3月に松阪競輪場で行われる『第5回ウィナーズカップ』。最終日の28日にはガールズケイリンコレクション2021松阪ステージがあり、昨年後半の競走得点上位7選手が集まりました。
その中でコレクション初出場となる坂口楓華選手(京都112期)に、出場が決まった時の気持ちやこれまでの振り返り、そしてコレクション松阪ステージへの意気込みをお伺いしました。
山口:坂口選手は、ガールズケイリンコレクションへは初出場ですよね。決まった時のお気持ちはどうでしたか?
坂口:コレクションの出場は目標にしていたので、素直に嬉しかったです。
山口:選考基準が「2020年7月~12月の競走得点上位者」でしたが、狙ってはいましたか?
坂口:何も狙っていなくて、選考基準なども気にせず自分のレースをしていました。それで結果が出たことが嬉しいですね。自分のやりたいことをやっていたら、後から付いてきたのが結果だったので、余計に嬉しかったです。
山口:特に昨年の後半は連勝も続きました。ご自身で結果が結びついてきたという実感は、その時にありましたか?
坂口:練習環境を変えたので、集中して練習ができるようになりました。他のことを考えず、毎日自転車のことを考えられる生活にしたんです。
レースでも自分のやりたいことをやり、それが発揮できるようになったので実感はあったかもしれません。
山口:何度か直接取材をさせていただいた時にも「たくさんのことを考えて走っているんだな」と感じました。やりたいレースができるようになったきっかけは何だったんですか?
坂口:オッズパーク杯ガールズグランプリに出場している選手たちと対戦をすると、私との力の差が大きくあるんだと痛感したことですね。毎年、競輪祭でのグランプリトライアルレースには出場できているんですが、いつも力の差をそこで感じていました。突きつけられるトップの選手との差、それが大きいのが悔しかったんです。
「同じ人間、同じ女性なのに、ここまで差があるんだ」と考えさせられました。そこでしっかり自分と向き合ったのがきっかけでしたね。
山口:先ほどの話の「練習環境を変えた」のと同時期くらいですか?
坂口:そうですね。どうしたらトップ選手との力の差が縮まるかを考えた時に、今の自分の練習環境を変えるしかないと思いました。それまでは一人で練習をしていたんですが、限界を感じたんです。
更に上を目指すために、何の誘惑もない自転車のことだけを考えられる環境に身を置くしかない、と覚悟を決めて、豊橋に練習拠点を移しました。
山口:どうして豊橋に決めたんですか?
坂口:豊橋にはガールズケイリン選手がたくさんいて、ガールズの選手と一緒に練習できるのが良いなと思ったからです。それまで一人で練習していて、もちろん一生懸命練習はしていましたが、闘争心など「人と比べて負けないぞ」という気持ちはなかなか持ち続けられませんでした。練習をしても誰とも比べられないので、本当に自分が強くなっているかがわかりにくかったんです。それだと自信にも繋がりません。
豊橋は常にたくさんのガールズの選手が練習していて、7人以上いるのでレース形態の練習もできます。それが大きいきっかけでした。それ以外にも、ウェイトトレーニングの機材がそろっていたり、競輪場も綺麗で環境も良いなと思っています。
山口:ガールズケイリン選手との練習でどのような所が強化されましたか?
坂口:メンタル面の強化が大きいと思います。レースで結果も出てきたので自信に繋がります。
山口:具体的にはどのようなところでしょうか?
坂口:戦法を変えたことです。もともと私の戦法は自在を主体とし、自力はあまり出さずにレースを組み立てていました。動くタイプの選手を追い上げてマークしたり、飛びついたり、自分でレースを作っていくことはなかったんです。でもそれだとなかなか勝てなかったので、自力に戦法チェンジしました。
自力の練習をして、レースでもそれを出せるようになってから結果が出はじめたので、自信もつきました。今までの自分じゃ仕掛けないポイントで思い切って仕掛けたら逃げ粘れて着に繋がったり、しんどいところ、みんなが仕掛けないところでレースを動かすようにしたら結果が出てきました。
練習では長い距離をもがけるようにはしていたので、レース本番でもそれを思い切ってできた、しかも結果に繋がったというのは大きな自信になりました。
山口:豊橋のガールズケイリン選手も自力タイプの選手もいますもんね。
坂口:そうですね。今はずっと自力を出す練習をメインにしています。
最近は男子の選手にも混ぜていただいて練習をしているんです。スピードが圧倒的に違うので練習で男子のスピード感に慣れてきたら、レースでも流れをしっかりと見極められるようになりました。
山口:男子選手と一緒にレース形態の練習をすることもありますか?
