2015年のデビューから、着実に力をつけて来た108期の細田愛未(ほそだ まなみ)選手(埼玉)。昨年末に初の完全優勝を果たし、今年はさらなる飛躍を目指します。
赤見:まず競輪選手を目指したきっかけから教えて下さい。
細田:もともとは小さい頃からトライアスロンをしていたんです。父も姉も兄もやっていたので、自然のなりゆきで(笑)。小学校1年から大会に出ていたんですけど、中学2年くらいでタイムが伸びなくて、悩んだ時期があって。トライアスロンの中でランニングがすごく苦手で、水泳と自転車で上位にいても最後のランニングで抜かれてしまうんですよ。そんな時に両親がガールズ競輪が始まったっていうテレビを見て、それをきっかけにトライアスロンを続けるか自転車やるか考えて。競輪ならばそれで生活していけるので、競輪選手を目指しました。
赤見:そこから、どんな経緯で競輪学校へ?
細田:まだ中学生だったので、先に高校進学のことを考えました。最初は家の近くの高校に行こうかなと思っていたんですけど、大宮競輪に見学に行ったときに、川越工業高校の自転車部の顧問の先生が来ていて、「ちゃんとやりたいならおいで」って言ってくれたんです。
赤見:川越工業高校といえば、平原康多選手をはじめたくさんの競輪選手を輩出している自転車競技の名門校ですね。
細田:そうです。かなりの強豪ですよね。でも女子部員は入れ違いで卒業してしまって、入学した時からずっとわたし一人でした。練習も男子選手に混じってやっていたんですけど、女子一人ってことを考える余裕もないくらいずっと自転車に乗っていました(笑)。
赤見:濃密な時間だったんですね。
細田:合宿とか大会とかにもたくさん連れて行ってもらいましたし、本当にあっという間の時間でしたね。文化祭と大会が重なって出られなかったこともありますが、自転車漬けで過ごした青春時代です(笑)。
赤見:高校を卒業後に競輪学校に入学するわけですね。
細田:毎朝の錬成や、乗り込みはキツかったですけど、同期にも恵まれて割と楽しく過ごすことができました。それまで自転車をやってきたアドバンテージはありましたけど、学校に入ったらみんな一緒なので、気持ちを切り替えて一(いち)からスタートという気持ちでいました。
赤見:そしてデビュー戦は2015年7月の松戸で4着でした。振り返っていかがですか?
細田:めちゃくちゃ緊張しました!気づいたら終わっていた感じで...。山原(さくら)選手と一緒だったんですけど、もうずっと併せられちゃってまったくレースができなかったんです。正直、「これからどうしよう...」って、ちょっと途方にくれました。でも3日目に勝つことができて、これで次もやっていけるかなという気持ちになって。この時は親も見に来てくれていて、目の前で勝てて本当に嬉しかったです。
赤見:初優勝はそこから約8か月後、2016年3月の京王閣でした。
細田:実は、デビューしてから「勝ちたい勝ちたい」っていう気持ちが強すぎて、ずるいレースをしていたんです。誰かの後ろにいて最後差せばいいや、みたいな。でも師匠からそれじゃダメだって言われて、意識を変えようとしていて。「まず自分で前に出てから、誰が後ろから来るのか、という風に考えろ」っていう師匠の言葉を実践しようとしていたんですけど、頭ではわかっていてもなかなか体がついてこなかったんです。でもこの時のレースで優勝して、師匠の言っていたことがちゃんと理解できたかなと思いました。
赤見:さらに7月の川崎では、女王・梶田舞選手を破って勝利しました。これは大きかったんじゃないですか?
細田:梶田さんはもちろん、出場選手がすごかったですから、自分が一番びっくりしました(笑)。がむしゃらに走ったのであんまり覚えていないんですけど、展開もよかったですし、とにかく嬉しかったです。
赤見:ここまで通算153勝を挙げていますが、川崎がベストレースですか?
細田:う~ん、あのレースはやっぱり展開がハマったっていうのが大きいので、ベストレースとは言えないですね。ベストレースというか、力を出し切ったと思えるのは10月の佐世保の決勝です。奥井(迪)選手が連勝していて、なんとか止めたいと思って思いっきりいきました。結果的には7着に負けてしまったんですけど、力は出し切れたかなと。こういうレースを続けていきたいですね。
赤見:年末の松山では初めての完全優勝も果たしましたね。
細田:気持ちよかったです!!去年最後のレースだったので、絶対に勝ちたいと思っていました。いい形で終わることができて清々しい気持ちでしたし、最高の締め括りができましたね。去年はガールズグランプリに同期の児玉(碧衣)選手と尾崎(睦)選手が出場して、すごく刺激になりました。今年は自分も出場できるようにがんばります!
赤見:では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
細田:はい。いつも応援していただき、ありがとうございます。見せ場が作れるよう積極的にレースしていきますので、これからもよろしくお願いします。
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※インタビュー / 赤見千尋
※写真提供:公益財団法人 JKA