本日、7月11日に62回目の誕生日を迎えた、金沢の山中利夫騎手。
6月5日に、これまで福山の津曲照男騎手が保持していた国内最年長騎乗記録を塗り替え、現在も更新し続けています。
1967年のデビューから44年。
長く現役を続ける秘訣は、どこにあるのでしょうか。
:62歳のお誕生日、おめでとうございます。
「ありがとうございます。まぁ、この年になるとお祝いも何もないけどね」
:国内最年長騎乗記録を達成した時は、どんなお気持ちでした?
「嬉しかったね。この記録はしようと思って出来ることじゃないから。
1年1年積み重ねて来て、その先にあるからね。
実際、デビューした頃はこんなに長く乗ると思ってなかったし、最年長記録なんて想像もしてなかったよ」
:意識し始めたのは、いつ頃ですか?
「正直ね、55歳の時に1回調教師試験を受けたんですよ。落ちたけどね。
それで騎手を続けてたんだけど、59歳、60歳になった頃かな、津曲さんの記録を意識し始めたのは。
津曲さんは、もともと春木競馬場にいる時、同じ厩舎で兄弟子だったんです。春木が廃止になって、津曲さんは福山へ、私は紆余曲折あって金沢へ移籍さしてもらって。
そういう縁もあるから、津曲さんの記録を塗り替えることが出来て、余計嬉しかったです」
:金沢に移籍した当時は、どんなジョッキーだったんですか?
「もうね、本当にやんちゃでした(笑)。
でも、移籍して4鞍目で重賞乗せてもらって、1,0倍の1番人気馬を差し切ったんですよ。
そうしたら、次の開催からたくさんいい馬に乗せてもらえるようになって、それでドーンと人気出ましたね。
私は技術で乗るというよりも、ガッツが取り柄だったから、激しいアクションで追う姿に、お客さんも喜んでくれたんじゃないかな」
:長きに渡っての現役生活ですが、何か秘訣はありますか?
「これだけ長くやってて、何度も落馬はしているんだけど、骨折したことが1度もないの。そのお陰で、60過ぎても現役でいれると思います。
丈夫な体に生んでくれた両親に感謝ですよ。
あとは、お酒は一切飲まない。飲まないというか、体に合わないから飲めないの。
でもタバコはいっぱい吸うし、食べ物も特に気をつけてるわけじゃない。自然に任せてます」
:金沢も梅雨明けして、本格的に夏がやって来ますが、夏バテ防止策は何かありますか?
「私はね、夏大好きなの。まぁ昔は本当に好きだったけど、今は体がついていかないところもあるんだけどね。特に夏バテ対策はしてないです。寒い冬より夏が好きだから」
:今後の目標はなんですか?
「今はね、1日でも長く乗りたいです。1年ていうより、1日1日ですよ。
でもね、私は何度もリーディングも獲らせてもらってるしね、馬券の対象になれなくなったらもうダメなんですよ。
お客さんに対してもそうだし、自分自身もメゲてくるしね。
常に上を目指して成績上げないと、ジョッキーは続けていけないです。
馬には、馬主、調教師、厩務員はじめ、たくさんの人が関わってますから。乗せてもらってる以上、精一杯乗れるジョッキーじゃないとね」
:励みになってることってありますか?
「やっぱり家族ですね。
こういう記録を作って、いっぱい取材受けてるでしょ。子供たちが喜んでくれてね。
うちの奥さんなんか、まだ生まれてない孫に見せるんだっていって、記事を大切に取ってますよ。
それから、お客さんですね。
パドックなんかで声かけてくれる人がいっぱいいるから、後ろの方走ってたら申し訳なくてね。
そういう人のためにも、馬券に絡むよう精一杯乗りますよ」
レースに騎乗する時には、真剣な目つきでキリリと引き締まった表情を見せ、まさに勝負師...というオーラが漂っていますが、馬から下りた山中騎手は、穏やかで屈託なく笑う、とても優しい方でした。
1日でも長く現役を続けて、ファンを楽しませて欲しいです。