昨年6年ぶりにオッズパークpresentsガールズグランプリ2024に出場した尾崎睦選手(神奈川108期)。久しぶりに走ったガールズグランプリと昨年1年間を振り返っていただき、今年の目標もお話してもらいました。
山口みのり:昨年は久々のグランプリ出場などありましたが、1年を振り返っていかがでしたか?
尾崎睦選手:前半のGI『オールガールズクラシック』と『パールカップ』で決勝に乗れて賞金が積み上げられ、賞金ランキングで良い位置にいられました。後は怪我なく1年間走りきることができたので、すごく良かったかなと思います。
山口:ガールズグランプリを走って「戻ってきたな」という気持ちはありましたか?
尾崎:はい。久しぶりに出させていただいたんですけど、本当に良いところでした!
山口:6年ぶりと聞き「そんなに出ていなかったんだ」とびっくりでした。
尾崎:そうですね。出られそうで届かない時期や、補欠も経験したので、グランプリに出るのは本当に難しいなとここ最近ずっと思っていました。昨年はやっと出られたなと、すごく嬉しかったです。
山口:もちろん毎年グランプリを目指していたと思いますが、昨年とそれ以前を比べて、何か変えたことや違いはありますか?
尾崎:2022年の地元・平塚グランプリに出るためにピークを持って行こうと思っていたら、失格で出られなくなってしまい心が折れてしまいました。その後は、気持ちが続かず投げやりというか、腐っていた時期がありました。でもそんな中でも私を応援してくれて、支えてくださる方がたくさんいたのでなんとか頑張れました。
そのぐらいの時期にちょうどGIの新設が発表され、男子のように「GIを取ればグランプリ出場権が与えられる」というシステムになりました。男子のタイトルホルダーの方も神奈川にはいらっしゃり、「タイトルホルダー」と呼ばれるのはかっこいいなと思ってたので、自分もなんとかタイトルが欲しいと、また頑張ろうという気持ちにさせてもらいましたね。
山口:GIの新設が尾崎選手の中では大きなことだったんですね。
尾崎:そうですね。GIができたことで救われたというか、それがなかったら今の自分は想像できないかなと思います。
山口:ただ2023年は全てのGIには出場できずに悔しい部分もありましたか?
尾崎:最初の『オールガールズクラシック』は出られなかったんですが、あの頃は「どうせGIなんて......」と不貞腐れていた部分もあったんですが、いざ走ってみると「GIってめちゃくちゃ良いな!」と思いました。雰囲気やお客様の数も違う。選手側も、みんながGIを優勝するために来ているのがわかるんです。こういうところで走らせてもらえるのは選手として幸せだなと感じ、モチベーションが上がりました。
山口:昨年は全てのGIで決勝進出と、1年を通して良い調子で走られたんですね。
尾崎:そうですね。もちろん毎回完全優勝、というわけではなく小さな波はありました。普通の開催で車券に貢献できなかったこともあったんですが、その中でもしっかり自分のやるべきこと見失わずにできたのは良かったかなと思います。
山口:レース内容もビッグレースも含めて、消極的なレースが少なかったというか攻めてたような気がしました。
尾崎:今までのビッグレースは単発レースが多かったこともあり「そのレースのその機会」はその瞬間しかないので、大事に大事にいきすぎて消極的な部分がありました。コレクションや、グランプリを過去に走らせてもらった時も「次いつ私がこの舞台に立てるかわからない」と、変に消極的なレースが多かったんです。
けど、GIだったら1年に何度かある。もちろんGIも簡単に出られる訳ではないんですけどね。GIで自分が今までやってきた事をどれぐらい出せるかをテーマにして、技術や脚力の強化もそうですが、メンタルの部分でもしっかりと上げていけるように、GIに合わせて気持ちの部分も整理して臨めるようにと意識してやっていました。
山口:オールガールズクラシックの準決勝のインタビューだったと思うんですが、「今回はタイトルを取りに来ました」と仰っているのを見ました。私の勝手な印象ですが、尾崎選手は「勝ちにきました」など強気な言葉を明確に口にしない印象があったので、意外でしたが格好良かったです。
尾崎:あの時は、きっかけがあったんです。私は弟子がいるのですが、入所のため養成所に送って行き、その時に滝澤先生(滝澤正光さん/日本競輪選手養成所所長)とお話しさせていただく機会がありました。滝澤先生に「GIを取りたい、とか、取れるように頑張ります、じゃGIは取れないよ。自分が取るんだっていう気持ちで入る。開催中も自分が取る、自分が優勝するって信じろ。疑わずに信じていけ」と言っていただいたんです。本当にその言葉通り、自分が取るという気持ちで久留米に入りましたし、レースを走っている時も自分が取ると思って走りました。
山口:素敵な話です。これからも取るまでは、取るぞっていうことを口に出していくんですね。
尾崎:はい。競輪選手になってから、いや選手になる前から、グランプリを取るというのは自分の夢ですし、そこにGIもできてくれたて目標が広がりました。なんとかGIを取るまで、しっかり頑張りたいなと思います。
山口:頑張ってください!そして今年の戦いはすでに始まっていて、選手の皆さん、追加も走っているようですね。
尾崎:今年はいつもよりも結構みんな賞金ランキングへの意識が早い気がしますね。今は体調不良なども出やすい時期ですから欠場も多く、開催もたくさんある中で人が足りず、走れる選手が限られてしまいます。走るというのは大変なことなので、追加だとスケジュールもタイトになりますし、走るからには結果を残さなきゃいけないです。大変ですが、しっかり体調を整えて頑張りたいなと思います。
山口:追加だった1月の松山はトップ選手たちが集まりましたね。
尾崎:そうでした。決勝戦とかはもうGIなんだなと思って走りました。でも逆に、普通の開催でGIみたいなメンバーと走れる機会は今まであまりなかったので、ありがたかったです。GIと普段のレースでは、どうしても雰囲気やスピードの違いは生まれてしまいます。松山は予選からGIみたいなスピード感でしたし、自分の中ではプラスになったかなと思います。
山口:男子と違って7車なのは普通開催も一緒ですもんね。
尾崎:そうですね。
山口:今年はグランプリが地元の平塚で行われます。尾崎選手にとっても、出場は目標の一つでしょうか?
尾崎: そうですね。今年の平塚グランプリへ向けては既に多くの方が応援してくださっています。地元でのグランプリというのは一度走らせていただいているんですが、他とは全く違う、素晴らしい舞台でした。今年の年末にそこで走らせていただき、さらに優勝ができたら本当に嬉しいし、みんなも喜んでくれるのかなと思うので、まずはそこを最大目標として、今年は何が何でも出場を目指して頑張りたいです。
山口:まずはタイトルホルダーへ、ですね。
尾崎:はい、GIを取ることが今の一番の目標です。そのために何をしなければいけないかをしっかり考えて、毎日悔いなく過ごしたいなと思います。
山口:そういう意味では昨年のグランプリ3着という結果は、今年のGIを戦うにはかなり優勢ですね。(注:グランプリ3着以内の選手は、全てのGIに出場する権利がある)
尾崎:本当に大きかったです!実はその権利のことは知らなかったんですよ。終わってから記者の方に教えてもらいました(笑)そんな権利もあるんだ!ってびっくりしたけど嬉しかったです。
山口:勝ち上がりの厳しい『オールガールズクラシック』は特選の位置付けのティアラカップからスタートしますし、有利ですよね。
尾崎:はい。良いものをもらったので、しっかりチャンスをいかせるようにしたいです。
山口:では、ガールズグランプリのレースをちょっと振り返っていきます。スタートして、各選手前を取る動きがありました。尾崎選手がまず先頭誘導員の後ろにいこうとした時に、佐藤水菜選手(神奈川114期)が前にきましたが、あの動きはどうでしたか?
尾崎:予想外でしたね。サトミナが前からレースをするとは思ってなかったです。一瞬どうするか迷ったのですが、一番人気の選手ですし強い選手なので、自分の目の前にいるというのは、私にとってもプラスかなと思って後ろにつきました。
山口:その後は、坂口楓華選手(愛知112期)が仕掛けてきた時はいかがでしたか?
尾崎:誘導員が退避したバックストレッチは強い向かい風だったので、前にいるサトミナは迷っているように感じました。スピードがそこで緩んだので、後ろから誰かがカマシてくるかもしれないなと思ったんですが、とにかく踏み出しのダッシュがみんな良いので、そこで離れちゃったら誰かにサトミナの後ろに入られてしまいます。それだけは気をつけようと思って、後輪だけを見て集中していました。
山口:一気に残り1周でスピードが上がり、坂口選手、石井寛子選手が前に出た後はいかがでしたか?
