今年も8月23日から5日間の日程で、北海道日高町にてサマーセールが開催されました!
このセリは、上場される頭数が半端じゃないっ!
毎日200頭以上、5日間で1178頭が上場されました。
この数はもちろん、日本最大です。
サマーセールには乗り役だった頃からなるべく顔を出すようにしていました。
日本の競馬の中心である、生産界の動きがよくわかるし、馬主・調教師はじめたくさんの関係者が来場するので、ご挨拶したり自己紹介をしたりと、まさに社交場なのです。
今年は23日・24日の2日間行って来ました。
1日目は、午後に着いた時には大雨で、セリ場に入る前に行われる野外のパレードリンクでの歩行も出来ないほど。
とにかくすごい雨で、馬も人もぐっしょりでした。
後半に入って、少し雨が弱まり、パレードリンク再開。
待機していた厩舎から、番号順に野外のパレードリンクに入り...
そこでしばらく歩行して、次は室内にあるパレードリンクに入ります。
ここでは、体、四肢、歩き方はもちろん、人間に対して従順か、物怖じしないか、など性格も見極められます。
そのため、近年ではコンサイナーといって、セリに上場する時の躾を教える専門の方たちがいらっしゃいます。
まだ1歳馬たちですから、初めての場所でたくさんの人たちに見られると、緊張したり驚いたりして上手く歩くことが出来ない馬もいますが、コンサイナーにきちんと躾けられた馬たちは、お行儀よく、見栄えもよく、セリでいい値段がつくことがあります。
コンサイナーとして有名なのは、昨年の『NHKマイルカップ』を勝った【ジョーカプチーノ】の生産者、ハッピーネモファームです。
今年もコンサイナーとして手がけた馬が何頭も上場されていましたが、私が見た時は、326番に上場された【インペチュアスイメージの2009】が印象的でした。
立派な体と、人間の言うことをしっかりと聞いて歩く姿は目を引きましたね。
【タイキシャトル】産駒の牡馬で、650万円でJRAに落札されましたよ。
順調に行けば、来年のブリーズアップセールに登場するでしょうから、どんな成長を遂げているのか楽しみです♪
セリの流れに戻ると...
室内のパレードリンクを回って順番を待ち、いよいよセリ場に向かいます。
それまでは周りに他の馬たちがいたのに、ここでは1頭になってしまうため、寂しがって鳴いたり暴れたりしてしまう馬もいます。
それに...
値段のやり取りが繰り広げられますので、その声にびっくりする馬もいます。
誰からも声がかからず、主取りになった時は、なんとなく馬の嘶きも寂しく聞こえるもんです。
たとえ主取りになっても、ここで終わらない馬もいます。
セリ場の出口に待ち構えている人たちもいて、ここから値切り交渉が始まるのです。
少しでも高く売りたい生産者と、少しでも安く買いたい購買者の攻防戦。
セリ場は、社会の縮図だと思います。
前にもここに書きましたが、馬1頭1年育てるのに、餌代や人件費、設備投資など約100万円かかると言われています。
サマーセールに上場される馬たちは1歳馬ですから、生まれてから1年以上が経過している。
プラス、種付け料が30万~600万くらい。
種付けする種牡馬でだいぶ変わって来ますが、基本的には200万円で売れても儲けは出ない計算になります。
競馬はギャンブルですが、1番大きな賭けをしているのは、生産者だと思うんです。
どんな馬でも飛ぶように売れた時代は、もう過ぎ去りました。
たとえば...値の張る種牡馬の種を借金して付けたとする。
でも、出産で事故があるかもしれない。
牝馬が生まれれば、売り値は下がってしまう。
無事生まれても、成長過程で怪我するかもしれない。
体質が弱いかも...蹄がもろいかも...
そして、コンサイナーをつけるかどうか、乳母をつけるかどうか...
家族で経営しているような小さな生産牧場は、毎年大きな賭けをしているのです。
そんな中で、現在も成長し続けている牧場というのは、本当に努力の賜物だと思います。
今年のサマーセールは、1178頭が上場され、売却されたのは479頭。
内訳は、牡馬673頭上場で308頭売却。牝馬505頭上場で171頭売却。
この数字を見ると、牝馬がなかなか売れないのがわかりますよね。
昨年よりも売却率は少し上がっていますが、それでも40,7%です。
サマーセールで売れ残った馬たちは、秋に行われるオータムセールに上場してくる馬が多いです。
そのほとんどが、サマーセールの時よりも、更に値を下げて売られます。
これが、生産界の現実。
華やかなドラマの裏で、たくさんの人たちが試行錯誤しながら、日本の競馬を創っています。