ここまで地元佐賀では10戦全勝のミスカゴシマだが、ひやりとする場面は何度かあった。飛燕賞ではワンビリーブにクビ差まで迫られ、佐賀皐月賞ではトップレベルに同じくクビ差まで迫られた。両レースとも、キタカラキタムスメが早めにミスカゴシマにからんで行って、ゴール前で迫ったワンビリーブ、トップレベルは、ともにレース中盤では中団よりうしろにいて、直線で一気に追い込んできた。今回のメンバーでもミスカゴシマの能力はおそらく頭ひとつかそれ以上抜けていて、真っ向勝負で負かせる馬はいないと思う。ただ今回はキタカラキタムスメが不在となったが、それに代わるどれかが執拗にからんでいって、脚を溜めていた馬に差される可能性がないとはいえない。
佐賀皐月賞ではエアーポケットを本命にしたが、残念ながら3着だった。前の争いに向正面あたりから挑んでいったぶん、末が甘くなった。2走前、B-1組の軽暖賞で古馬を軽く一蹴したレースぶりなら、あらためてミスカゴシマを負かせる可能性はあると見る。
能力を測りかねるのがリバイブ。2歳時は北海道から転入してカペラ賞まで3連勝。3歳初戦となったのが、佐賀皐月賞と同日の古馬B-2特別で8着。ただそこを叩かれ、2歳時の能力から上積みがあれば上位争いの可能性はある。
佐賀皐月賞でミスカゴシマをとらえるかという勢いで迫ったのがトップレベル。前半控えての直線勝負がうまくハマった。今回もそううまくいくかどうか。
中央未勝利から転入して3連勝で鯱の門特選を制したのがアイノウィステリア。その鯱の門特選は、佐賀皐月賞で10着だったスターオブグリーンをようやく3/4馬身差でしりぞけたという内容。しかし能力の高さを感じさせたのは2走前の1400メートル戦。さらなる距離延長の2000メートルで、その力を発揮できるかどうか。
◎10ミスカゴシマ
○3エアーポケット
▲6リバイブ
△7トップレベル
△4アイノウィステリア
九州ダービー栄城賞の出走表はこちら
今年も今週の佐賀・九州ダービー栄城賞からダービーシリーズが始まる。ダービーシリーズのレース名で、その土地にちなんだ何かの名称がレース名になっているのは、この栄城賞だけ。ほかはいずれも「地名」+「ダービー」もしくは「優駿」というレース名になっている。
栄城(えいじょう)賞は以前から佐賀の"ダービー"という位置づけで、今年で第62回を迎える伝統のレース。2000年までは単に『栄城賞』だったが、2001年からは九州競馬として連携し、一冠目が荒尾競馬場(2011年限りで廃止)の『九州皐月賞荒尾ダービー』、二冠目が佐賀の『九州ダービー栄城賞』となって以来、この名称になった。
『栄城』とは、佐賀城の別称。栄城賞のステップ競走となっている鯱の門特選の『鯱の門』は本丸の表門で、国の重要文化財となっている。
ちなみに佐賀西高校・野球部のユニフォームの胸にも大きく『EIJO』と書かれている。佐賀西高の前身が佐賀藩校・弘道館で、現在も佐賀城敷地内にあるとのこと。ホームページのバナーには『栄城 佐賀県立佐賀西高等学校』とある。
話を栄城賞に戻して、2009年の勝ち馬は牝馬のギオンゴールド。その額には扇型の流星があり、中島英峰アナウンサーが『栄の国の扇の舞姫』と実況したのが印象的だった。
地方競馬には、このようにその地域に根ざしたレース名も少なくなく、またそれがいかにも地方競馬らしい。
逆に最近ではカタカナのレース名も増えてきて、スプリングカップ、クイーン賞やクイーンカップ、ジュニアカップやジュニアグランプリなどは、たしかにそのレースの特徴を表していてわかりやすいが、どこの競馬場にもありそうな、いわば無味乾燥な印象でもある。
せっかくの機会なので、あくまでも個人的な印象として、地方競馬らしい重賞のレース名について紹介してみたい。最初が佐賀の栄城賞となったので、南から順に......。
高知を象徴するのは、今年で第43回となる建依別(たけよりわけ)賞だろう。
建依別は、古事記の神話に出てくる土佐の古い呼び名で、土佐を支配していた神でもあるらしい。
高校野球の強豪として知られる高知商業高校の校歌に「建依別の ますら男は」という歌詞が出てくるので、ちょっと古い高校野球ファンなら耳にしたことがあるのではないだろうか。
高知ではもうひとつ、大高坂(おおたかさ)賞。高知競馬が福山競馬と連携した2011年度、福山競馬場の重賞として新設されたのが大高坂賞で、高知競馬の重賞として新設されたのが久松城賞。
高知城が築かれた場所が大高坂山で、久松城は福山城の別称。まさに高知と福山の交換(交歓)レースとして行われていた。ところが2013年3月限りで福山競馬は廃止。大高坂賞は2014年1月の第3回から、もともとの地名の由来である高知競馬で行われるようになって現在に至り、一方の久松城賞はわずか2回だけで廃止となってしまった。
園田・姫路の重賞には、摂津、播磨、六甲など、よく知られる地名が多いが、印象的なのは『白鷺賞』だろう。説明するまでもないかもしれないが、その真っ白な容姿から姫路城は白鷺城とも呼ばれている。
白鷺賞で興味深いのは、姫路競馬場でしか行われていないこと。かつてのホッカイドウ競馬や、岩手競馬もそうだが、ひとつの主催者に複数の競馬場がある場合、開催日程によって重賞の開催場が変わることもめずらしくない。
もうひとつ姫路城にちなむ姫山菊花賞は、姫路競馬場が休止となったあとも引き続き園田競馬場で行われてきたが、白鷺賞は姫路競馬場の休止とともに、2005年3月の第48回を最後に行われなくなった。しかし今年1月の姫路競馬場再開に合わせ、14年の空白を経て、第49回として白鷺賞が復活した。
さらに兵庫で触れておきたいのが『菊水賞』。兵庫県神戸市兵庫区菊水町という住所があるが、『菊水』は、南北朝時代以前に播磨や摂津で活躍した(暴れまくった?)楠木正成の家紋・旗印でもある。そもそも菊水町の地名自体が楠木正成から来ているのかもしれない。このあたり、詳しい方がいたら教えていただきたい。(つづく)
昨年のこのレースで重賞初制覇を果たしたハッピーハッピーの連覇濃厚と見る。昨年12月以降、勝ち星から遠ざかっているが、対戦した相手はウノピアットブリオ、キングプライド、コウエイエンブレム、ドラゴンゲートという、いずれも牡馬(またはセン馬)の佐賀のチャンピオン級、もしくは底を見せていない馬たち。特にここ2戦では、中央オープンから大井を経由して転入後、佐賀では重賞を含め9連勝中というドラゴンゲートに、半馬身差、1馬身差で2着。他地区からの遠征馬相手でも、牝馬同士なら負けられない。
ナンヨーオボロヅキは高知所属として出走した昨年のル・プランタン賞で2着。その後、確実に力をつけ大井に移籍。前走かしわ記念はさすがに相手が強かったが、移籍初戦となった昨年末の東京シンデレラマイルは着順こそ7着だが、勝ち馬からは0秒5差。このメンバーに入れば能力上位は間違いない。
ジャングルキッドは中央未勝利から転入してB級特別戦まで目下9連勝。前走楽勝だった1400メートルの勝ちタイム1分27秒3(不良)は、昨年のこのレースの勝ちタイムを0秒2(良)上回るもの。ただし馬場状態の違いはあるので、それをそのまま評価はできないものの、重賞でも通用するだけの能力はありそう。
昨年のグランダム・ジャパン古馬シーズンで総合2位だった大井のジェッシージェニー、重賞初挑戦となる兵庫のエレスチャルらも上位を狙えそう。
◎6ハッピーハッピー
○7ナンヨーオボロヅキ
▲2ジャングルキッド
△9ジェッシージェニー
