)
それでも、36歳で再び合格するというのは、かなり稀なケースです。
「騎手を引退して、1度外の世界に出ました。
2年くらい、全く別の仕事をしていたんです。
それで、1年ちょっと前くらいに、厩務員として競馬場に戻って来ました。
所属の野田学先生から、もう1度騎手としてチャレンジしてみないかって言っていただいて。
36歳で、改めて騎手に挑戦することは、思い切った決断ではありましたけど。
周りの人たちも応援してくれたし、この年でまた騎手になることを勧めていただけて、本当に嬉しかったです。
今はまだ合格したばかりで、勝負服を新しいデザインにするかとか、何日にデビューするかとか全然決まっていないんですよ。
でもとにかく受かったことで、気持が引き締まりました。これまで以上に頑張らないと!!
これからは、応援してくれた周りの人たちに感謝しつつ、馬の能力を最大限引き出すような騎乗がしたいです。
そうすれば、おのずと結果はついて来ますから」
今回は、残念ながらまだお写真がなかったのですが...
再デビューしてから、新たな勝負服(になるかも?)姿のお写真を改めて掲載します。
松浦政宏騎手の復活で、激戦区の兵庫がさらに熱くなりますね♪
大井競馬所属の石川駿介騎手は、6月から佐賀競馬場へ遠征し、武者修行を行っています!
修行期間は9月いっぱい。
ラスト2週間の滞在となった、現在の心境をお聞きしました!
:まずは、今回の武者修行のきっかけを教えて下さい。
「大井の先輩である、真島大輔騎手に声をかけてもらったんです。大輔さんのお父さんが佐賀で調教師をしてますから、行ってみないかって。
それまで2年くらい、乗り鞍が少なくなって悩んでいたんです。
同期の本橋孝太騎手(船橋)も、高知で武者修行してから活躍してますし、どこかに行って勉強したいと思っていたので、すぐに決断しました」
:実際に行ってみてどうですか?
「みなさん、温かく迎えて下さいました。
大井では3時に起きていたんですが、こっちでは1時半に起きてます。午後の作業にも出ているので、1日終わるとクタクタになってすぐ寝てしまうんです。
でも、調教をつけた馬はレースに乗れることも多いですし、たくさん勉強出来て楽しいですね。思い切ってこっちに来て、本当によかったと思います」
:佐賀だけでなく、荒尾でも騎乗していますよね。
「はい。佐賀の全休日には、荒尾へ行って調教をつけてます。
今出来ることを精一杯やりたいので。
だから、こっちに来て4ヶ月、休みは佐賀と荒尾の全休日が重なった一日だけです」
:レース自体はどうですか?
「佐賀はとにかく先行有利。スタートで決まるという感じです。
だからかなり先行争いが激しいですね。そこは大井とは違うところです。
荒尾はコーナーもゆったりしてますし、佐賀よりも直線が長いので、乗りやすいですね。
こっちに来て、思った以上にレースに乗せてもらえるし、前よりも自信を持って騎乗出来るようになりました」
:修行期間も残り少なくなりましたね。
「そうですね。かなり中身の濃い4ヶ月でした。
26日までこっちのレースに乗れるので、悔いのないレースがしたいです。
今まで教えてもらったことを全部出したいですね。
今回の修行は、真島大輔騎手に声かけてもらって、お父さんである真島元徳厩舎でお世話になりました。
競馬に対して真剣だし熱い性格なので、親子だな~と感じましたね。
お2人の期待に応えたい!という気持ちも大きいです」
この4ヶ月で、たくさんのことを吸収した石川駿介騎手。
現在22歳。
これからどんなジョッキーに成長していくのか、楽しみです!
4月にレース中落馬して、怪我で休養していた皆川麻由美騎手。
今月に入って、元気に復帰を果たしました!
最初の病院では、頚椎損傷と診断されて入院していましたが、その後腰の圧迫骨折も判明。
2ヶ月近くもギブスを着けて入院していたそうです。
「4ヶ月も休んだのは初めてですね。
当初、復帰は10月くらいかなと思ってたんですが、思いの外早く復帰出来ました。
久しぶりのレースは、すごく面白かったです。
怪我した時は、3コーナー辺りで落馬したんですけど、その時の記憶が全くなくて。
だから、恐怖心もなかったですね。
11月にはレディースジョッキーズシリーズがあるし、そこを目標にしてました。
まずは怪我のないように騎乗することが第一ですが、復帰後初勝利を早く挙げたいです!!」
皆川騎手らしい、明るく元気な声を聞かせてくれました♪
今回の旅では、初めて乳母に会って来ました!
乳母とは...
出産で母馬が死んでしまったり、弱ってしまった時
母乳の出が悪い時
母馬が育児を拒否した時
長く子供を生ませるために、母馬の仕事を軽減したい時
など、母馬の代わりに仔馬に母乳を与え、子育てする馬のことです。
仔馬たちはすぐに本当の母だと思うそうですよ。
乳母の仕事期間は短く、仔馬が生まれてから乳離れするまでの半年以内。
どんな馬でも、秋には乳離れして母馬と別れて暮らすことになりますから。
今回訪ねた牧場は、浦河にある村下牧場。
ちょうど乳母の仕事を終えて、牧場に帰ってきていた母馬に会わせていただきました。
種類はハーフリンガー。
サラブレッドよりも体高が低く、がっしりとした感じ。
乳母には他に、道産子やばん馬などがよく用いられるそうです。
ここで気になるのが...乳母の産んだ仔馬たちの存在。
お母さんがいなくなって、どうするんだろ...と疑問に思っていたところ、2つの方法で育てていました。
1つは、他の乳母に育てさせるという方法。
サラブレッドの場合は、1頭の母が1頭の子供を育てるという図式ですが、乳母に使われる馬たちはサラブレッドよりも逞しく、1度に2頭3頭に母乳を与えることが出来るそうなんです。
乳母を扱っている牧場では、何頭も飼育している所もあり、他の牧場へ貸し出す乳母と、自分の牧場で子供たちを育てる乳母がいるそうです。
もう1つが、ミルクで育てる方法。馬用の粉ミルクもあるそうですよ。
村下牧場では、先ほどの乳母の子供が、別の場所で飼育されていました。
母乳を飲んだことがないそうなんですが、一緒に飼育されている仔馬のおっぱいを飲むふりをして、その感覚を味わっていましたよ。
優秀な乳母は、かなり早い段階で予約が入っているそうです。
料金は、平均して50万円ということでした。
セレクトセールなど、乳離れ前の当歳馬のセリの時には、母馬と仔馬が一緒にセリ場にやって来ます。
この時、どう見てもサラブレッドに見えない馬たちが、少なからずいるのですが...
彼女たちが乳母です。
今度セリを見る時に、ぜひ見つけてみて下さいね。
良血馬や成績優秀だったお母さんも偉大ですが...
代理の母として子育てする、乳母もまた偉大な存在です。
今年も8月23日から5日間の日程で、北海道日高町にてサマーセールが開催されました!
このセリは、上場される頭数が半端じゃないっ!
毎日200頭以上、5日間で1178頭が上場されました。
この数はもちろん、日本最大です。
サマーセールには乗り役だった頃からなるべく顔を出すようにしていました。
日本の競馬の中心である、生産界の動きがよくわかるし、馬主・調教師はじめたくさんの関係者が来場するので、ご挨拶したり自己紹介をしたりと、まさに社交場なのです。
今年は23日・24日の2日間行って来ました。
1日目は、午後に着いた時には大雨で、セリ場に入る前に行われる野外のパレードリンクでの歩行も出来ないほど。
とにかくすごい雨で、馬も人もぐっしょりでした。
後半に入って、少し雨が弱まり、パレードリンク再開。
待機していた厩舎から、番号順に野外のパレードリンクに入り...
そこでしばらく歩行して、次は室内にあるパレードリンクに入ります。
ここでは、体、四肢、歩き方はもちろん、人間に対して従順か、物怖じしないか、など性格も見極められます。
そのため、近年ではコンサイナーといって、セリに上場する時の躾を教える専門の方たちがいらっしゃいます。
まだ1歳馬たちですから、初めての場所でたくさんの人たちに見られると、緊張したり驚いたりして上手く歩くことが出来ない馬もいますが、コンサイナーにきちんと躾けられた馬たちは、お行儀よく、見栄えもよく、セリでいい値段がつくことがあります。
コンサイナーとして有名なのは、昨年の『NHKマイルカップ』を勝った【ジョーカプチーノ】の生産者、ハッピーネモファームです。
今年もコンサイナーとして手がけた馬が何頭も上場されていましたが、私が見た時は、326番に上場された【インペチュアスイメージの2009】が印象的でした。
立派な体と、人間の言うことをしっかりと聞いて歩く姿は目を引きましたね。
【タイキシャトル】産駒の牡馬で、650万円でJRAに落札されましたよ。
順調に行けば、来年のブリーズアップセールに登場するでしょうから、どんな成長を遂げているのか楽しみです♪
セリの流れに戻ると...
室内のパレードリンクを回って順番を待ち、いよいよセリ場に向かいます。
それまでは周りに他の馬たちがいたのに、ここでは1頭になってしまうため、寂しがって鳴いたり暴れたりしてしまう馬もいます。
それに...
値段のやり取りが繰り広げられますので、その声にびっくりする馬もいます。
誰からも声がかからず、主取りになった時は、なんとなく馬の嘶きも寂しく聞こえるもんです。
たとえ主取りになっても、ここで終わらない馬もいます。
セリ場の出口に待ち構えている人たちもいて、ここから値切り交渉が始まるのです。
少しでも高く売りたい生産者と、少しでも安く買いたい購買者の攻防戦。
セリ場は、社会の縮図だと思います。
前にもここに書きましたが、馬1頭1年育てるのに、餌代や人件費、設備投資など約100万円かかると言われています。
サマーセールに上場される馬たちは1歳馬ですから、生まれてから1年以上が経過している。
プラス、種付け料が30万~600万くらい。
種付けする種牡馬でだいぶ変わって来ますが、基本的には200万円で売れても儲けは出ない計算になります。
競馬はギャンブルですが、1番大きな賭けをしているのは、生産者だと思うんです。
どんな馬でも飛ぶように売れた時代は、もう過ぎ去りました。
たとえば...値の張る種牡馬の種を借金して付けたとする。
でも、出産で事故があるかもしれない。
牝馬が生まれれば、売り値は下がってしまう。
無事生まれても、成長過程で怪我するかもしれない。
体質が弱いかも...蹄がもろいかも...
そして、コンサイナーをつけるかどうか、乳母をつけるかどうか...
家族で経営しているような小さな生産牧場は、毎年大きな賭けをしているのです。
そんな中で、現在も成長し続けている牧場というのは、本当に努力の賜物だと思います。
今年のサマーセールは、1178頭が上場され、売却されたのは479頭。
内訳は、牡馬673頭上場で308頭売却。牝馬505頭上場で171頭売却。
この数字を見ると、牝馬がなかなか売れないのがわかりますよね。
昨年よりも売却率は少し上がっていますが、それでも40,7%です。
サマーセールで売れ残った馬たちは、秋に行われるオータムセールに上場してくる馬が多いです。
そのほとんどが、サマーセールの時よりも、更に値を下げて売られます。
これが、生産界の現実。
華やかなドラマの裏で、たくさんの人たちが試行錯誤しながら、日本の競馬を創っています。