3月9~12日に松山競輪場で行われた開設73周年記念GIII・金亀杯争覇戦。決勝は4mの強風が吹く中で争われた激闘の一戦でした。
栄冠を手にしたのはGIII2回目の優勝を果たした山田庸平選手(佐賀94期)でした。九州地区の中堅レーサーとして活躍が注目される山田選手にシリーズを振り返っていただきました。
大村:松山記念の優勝、おめでとうございます!大逆転の捲り一撃から数日が経ちました。
山田:ありがとうございます。このあとも大事なレースが続くのでこの優勝はモチベーションアップに繋がります。
大村:どのような調整で参戦しましたか?
山田:武雄のバンクが使えない(2023年4月8日初日のFII<オッズパーク杯>から本場開催を再開する)間は佐世保へ練習に行きましたが、地元バンクで練習が出来ないため感覚が掴みきれないままでした。調子も上がらず不安を抱えた中の前検でした。
大村:今回の松山記念は新車を投入されたそうですね。
山田:ええ、そうなんです。別にもう一台用意していたんですが、結局は4日間を新車で走りました。なので毎日セッティングを微調整しながらでした。
このフレームがいいのか?セッティングはこれで合っているのかどうか?ハッキリしないまま決勝まで走っていました。
大村:初日特選は単騎戦でした。
山田:まずは仕掛けて動いて自分の状態と調子やフレームの特徴とか調べたかったんですが...、なかなか思うようにいかなかったですね。
道中は前がごちゃついて、咄嗟の判断で郡司君(郡司浩平選手・神奈川99期)の後ろへいってしまいました。≪こういった競走のときにどう走るか≫が今後の課題に加わりました。
大村:つづいて二次予選です。このあと最終日までいっしょになる伊藤颯馬選手(沖縄115期)との連携でしたね。
山田:伊藤君はレースの流れに沿って仕掛けたり順番がきたらすぐさま行ってくれます。自分としては付きやすいタイプです。
前々勝負に行ってくれたり、先行するべきところでは思い切って仕掛けてくれるのでいつも安心して連携していますね。
大村:どんな作戦でしたか?
山田:詳細な作戦を練るというよりは「こういう風にレースは展開するよ」ってアドバイス程度にしています。
二次予選は根田君(根田空史選手・千葉94期)のカマシ先行があるかないか、ポイントを彼に話して後は任せました。
大村:赤版周回で前を抑えて打鐘から根田選手が来ました。
山田:予想よりも早くこられて対処しきれなかったですね。反応してブロックはしましたが乗り越えられました。このレースでは自分自身の甘さを感じました。
大村:レース後にハンドルのにぎり方を変えたという話でしたが具体的にはどのように変えましたか?
山田:腕を内側に絞るように握っていたんですが、今回使った新フレームには合いませんでした。前のフレームとの違いを確かめたのは発見でした。
これからハンドルのにぎり方やペダリングを微調整していきます。
大村:ちなみに新しいフレームの特徴ってなんですか?
山田:硬さが違います。柔らかいんです。新車といっても実は以前使っていたものを作り直したものなんです。去年の10月ごろに使っていたフレームが落車でダメになりました。
直前まで使っていたものはより硬いフレームでした。それに合わせた乗り方を松山記念までは探りながら走っていました。
大村:では満を持してフレームが復活したのですね?!
山田:ところが走ってみると(フレームを)戻しただけなのにペダリングなどに違いがあって・・・。
事前にバンクで調整できれば良かったんですがそれも出来なかったのでどこか嚙み合わないまま持っていきました。
大村:自転車の微調整と向き合いながら2日間が過ぎ、迎えた準決勝は細切れ戦でした。
山田:松浦君(松浦悠士選手・広島98期)が中心のレースになるので、彼のスタートの出方次第で全て変わってきます。なのでスタートは少し待ちました。すると松浦君が出てくれたので僕らにとって一番いい位置(初手4・5番手)がとれたのが良かったのだと思います。
大村:伊藤選手が2車でも先行してくれましたね。
山田:ええ!打鐘から掛けてくれました。
大村:その後、松浦選手の反撃がやってきました。
山田:松浦君の仕掛けるだいたいのポイントは分かっていたので備えました。
中団に坂井君(坂井洋選手・栃木115期)がいて踏みあってくれたので、前のかかりと自分の横の動きが1コーナーくらいで折り合ったので捲りのスピードが止まったと思いましたね。
大村:ゴールは山田選手が1着。そして伊藤選手を2着に残しました。
山田:これは大きかったですね。今まで2車で駆けてくれたときに2着に残せたことがあまりなかったのでワンツーだと知ったときは嬉しかったです。
これからの目標として出来るかぎりラインで勝ち上がる、そのために出来ることをやるんだと考えています。今年やってきたことがレースで形になったのは良かったと思います。
大村:そしていよいよ最終日、決勝です。決勝戦はかなり強いBS向い風でした。
山田:うーん。カマシ先行のほうがいいんじゃないかなという話は伊藤君としましたね。
理想は前をとってカマシて出切ってから勝負できるようにレース展開を持っていきたいねと話していたんですが・・・。なにしろ車番が悪かったので前をとれないだろうとも話していました。
大村:初手は後方でした。まず九州ラインが渡邉一成選手(福島88期)を抑えます。
山田:はい。ここで郡司君が乗ってこなかったのは想定外でしたね。てっきり次は神奈川ラインがやってくるものだと。一成さんがジャンのところで飛んできたのには「あっ?!」と思いました。
大村:神奈川カルテットがカマシ捲り。ホームでは九州ラインは内に被りました。郡司選手からの4車は脅威でしたか?
山田:脅威に感じるよりも郡司君はどう仕掛けるのだろうかを深く考えていました。
同県の4人で並ぶからにはラインから優勝者を出したいですよね?でもS班である自分は勝たなければいけない立場でしょう?そんなことをずっと考えていましたね。
大村:そして最終2コーナーを回って山田選手が捲りました!
山田:HS過ぎにすぐ伊藤君が引いてくれてその後の流れに対処できました。あのときは颯馬がインに詰まっていて、前はごちゃついてて、僕は初日特選で仕掛けたかったができなかったのが頭にあって、それらが線で結ばれたのかもしれないですが自然に体が動きました。
大村:バンクに吹く強風は感じましたか?
山田:仕掛けたときのBS向い風はあまり感じなかったです。それよりも2センターを過ぎて急に車が伸び始めて直線での追い風を強く感じましたね。
大村:背中に吹く追い風で勝利を確信しましたか?
山田:いや~、まず仕掛けたときが半信半疑でした。なので最後まで油断できないぞと気を引き締めました。外を踏んでくる選手は多いでしょうしモチロン内からも。真後ろには松本君(松本貴治選手・愛媛111期)がいたし、守澤さん(守澤太志選手・秋田96期)も必ず来ますから!
大村:見事な大逆転の優勝ゴールでした。同県の選手からお祝いなどありましたか?
山田:なにせ武雄のバンクが使えないので同県の先輩の皆さん、後輩の皆んなに会えていないんです。あ!でも井上昌己さん(長崎86期)からLINEで「おめでとう!」ってきました!
上位の人たちと戦うようになると段々とFIやGIIIさえも取って当たり前になっていくと思うんです。それでも昌己さんのような強い人からメッセージが来たのは(井上選手の)寡黙なイメージもあってすごく嬉しかったです。
大村:西九州ラインの繋がりを感じるエピソードですね。
山田:佐賀ー佐世保でも九州でもこれからは皆んなで勝ち上がっていけるよう力をつけていきたいです。他地区、例えば関東と比べて個々のレベルでも差を感じることがあります。
確かに勝ちにいかなければいけない時もあるでしょうけれど、特別競輪ではひとりでも多く勝ち上がらないと戦いにならないですから。
そのために何をやるか、何ができるかを求めるのが今の課題です。戦法の幅を広げて、それに合うフレームやセッティングを試していくのもそのひとつなんです。
大村:この後はウイナーズ、地元の武雄記念の次は平塚競輪場でダービーに参戦ですね。地元記念とダービーは英明選手(山田英明・佐賀89期)との兄弟あっせんです。
山田:GIの決勝を走るのは今の大きな目標です。これからは人の後ろを回るレースが増えるでしょう。九州ラインで決勝をめざす、走れるように頑張りたいです。
兄とはレースの組立に関する話をします。兄がレースを見てると思うと、ちゃんとしなきゃ!って気持ちが引き締まりますね(笑)
大村:では最後にファンの皆さまへメッセージをお願いします。
山田:近頃は・・・、特に去年から応援してくれる方が増えてくださってます。こんな自分でも大きな応援を送ってもらっているなと感じています。なので決して最後まで諦めずに...頑張りたいと思います!これからもよろしくお願いいたします。
去年は賞金ランキングでも上位に加わった山田庸平選手。一層の活躍が期待される中、どのようにすれば結果を出せるのか。自ら仕掛けるスタイルと番手戦で走るレースそれぞれを柔軟にこなす。
求道者であり探求者でもある山田庸平選手の視線をお話の中に感じました。飛躍のカギは個と線の両立にあり。山田選手が求める答えの中に九州地区躍進の道筋があるのかもしれません。その走りと戦いぶりにどうぞご注目ください!
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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