坂口:はい。ライン戦の練習を男子選手がするときに私も混ざったりします。私が先行したり、逆に強い選手が先行しているのを私が捲りにいったり、いろんなパターンでやっています。自分より強い相手(男子選手)と一緒に練習をするとレベルが上がる気がしますね。
山口:男子選手にも「先行して逃げ切りたい!先行を捲り切りたい!」とライバル心が出てきそうです(笑)。
坂口:はい(笑)。まさに、ライバル心を持っていますし「男子選手に勝てればガールズのトップ選手に勝てる!」と闘争心も出ます。
山口:良い刺激を感じながら練習ができているんですね。
まもなくある松阪のガールズケイリンコレクションですが、坂口選手以外は昨年末のガールズグランプリを走った選手です。他の選手の印象はいかがですか?
坂口:私はガールズグランプリ未経験です。いつもそのメンバーと走る時はどうしても気後れしてしまい、どこかで皆さんの気迫に負けてしまっていました。
でも今回のコレクションが決まったことで「自分も同じくらいまで上がってきたんだ」と自信に思うようにしています。実力を自分自身で認めてあげて「ちゃんと対等に戦えるんだ」と言い聞かせて当日は結果を出したいです。
山口:競輪祭でのグランプリトライアルレースなどのように3日間のビッグレースは経験されていますが、単発レースは初めてです。そこへ向けての気持ちの調整はいかがですか?
坂口:私の場合はメンタルが一番重要だと思っています。力は対等に戦えるくらいはついてきたし、練習量でも負けないくらいたくさんやってきていると自信は付けてきたんですが、後は自分のことをどれだけ信じてベストを尽くせるかです。今はそこを一番に考えて、本番のレースでどれだけ本領を発揮かが勝負ですね。
山口:松阪のバンクは8月に完全優勝をしていますが、イメージはいかがですか?
坂口:いつもバンクの相性などは考えて走っていないので、良し悪しなどは関係ないですね。気後れしないように頑張りたいです。
山口:初めてのコレクションです。どんな走りを見せたいですか?
坂口:普段のレースでは自力でレースを動かすようにしていますが、コレクションでは本来の持ち味である自在性もしっかり発揮して、勝負しにいきたいです。
自分らしい走り、魅力を伝えられるようにしたいです。
山口:今年の目標は何ですか?
坂口:去年は何も考えず走ってガールズグランプリに出られるかもしれないという賞金ランキングでした(補足:最終的に2020年賞金ランキング9位)。今年は去年意識しなかった分、グランプリトライアルレースが終わった時からガールズグランプリ出場を狙っています。狙って出場、できれば賞金ランキングのベスト5を目指しています。
山口:例年通りですと11月のグランプリトライアルレースで2名は出場確定ですから、できればそこまでに賞金5位以内には入っておきたいですよね。
坂口:その通りです。去年はボーダーライン上にいたので逆転されてだめでした。なので、確実にグランプリに出場するには、少しでも上位にいたいです。
今は上位の選手との力の差をわかっています。でも立てた目標は実現が不可能ではないと思うので、目標はベスト5です。
山口:年末を目指すという点では、1月初戦のコレクショントライアルレースは大きいものだったと思います。そちらを走ってどうでしたか?
坂口:実は1月のトライアルレースの直前の練習で怪我をしてしまい、力があまり入らない状態でした。ベストな状態で走れなかったのは悔しいです。
山口:そうでしたか。それではその分も松阪で頑張ってください! では最後にオッズパーク会員の方へ、初めてのコレクションの意気込みをお願いします。
坂口:自分のやれることは全てやってきたつもりです。あとは本番のレースでベストを尽くすのみ。頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA