昨年KEIRINグランプリを制し、2020年をGP王者として戦ってきた佐藤慎太郎選手(福島78期)。通算6度目、二年連続でのグランプリ出場を決めました。佐藤選手に今年の振り返り、グランプリへの意気込みを伺いました。
大津:GP出場おめでとうございます。
佐藤:ありがとうございます。
大津:二年連続の出場となりました。
佐藤:今年はS級S班でしたし、年間一番車のアドバンテージもありましたので出れるチャンスが十分あると思っていたのでGPに乗れて良かったです。今の競輪は自力選手全盛の競輪になりつつありますし、縦に踏めないと勝負にならない競輪になりつつある中で、年齢のいった追い込み型の自分が乗れたというのは評価したいとは思います。
大津:今年一年を振り返ってみていかがですか。
佐藤:記念は5年半ぶりに優勝できたのですが納得のいく一年ではなかったです。自分の中で会心のレースがありませんでした。去年は自分の位置が悪くても二着や三着に突っ込むレースが多かったのですが、今年は前の選手の頑張りに尽きます。
大津:GP王者として戦う中で心境の変化はありましたか。
佐藤:競輪界を背負っているプレッシャーはありませんでした。ただ一番車なのでスタートでの位置取りというのは毎回きちんとやらないといけないことなので、そこは苦労しました。Sを取りにいくと足を削ってしまう部分も多少なりともあって、自力選手に比べたら少ない仕事量ではありますがプレッシャーになることもありました。
大津:コロナの影響で開催中止期間もありました。
佐藤:日本だけではなく世界中が大変な時期でしたから、ダービーの中止などは非常に残念ではありましたが仕方がないと思いました。
大津:無観客でのレースは走ってみていかがでしたか。
佐藤:お客さんの声がないのは本当に寂しかったです。ファンの声援っていうのはモチベーションに繋がるんです。お褒めの言葉や応援だけでなくお叱りの言葉、どんな声であっても僕たちの力になっているんだなと改めて感じました。
大津:佐藤選手の場合、特にファンの後押しが多いように思います。
佐藤:応援してくれる人たちがいて、その人たちの言葉によって「よっしゃ、一丁やったろうかい。」という気持ちになってるので、その声が直接聞こえない中でのレースというのは、自分ではそんなつもりはなかったのですが、気が付けば無意識のうちにモチベーションが下がっていたのかもしれません。
大津:7車立てのレースも経験されました。
佐藤:競輪という人間模様がレースに詰まっているのが僕は醍醐味だと思うんです。7車立てのレースでは、その「競輪の深み」をファンの方に伝えるのが難しかったように感じました。ただ、競輪をやったことがない方たちには車券が当たる楽しさをしってもらうことも大切なので、7車立ても必要なのかなと考えます。
大津:今年はGPをどの辺りから意識しましたか。
佐藤:初めからです。S班ですし、全日本選抜競輪でも決勝戦に乗りましたので序盤から意識はありました。
大津:後半にかけて一段と調子が上がったように思えます。
佐藤:体調の変化ではなく、よりグランプリに出たいという気持ちが強くなったからかもしれません。追い込まれていく中で、レース中のちょっとした甘さが減ってきました。
大津:賞金争いでプレッシャーのかかる中で競輪祭を迎えました。
佐藤:四日市記念を優勝し賞金を上積み出来たので、少しだけ余裕をもって競輪祭にはのぞめました。
大津:後半の二日間は菅田壱道選手(宮城91期)や新山響平選手(青森107期)がなんとしても佐藤選手をグランプリへと気持ちの入った走りを見せてくれました。
佐藤:そうですね、本当に嬉しかったです。そういう気持ちになってもらえるようなレースを普段からしていかないといけないと思うんですよね。「別に慎太郎さんのグランプリ出場なんてどうでもいいよ。」と思われるようなレースを僕が普段からしてると、前を走る選手も熱い走りをしてくれないと考えるので、その点では今年の自分の走りというのは、追い込み屋として前を走る選手に認めてもらえていたのかなと感じました。
大津:昨年もお伺いしましたが、佐藤選手が後ろを固めることによって自力選手の走りが変わってくるということですよね。
佐藤:これは本当に追い込み選手としての重要の役割であって、前を走る選手をどういう気持ちにさせるかというのは非常に大切なことですね。ユニフォームやパンツの色だけではなく普段のレースから心掛けていれば、それを感じ取ってくれると思うので日々の積み重ねなのかなと考えています。
大津:佐藤選手の走りは周りの追い込み屋への刺激にもなるのではありませんか。
佐藤:同じ世代の人たちは競輪選手だけに限らず応援してくれるファンの方たちからも励みになりますという声をいただくこともありますので、自分のやれることをしっかりやれれば良いかなと思います。
大津:競輪祭の段階では新田祐大選手(福島90期)もGPが決まっていない状況でした。
佐藤:そこは全く心配していませんでした。新田は必ず乗ってくると思っていましたから。新田がグランプリに乗ってくるから、新田の席は空けて考えておかなきゃいけない。常に自分の上に新田がいると仮定していて、賞金争いの中で自分が8位や9位ではグランプリ出場は危ないという考えはありました。
大津:北日本からは守澤太志選手(秋田96期)もGP出場が決まりました。
佐藤:守澤がいてくれることで新田の後ろを回る恐怖感を共有出来ますからね。去年は後ろで千切れたくないとか、ダッシュ凄いなぁ、とかっていうのを一人で感じていましたから。僕にとっては守澤の存在が癒しにもなります。
大津:連覇がかかります。
佐藤:グランプリは新田に頑張ってもらって僕は黒子でいいです。ただ連覇を出来るのは僕しかいないので一発狙っている気持ちは密かにあります。
大津:レース前はどんな心境なのですか。
佐藤:責任感。それに尽きます。ファンもそうですし、競輪選手や関係者が全員見るものですから。あの声援を聞くと、自分の力をちゃんと発揮したいという責任感が強くなります。
大津:大歓声の中でのウイニングランというのは忘れられないのではないですか。
佐藤:本当に気持ちが良いですね。現実じゃないよね、夢なんじゃないのかって心境になりました。
大津:レース終了後も数多くのファンの方が残ってくれていました。
佐藤:僕の車券を買ってくれてない方も多くいたと思うんです。 だけど「慎太郎!慎太郎!」と言ってくれて、お客さんって本当に嬉しいなって改めて思いました。
大津:佐藤さんは常々「ファンの為に走っている」と発言しています。
佐藤:僕の場合、調子が悪いときもそうですし、若い時からずっと応援してくれている人が多いんです。デビューした時からずっと手紙を出し続けてくれている人が何人もいるんですよ。今年400勝を達成した時には夫婦茶碗を選手会に送ってくれました。 そういう人たちとグランプリで喜びを分かち合えたのが良かったです。勝てない時にも変わらず応援してくれた方たちにようやく胸を張って「俺は佐藤慎太郎のファンなんだ」と言ってもらえる時が来たなと。
大津:GP終了後の新田選手とのやり取りも印象に残っています。
佐藤:中止にはなりましたが2020年にはオリンピックがありましたから新田自身も勝ちたかったと思うのですが、その中で僕の優勝をあんなに喜んでくれるんですからジーンときました。ラインがある競輪というのは本当に良いものだなと、競輪ファンの気持ちが分かったような気がします。
大津:今年はTwitterを始めました。
佐藤:本当は自分の日常をバラしたくはないんです。ただ応援してくれている方や、競輪を知らない方に少しでも競輪を身近に感じてもらいたくてTwitterを始めました。昨年賞金王になった自分に出来ることは何かと考えた時に、競輪選手という存在をアピール出来たら良いなと思ったんです。
大津:「ガハハ」も流行りました(佐藤選手がTwitterの結びに多用する言葉)
佐藤:あれ困った時に使えるんですよ、どんな場面でも。お客さんで使っている方もいるので、それで少しでも選手とファンの距離が縮まったなら嬉しいですよね。
大津:コロナ禍で触れ合いが限られている中で、このような取り組みはファンにとっても嬉しいと思います。
佐藤:入り待ちや出待ちもできない状況ですからね。選手にとってもSNSで発信することは大変なことではありませんし、選手の日常生活が見れて嬉しいというメッセージをいただけると、それでお客さんが喜んでくれるならいくらでも僕は協力します。 お客さんあっての競輪ですから。
大津:GPは9番車での出走になりました。
佐藤:紫は好きな色なので頑張ります。ただ白のほうが好きなので来年も白のユニフォームを着ていたいです。
大津:ここからグランプリに向けてはどう過ごしますか。
佐藤:日にちがあるので限界まで追い込んでいきたいです。麻雀プロの佐々木寿人さんのように攻めの気持ちでやっていきます。
大津:最後に、GPへ向けての意気込みをお願いします。
佐藤:メンバー最年長なのでデカいことは言わずにひっそりと密かに連覇を狙います。んっ?違う感じのコメントが良い?ぶっちゃけ本当のことを言うと、この年齢でグランプリという選ばれたメンバーしか走れない舞台に立てている自分を誇りに思いますし、楽しみたいという気持ちがあります。 デビューした頃には44才の自分がグランプリを走っているなんて想像もしてませんでしたから。そういう意味では楽しんでも良いのかなと。なので楽しみながら連覇を狙います。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社