8月、名古屋競輪場で行われたアルテミス賞レースで、ビッグレース初制覇となった梅川風子選手(東京112期)。
初めて走ったファン投票で選ばれたレースの振り返りや、ナショナルチームで練習している現在の状況、まもなく開催される伊東温泉競輪場でのガールズケイリンコレクションへの意気込みなどを伺いました。
山口:アルテミス賞レース、優勝おめでとうございます。
梅川:ありがとうございます。
山口:初めてのビッグレースの優勝はいかがでしたか?
梅川:率直に、嬉しかったです。物足りない感じはありましたが、嬉しいです。
山口:アルテミス賞はファン投票で選ばれた選手が走るレースですが、その辺りはどうでしょうか。
梅川:それが何よりも嬉しかったです。今回のコレクションはいつものレースとは違って自分の力だけでは出場できない舞台です。今年は9位で選んでもらって、走らせてもらえたという感謝の気持ちをレースで表したいと一番に思って臨みました。
山口:オッズパーク杯ガールズグランプリを始め単発レースは何度も経験されていますが、雰囲気はいかがでした?
梅川:そこはいつもの単発レースと同じような雰囲気でしたね。変わった感じもなく自分もいつも通りで臨めました。
山口:猛暑の中のレースだったと思いますが、その辺りはいかがでしたか。
梅川:私は暑いのは全然気にならないので、特に苦痛ではなかったです。
山口:残念ながら無観客での開催でしたね。
梅川:そうですね。でも最近は無観客のレースも多かったので、それに慣れてしまってはいました。お客さんの前で走る機会があまりなかったので。
山口:レースの展開を振り返っていきます。石井貴子選手(東京104期)が先行でしたが、それは想定していましたか?
梅川:いや、初手の並びで変わると思っていたのでどうなるかはわかりませんでした。並んだ時に、瞬間的に皆さんがどう動くかなと考えましたね。
山口:ご自分の初手の位置取りはどうでした?
梅川:真ん中あたりにいられたのは良かったと思います。初手で前に押し出されることも想定はしていたんですが、そうならなかったですしね。どちらでも対応できるようにはしていました。
山口:バックストレッチ5番手から捲っていきましたが、2番手からは大久保花梨選手(福岡112期)も捲っていました。踏み合いはいかがでしたか。
梅川:花梨とは何度も同じような展開でレースをすることがあり、勝ったり負けたりその時々なんです。踏み合いも長引いたので苦しかったですね。ゴール前までもつれましたし、後から聞いたんですが名古屋のバンクはインコースの方が有利だったみたいです。かなり内で粘られ苦しかったです。
山口:ゴール前は「勝ったな」という実感はありましたか?
梅川:いや、私の後ろに梶田舞さん(栃木104期)がいてかなり鋭く追い込んできていたので、どっちが1着だったかはわからなかったです。
山口:そうだったんですね。アルテミス賞へ向けて何か特別に調整したことはありますか?
梅川:調整はほとんどしていません。実は競技の「オリンピックシミュレーション」という来年のオリンピックを見据えた摸擬レースがあったんですが、それに参加し、そこへ向けて調整をしていたのでアルテミス賞レースの時にはひと段落ついていました。
直前は休みもあったりして疲れはなかったですが、脚のハリなんかは心配する部分でした。それ以外は問題なく進められましたし、結果も出たので良かったです。
山口:次のガールズケイリンコレクションが9月にあります。5月と同じメンバーですが、5月の中止が決まった時や9月に移動になると決まった時はどう感じましたか?
梅川:5月の時には「やっぱり中止か」と覚悟はしていました。驚きはなく仕方ないという気持ちでしたね。9月に開催されると決まった時は嬉しかったですが、自分の中では「5月のコレクションは無かったもの」として消化していたので、ふわっとした気持ちでした。
5月のコレクションは元々1月のトライアルレースで各選手が出場権をかけ自分で勝ち取ったコレクションですが、それでももう無いものとして諦めていたので、開催してくれたのは驚きでした。
山口:メンバーを見ていかがでしょう?
梅川:その時々によってコレクションを走る選手は違いますが、どのレースでもあんまりメンバーを見て意識することはないです。平常心で走るだけですね。
山口:伊東温泉競輪場のバンクの印象はいかがですか?
梅川:結構難しいバンクかなと思います。333バンクですしね。普段はやっぱり400バンクを走ることが多いので、慣れないという部分もあります。
山口:気を付けるのはどんな所ですか?
梅川:やっぱり一番は後方にならないことです。
山口:位置次第では、積極的に仕掛けないとという場面もありますか?
