今年最初のGI、全日本選抜競輪を制した87期の平原康多(ひらはら こうた)選手(埼玉)。激戦となったレースを振り返っていただきました。
赤見:全日本選抜優勝、おめでとうございます。
平原:ありがとうございます。GIを目標に常にやっているので、とにかく嬉しいです。武田(豊樹)さんが後ろだったし、関東地区の大会だったので、すごく責任を持って走りました。
赤見:具体的にレースを振り返っていただきたいのですが、インの2番手からの位置取りになりました。イメージ通りだったんですか?
平原:レース前は何パターンか考えていて、速くなった時にどこまで引くかとかシミュレーションしていたんですけど、やっぱり相手が稲垣(裕之)さんでしたし、何度も何度も追い上げて来て、番手を取るまでに時間が掛かってしまいました。それで新田(祐大)くんがまくるタイミングになってしまって、自分が発進するのが少し遅れてしまったので、「やばい、やばい」ってずっと思っていました(苦笑)。
赤見:焦っているようには全然見えなかったですけど。
平原:焦るというか、余裕を持ってレースをしたことはないですよ。この時も自分が踏む前に新田くんに行かれてしまったので、「ちょっとやばいな」と思いました。自分としては、取り切ったらすぐ行く、ラインでなんとかするっていう風に作戦を立てていたので、踏み込んではいたので何とか追いつけましたけど。競輪の競走は想像していないことが起こるので難しいですね。
赤見:それでもきっちり差し切りました。
平原:そこは力以上の物が出たんじゃないですかね。ゴール後は自然にガッツポーズしていたんですけど、まさか自分が獲れるとはそこまで意識していなくて、とにかく自分の役割をしっかり果たしたいと思って必死だったので、その中で勝てて嬉しかったです。
赤見:しかもラインを組んだ武田選手とワンツーでした。
平原:2日目3日目は武田さんが1着でワンツー、という形だったんですけど、決勝戦では自分が勝つことができました。武田選手とワンツーというのは、何度やっても嬉しいですね。 ただ今回は、ラインで3着まで取り込むことができなかったので、その辺は諸橋(愛)さんだったり、神山(拓弥)くんであったり、申し訳ない気持ちもありますけど。
赤見:競輪にはそのラインの面白さがありますよね。
平原:結局は個人勝負なんですけど、やっぱりラインがあってレースのプロセスがあるので、責任を持って各々が走っていますから。その中での勝負ということで、独特の面白さがありますよね。
赤見:ラインを組むことが多い選手とは、普段から信頼関係を築いているんですか?
平原:そうですね。武田さんとはプライベートでも何度もお酒を酌み交わして、競輪の話をよくするし、どういう想いでっていうのをお互いにわかってやっているので、だからレースで意思疎通もすごくしっかりできていると思います。ただやっぱり、レースはもう思ったようにはならないので、集中力だったり経験だったり、いろんな要素があると思います。作戦は何パターンか考えますけど、それでもまず考えた通りにはならないですよね。
赤見:今年は早々にGIを勝って、年末のグランプリの権利を獲得しました。
平原:それね、すごくよく言われるんですけど、自分の一番の目標がグランプリではなく日本選手権競輪なので、しっかり日本選手権競輪を獲る、獲りたいっていうのが自分が選手になった時からの一番の目標なんですよ。やっぱり日本選手権競輪は特別感がありますね。一番の目標はグランプリという選手も多いですし、賞金面で見ればグランプリなんですけど、自分はなんか日本選手権競輪かなって思います。
赤見:好スタートを切った今年とは対照的に、去年は厳しい年だったと仰っていましたが、振り返っていただけますか?
平原:試行錯誤したことが、裏目裏目に出たんですよね。いろいろ試していい風に出ることもあるんですけど、去年やったことはその時は本当に上手くいかなかった。一つじゃなくていろいろやったんですけど。今となればすごくいい経験になったし、今に活きていると思います。ただ、落車も多かったですし、大ケガはなかったですけど、悪循環になってしまいました。いろいろなことが重なってまったく結果に結びつかなかったですね。特に前半から中盤にかけては。
赤見:どうモチベーションを保ったんですか?
平原:そういう経験は初めてではなかったので、体がボロボロでも「諦めない」って気持ちがしっかりしていれば、何度でも這い上がれるって思いながらやってます。
赤見:心が折れそうにはならないですか?
平原:さすがにありますけどね(苦笑)。根本が、競輪や自転車が好きなので、やっぱり楽しいって気持ちがなくならない限り、大丈夫だなって思います。
赤見:長年トップ選手として活躍し続ける秘訣は何ですか?
平原:自分ではトップ選手とは思っていないです。自分でトップって思った瞬間、成長が止まって選手として終わるなって思うので。常に挑戦していきたいですし、どんどん成長していきたいです。自分は常にまだまだと思っています。
赤見:平原選手は高校時代に世界戦に出場するほど自転車競技で活躍し、競輪に舞台を移してからもデビュー戦を勝ってすぐに頭角を現しました。とても順調に見えますが、ご自身ではいかがですか?
平原:世界戦はいっただけという感じでした。「自分、めちゃくちゃ弱っちいな」と思って帰って来ただけで。競輪でデビューしてからも、初勝利はすぐ挙げられましたけど、簡単に壁にぶち当たりましたから。デビューから三、四年後くらいに、普通に壁にぶち当たって、そこから上には行けないなって思いましたね。
赤見:壁というのは?
平原:もう本当に上位の選手が強くてどうしようもないなと。自分がいくら努力しても強いなって感じました。自分自身で限界みたいなのを感じていたんですけど、ふるさとダービーを獲った年くらい(2006年)から変わって来ました。その何か月か前から、東京の後閑信一選手にいろいろ教わったんです。今でも可愛がってもらっているんですけど、それがきっかけになって自分の限界を破れたというか、ものの見方が変わりました。
赤見:どんなことを教わったんですか?
平原:すべてですね。もちろん自転車のことをまず教わったんですけど、後閑選手は人間的に本当に素晴らしい方で、人としても学ぶことあって。自分はいろんな面で未熟だなと感じることができて、その辺からいろいろ変わることができましたね。
赤見:では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
平原:日本選手権競輪を目指して選手をやっていますので、5月の日本選手権競輪をしっかり狙っていきたいです。今年だけではなく、優勝することを目標にやっていきます。まだ今年始まったばっかりですし、一つでも多くGIの優勝戦線に絡んでいけるよう努力します。
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※インタビュー / 赤見千尋