今年最初のGI『第34回読売新聞社杯全日本選抜競輪』(別府)を優勝した中川誠一郎選手(熊本85期)。
GIの振り返りと今年1年の今後の目標などをお伺いしました。
山口:全日本選抜競輪、優勝おめでとうございます。
中川:ありがとうございます。
山口:少し時間も経ちましたが今のお気持ちは?
中川:全日本選抜が終わってから、ほっとした部分とその後バタバタと忙しかった事もあって体調を崩してしまいました。やっと今(3月上旬)落ち着いてきましたね。
山口:今年初のGIでした。入る前はいかがでしたか?
中川:実は別府バンクはすごく苦手だったんです。成績として、良い時がほとんどないイメージ。もちろん地元の九州地区でGIがあるのは凄く嬉しかったんですが、正直「別府かぁ......」と思っていました(苦笑)季節的に僕は冬が苦手ですし、別府の冬の風はとても強いので。
でもせっかく九州地区であるからには良い成績を残したいですから、準備だけは万全にしていきました。自分の中では体調や調整などは、ほぼ完璧に近い形で入れましたね。
山口:初日は、清水裕友選手(山口105期)の番手でした。戦法を追い込みに変えると宣言してからはいかがですか?
中川:目標がいる時は番手戦で行きたいとは思っています。地区として九州であったり西で先行選手がいる時は流れには逆らわずまとまってやりたいですね。
山口:準決勝はかましのような形で、早い仕掛けでしたね。
中川:その日はバンクのコンディションも凄く良かったんです。風もなく暖かかった。これなら早めに仕掛けてもゴールまでもつかなと思って早めに仕掛けました。
その時のメンバーを見て、もしスタートで前を取る選手がおらず僕が押し出されるように前を取る展開になれば、一度みんなが動いた後にたたききったら決まると思っていました。
想定の中の一つにはあったので、良いタイミングで仕掛けられたと思います。
最近GIの決勝には乗っていなかったので、出切った後に「決勝には絶対に乗りたい」という欲が出てきてしまって4コーナーからはぺダリングなどがぎこちなかったと思うんですが、何とか押し切れました。
山口:決勝は先行一車のような形でしたね。
中川:単騎の選手も自分を含めて自力があったので、展開は読みにくかったですね。ただスタートして周回中には各選手、何となく仕掛ける雰囲気が伝わってくる時があるんです。絶対ではないんですが、7、8割は当たる直感みたいなものですかね。
吉澤くん(純平選手・茨城101期)が先行だろうし吉田くん(敏洋選手・愛知85期)も仕掛けずに展開を待つ選手ではないのでレースは動かしてくるだろうと思っていました。
もう少し吉澤くんが勢いよく仕掛けると思っていたので4番手の位置を取りに行ったんですが、スピードが遅かったので僕は外で併走になってしまって。
あれで下げたら9番手だし優勝はなくなると思い、見せ場だけでも作ろうと思って仕掛けました。決勝には九州から一人だけだったので、見せ場なく終わるのだけは嫌だったんです。もし駄目だったとしてもレースは盛り上がりますからね。ただ、かました時点で優勝は正直ないと思いました。
山口:前に出切ってからはいかがでしたか?
中川:準決勝ではかまし気味の早めの仕掛けだったので、脚は準決勝の時よりスムーズに回っていました。
なので意外と落ち着いて3コーナーまではいけて、後は僕の余力と後ろからのスピードだなと。
4コーナー回っても誰も来なかったので「もしかしたら逃げ切れるかも」とそこからは必至で踏みなおしました。
その後はきつかったのでゴール前は周り見えなかったです。
山口:実感はどのあたりで?
中川:ゴールした瞬間に、僕の横に慎太郎さん(佐藤慎太郎選手・福島78期)が通り過ぎたので、抜かれたと思いました。
その後バンクを回っている時にスローを大型ビジョンで見て優勝なんだと確信しましたね。なのでそこからガッツポーズを5回くらい、慌ててしました(笑)
山口:地元地区の選手からの祝福はいかがでした?
中川:自分自身、久しぶりのGI優勝だったので感慨深かったです。皆さん笑顔で迎えてくれました。
山口:最初のタイトルの時(2016年静岡・第70回日本選手権競輪)とは違いましたか?
中川:最初の時はまさか優勝できるとは思わなかったので「優勝しちゃった」という驚きの方が大きく、敢闘門に戻ってきたら九州の選手たちがたくさん泣いて迎えてくれたので、僕は逆に泣けなかったんです。
あの時は、熊本地震の直後で後押しというか神風のような雰囲気を感じたので、うまく流れにのって取らせてもらったんだなと感じていました。
その後あまり良くない時期も続き、自分としても立て直してからの優勝だったので、今回はぐっとくるものもありましたし、力で勝ち取れたと感じる部分もありました。
山口:先ほどのお話で出た、レースを冷静に分析して走れた上での優勝ですもんね。
中川:そうですね。後、去年から定期的にトレーニングを積み重ねていたので、自分の中でも「間違っていなかったんだ」とほっとしました。
山口:熊本競輪も再開が決まって、今回の全日本選抜競輪でも何度も放送で流れていました。中川選手の思いはいかがですか?
中川:再開の日程は後ろにずれていってはいるんですが、再開するというのは決定しているので、それに向けて自分も頑張っていざ再開となった時には上の位置にはいたいです。
競輪場にいらっしゃるお客さんや関係者の方も、実際のレースをここ熊本競輪場で見たいと言っている方が多いので、そこで走るまでは頑張りたいです。
山口:地元選手の活躍が何より嬉しいとお客様は思っていますよね。
そしてこの優勝によりKEIRINグランプリ2019が一番乗り(暫定)となりました。今年はこの後どういう風に走っていきますか?
中川:あまり変わらないですね。「楽しく走る」というのが最近のテーマなんです。
GIをもう1回優勝しようと気負うのも、トレーニングの時には思う事もありますが、それよりも自然体で、自分がレースを楽しめるようにしたいと思って走っています。
山口:一戦一戦、自分の思うように走れるように、という感じなんですね。
中川:そうですね。ただ思うように走るには、やっぱりある程度の脚力は必要ですし、思い通りにレースが進まないと楽しめないので、楽しむためにトレーニングも頑張るという感じです。
山口:ありがとうございます。では最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
中川:今回地元地区でしっかり優勝出来たので、熊本再開までは九州を引っ張っていける立場にいたいです。それまで応援してください。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター/MC/キャスター/声優。
競輪関係では取手競輪中継司会、松戸競輪リポーターをメインに各競輪場で活動中。
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※写真提供:公益財団法人 JKA