盛岡芝の重賞は、正直予想が難しい。地元馬だけならだいたい力関係もはっきりしているが、南関東の準オープンくらいの馬が遠征してくると、力の比較が難しい。その上、芝の適性もわからない場合が多いからだ。
今回も南関東から3頭が遠征してきた。が、今回は芝経験の豊富な馬がいる。エイブルインレースだ。しかもホッカイドウ競馬の所属だった昨年2歳時、盛岡に遠征して芝1600メートルのジュニアグランプリ制覇と、盛岡芝の経験まである。さらにはJRA東京のクイーンカップGIIIで3着というスピードも見せている。4カ月の休み明けは不安だが、実績を考えればこの馬を本命にしないわけにはいかない。
2番手にも南関東から遠征のフレンチマリー。芝の経験は2歳時のJRAクローバー賞(11着)のみだが、前走古馬B3特別で接戦の2着は、この時期の3歳馬としては価値がある。鞍上が菅原勲騎手なのも当然大きなアドバンテージ。
地元勢では2冠馬マヨノエンゼルが最上位か。芝の認定戦でデビュー勝ちしたが、その後芝のジュニアグランプリ、黄菊賞は着外。今回はそれ以来の芝となるが、適性以前に当時より確実に力をつけている。地元の意地を見せたいところ。
芝適性ならアンダージョイナー。3歳になってからの勝利は、今シーズン唯一芝での出走となった前々走のはまなす賞のみ。2歳時、デビュー3戦目での初勝利も、初めて経験する芝コースだった。
トキワノマツカゼは、2冠ともにマヨノエンゼルの2着。今回が初めての芝挑戦となる。実力ならマヨノエンゼル、アンダージョイナーにもヒケをとらない。
阿久利黒賞3着だったダンストンジールは、岩手ダービーダイヤモンドカップには向かわず、芝のはまなす賞に出走。1番人気に支持されての4着は残念だったが、2歳時には芝で2勝を挙げている。それだけに、はまなす賞の結果だけではまだ見限れない。
◎エイブルインレース
○フレンチマリー
▲マヨノエンゼル
△アンダージョイナー
△トキワノマツカゼ
△ダンストンジール
フルゲート12頭に、金沢から2頭、兵庫から3頭の遠征があり、多彩なメンバーが揃った。
ウイニングウインドが8歳の今年も元気だ。マーチカップこそミツアキタービンにちぎられて7着に敗れたものの、それ以降4戦していずれも3着以内。特に前走のパールオープンは、メンバー中唯一もっとも重い56キロながら1番人気にこたえて勝利。07年以降を見ても、中央遠征やダートグレードを除けば22戦して3着を外したのは3回しかない。常に脚部不安がつきまとうミツアキタービンのほかにダートグレード級の活躍馬がいない今回のメンバーなら中心は外せないところ。
昨年、格上挑戦でこのレースを制したテキサスイーグルが中央から戻ってきた。その再転入緒戦となったパールオープンはウイニングウインドとクビ+2馬身差の3着。ここでも安定勢力の1頭だ。
オキナワノドリームは、前走帝王賞JpnIこそ最下位に敗れたが、地元兵庫では条件クラスからオープンまで今年5戦して4勝、2着1回。昨年3歳時に東海地区に遠征し、古馬との対戦となったオータムカップで2着、東海菊花賞で4着と善戦している。当時より確実に力をつけた今なら、一発があってもおかしくない。
マサアンビションは、前走サマーカップで兵庫から遠征してきたベストタイザンにアタマ差まで迫る2着。この馬も10歳ながらまだまだ元気。
マーチカップを圧勝したミツアキタービンは、先にも書いたが常に脚元の状態次第。9歳だが数を使っていないぶん、体力的な衰えはなさそう。
カモンネイチャは休養明けの今年1月から月1回のペースで使われ、A級下位なら常に勝ち負け。オープンクラスのメンバー相手でも連下なら。
印をつけた6頭はオキナワノドリーム以外、いずれも重賞勝ちの経験があり、いずれも近走好調の馬ばかり。どの馬にもチャンスはあり、混戦必至。
◎ウイニングウインド
○テキサスイーグル
▲オキナワノドリーム
△マサアンビション
△ミツアキタービン
△カモンネイチャ
昨年このレースを勝ったネフェルメモリーは、その後船橋に移籍して圧倒的な強さで南関東牝馬2冠を制した。2着のアンペアはエーデルワイス賞JpnIIIを制してNARグランプリの2歳最優秀馬にも選ばれた。一昨年の勝ち馬マサノミネルバも、その後にエーデルワイス賞を制した。
栄冠賞の上位馬にはその後の活躍馬が多く、今年も出走メンバーの中にネフェルメモリーやマサノミネルバのような馬がいるかもしれないと思うとわくわくする。
中心は唯一の2勝馬オノユウ。ウィナーズチャレンジでは3番手に控え、直線で1番人気のウイニングリーダーを差し切るという2歳馬とは思えない落ち着いたレースぶり。不良馬場とはいえ門別1200メートルの勝ちタイム1分12秒9は非常に優秀。ちなみにオノユウという馬名だが、北海道の人にとってはすぐにピンとくるらしい。北海道では有名らしい女子アナのニックネームからとったとのこと。興味がある方は「おのゆう」で検索してみてください。
相手筆頭はショウリダバンザイ。門別グランシャリオナイター開幕日のフレッシュチャレンジを好タイムで圧勝。オノユウがもっと距離が延びてから期待されているのに対し、もしかしてスピードではこちらのほうが上かもしれない。馬主の林正夫さんは、引退した元ホッカイドウ競馬の調教師。古くは78年にミスミネタカ、最近では99年にエンゼルカロでこの栄冠賞を制している。騎手&調教師で同じ重賞を勝つというパターンはよくあるが、もしここを勝てば、調教師&馬主として同じレースを制すという珍しい記録となる。
フレンチデピュティ産駒のロサガリカも1000メートルのフレッシュチャレンジを好タイムで圧勝。血統的にはこの馬も距離が延びてからのほうがよさそう。
ウイニングリーダーは1番人気に支持されたウィナーズチャレンジでオノユウに差し切られたが、デビュー戦のフレッシュチャレンジでは2着に2秒6の大差をつける圧勝。スピード的には上位。
賞金の高いスーパーフレッシュチャレンジを勝ったビリーブミーも素質は高そうだ。
◎オノユウ
○ショウリダバンザイ
▲ロサガリカ
△ウイニングリーダー
△ビリーブミー
最近の岩手古馬ダート戦線はほんとうに予想が難しい。みちのく大賞典でも他地区から遠征の3頭に上位を独占されてしまったように、実力の抜けた馬、安定して力を発揮できる馬がいないからなのだが、裏を返せば馬券的には高配当が期待できるということでもある。
ならば底を見せていない新興勢力を狙ってみたい。
転入3戦目となるフリーモアだ。転入緒戦の水沢1800メートル戦は8着だったが、距離短縮の早池峰賞は逃げ切り完勝。やはり中央時代は短距離のダートを中心に使われていただけのことはある。クラス的には、中央では1000万下で頭打ちだったが、最初にも書いたとおり抜けた存在のいない今の岩手古馬戦線なら重賞でも通用しそうだ。6月27日から岩手で2年ぶり4度目の期間限定騎乗している内田利雄騎手のパフォーマンスにも期待したい。
相手には、今年1月のトウケイニセイ記念を1番人気で制したアンダーボナンザ。前走みちのく大賞典は7着だが、もともと2000メートルは不向き。3戦して、馬インフルエンザの影響で地元馬だけで行われたダービーグランプリの5着が最高という成績。1400メートルの経験は少ないが、盛岡でも水沢でもマイル戦ではきわめて安定している。4つのコーナーを回る水沢の1400メートル戦ならそれほどペースが早くなることもなく、期待できそうだ。
昨年盛岡1200メートルで行われたこのレースを制したトーホウライデンは、続く青藍賞も制し、将来が大いに期待されたが、結局昨シーズンはその後勝ち星を挙げられず。今季4戦目の盛岡1800メートル戦で久々に先頭でゴールし、早池峰賞で3着と好走。復調気配だけに、このレース連覇の可能性もある。
早池峰賞2着のメタモルキングはこの距離歓迎。
オウシュウクラウンは、トウケイニセイ記念2着、シアンモア記念では地元最先着の3着と、重賞では好走しているが、06年末の桐花賞以降勝ち星から遠ざかっているだけに、今ひとつ信頼性に欠ける。
◎フリーモア
○アンダーボナンザ
▲トーホウライデン
△メタモルキング
△オウシュウクラウン
復活気配のアルドラゴンにとっては、このメンバーなら負けられないところだろう。今年3戦は勝ち星はないが、そのうち2戦が遠征してのダートグレードで、地元での兵庫大賞典は自身も含めた地元古馬3強の2頭に先着されたのみ。4着以下は6馬身も離していた。前走のさきたま杯JpnIIIにしても、向正面で早めに仕掛け、3コーナーでは先頭に立とうかという見せ場をつくった。7着に負けたとはいえ、勝ったスマートファルコンから1秒差ならそれほど悪い内容ではない。園田1230メートルは初距離だが、JBCスプリントJpnIでの3着をはじめ、1400メートルのダートグレードで何度も入着しているスピードがあれば問題にならないだろう。
相手は名古屋から遠征のタータンフィールズ。中央から転厩後勝ち星こそないものの、転厩緒戦の梅見月杯は、1400メートルのスペシャリスト、兵庫のベストタイザンと叩き合って惜しくもアタマ差の2着だった。これだけ走れればアウェーでも地方初勝利の可能性は十分。
3番手以降はやや離れる感じ。中央から兵庫に再転入後、15戦11勝、2着2回というホールドマイラヴは、前走でA1特別を勝っていることもあり、重賞初挑戦でも食い込む可能性はある。
1年7カ月ぶりの重賞挑戦となるドリカムジャガーは、A1特別2連勝中と好調。
ナリタファントムは除外明けが気になるものの、2走前にそのドリカムジャガーに土をつけ、前走ではコンマ1秒差の3着と好走している。
◎アルドラゴン
○タータンフィールズ
▲ホールドマイラヴ
△ドリカムジャガー
△ナリタファントム