△8エレスチャル
佐賀ヴィーナスカップの出走表はこちら
百万石賞トライアルとして新設された利家盃。言うまでもなく加賀藩百万石の祖となった戦国大名・前田利家にちなんだものだが、地方競馬の重賞では、どこにでもありがちな今どきのカタカナのレース名より、こうしたその土地にちなんだもののほうが地方競馬らしくて好感が持てる。
金沢スプリングカップに出走していた既存勢力か、南関東からの移籍組か、という比較になりそうだが、大井からの転入初戦を制したサノサマーに期待する。中央時代にはダートの準オープン勝ちがあり、南関東でもオープン特別で5着に好走。転入初戦の前走はゴール前で差し切ったが、レース前半はまわりをがっつり囲まれてなかなか外に持ち出すことができず、直線単独先頭だったハクサンルドルフに対して、4コーナーでは絶望的と思える位置からぎりぎりとらえた。道中の位置取りを考えれば、その着差以上に能力は高い。
中日杯を1番人気で制し、金沢の頂点に立ったティモシーブルーは、川崎の報知オールスターカップこそ結果を残せなかったが、冬休み明け後は2連勝。前走金沢スプリングカップは3コーナーで前をとらえると、直線では後続を寄せ付けず盤石の競馬だった。初対戦の強豪相手に、前回のような楽な競馬にはならないだろう。
3番手にも南関東の重賞やオープンで揉まれてきたハクサンルドルフ。転入初戦は、早め先頭から押し切ったかと思われたところ、サノサマーにアタマ差とらえられた。続く前走はサウスアメリカンを半馬身とらえきれず2着だったが、引き続き鞍上の吉原騎手がどんなレースを見せるか。
そのサウスアメリカンだが、南関東から転入初戦だった2走前はサノサマー、ハクサンルドルフに次ぐ3着。このあたりは能力差がない。
金沢スプリングカップ3着だったタンクティーエー、同5着だったファストフラッシュらは、相手強化で上位に食い込む余地があるかどうか。
◎12サノサマー
○7ティモシーブルー
▲6ハクサンルドルフ
△9サウスアメリカン
△3タンクティーエー
△10ファストフラッシュ
利家盃の出走表はこちら
エイシンテキサスはスーパースプリントシリーズのスペシャリスト。一昨年は佐賀所属として園田FCスプリントを制し(1着同着)、昨年は名古屋所属として金沢の日本海スプリントを制した。その後、引き続き名古屋所属で川崎の山林堂信彦騎手を鞍上に盛岡芝1000メートルのOROターフスプリントを制した。2018年秋の岩手所属時は勝利を挙げられなかったものの、今回は再転入初戦。絶好の1番枠に入ってそのスピードを見せる。
コンサートドーレは、岩手転入初戦となった前走水沢850メートルのスプリント特別では直線で後続を突き放し7馬身差圧勝。ここまで9勝はすべて1200メートル以下。超短距離でこそ能力を発揮しそう。
タイセイブラストも前走水沢のスプリント特別を快勝したが、コーナー4つの1300メートル戦。これまで実績を残してきたのはマイル前後の距離で、能力が高いことは間違いないが、1000メートルでその能力を発揮できるかどうか。
ラブバレットは、そのタイセイブラストが勝ったスプリント特別で4着。昨年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnIII以降、どうもレースを途中でやめてしまっている感じ。勝負強さが戻るのかどうか。
シャドウパーティーは一昨年のOROターフスプリントを制し、昨年のこのレースでは3着。11歳になった年明け初戦も制し、前走もタイセイブラストの2着。衰えはない。軽視は禁物。
◎1エイシンテキサス
○6コンサートドーレ
▲4タイセイブラスト
△8ラブバレット
△3シャドウパーティー
早池峰スーパースプリントの出走表はこちら