ビーチバレーのトッププロからガールズケイリンに転向した尾崎睦(おざき・むつみ)選手。今年はデビュー2年目で見事グランプリ出場を決めました。いよいよ迫って来た大一番に向て、意気込みをお聞きしました。
赤見:尾崎選手は『ビーチバレーの申し子』と呼ばれ、プロとしてビーチバレーで活躍していたわけですが、どういう経緯でケイリンに転向したんですか?
尾崎:きっかけは、ビーチバレーでペアを組んだことのある金田洋世選手(106期)が先に転向していて、ジムで練習している時にたまたま会ったんですよ。その時に自転車に乗っている風景を見て、わたしもやらせてもらってから興味が出ました。ビーチバレーとは全然違う競技なんですけど、自転車に乗ることが面白かったし、金田選手が先に道を作ってくれていたのも有り難かったです。
赤見:ビーチバレーをそのまま続けていても、トップ選手として活躍できたと思いますが、決断した理由は何だったんですか?
尾崎:そうですね。ビーチバレーを辞めるという選択肢は考えたことがなかったんです。わたしはオリンピックに出ることを目標にしていたんですけど、ずっとがんばって来た中で、ちょっと厳しいなと思うようになって。オリンピック出場というのが、目標というよりは遠い夢みたいな感じになって来ちゃったんです。それで、明確な目標が定まらなくなって...。プロとしてやっている以上、目標に届くように全力でがんばることが使命だと思うので、漠然と続けているわけにはいかないなと。ちょうどそんなことを考えている時に金田選手と会って自転車に乗ってみて、「こういうのもあるんだな」って思いました。ケイリンは他競技から転向する選手も多いので、やってみたなと思ったんです。
赤見:周りの方の反応はどうでしたか?
尾崎:最初に両親に相談したんですけど、「このシーズンはしっかりやり切って、次の年から転向するなら応援する」って言ってくれたんです。その言葉が大きかったですね。だから、最後のシーズンも全力で戦って、スポンサーの方や応援してくれた方々に恩返しして、そうやっていい形で区切りをつけてケイリンに転向できました。
赤見:実際にケイリンの道に入ってみていかがですか?
尾崎:競輪学校に入ったのが29歳だったので、同期は10代後半から20代前半とかなり若い子が多くて、そういうところが心配だったんですけど、すぐに打ち解けられたし、わたしのことを慕ってくれて、楽しい学校生活でした。それに、競輪学校って、朝起きる時間からその日どんな練習するかとか、全部きっちり決まっているんですよ。ビーチバレーの時は自分でスケジュールも練習も考えて計画を立てていかないといけなかったので、言われたことを全力でやる生活っていうのは新鮮だったし集中できました。もちろん、言われたことだけじゃなく、それ以上やった方がいいなと思ったらプラスαでやればいいし、やれる時間もあったので。
赤見:競輪学校の在校成績は見事1位で卒業でした。
尾崎:学校に入る時、師匠の渡邊秀明選手から「1位で卒業して来て欲しい」って言われたので、明確な目標ができました。自転車の経験もなかったし、あんまり実感もなかったんですけど、毎日の練習や記録会の時なども、明確な目標があったからそこに向かって集中してがんばることができたと思います。
赤見:デビューしてからも順調に活躍して、今年は2年目でグランプリ出場を決めましたね!
尾崎:グランプリに出場することが目標だったので、その舞台に立てることが決まって本当に嬉しいです。ただ...、成績を見てもらってもわかるように、最近崩れてるんです。今、軸がブレているんですよね。体も考え方もブレてるのかなって思います。今まではグランプリに出場するためにがんばって来て、10月に出場が決まってから、なんていうか、「出場する」っていう目標を達成したわけじゃないですか。次は「優勝する」っていう目標に向かってがんばっているんですけど、その切り替えが上手くいかなかったというか。グランプリまでまだ少し時間があるので、きっちり修正して挑みたいと思います。
赤見:目標の選手は奥井迪選手ということで、グランプリでも戦うことになりますね。
尾崎:はい。競輪学校にいる時、奥井選手のレースをテレビで見ていて、気持ちが伝わる走りをする方だなって。わたしも先行にこだわっていますし、スタイルも考え方も似ているのかなと。でもデビューしてからは、一緒に戦うわけじゃないですか。そうなると、目標にしていたり、憧れてたりすると、勝てないんじゃないかって思って。だから、目標の選手を言うのをやめました。自分は自分で、スタイルを確立したいと思ってます。それでいつか、「尾崎選手みたいになりたい」って思ってくれる後輩ができるようにがんばります!
赤見:では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
尾崎:グランプリでは積極的なレースをしますので、応援よろしくお願いします!!
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※インタビュー / 赤見千尋
※写真提供:公益財団法人 JKA