梅川:積極的にいかないといけない部分も出て来るでしょうし、どこかで仕掛けを待たないといけない場面もあると思います。それはレースの展開に応じて考えないといけないですね。
山口:梅川選手はレースの組み立ては、初手が決まってから考えるんですか?
梅川:ある程度の想定はしますが、でも並んでみないとわからないことがたくさんあるので、並んでから考えることも多いですね。
山口:想定外で焦ってしまうことはあるんでしょうか?
梅川:それはもちろんあります。予想しない動きが絶対どこかではあるので、焦る時はありますよ。
山口:そんな時はどう立て直すんですか?
梅川:レース中に自分で「これは焦った上の動きだな」と思うことはないですが、レースが終わってから振り返った時に「あの時は焦っていたんだな」と思うことはたくさんあります。
そんな時は展開などを見て「落ち着いたら仕掛けられたな」と次に繋げていきますね。
山口:練習地をナショナルチームに移されてしばらく経ちましたが、いかがでしょうか?
梅川:オールスター競輪が終わり、今ようやく練習が始まった所なので、あまり実感はないですね。これからしっかり染み込んでいくと思います。ようやくスタートです。
山口:今までご自身でしていた練習と大きく変わる所はありましたか?
梅川:内容は、私が今までやっていたものと大きく変わらないですが、質が高まったと思います。これからどう自分が変化していくか楽しみです。質に関しては求められる物がとても高いので、そこを自分のものにできたら良い感じに変わると思います。
山口:ナショナルチームに入るきっかけは何だったんですか?
梅川:同期の太田りゆちゃん(埼玉112期)がきっかけでした。自転車をする前はスケートでオリンピックを目標にしていたこともあり、ガールズケイリンに転向してもオリンピックを意識はしていたんですが、ふんわりした気持ちだけではいけないなと自分では思っていました。
そんな時にりゆちゃんと同じ開催で話すことがあり「良い環境を自分から求めれば、練習することができるよ」という話題が出たんです。
その後、コロナでの自粛・中止の期間があり自分の中でどうするか考える時間が1か月ほどありました。しっかり考えた結果、ナショナルチームに参加することを決めました。良いタイミングだったと思います。
行動に移すタイミングを見つけられなかったんですが、その時にりゆちゃんと話ができたというのが大きかったです。
山口:今年の2月にインタビューさせていただいた時に「より良い練習環境は常に求めている」というお話をしていただきましたが、まさに今良い環境で練習ができていますか?
梅川:確かにそんな話をしましたね(笑)。そういうことですよね。以前からずっとより良いトレーニング環境は求めていたのでまさに、という感じです。
山口:目標はどこですか?
梅川:パリオリンピックを目指しています。そこで戦えるように準備をしていきたいです。
山口:今のところの競技との両立はどうですか?
梅川:そうですね、今は練習をし始めた段階でまだ実際の国際レースを走っていないので未知数ですね。これから調整していくべき所ですし、選ばれれば国際レースにも出場できたら良いと思うのでしっかり練習に取り組みたいです。
山口:ガールズケイリンの後半へ向けての目標は何ですか?
梅川:もちろんガールズグランプリも意識しています。まずは出場権を得ることが一番の目標で、その先にグランプリを優勝するというのがあるので、選ばれるようにしっかり走りたいです。
山口:賞金ランキングの順位はいかがですか?(9月上旬では第4位)
梅川:まだトップの選手とも下位の選手とも大きな開きはないですし、ビッグレース1つか2つで逆転するもされるも可能です。まだまだ気は抜かずにいきたいですね。
山口:アルテミス賞レースの優勝でビッグレースを1つ勝ちました。この後のビッグレースなどに向けてのモチベーションはどうですか?
梅川:どんなレースでもまずは目の前のレースを一つ一つ走るのが大切だと思うので、先のことよりは目の前のレースをしっかり走りたいです。その先にグランプリがあると思うので、とにかく目の前のレースをしっかり走ります。
山口:最近SNSも始められましたが、この優勝でファンの皆さんの反応はいかがでしたか?
梅川:今まではSNSをやっていなかったのでファンの方との交流はなかったんですが、始めてみてファンの方からたくさんの応援をもらったり、逆に私から投稿という形でメッセージを送れるのがうまくできるようになったり、とても身近に感じられました。それはとても嬉しいかったです。
SNSをしていない時は、競輪場に見に来てもらうしかお客さんの声は聞けなかったのですが、気軽に交流できるのが良いなと思いました。
山口:ファンの方もより身近に感じられるかもしれませんね。それでは最後に、オッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
梅川:とにかく目の前のレースを大切に走った後に、年末や大きな目標が現れると思います。一走一走を大切にして、ファンの皆さんの嬉しい声がまた聞けるように頑張りたいと思います。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA