
雨の山陽走路を制した篠原睦
天候に恵まれなかった今回の山陽ナイター。5日目優勝戦も良走路にはならなかった。試走終わって唯一3.4秒台を出した篠原睦が一番人気。続いて0ハン大外の山本翔にも人気が集まり、3連単は7-3-6、7-3-4、7-6-3が人気筋。2連単は7-3、7-6、3-7が上位人気。
スタートで人気の一角・山本翔が後退してしまい、丹村司・西村龍太郎の2車で逃げる。篠原睦は一気に3番手へ車を押し上げ西村龍と丹村司を1車ずつ差し先頭へ。同期の松尾啓史は西村龍の後ろへ付けたが車は進まず3番手でゴール。山本翔は巻き返すが圏内には入れなかった。
2021年にグランプリを獲ってSGホルダーとなった篠原睦は、今回の優勝でV45。今月のプレミアムカップの前に同じ浜松走路でマシンを仕上げにかかる。
2強を迎え撃つのは黒川京介
過去10回の『G1開設記念グランプリレース』歴代覇者が全員顔を揃える今回の最有力V候補には、黒川京介の名前を挙げたい。
2月の浜松デイレースSG『全日本選抜』は5戦5勝で決勝戦へ進み、青山周平との全勝対決が注目されながら、スタート争いで明暗がクッキリ分かれて青山周がV、黒川は6着に沈んだ。しかし、その1週間後に開幕した川口ナイトレース5日制は全勝V。その決勝戦(6周戦)でマークした本走タイム3.312秒は、全日本選抜の準決勝戦(8周戦)で計時した3.310秒に匹敵する猛スピードであり、この2節いかに充実していたかが解る。
そして今大会の前節に臨んだ先月下旬の川口デイレースは、前検日や初日の時点で口にしていた重さを節間の整備でクリアしながら無敗を継続し、4日目の決勝戦も有吉辰也・森本優佑といった強豪を撃破して連続V。2月は15戦14勝。優勝した2節に積み重ねた白星は9つ。そう、今大会の初日には自身初めての10連勝に挑む資格を得たのだ。
黒川と同様にキャリアの早期から高い素質を示していた34期の上和田拓海と35期の佐藤励に10連勝の達成は先を越されており、SG覇者の先輩として威厳を示す意味でもこのチャンスに記録を樹立したい。もちろん、勝ち続けることが今大会における活躍にもつながっていく。
昨年までの10年間に連覇がひとりも出なかったこの大会。青山周が2連覇を目指して今年も参戦する。
先月に自身8度目の10連勝を達成したばかり。今年1月と2月だけで20勝。これは、史上最多となる年間114勝を挙げた鈴木圭一郎が、その2024年1~2月に挙げた勝利数と全く同じ。全国ランキングの次期ナンバー1に返り咲くことも先ごろ発表されて、40歳になって迎えた今年も、不惑の言葉どおり全く惑うことなくスター街道を驀進するだろう。
前述したとおり昨年1~2月に20勝した鈴木圭は、今年2月終了時点で17勝。直近の勝利は山陽デイレースG1『スピード王決定戦』最終日でのもの。その前日4日目は小雨・小雪に見舞われる不安定な天候で、準決勝戦は鈴木圭と青山周がそれぞれの出走レースで3着に敗れて優出を逸するという大波乱になった。その結果、最終日11Rで青山周と対決することになった鈴木圭は鮮やかな速攻からゴールでは青山周に10メートル以上の差を付けて圧勝。現S1の意地を示した。
きわめて意外なことに今年まだ優勝なし。今度はお天気に邪魔されずに決勝戦へ進んで、昨年の『スーパースター王座決定戦』ぶりとなるVを勝ち取りたい。
今期ランキングS3の金子大輔が、その順位にたがわぬ活躍を見せている。今年1月に浜松デイレースG2『ウィナーズカップ』を初制覇。SG全日本選抜の決勝戦は青山周・鈴木宏に次ぐ3着。その次節に出場した山陽スピード王の決勝戦では佐藤励や佐藤貴也を捌いて、こちらも大会初制覇。
最近「車の状態が良いから道中もレース展開が見えている」と語っており、開設記念グランプリレースも優勝すれば、3大会連続での各タイトル初獲得となる。
山陽スピード王の決勝戦で2番人気に支持された丹村飛竜は、序盤の位置取りがうまくいかなかったが猛烈に追い上げて準優勝。勝った金子大が「レース後半ペース下がった」こともあるが、終盤その先頭へ肉薄した丹村飛の追いアシは目を引いた。その前節に走ったSG全日本選抜は初日から3連勝。SG初優勝を狙えるのではと感じさせるムードがあった。昨年2月に川口デイレースで実施された前回のSG全日本選抜も初日から3連勝。開設記念グランプリレースは2017年の第65回大会を制している。
荒尾聡も今年のSG全日本選抜に初日から3連勝。そして前回SG全日本選抜は2日目から4日目まで3連勝している。
有吉辰也は今年1月の川口デイレース一般開催と飯塚ミッドナイトの2節を、先月の黒川と同様に連続で完全V。続くSG全日本選抜の初日は2着となり自身初の10連勝はならなかったが優出を果たしている。先月末の川口デイレースにも優出。今大会の直前に川口走路の感触を確かめられているのは、遠征勢の中でアドバンテージになる。
栗原佳祐は川口でのグレード開催には初挑戦となる。川口での実績は、まず2023年にデビューしての3節目、勝ち上がり権利を得た初節に地元浜松以外へ初遠征。準決勝戦3着で初優出を逸して非常に悔しがっていたが、それから約1か月後、2度目の他場遠征となった川口で、デビュー3か月めに通算2度目の優勝。
活躍し始めた時期が早かったためハンデが重くなるのも早く、2023年の後半から昨年にかけては勝ち星を挙げるペースが下がったが、今年1月に1級車では初めての実戦を迎えると、素質が一気に満開。1月に出場した4節すべて優出(その3節目からハンデ重化し、現在に至るまで最重ハン)、2度の優勝。2月はSG全日本選抜に補充選手として加わると3戦2勝。続いて正選手として参戦した浜松デイレース一般開催では、3日目の準決勝戦を有吉に約5車身差、決勝戦でも荒尾や有吉に10メートルほどの差をつけて1着ゴール。
今年3度の優勝がすべて4日制4連勝の完全V。勢いに乗ると連勝、固め打ちが多いタイプであることに留意しておきたい。
2024年をスーパースター王座決定戦4着で締めくくった佐藤摩弥。今年に入って参戦したグレード開催には全て優出し、伊勢崎G1『シルクカップ争奪戦』3着、浜松G2ウィナーズカップ5着、浜松SG全日本選抜4着と、2025年もエンジン・乗り手が高いレベルで安定していて、念願のSG獲得に向けては年を経るごとに現実味を増している印象だ。勝負ごとにおいて良く用いられる『勝ちグセ』を付ける意味でも、昨年7月以来のグレードタイトル、おととし7月ぶりのG1を獲得して、更に上のステージをめざしたい。
2024年の大みそかに『SSシリーズ優勝戦』2連覇を果たした佐藤励は、今年はウィナーズカップと山陽スピード王に優出。全日本選抜の準決勝戦は8周戦の発走から4000メートルは優出圏内の2番手を走りながら、残り100メートルで長田稚也に逆襲されて、SG初優出を逸する結果に。だが2024年度に出場したSG開催ではフライングや妨害行為で勝ち上がり権利を失うケースが続いていたことを考えると、今年の全日本選抜6走とも上位に入着したのは成長の証しであろうし、昨年の秋から暮れにかけて初めて10連勝を達成したことも地力アップしたからこそ。
川口の若きダブル佐藤は、2025年度もSG初制覇へたゆまぬ努力を続ける。
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主な出場予定選手
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黒川 京介〔川口 S-10(33期)〕
佐藤 摩弥〔川口 S-11(31期)〕
佐藤 励〔川口 S-12(35期)〕
鈴木 圭一郎〔浜松 S-1(32期)〕
青山 周平〔伊勢崎 S-2(31期)〕
金子 大輔〔浜松 S-3(29期)〕
有吉 辰也〔飯塚 S-4(25期)〕
荒尾 聡〔飯塚 S-5(27期)〕
丹村 飛竜〔山陽 S-30(29期)〕
栗原 佳祐〔浜松 A-117(36期)〕
文/鈴木
野田光宏が初優勝
雨走路のレースが多かったアーリーレース4日間シリーズ。1着選手のみが優出できる『準決勝戦B』を濡れ走路で勝利して決勝戦へ進んだ野田光宏が、苦節30年の選手生活においてついに初優勝を果たした。
雨の準決勝戦を勝ち上がった7名による戦い。10線2車並びの内枠から発進した野田は、単独0ハンの下平佳輝を叩いて出ていきなり先頭を奪えた。同ハン外枠から同じ24期の斎藤正悟がピタリ追走。見た目には直線の真ん中から先は斎藤正の伸びの方が強めに見えて、実際に序盤の周回では野田に対してイン差しを仕掛けるシーンもあったが、勝敗のポイントは4周回3コーナー。何度も仕掛けどころを狙っていた斎藤正の車がブレて、車間が開いてしまった。残る2周あまりの斎藤正はグリップを開けられなくなり、初Vゴールを目指してひた走る野田との差が再び詰まることはなかった。
野田は通算44度目の優出で悲願達成。34期生のデビュー時には弟子を養成し、桝崎星名を1人前のレーサーへ育てた。今節は桝崎星は出場していなかったが敢闘門では先輩・後輩たちに出迎えられて、そのあとは初めてのウイニングラン。その感想を尋ねられると「慣れないですね」と照れくさそうに語っていた。
文/鈴木
松尾啓史がパワーアップ
準決勝戦9Rと10Rは走路に湿り気が残っているブチ走路との公式発表で、完全な良走路に回復した11Rおよび12Rと単純には比較できないが、それでも松尾啓史と篠原睦が計時した3.35秒台の本走タイムは他5車とはスピードが違った印象。さらに準決勝戦の松尾啓は道中で前を走る車に何度も加速を抑えられていて、もしスムーズに回れていたらもっと速いタイムを出せていた可能性が高い。そのことは篠原の試走タイムが3.30秒、松尾啓が3.24秒だったことからも想定、想像できよう。
問題は空模様および走路状態だ。完全な重走路になった場合は、積極果敢な攻撃が持ち味の山本翔が同ハン2車を交わし、長田恭徳は安定感は高くないが雨を乗りこなす技術はあり、10線の最内枠から追撃態勢。この陣形を追ってくるのは雨走路でSGを優勝した実績もある篠原睦となりそう。
◎ 6 松尾啓史
○ 7 篠原睦
△ 4 長田恭徳
▲ 1 丹村司
穴 3 山本翔
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文/鈴木