尾崎:その時は、追走をするので精一杯でした。最終バックストレッチでサトミナが踏み上げていった時にきつかったので、どうしようかと少し焦りました。「これは足が回り切っちゃってるぞ」と。でもそこを過ぎてからはちょっと楽になりました。ただその位置から優勝を目指すのに、外のコースは行けなさそう、他どこか空いているコースはないか探していたら、内側から石井貴子選手(千葉106期)も追い込んでくるのが見えました。内側を空けると入られてしまうので、そこは気を付けながらコースを探したんですが、ダメでしたね。終わった瞬間の感想としては、足が足りないなと思いました。
山口:そうなんですね。
尾崎:はい、足りなかったなって率直に思いました。もうちょっと自分に余裕があれば、バックストレッチからのコースどりも出来たかなとか、4コーナーでもう少し良い位置にいられたかもしれないな、と思います。
終わった直後にそう思ったんですけど、でもグランプリのあの瞬間で、自分ができることはやれたのかなと思います。グランプリに向けて準備もしっかりしましたし、練習もしたし、心の、気持ちの部分でもすごく良い状態で臨めたので、グランプリのレースに関しては自分がやるべきことはできたかなと思いました。
山口:グランプリへ向けての準備について、言える範囲で構いません。詳しく伺うことはできますか?
尾崎:12月は1本走らせてもらいましたが、競輪祭女子王座戦が終わった後は基本的にはグランプリに向けて集中しようと平塚競輪場で練習をしていました。男子選手の皆さんもすごく気を遣ってくださり、「どういう練習をやりたいの?」とか「どういう風にグランプリを走りたいの?」と聞いてくれ、練習も一緒に付き合ってしてくださいました。そのおかげで練習もすごく順調にできましたし、体調も良く毎日過ごせましたね。平塚の選手には感謝しています。
山口:素晴らしい環境だったんですね。平塚競輪場では壮行会もあったんですよね?
尾崎:はい。北井佑季選手(神奈川119期)と一緒に。皆さんに声を掛けてもらい寄せ書きをいただきました。それは玄関に貼って、毎日それを見て頑張ろうと思っていましたね。
山口:力になっていたんですね。
尾崎:はい!
山口:戦法やコースどりについてですが、言える範囲で構いません。以前はコースを探しての追い込みはあまり得意じゃないというお話を伺った記憶があります。今は全くなさそうですよね。
尾崎:何でもできる選手になりたいので、危なくない範囲でですが、他の選手に譲っちゃいけない部分もありますし、自分が主張するべきところはしっかり主張しないといけないなと思っています。
山口:ビッグレースでも主張する部分はされて結果を出していますもんね。
尾崎:もし引いてしまったら着が大きく変わる場合が多いです。でもそれを主張するためには脚力がないとできないです。自分を守るためでもありますし、脚力は磨いておかないといけないなと感じます。
山口:どんな場面でも余裕を持って、視野を広く走るためにはっていうことですかね。
尾崎:そうですね。グランプリはいっぱいいっぱいで、視野がちょこっとの点くらいしかありませんでした。もう少し余裕があれば「ここのコースかな、ここも空いている。こういう風にまくりにいってみようかな」と、選択肢も生まれます。
山口:では今年の強化していくところは主にそこですか?
尾崎:そうですね。グランプリでも感じたので、もっとやっぱり脚力をつけたいです。スピードや縦脚も足りてないですね。この前も松山予選2で太田りゆ選手(埼玉112期)とレースをした時に感じました。あのレースは自分のレース展開の作り方も下手でしたが、りゆちゃんのスピードとダッシュは本当に凄いものでした。そういう人たちと戦っていくためには、自分も少しでも近付かないとキツいので、そういう武器を自分も手に入れたいです。
山口:太田選手は昨年後半から競輪に専念ですし、今年はナショナルチーム組もGIは走りそうですもんね。
尾崎:そうですね。その中で戦うには自分にしかできないことを磨いていかなきゃいけないですし、そのためにはしっかり足も作っていかないといけないので、練習を頑張んなきゃなって思ってるところです。
山口:昨年1年は無事に怪我なく走りきれたと話していましたが、モチベーションの保ち方はどうしていたんですか?
尾崎:単純に楽しいので、モチベーションは自然と良いところで保たれていましたね。数年前はあんまり自転車に乗っているのが楽しいとは思わなかったんです。
山口:仕事だぞ、という意識ですか?
