今年は、『オッズパーク杯ガールズグランプリ』出場をかけて熾烈な賞金争いがありました。7番手で出場権を得たのは鈴木美教選手(静岡112期)。一昨年、地元静岡でのガールズグランプリ以来二度目の出場です。競輪祭での「ガールズグランプリ2020トライアルレース」を含めた今年1年の振り返りと、ガールズグランプリへの意気込みをお伺いしました。
山口:ガールズグランプリ出場決定、おめでとうございました。
鈴木:ありがとうございます。
山口:率直なお気持ちはいかがですか?
鈴木:1月から始まって、ガールズグランプリに出たいという気持ちはもちろんありましたが、それ以上に「今年は怪我をせず1年間走り切りたい」という気持ちが大きかったです。 その結果が、このようにグランプリ出場に繋がったと思うので良かったです。
山口:最後は苦しい戦いだったと思います。小倉でのトライアルレースを振り返っていかがでしたか?
鈴木:トライアルレースに入る時には、賞金ランキング5位の選手までは「ほぼグランプリ出場は確定だろう」と言われ、それ以下の選手は残り2つの出場権をかけてのレースでした。私もその時は6位だったため、予選から「〇着は●万円だから...」や「他の選手との差は●万円だから...」と頭に入れて臨みました。 自分のチャンスとしてはまず決勝に上がらないと話にならなかったので、何が何でも決勝にはいくぞ、という気持ちでしたね。
山口:日ごとに賞金の変動がありましたね。見ている私たちも緊張感がありました。
鈴木:私も毎日、とても緊張していました(苦笑)。でも「今ある力を全部出し切って、それでもだめなら仕方ない」という気持ちもどこかにあったので、全部出し切れた結果が今回のトライアルレースだったと思います。
山口:ご自身のレース(11レース・グループB決勝)が終わり、ランキング7位以下だった佐藤水菜選手(神奈川114期)が優勝されました。その時の思いはどうでしたか。
鈴木:私が自力でグランプリに出場するには、1)自分が優勝するか、2)自分より賞金ランキング上位の梅川選手(梅川風子選手・東京112期)か高木選手(高木真備選手・東京106期)が優勝して、かつ自分も3着以内ならほぼ決まりというのも確認していました。佐藤選手が優勝したことで、正直に言うと本当に焦りましたね。 残りは12レース・グループA決勝を残していましたが、何が起こるかわからないのが競輪なので「もう出場はだめかもしれない」という気持ちもあったし、怖くてレースが見られませんでした。
山口:他の選手に12レースの結果を見てもらった、と聞きました。
鈴木:そうなんです。「私は度胸がないな」と本当に思いました(苦笑)。強い人だったらきっと自分の目でレースを見られるんだろうなと感じましたもん。でも私はできなかった。 なので一緒にいた黒河内由実選手(長野110期)に見てもらいました。それでもドキドキしましたね。
山口:そうですよね、想像しかできませんが緊張しますよね。その後、決まった時に静岡の選手たちと一緒に喜んでいる様子も拝見しました。
鈴木:そうなんです。静岡の男子3選手(渡邉晴智選手、萩原孝之選手、岡村潤選手)が一緒に喜んでくださいました。 気持ちとしてはハグをしたいくらいだったんですが(笑)、それはできないのでハイタッチで一緒に喜んでくれたがとても嬉しかったです。
山口:ガールズグランプリは一昨年・地元静岡での開催以来の出場です。その時と今年の違いは何かありますか?
鈴木:どちらもガールズケイリンコレクションなどビッグレースの優勝はできずのグランプリ出場なんですが、一昨年の経験があるからこそ今年は苦しい時にもしっかり戦えたのかなと思いました。地元・静岡での開催の時は「何が何でも出たい」という気持ちが強かったんですが、今年も同じ南関東場の平塚競輪場での開催ですから、地元地区と思って頑張っていました。
山口:賞金はどの辺りから気にしていましたか?
鈴木:最初はそこまで気にならなかったですが、9月、10月頃は「出られるチャンスかあるかもしれない」と気にしていました。
山口:賞金的には大きいと思われる、伊東温泉競輪場でのガールズケイリンコレクションの開催も9月にありました。これは5月の静岡・日本選手権競輪の中止で9月へ移りましたが、それについてはいかがでしょうか。
鈴木:今思えば、その伊東温泉のコレクションがなければ私がグランプリに出られることはなかったかもしれないですね。 伊東温泉のバンクで走れたこともそうですし、コレクションの開催を決定してくれた関係者の方に感謝しかないです。
山口:中止になった5月のコレクションは「コレクショントライアルレース」を経てご自身で勝ち取った権利でした。走れる機会があるのは嬉しいと感じたのですが、いかがですか。
鈴木:そうですね。レースの内容は悔しい結果でしたが、その舞台で走れたことは良い経験になりました。
山口:先ほどは怪我なく1年走り切りたい、というお話がありましたが、今年1年を振り返っていかがですか?
鈴木:今年は6月、7月の成績があまり良くなかったのですが、それ以外は安定した成績で1年走り切れました。その結果がグランプリ出場に繋がっていると思います。 去年は怪我もあり1年通して走れなかったのがとても悔しかったんです。だからこそ1年、大きな怪我がなく走れたことがとても嬉しいです。
山口:今年はコロナ禍で中止の期間もありました。そこはどう過ごされていたんですか?
鈴木:一番のショックは静岡の日本選手権競輪が中止になったことでした。それが決定した時はモチベーションを保つのが大変でしたね。 先ほどの話になりますが、静岡のコレクションは自分で勝ち取った権利だったので、走るのをとても楽しみにしていましたし、地元でのG1だったので「絶対やるだろう」と私も決めつけていた分ショックが大きかったです。でも、気持ちを切り替えてからは、「中止だからこそしっかり練習しよう」と乗り込みをいつもより多めにするなど、良い練習ができました。
山口:ガールズグランプリの舞台、平塚競輪場は直前11月も走り完全優勝されています。走った感触はいかがでした?
鈴木:11月の開催が、バンクを新しく塗り替えた後の開催でしたが、思ったよりも走りやすかったです。バンクもとても綺麗で、良いイメージです。
山口:今の段階(12月初旬)での斡旋は14日からの大宮競輪での開催が入っていますが、走る予定ですか?
鈴木:はい、走ります。私はレース間があまり空かない方が良いなと思ったのと、前回の静岡グランプリでは初めての出場ということもあり、グランプリ出場が決まった時点で12月の斡旋を全て欠場させていただき、グランプリ本番のレースを迎えました。それで結果が良くなかった(7着)ので今年はそうならないようにと、走ることにしました。グランプリトライアルレースが終わってから大宮までも少し空いているので、今はしっかりと練習ができています。大宮で勢いをつけてガールズグランプリに臨みたいですね。
山口:一昨年の経験が活きているんですね。
鈴木:そうですね。やっぱり経験をしているのとしてないのとではかなり違うと思います。一昨年とは全然違うと思うので私自身も楽しみにしています。
山口:強い選手たちがそろったガールズグランプリです。どんなレースを見せたいですか?
鈴木:しっかり優勝を狙って走りたいです。組み立てはある程度のイメージはしているんですが、後はきっちり練習をして本番で出せるようにしたいです。
山口:今のトレーニングの強化ポイントはどのような所ですか?
鈴木:他の6選手に比べて私はダッシュが劣っているので、その底上げをしているのと、バンクで男子選手ともがき練習もさせてもらっています。最近はバンクでガールズの杉沢毛伊子選手(静岡104期)や篠崎新純選手(千葉102期)と一緒に練習させてもらっているのが良い方向に向いていると思います。今まではガールズケイリンの選手は私一人で伊東温泉をホームバンクにしている選手と一緒に練習をしていたんですが、ガールズの選手と一緒に練習をするのはとても楽しいですし、良い刺激をもらっています。
山口:充実した練習環境なんですね。
鈴木:はい、今はとても充実していると思います。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の方に、ガールズグランプリの意気込みをお願いします。
鈴木:今年の集大成としてのレースなので、今ある力を全て出し切りたいです。それで結果がついてきてくれたら最高だと思います。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA