3月4~7日に大垣競輪場で開催された開設70周年記念GIII・水都大垣杯で犬伏湧也選手(徳島119期)がGIII初優勝を果たしました。
決勝は最終HSめがけて大カマシからの独走V!2着の古性優作選手(大阪100期)に5車身差の圧勝ゴールが鮮烈だった犬伏選手にシリーズを振り返っていただきました。
大村:大垣記念優勝おめでとうございます!GIII初優勝から一週間が経ちました。今の実感はいかがですか?
犬伏:ありがとうございます!(GIIIを優勝したことで)やっと上位の人たちとのボーダーラインに立てたかなと思います。
大村:直前の全日本選抜競輪(高知)では3勝されました。どれも犬伏選手らしい強い勝ち方でした。
犬伏:1月に斡旋が止まっていました。そのときにしっかり練習を出来たんです。それが高知では最終バックをとる競走に活かされたなと思います。
大村:GIを振り返って「やりたいレース」はやれた?
犬伏:そうですね。しっかり自信がつきましたし・・・。今回につながる手ごたえがありました。
大村:大垣へはどのような調整で臨みましたか?
犬伏:うーん。あんまり間がなかったのでケアが中心でした。プラス普段通りの練習をしました。調子は変わらずに前検に入れて、それが良かったのだと思います。
大村:前検日に収録したインタビューを拝見しました。その中で「一瞬のスキを逃さないようにしたい。」とのコメントが印象的でした。
犬伏:初日は皆さん強い人ばっかりでしたから。前を斬らせてもらえない展開もありそうだなと。なのであれは純粋に初日特選の番組を見た感想ですね。
初日から気を引き締めてかからなければいけないと思いました。
大村:初日から大師匠・小倉竜二選手(徳島77期)の前でした。
犬伏:まずは先行が出来ればいいと考えていました。なのでレースの形も無理やりの先行でした。着は悪かったんですけど見せ場は作れたかなと。レース前に思っていたより手応えはありました。
大村:吉田有希選手(茨城119期)との同期対決でもありました。
犬伏:そうですね。展開は吉田君が突っ張って次に僕が抑えて...というレースになりましたね。けれど(レースのスタンスは)、誰かひとりを意識するのではなくて全体的な流れの中でしっかりと自分のやるべきことをやろうと考えていました。レース後、小倉さんからは「逃げたのは良かったぞ」と言われました。
大村:二次予選の初手は前受けでした。
犬伏:誰も出なかったら前からいこうと。たぶん誰もいかないだろうなと思ってはいたので前で受けたのはある意味で作戦通りでした。
大村:後続の反撃を許さず逃げ切りましたね。
犬伏:構えてしまっては勝てないメンバーでした。とにかく力の出し惜しみはしないように走りました。
初日はペース配分に問題がありましたが2日目は修正できました。同県の小川(真太郎)さん(小川真太郎選手・徳島107期)と決まりましたし、感触も初日より良かったです。
大村:続く3日目、準決勝は古性選手との対戦でした。
犬伏:ええ。けど正直なところ古性さんの存在以上に自分のレースが出来るかどうかに意識を向けました。自分の力が出せないほうが嫌でした。
大村:初手は中団でした。
犬伏:中団は一番取りたくなかった位置で想定外でした。しかも周回中はずっとフタをされて・・・あれはしんどいレースでした。
大村:7番手になってすぐ打鐘で一度仕掛けました。
犬伏:動いたタイミングは悪くなかったんですが・・・。昇りで仕掛けたもののペースが上がったので前までは出られないだろうなと思って引きました。
(小倉選手の)切替えは仕方がないし、8番手にはハマれたのでここは小倉さんについていこうと気持ちを落ち着かせました。
大村:終盤は捲り追込みで3着のリカバリーでした。
犬伏:大外を回りましたが車は思った以上に伸びました。自分で最近練習に取り組んでいることのひとつが形にはなったなと。それは収穫でした。
大村:そして迎えた最終日。いよいよ決勝です。決勝メンバーが発表されて犬伏選手の後ろを山口拳矢選手(岐阜117期)が回るのかどうかが注目されましたが・・・。
犬伏:単騎になったのは仕方がないなと思いました。ですが却って単騎だったので、準決勝のような"どうにかしないといけないな"という気持ちはなく気楽に走れました。
大村:小倉選手から決勝の作戦などアドバイスはありましたか?
