サブノタマヒメ(金沢プリンセスカップ、兼六園ジュニアカップ)、アイバンホー(金沢ヤングチャンピオン)、アイアンブルー(大高坂賞)など最近も産駒が活躍しているプリサイスエンド。受胎率の低さなどもあり、昨年残念ながら種牡馬を引退したそうです。現在は北海道新冠のノーザンレイクで第3の馬生を過ごしています。最近の様子をノーザンレイクの佐々木祥恵さんに伺いました。
赤見:プリサイスエンドが牧場にやって来たのはいつ頃ですか?
佐々木:昨年の10月20日にこちらに来ました。去勢をしたせいか、最初からとても落ち着いていましたね。ただ去勢してから痩せてしまったと聞いていて、実際腰骨なども浮き出ている様子でした。左後肢のフレグモーネが慢性化していて、そのケアがかなり大変ですね。
赤見:ノーザンレイクには他の馬たちもいると思いますが、他の馬たちとの交流はあるんですか?
佐々木:他の馬たちは3頭とも牝馬なので、別の放牧地に放しているんです。プリサイスエンドは落ち着いているんですが、女の子たちがソワソワしてしまって(笑)。最初に馬運車が到着した時から気にしていて、プリサイスエンドを別の放牧地に放したら、3頭ともプリサイスエンドが見えるところにバタバタと走って来て、大騒ぎしていました(笑)。
【到着してすぐの頃は小さめの放牧地で放牧。牝馬たちの熱い視線と猫ちゃんに見守られて】
赤見:キャッキャしている女子たちを想像すると微笑ましいです。プリサイスエンドは種牡馬だったことを考えると興奮しそうですが、あんまり気にしてないんですね。
佐々木:そうなんですよ。すぐに放牧地の草を食べだして、女子たちのことはまったく気にしていない様子でした(笑)。放牧地でまどろみながらウトウトしたり、大きな口をあけてあくびをしたり。体も少しずつ戻ってきていますし、今はのんびりと過ごしています。
赤見:写真を見たら、猫ちゃんとは仲良くしているみたいですね。
佐々木:メトという猫なんですけど、勝手に馬房に入ったり、洗い場ではいつの間にか背中に乗っていました。次の日も背中に乗っていたんですけど、しばらくしてプリさんが「この猫なんとかしてくれないかな」みたいに訴えて来て。直接猫に怒らないところが優しいですよね。
【洗い場で猫ちゃんが背中に乗っている図】
赤見:プリさんて呼んでるんですね。
佐々木:放牧地から帰る時、「プリさ~ん」て呼ぶと鳴いて返事をしてくれます。ちょっとハスキーな声なんですよ。去勢前はどういう感じだったのかわからないですけど、今はとても穏やかですね。ただ気に入ったエサが来ないと耳を絞って怒ってますけど(笑)。
赤見:気に入ったエサって何ですか?
佐々木:ルーサンとかが好きですね。やっぱり種牡馬だったので濃いエサを食べて来ていると思うんですよ。でも今はフレグモーネが悪化した時に抗生剤を使ったなごりなのか、お腹を下しやすくて。なので好みのものをあげたい気持ちもあるんですけど、チモシーなどをあげてます。そうすると「ルーサンくれくれ」みたいな感じで、耳を絞って歯をカチカチさせてます。だからと言って噛みつくわけではないですけどね。
赤見:プリサイスエンド産駒というと、活躍馬が多いですが一癖あるとも聞きます。
佐々木:よく聞くのはゲートにちょっと難があると言われていますよね。プリさんが来てからは中央も地方も産駒を探して注目しています。サブノタマヒメは重賞を勝ってくれましたし、サブノタマヒメを初めて負かしたアイバンホーもプリサイスエンド産駒でしたね。
赤見:アイバンホーは全日本2歳優駿の時にゲートで立ち上がってしまって...。ゲート難の一端を見せていましたね。
佐々木:そうでしたね。高知の大高坂賞を勝ったアイアンブルーも後ろから行く馬ですもんね。何か一癖あるんでしょうけど、気持ちも強いから活躍馬が多いのかもしれません。
【12月初旬からは広い放牧地へ】
赤見:種牡馬としては残念ながら引退となりましたが、これからは余生をゆっくりと過ごして欲しいです。
佐々木:活躍馬をたくさん出してくれましたし、日本で走ったわけではないですがファンの多い馬ですよね。うちに来てからも青草や野菜を送ってくれたファンの方がいらっしゃいました。ニンジンやリンゴが大好きなので、喜んで食べていましたよ。今は引退馬協会の所有馬ということで、うちは引退馬協会からの預託で預かっています。引退馬協会への寄付で預託料が賄われているので、寄付をしてくれた方々に感謝しています。これまで頑張ってくれた馬ですから、日々のケアをしっかりして、プリさんが少しでも気分良く過ごせるように尽力していきます。
認定NPO法人引退馬協会