ばんえい3冠の2戦目。最終戦のばんえいダービーとともに定量戦だが、近年いずれも牝馬の活躍が目立つ。過去5年で見ると、ばんえい菊花賞は、07年を除いて牝馬が連対。ばんえいダービーでも、昨年はニシキエースの3着が最高だったが、それ以前の4年は毎年連対している。毎年牝馬の出走頭数が少ない中での成績だけに、見逃せないデータだ。
ご存知のとおり、ばんえい競馬でのセックスローワンスは20キロ。これは500キロの場合でも、1トンの場合でも同じ。割合で言えば、1トンに対する20キロよりも、500キロに対する20キロのほうが明らかに大きい。つまり、同じマイナス20キロでもソリが軽いほうがその影響が大きく、特に定量戦では、ソリが軽い若馬のうちは牝馬のほうが圧倒的に有利といえそうだ。それが、定量戦のばんえい菊花賞やばんえいダービーでの牝馬の台頭につながっているように思うのだがどうだろう。
したがって牝馬から狙う。中でも、ここ9戦で7勝2着1回と成長著しいワタシハキレイズキの上昇度を買う。ここ2走は270万条件を連勝し、さらに上のクラスでも通用しそうな勢いだ。
普通に考えれば、定量戦だけにもっとも格付けが上のキタノタイショウが中心となるところだろう。今年3月にはイレネー記念を制し、世代のチャンピオンとなった。近走450万未満での好走は、実績的にも抜けている。
ばんえい大賞典を制したワタシハスゴイは、ここ3走はいまひとつの成績だが、それ以前の成績を見ると牝馬では能力上位の存在。ばんえいプリンセス賞も5着に敗れたとはいえ、トップハンデだった。
牡馬でキタノタイショウに続くのは、2歳時にナナカマド賞、ヤングチャンピオンシップを制しているホクショウバンク。
繰り上がり出走のヒマワリカツヒメは、牝馬の中ではもっとも格下だが、ここ4戦で3勝2着1回と力をつけてきている。
牝馬3頭と、実績上位の牡馬2頭の争いと見る。
◎ワタシハキレイズキ
○キタノタイショウ
▲ワタシハスゴイ
△ホクショウバンク
△ヒマワリカツヒメ
早くも中央や他地区からの転厩組が何頭かいて力の比較が難しいが、ここは中央3戦未勝利から転入してこれが3戦目となるバトルアツヒメから。転入初戦の秋風ジュニアは2着。前走2歳1組戦は、2番手以下を引きつけて逃げ、4コーナーまで持ったまま。直線を向いて追い出されると余裕のゴール。目一杯追われてきたエーシンシャウラに3/4馬身まで迫られたが、最後は手綱を抑えていた。父は地方のダートで活躍馬を出しているサウスヴィグラス。この距離なら父から受け継いだスピードを生かせそうだ。
勝ったり負けたりという馬がほとんどなだけに、1戦1勝のラブミーチャンに魅力を感じる。800メートルのJRA認定新馬戦は、2着に4馬身差をつけ好タイムで楽勝。3着馬にはさらに9馬身差がついているだけに、かなりの能力を秘めていそうだ。
ウィッチングアワーも気になる存在。毎年中央や南関東で活躍が目立つホッカイドウ競馬デビューの2歳馬だが、全国の地方競馬にちらばった馬たちの活躍も見逃してはならない。フレッシュチャレンジ7着、未勝利戦3着で、ともに勝ち馬からはやや離される内容で、8月に名古屋に転厩してきた。名古屋ではやや離されての敗戦が続いていたが、笠松初遠征の1400メートル戦は圧巻だった。スタート後は行き脚がつかずに離れた最後方だったが、向正面から徐々に進出。4コーナーで先頭に並びかけると、直線では後続を突き放し、2着を6馬身突き放す圧勝となった。勝ちタイムの1分30秒9も、バトルアツヒメの前走にコンマ5秒差と迫るなかなかの好タイム。続く前走は名古屋に戻って4着に負けているだけに、笠松コースに適性があるのかもしれない。そういう意味で今回は期待してよさそうだ。
前走と3走前にはウィッチングアワーに先着し、ここ3戦連続で2着のエメチャンは常に善戦するタイプ。
ヨザクラチグサはここまで3戦して未勝利だが、いつ勝ってもおかしくないようなレースは見せている。
◎バトルアツヒメ
○ラブミーチャン
▲ウィッチングアワー
△エメチャン
△ヨザクラチグサ
フィオーレハーバーのレースぶりが抜けている。デビューからここまで逃げ切りで3連勝。園田1400メートルの持ちタイムを見ても、1分30秒台で走っているのはこの馬だけ。2度も経験している距離だけに、よほど体調を崩しているとか、アクシデントでもない限り、負けようがないのではないか。
相手筆頭はタガノパンデミック。デビュー戦のJRA認定レースを勝ち、前走はJRA阪神芝のききょうステークスに挑戦。結果、11着に敗れたが、勝ち馬からは1秒1差とそれほど離されてはいない。芝の速いペースで中団を追走した経験が生きるはずだ。
ギガビットは、デビューから6戦目の前走でようやく初勝利を挙げたが、それまでは2着4回に3着1回。勝ち切れないレースばかりとも言えるが、安定したレースぶりとも言える。こういうタイプは相手なりに常に好走しそう。
フウリンカザンも同じタイプ。5戦1勝、3着4回。前々走で初勝利を挙げた内田利雄騎手の腕に期待したいところ。
まずまずのタイムでデビュー戦を勝ったタガノバロットも押さえておきたいところ。
とはいえ、フィオーレハーバーが断然人気になることは間違いなく、オッズを見て相手を何点に絞れるか。
◎フィオーレハーバー
○タガノパンデミック
▲ギガビット
△フウリンカザン
△タガノバロット
5頭が参戦してきた名古屋勢が強力だ。なかでも重賞初挑戦だが、5連勝中の上がり馬シンワコウジを本命にする。前々走名古屋1600メートルの古馬B9戦、前走笠松1600メートルの古馬B4特別、ともにスタートこそあまりよくなかったがダッシュが素晴らしく、楽に先頭に立つと、直線ではほとんど追うところなく突き放して圧勝。まだまだ100%の力は発揮していないというレースぶりだ。
話はそれるが、以前にもシンワコウジという同じ名前の馬がいた。92年の東海ダービーで、あのトミシノポルンガにクビ差の2着。その後中央入りし、当時はGIIIだった93年のフェブラリーハンデでメイショウホムラ(メイショウバトラーの父)の2着など活躍。その2走後、当時はダート1400メートルのオープン特別だった栗東ステークスで、レース中に故障し予後不良。ほんとうにかわいそうな最後だったのを覚えている。馬主さんは、その先代シンワコウジと同じ。馬名か、もしくはその先代のシンワコウジによほど思い入れがあったのだろうか。
実績ナンバーワンはダイナマイトボディ。鮮やかに逃げ切った東海ダービーを含め、ここまでに重賞4勝。前走はシルバーウインドと直線で競り合い、アタマ差で敗れてしまったが、ここで巻き返したいところ。
マコトエレンシアもまだ底を見せていないだけに楽しみな馬。中央1勝から転入して、古馬B1特別まで3連勝。ただシンワコウジとハナ争いになったときに、控える競馬もできるダイナマイトボディにまとめて差し切られるという場面もあるかもしれない。
ホウライエイブルも重賞初挑戦だが、前々走の古馬B1特別2着などを含めて9戦連続連対中。
駿蹄賞2着、金沢のMRO金賞を制し、前走古馬B5戦を勝っているスギノブライアンも実績は十分。
印をつけたのが名古屋の5頭で、地元笠松の馬は出番があるかどうか。
◎シンワコウジ
○ダイナマイトボディ
▲マコトエレンシア
△ホウライエイブル
△スギノブライアン
昨年のギオンゴールドに続いて、佐賀から有力馬が遠征してきた。昨年から「未来優駿」に組み込まれたことで1着賞金が250万円に大幅アップとなり、その後に行われる佐賀の九州ジュニアチャンピオンより50万円高額なだけに一線級が遠征してくるのも当然のことだろう。
佐賀の3頭はいずれも強力だ。フレーザーハクユウは、JRA小倉のフェニックス賞に挑戦し、結果的に7着だったが、4コーナーまで楽に2番手を追走するスピードを見せた。前走アルデバラン特別では、楽に先頭に立つと、3コーナーから徐々に後続を離しにかかり、直線ではムチを1発入れただけでほとんど追うところなく5馬身差の圧勝となった。
ケイエムサンクスは、3、2、2着のあと2連勝。前々走は直線だけで8馬身突き放す一方的なレース。前走は中団から進出し、ゴール前で逃げ馬を競り落とすと、外から追い込んできた馬には抜かせず勝利と、着差はそれほどでもないが強いレースを見せた。
エンデバーマンボは、デビュー戦2着のあと2連勝。前走のJRA認定レースは、2番手から向正面で早め先頭に立つと、直線で後続を楽に突き放し7馬身差の圧勝となった。
3頭のうち佐賀1400メートルの持ちタイムナンバー1は、良馬場で1分31秒1のフレーザーハクユウだが、ケイエムサンクスも良馬場で1分31秒6、エンデバーマンボは稍重で1分31秒6と、ほとんど変わらない。ただここは中央の速いペースを経験し、前走アルデバラン特別で直線でもほとんど持ったままだったフレーザーハクユウが中心。メンバー中唯一の3勝馬でもある。
地元荒尾勢ではデビューから2戦、いずれも一方的なレースで圧勝のレッドエンゼルに期待がかかる。前走は縦長というよりバラバラの展開で、力差のあるメンバーだったが、先行2頭をぴたりとマークする3番手を追走し、直線ではその2頭がバテたが、レッドエンゼルだけは勢いがまったく衰えず、2着に2秒6もの大差をつけた。強力な佐賀勢とも互角に渡り合えるのではないかと見る。
ヴィットドラゴンは、トライアルの若駒特別3着のタイムが1分32秒2。レッドエンゼルが大差で圧勝したときのタイムをコンマ9秒も上回っているだけに、この馬も相当なスピードがありそうだ。
ここに挙げた5頭がそれぞれ初対戦となるだけに、馬券的には難しそうだが、おもしろいレースになりそうだ。
◎フレーザーハクユウ
○レッドエンゼル
▲ケイエムサンクス
△エンデバーマンボ
△ヴィットドラゴン