3年連続3回目のグランプリ出場となった清水裕友選手(山口105期)。今年は全日本選抜競輪で優勝し自身初のタイトルホルダーとなりました。
しかし、その喜びよりも悔しさが勝ったと語る清水選手。その中で競輪人生最高の瞬間もありました。グランプリに向けて、清水選手が語る想いとは。
大津:グランプリ出場おめでとうございます。
清水:ありがとうございます。
大津:3年連続3回目のグランプリ出場です。
清水:3回も続けて出場出来るとは思っていなかったので、続けられたことは嬉しいです。
大津:S級S班の常連というイメージがあります。
清水:まだまだ納得のいく成績を収めていないので自分の中ではそのような感じはないです。
大津:今年一年を振り返っていかがでしたか。
清水:初っ端の全日本選抜競輪でGIを獲れて嬉しかったのですが、そのあとは成績が伴わずパッとしたレースはなかったかなと思います。
サマーナイトも獲ることは出来ましたけど、年間を通して考えるとGIタイトルが獲れて良い一年でしたというよりも不甲斐なさのほうが残る一年でした。
大津:例年競輪祭までグランプリ争いを演じていましたが、全日本選抜競輪の優勝でグランプリ出場が決まりました。心境面の違いはありましたか。
清水:2019年は競輪祭が終わるまで賞金争いでピリピリしていたので、その感覚が自分にとって良かったと感じています。
今年は最初にグランプリ出場を決めたことにより、意識がグランプリにばかり向いてしまいピリピリ感が少し欠けてしまったのかなと。
ただ初めてGIを獲ったので、心境面の変化がどれだけあったのかは実際はよくわかりません。
大津:賞金面ではなくタイトルを獲ってGPです。
清水:それは目指していたところなので嬉しいのは嬉しいのですが、なんというかいざ獲ってみたら「よっしゃ、めちゃくちゃ嬉しい!」という感じもなく、そこまで特別な感情はわいてこなかったです。実感がなかったんですよね。
「ほんまに自分が獲ったんか」「えっ、オレがタイトルホルダーか。」みたいな感じで。
大津:グランプリ出場が2月に決まり、12月までモチベーションを維持するのは難しいように思えます。
清水:もともと集中出来るタイプではないのでなかなか難しかったです。
タイトルを獲ったことで、周りから気が抜けたなぁと思われないようにしようとしていたのですが、結局一年が終わってみれば気が抜けたような成績を残してしまいました。
大津:松浦悠士選手(広島98期)とのゴールデンコンビで、どこまでタイトルを獲得するのか注目も集まりました。
清水:昨年の競輪祭と今年の全日本選抜競輪で2大会続けて中四国地区でタイトルを獲得できるとは思ってなかったので、ええんかなという感覚でした。
ウィナーズカップも松浦さんが優勝しましたし。
大津:競輪界の新たなゴールデンコンビと言われています。
清水:正直、そこに関してはなんとも思わないです。
松浦さんとの連携はもちろん特別なものはありますが、ゴールデンコンビというのは周囲が言っているだけなので、自分としては何か思うことはないですね。
大津:コロナ禍の影響で開催中止期間がありました。
清水:いつレースで走れるか分からない状況の中で練習するのはきつかったです。
ダービーに向けてやっていたので、それまでは自分の中で身体も仕上がっていて良い練習も出来てたんですが、ダービーが中止になった報せを受けて、どうしようかという気持ちにはなりました。
大津:選手にとってダービーという存在はかなり大きなものと聞きます。
清水:ダービーが中止ですからね。まさかダービーが中止になるとは思ってもみなかったので、しばらくは抜け殻というか、練習をしても身が入らない感じはありました。
本当にいつ競輪が始まるかもわからない状態でしたから。
大津:その中で105期の石塚輪太郎選手(和歌山)と渡邉雄太選手(静岡)と寄付をされました。
清水:競輪選手として何か出来ることはないかと考えたときに3人で話し合って寄付をしました。
競輪界がこれから大丈夫なのかという危機感もあったので、自分たちでやれることはやってみようと。
大津:レースでは無観客試合が続きました。
清水:包み隠さずに言うと一つも面白くはありませんでした。
お客さんの声援や熱気があって競輪は成り立つ競技なんだなと強く感じました。
シーンとした中を走るのは、いつもより集中力も欠きますし、特にGIでの無観客というのは精神的に堪える部分がありました。
大津:高松宮記念杯競輪やサマーナイトフェスティバルでは脇本選手、新田選手と今年初対決でした。
清水:実際に走ってみて、正直無理かな、勝てる気がしないというのを感じてしまい、そこから自分のモチベーションが徐々に下がってしまった部分もあったのかもしれません。
サマーナイトは優勝することは出来たのですが、それはラインの力であって人の力を借りることが出来れば勝負になるかなという感じでした。
