11月14日に佐賀競馬場で行われる九州大賞典のトライアルだが、近年は佐賀からの遠征が少なく、今年も地元荒尾勢のみ8頭による争い。
4月の大阿蘇賞を最後に勝ち星から遠ざかっているタニノウィンザーだが、その間はあまり得意とはいえない14000~1500メートル戦ばかりで、それでも堅実に掲示板は確保していた。今回は、地元荒尾では6戦6勝と得意とする2000メートルが舞台。加えて重賞5勝は断然の実績。待ちに待った舞台で、昨年のこのレースに続いて連覇濃厚だろう。
相手筆頭はテイエムジカッド。中央在籍時に荒尾に遠征し、九州産馬による、たんぽぽ賞、霧島賞(同着)のタイトルがあるが、転入後は重賞タイトルに手が届いていない。ただ、昨年末の肥後の国グランプリではタニノウィンザーの2着。今回の出走馬の馬柱を見ると一目瞭然だが、過去5走で勝ち星をマークしているのはこの馬だけ。しばらく勝ち星がないタニノウィンザーが調子落ちなのであれば、タイトルダッシュのチャンスが巡ってきそう。
同じく馬柱を見て過去5走で2着があるのは、タニノウィンザーとテイエムメデテカの2頭。テイエムメデテカは、2走前のA級特別でテイエムジカッドに1馬身半差の2着と迫っており、今回も上位進出が望めそう。ただ荒尾移籍後2000メートルに出走したのは一度のみ。今年3月の大阿蘇大賞典で、着順こそ3着だが、勝ったタニノウィンザーから1秒2の差をつけられているのが気になるところ。
ほかは近走3着以内すらないというメンバーがほとんどで、前々走でテイエムジカッドにコンマ7秒差の3着があるホッコーワンマンに連下の可能性があるかどうか。
◎タニノウィンザー
○テイエムジカッド
▲テイエムメデテカ
△ホッコーワンマン
好・不調がはっきり分かれるメンバー構成で、3連勝中のカモンネイチャに期待がかかる。07年に中央から名古屋に移籍後、31戦して3着を外したのがわずか3回という堅実な成績で出世。すでに重賞も名古屋・笠松で3勝を挙げている。1600~1800メートルを中心に使われているが、1400メートルも名古屋移籍後は5戦していずれも3着以内と好成績。前走くろゆり賞に続いてエーシンアクセランとのハナ争いとなりそうだが、そのときもすぐに控えたように、無理に競り合うこともないだろう。重賞連勝の可能性は高い。
相手は、そのエーシンアクセラン。6月のサマーカップで念願の重賞初制覇を果たし、今回は同じ笠松1400メートルが舞台。その後も堅実な成績で、オッズパークグランプリ2010での7着はアルドラゴンやキングスゾーンなど相手が強力、前走オータムカップでの4着はこれまで勝ち星がない1900メートルと、それぞれに敗因があった。8月のくろゆり賞ではカモンネイチャに2馬身差をつけられての2着だったが、逆転を狙いたいところ。
評価に悩むのが兵庫から遠征のイイデケンシン。2歳時とはいえダートグレード勝ちの実績はナンバー1で、昨年11月には笠松1400メートルの笠松グランプリも制している。しかし年明け地元で2戦連続して2着惜敗のあと休養し、今回は約8カ月ぶりの実戦。仕上がり次第では当然勝ち負けになるが、調教過程と、当日の様子に注目したい。
エバーアップワードは中央1000万から転入し、4戦2勝、2着1回で、4着に負けたのも中央との条件交流で、地元馬では最先着だった。前走A3特別でも4馬身差の圧勝だけに、上位争いに絡んでくる力はありそう。
◎カモンネイチャ
○エーシンアクセラン
▲イイデケンシン
△エバーアップワード
このレース連覇のかかるマルヨフェニックスが、4か月ぶりに実戦に戻ってきた。今年初戦の川崎・報知オールスターカップこそ1番人気に支持されながら、らしくないレースで8着に敗れたものの、その後は遠征なども含めて5戦3勝。負けたのは、中央馬相手の名古屋大賞典JpnIII・4着と、キングスゾーンに半馬身差競り負けた水沢・シアンモア記念。地方同士の交流で定量戦なら負けられないところ。
地元の意地を見せたいのがバンバンバンク。重賞では常に注目されながらもなかなか勝ち星が遠く、最後に重賞を勝ったのは昨年正月の新春杯。そのときに手綱をとっていた木村健騎手に戻って変り身を期待したいところ。
中央から転厩して7戦5勝のマルサンチーフも人気になりそうだが、負けた2戦がいずれも重賞で、勝ち馬から1秒以上の差をつけられていた。その2戦の相手関係からも、マルヨフェニックスが相手では分が悪い。2連勝中の勢いでどこまで迫れるか。
9歳のモエレトレジャーが、ここ5戦で4連対と好調。兵庫に来てからは、夏場に好成績を残している。10月とはいえ、まだまだ20度を超える日が続いているだけに、マイペースで先行すれば粘りこむ場面は十分に考えられる。
タマモリターンは、摂津盃4着、園田チャレンジカップ5着と重賞で善戦しているが、勝ち星はA2まで。ここも連下まで。
◎マルヨフェニックス
○バンバンバンク
▲マルサンチーフ
△モエレトレジャー
△タマモリターン
ダートGI・JpnIで5連勝中という成績をあらためて持ち出すまでもなく、エスポワールシチーが日本ではダート現役最強ということに異論はないだろう。前走、かしわ記念JpnIで2着に負かしたフリオーソが、その後の帝王賞JpnIでカネヒキリ、ヴァーミリアンらをまとめて負かしたことからもそれは明らか。
そのかしわ記念だが、陣営の話によると、フェブラリーステークスGI以来で完全には仕上がっておらず、レース内容も不満の残るものだったという。なるほどその後に帝王賞を勝つフリオーソは、このかしわ記念あたりから好調で、直線を向いて先頭に立ったときはそのまま押し切ってしまうかという場面もあった。それを直線半ばでとらえ1馬身半突き放してしまうエスポワールシチーはどんだけ強いんだということになる。ここは圧倒的なパフォーマンスを見せて、ブリーダーズCへと遠征してほしいところ。
2着3着争いは、他の中央馬のいずれにも可能性がありそう。
実績最上位(もちろんエスポワールシチーを除いて)は、テスタマッタ。ジャパンダートダービーJpnI勝ちがあり、今年も川崎記念JpnI・3着、フェブラリーステークスGI・2着。前走日本テレビ盃JpnIIはやや離されての4着だったが、フェブラリーステークス以来の休み明けだっただけに変り身が期待できる。
バーディバーディは断然人気となったジャパンダートダービーJpnIで6着に敗れたが、今回あらためて見直してみたい。ジャパンダートダービーは、使いづめの疲れや距離が敗因として指摘された。今回は3カ月の休養をとり、強い勝ち方をしたユニコーンステークスGIIIと同じ左回りのマイル戦なら持てる力を発揮できるだろう。初の古馬との対戦で、世代間の力比較という意味でも興味深い一戦となる。
セレスハントは、前走サマーチャンピオンJpnIIIで重賞初制覇。「地方のダートが合うと思っていた」という松永幹夫調教師の読みが的中した結果だ。1400メートルを中心に使われてきているが、前々走では小倉ダート1700メートルのKBC杯を勝っている。ただ、東京の武蔵野ステークスGIII、根岸ステークスGIIIでは大敗しているだけに、坂のある盛岡コースを克服できるかがカギとなりそうだ。
重賞勝ちのないオーロマイスターだが、前走エルムステークスGIIIで差のない2着、根岸ステークスGIIIでも3着などの善戦はある。ただブリーダーズゴールドカップJpnIIではシルクメビウスから離されての4着だっただけに、ここでも馬券圏内の争いに食い込めるかどうかだろう。
昨年のこのレースで3着と好走したことで現役を続行したメイショウバトラーは、前走のクラスターカップJpnIIIでも直線を向いて先頭に立ち、3着と好走した。さすがにこのメンバーでも3着というのは厳しいと思い印はつけなかったが、何度も好走している得意のコースだけに、穴をあけるならこの馬だろう。
◎エスポワールシチー
○テスタマッタ
▲バーディバーディ
△セレスハント
△オーロマイスター
すでに7勝を挙げているオイドンの力が抜けている。前々走、牡馬同士の2歳A-1戦を別定プラス10キロながら勝利。前走では牝馬のプリンセスヤヨイに先着を許したが、当時25キロ差だったのが、今回20キロ差に縮まることを考えれば、やはりりオイドンに有利。今回、引き続きプラス10キロの別定重量なら力で押し切るだろう。
3連勝で青雲賞を制したレットフジに勢いがあるが、今回はオイドンと同じ別定プラス10キロを背負うことになった。青雲賞では同重量のフナノコーネルが僅差の2着だったが、今回は別定での増量がないフナノコーネルのほうが有利と見て、相手筆頭。
とはいえレットフジも、連勝中の勢いで押し切ってしまう可能性もある。
青雲賞で僅差3着のニュータカラコマも、フナノコーネル同様、レットフジとの重量比較では逆転があっても不思議はない。
タカノテンリュウも、これまでオイドン、レットフジらと差のないレースをしてきているだけに、展開次第では上位を狙える。
◎オイドン
○フナノコーネル
▲レットフジ
△ニュータカラコマ
△タカノテンリュウ