犬伏:小倉さんからは「魅せるレースをしてこい!」と。続けて「最低限の目標が優勝やな」とも言われました。
大村:これまた凄いプレッシャーをかけられましたね!?
犬伏:そうなんです。小倉さんに「優勝してこいよ!」と言われたので気合が入りました!ただ今になって思い返すとプレッシャーというよりも背中を押してもらえた感じでした。
大村:レースは埼玉勢の並びがなかなかまとまりませんでした。
犬伏:それは見えていました。とはいえ僕は単騎だったので、周りを気にするよりも全ては自分が仕掛けるタイミングでした。
岩谷君(岩谷拓磨選手・福岡115期)が出たとしてもすぐには駆けないだろう踏み上げないだろうと思ってはいたので、とにかく緩んだところで行こうとしか考えていませんでしたね。
大村:打鐘過ぎの2センターから一気にカマシました!踏み出しで優勝へつながる手応えはありましたか?
犬伏:ゆるんでいたので前まで出られるだろうと思いました。イエローラインの上を行って、BSで伸びているイメージはありました。残り半周まできて「このまま垂れなければ大丈夫かな?」とはなりましたが・・・。
大村:出切ってからは独走状態でした。
犬伏:実際、走っている最中は分からなかったですね。古性さんがとにかく仕上がっていたので、ずっと古性さんに抜かれるかもって思いながら走っていました。
ゴールした僕の前で(客席からの)歓声がものすごく大きくて、そこで始めて「優勝したのかな?!」と思いました。
大村:上がりタイムが10秒8。一周タイムは21秒7でした。
犬伏:ええ。いいタイムが出せました。そこは最近の中でも一番良かったかなと感じています。小倉さんだけでなく周りの皆さんから「おめでとう!」「やったな!」と言ってもらえました。
大村:今後の目標はなんですか。ファン視点では脇本選手(脇本雄太選手・福井94期)への挑戦も注目のひとつです。
犬伏:優勝インタビューでも言いましたGIの決勝進出です。脇本さんは本当に強い方なので対抗するにはもっともっと自分自身レベルの底上げが必要です。いつか対抗できるように頑張って力をつけたいです。
大村:今、練習で取り組んでいらっしゃることは?
犬伏:まずは地脚の強化です。他にもレースの組立など。これまで山積みだった課題に徐々に取り組めています。これから精度を上げて改善して技術をもっと高めていきたいですね。
大村:さて、これからビッグレースがつづきます。5月には平塚ダービーに参戦ですね。
犬伏:本当に強い人たちがあつまる場です。気合が入ります。そこで目立てるように、しっかり結果が出せるように意識しています。
師匠たちと一緒ですし、徳島勢がみんなで勝ち上がれるよう頑張っていきたいですね!
大村:では最後にファンの皆さまにメッセージをお願いします。
犬伏:大垣記念はたくさんのご声援ありがとうございました。まだまだ未熟ですが、本当に少しずつですがレベルアップはしているのでこれからも応援をよろしくお願いいたします!
昔から競輪選手にとっての目標はまずS級へ上がること、そして記念競輪を優勝することとされてきました。
記念制覇を果たして、"上位へのボーダーラインに立った"犬伏選手の前に強敵たちが待ち受けています。
「力の出し惜しみはしたくない」と語ってくれた自身の競走スタイルを貫く犬伏選手のファイティングスピリットが大きな舞台を熱く湧かせてくれそうです。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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