大津:その後にはオールスターがありました。
清水:あそこで本当に現実を見たというか、無理なものは無理なんだなと自分で諦めました。
大津:ナショナルチームと戦う中で、自分の自力が通用せず戦うイメージが見えてこないと仰っていました。
清水:見えないですね、今でもちょっと見えてこないですね。
大津:現時点での対策はありますか。
清水:短いスパンで勝とうと思うことはやめました。
オリンピックに向けての4年間で計画的に練習をしているナショナルチームと、僕らは一か月に一回くらい対戦をして負けてしまう。
そこから次の一か月でどう対策をするかってやったところで、向こうの4年間とこちらの考えている一か月では太刀打ちが出来ないですからね。
もちろんレースではどうにかしてやろうと毎回思っていますが、自分自身長いスパンで考えてやっていかないといけないと感じさせられました。
大津:話を聞いているとS級S班として戦った中でかなり苦しい時期ではなかったですか。
清水:とても辛く悔しい時期でした。
今までは勢いだけでやっていた部分も少なからずありましたから。
大津:ただその中で地元防府記念3年連続優勝がありました。
清水:あそこだけは絶対に譲れない部分があるので、自分自身をかなり奮い立たせてのぞみました。
防府で育ってきて防府競輪場でレースを見て競輪選手になりたいと思ったので。
GIやGPと同じというか、思いは防府記念のほうが強いです。
大津:決勝戦では宮本隼輔選手(山口113期)、桑原大志選手(山口80期)との連携もありました。
清水:本当に凄く嬉しかったです。
桑原さんは普段から一緒に練習もしてますし、よくアドバイスもしていただけます。
隼輔は小学生の時の自転車教室から一緒でやってきた仲間なので、地元の決勝で走れると決まった時には今までの競輪人生で一番嬉しかったです。
大津:お客さんの声援はいかがでしたか。
清水:顔見せからGIの決勝戦かっていうくらいの声援がありました。
そういう熱いお客さんの前なので地元では変なところは見せられないという責任感もあります。
地元での優勝を望んでる方が多いと思うので、そういった方の前で結果を出せたというのは、今年走ったレースの中でも一番嬉しかったです。
大津:宮本選手はヤンググランプリに出場されます。
清水:隼輔も強いのでチャンスはあると思います。
隼輔の優勝を見て自分も頑張りたいですね。
今年の鬱憤を全てグランプリでという気持ちは自分の中に強くあります。
大津:グランプリは三度目の出場になります。
清水:ここ二年はお客さんの数に圧倒されているというか、初めてグランプリに出たときは発走機に着いた段階で涙が出るんじゃないかってくらい湧き上がるものがありました。
あの雰囲気は普段のレースとは全く違いますね。
大津:何度でも味わいたくなるような感覚ではないですか。
清水:そうですね、何もかも違うので、これは出た人にしか分からないだろうし、出た人の特権だろうと思います。
大津:GPメンバーの印象はいかがですか。
清水:例年通り凄く強い選手が多いですね。
今の時点でレースの展開を頭の中で考えても何も思い浮かばないです。
大津:松浦選手との前後関係は決まっていますか。
清水:まだ松浦さんとは話もしていないので自分が自力でやるかは決まってないです。
前夜祭までに一緒に練習をするので、その時に話が出来たらと思ってます。
自分にそこまで自力でというこだわりもないですし、松浦さんの今の自力を見せてもらったら僕より断然動けているので、その辺は話してみてからですね。
大津:平塚バンクのイメージはありますか。
清水:二回しか走ったことがないので特に可もなく不可もなくっていう感じですかね。
大津:清水選手は冬場が特に強い印象があります。
清水:周りのスピードが落ちるからちょうど良いのかもしれません。
僕はもともとトップスピードがあるわけじゃないので、夏場はトップスピードがある選手が特徴を活かして走ってますが、冬場はそうトップスピードが上がらないんですよね。
僕は年間通して夏も冬もそう変わりませんから。
大津:来年のカレンダーは佐藤慎太郎選手(福島78期)と同じ12月になりました。
清水:粋な計らいで嬉しかったです。
去年優勝したのは慎太郎さんなので今年は僕が優勝して、グランプリチャンピオンが二人で、また来年の12月を迎えたいですね。
大津:オッズパークの読者さんへGPへの意気込みをお願いします。
清水:GPに関しては何が何でも獲りたいって気持ちは持っていたいです。
ここに向けてやってきたっていう部分もあるので、今年ダメだった部分を挽回するためにも、グランプリに全部ぶつけて最後終わり良ければ総て良しという感じで頑張ります。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社