尾崎:それも少し違って、ただ賞金を積み重ねるためだけに走っていましたね。機械的にただ本数を一生懸命走って、賞金は今どれくらい積み重なったか、そこに感情はあまりなかったです。 2ヶ月間あっせんが止まって、休む機会があったんですが、その時に考え方が変わったというか、いろんなことを考えるようになりました。他の人の自転車に対する姿勢だったり、競輪に対する気持ちだったり、周りの人をとにかく見るようになったんです。今までは全然周りの人のことは見ていなかったなと気付きました。
山口:それはガールズ、男子問わずですか?
尾崎:はい。練習を一緒にしてくださる男子選手のことはよく見ていたので例外なんですけどね。開催に行った時には、他のガールズも男子選手も何をやっているか見ずに、「レースに行って賞金を積み重ねていただけ」でした。しかも、ただ数字上に積み重ねる。お金が欲しいとかレースに勝ちたいとかそういうんじゃなく、グランプリのために賞金をただ積み重ねにいってるだけみたいな。だからその時の私は、無駄なことをしないように控え室にずっといましたし、部屋に閉じこもっていましたね。
でもあっせんが止まり、グランプリ争いも厳しいぞとなった時ふと周りを見たら、そこで初めてみんなのことが見えるようになって、「そういうやり方もあるんだ」とか「そういう考え方もあるんだ」と気付き、いろんな人と話すようになりました。話すうちに、「あの子と比べて自分はどうだろう」「こういう練習もしてみようかな」と思うようになったんです。強い選手に直接質問しにいったりもしましたね。今までは疑問に思うことすらなかったのに。
そういう経緯で「じゃあこういう風に自分はしてみようかな」と考えるのが楽しくなってきました。それが自転車にも繋がって、レース内容はどうだったか、乗り方がどうだったか、少し変えてみようかと試行錯誤をすることが増え、「あれ、いっぱいやることあるな」と思うんです。
それ以前に比べて、単純に練習の量も増えましたし、やることが多くなり、時間が足りないなと感じることがありますね。それは切羽詰まった時間が足りないではなく、「あれもやりたい。これもやりたい。けど、今日はもう終わっちゃう。じゃ明日やろう。でももうすぐレースだ」みたいな感じの、前向きというか、楽しいから時間が足りない感覚です。
だからすごい楽しいんですよね。「GIを取るためには今のままじゃダメだ」と思ったのが始まりだと思うんですが、それが今も続いています。
山口:どなたに聞いた話が印象に残っていますか?
尾崎:日野未来選手(奈良114期)に違反訓練のときに「どういう感覚で踏んでるの?なんでそんなに進むの?」と聞きました。彼女もダッシュ力は凄いんですよ。後は「こういう練習してみようと思うんだけど、どう思う?」と聞くと、彼女が感じていること思っていることを答えてくれました。
平塚の選手だと松坂洋平選手(神奈川89期)や桐山敬太郎選手(神奈川88期)も結構アドバイスをくれます。実はそれまではお会いしても挨拶をするくらいで、そんなに話をしていただけるような感じじゃなかったんですけど、昨年くらいからアドバイスしてくださるようになったり、自分も疑問に思ったことを聞いたりしています。お二人もきっといろんなことを考えてあの地位にいると思うので、私がぶつかってる壁はもうすでに経験されてるんですよね。だから「俺はこうだったから、こうだと思うけど、それがあなたに合うかはわからない。けど、こうしてった方がいいんじゃない?」と経験を踏まえてアドバイスをくださいます。悩んでる部品やフレームがあった時も「続けていった方が良いと思うよ。続けていくと良いことあるよ」と言ってもらいました。
今までは師匠(渡邊秀明選手/神奈川68期)が軸で、ずっと師匠のアドバイスを聞いてきたんですがそれは変わらずに、そこからプラスアルファ他の方の意見が入ったり練習方法や乗り方を見て、だんだんと視野が広がる気がします。わからなかったらその方に直接聞きますし、聞いたら皆さんちゃんと答えてくれるんですよね。自分が悩んでいることがあった時は、意見をくれるのはありがたかったです。周りの方にも感謝してますね。
山口:それは尾崎選手が変わった、ではないですが、方向性を変えたなっていうのを皆さんが感じたのではないでしょうか。
尾崎:あー、確かに、自分が狭まってた視野をパンって広げたからもしれませんね。みんな本当に優しいんだなと思います(笑)
山口:トップ選手もたくさんいる中でずっと一緒に練習をされていたら、聞いた方が良い時は絶対ありますもんね。
尾崎:本当にそうですね。競輪はいろんな選手がいてクラス分けもされています。でもずっと長くやっている方は、練習を見たりお話を聞いていると「年齢を重ねても競輪選手として長く戦っていられる」理由が分かる気がしました。学ばせてもらってるのはありがたいです。
山口:尾崎選手が吸収することはいっぱいありますね。
尾崎:そうですね。時間が本当に足りないです(笑)周りから良いことはどんどん吸収して、何でもできる選手になりたいです。
山口:ありがとうございます。では、最後にオッズパーク会員の方へ向けて、今年の目標やメッセージをお願いします。
尾崎:ファンの方が応援してくださって、今、選手としてまだ一生懸命頑張れています。今年、地元平塚で行われるガールズグランプリで優勝して、その方たちと一緒に喜べるように頑張ります。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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去る1月4日から四日間、立川競輪場で行われました今年最初の記念競輪<大阪・関西万博協賛/開設73周年記念鳳凰賞典レース>で優勝された山口拳矢選手(岐阜・117期)に今回はインタビューいたしました。S級1班で走る2025年、スタートダッシュに成功した山口選手の等身大の歓びと今年一年の展望や心構えを伺いました。
―山口選手、立川記念の優勝おめでとうございます。
山口:ありがとうございます!今年最初のレースで優勝できて幸先の良い始まりでした。
―まずは前検日迄のお話なんですが、昨年末の広島記念(in玉野競輪場)で初日に落車しました。年末年始の過ごし方、又トレーニングはどれくらい出来ましたか?
山口:練習は治療と平行しつつ出来ることを探りながらでした。
―ダメージはどれくらいだったのでしょう?(落車は前のめりに一回転)
山口:骨は折れなかったんですが左肩が亜脱臼の症状でした。練習自体はすぐに始めましたが肩の可動域に痛みがあるので庇いながらやりました。なので前検もこれなら走れるなという感じでしたが好調とはいえない状態でした。
―初日の番組をご覧になっていかがでしたか?
山口:正直言ってキツいメンバーな印象でした。1月は特別競輪がなくて期の始め、一年の始まりってこともあって皆んな気合の入りようも違いますから。
―初日特選は初手は北井佑季選手(神奈川119期)・吉田拓矢選手(茨城107期)・清水裕友選手(山口105期)・山口選手の順で細切れ戦でした。レースは前受けの北井選手が正攻法から突っ張りました。
山口:北井選手が一番車なのでおそらく先頭で突っ張るだろうと走る前に村上博幸(京都86期)さんと話していました。但し突っ張られてそのまま後ろに引いてはその後が厳しいので番手から中団あたりには入りたいという考えでした。
―サッと3番手に入りましたがすぐに永澤剛(青森91期)選手が外へ追上げました。
山口:郡司選手の後ろを取りきらなきゃいけなかったんですが、打鍾で清水選手がカマしたときに吉田選手に入られたのが良くなかったですね。その後も関東ラインの捲りについていっただけなので...。結局脚を使いながら8番手になったのは一番の反省点でした。
―二次予選は対戦相手が鈴木玄人(東京117期)選手、取鳥雄吾(岡山107期)選手との三分戦でした。山口選手の作戦はどうでしたか。
山口:初手は後方でなければどちらでも良かったです。誰もスタートで出ないようなら前からでも構わないと思っていました。
―中部ラインは初手は中団。先に取鳥選手が赤板HSで抑えたのを山口選手はすぐさま打鐘で叩きました。
山口:あそこは斬ったところをもう一度斬れば鈴木選手が追上げると思っていました。ペースを落とさずに踏んでいたんですが。
―鈴木選手が並走から仕掛けたので山口選手も牽制のために中バンクに上がらざるえないですよね。
山口:うーん。油断したつもりはなかったんですが取鳥選手に内を来られてしまって。
―イン抜けされましたが俊敏に番手を取りました。
山口:あれは偶々ですね。でも入れたことで余裕はできました。後ろに園田匠(福岡87期) 選手がいることは分かりましたし、見ながら誰か来るなら合わせて踏むつもりでいました。
―最終4コーナーできっちりと追込んで1着でした!
山口:けれど(2着の)園田選手がけっこう迫っていて差のないゴールだったのでそう思うと自分の車の進みはいまいち伸びていないというのが実感でした。
―立川記念の四日間は連日スピードレースでした。バンクのコンディションはいかがでしたか。
山口:バンク状態は三日目が本当に寒かったですね。それに比べれば他三日は特段重いことはなかったです。
―ではその雨と風の準決勝についてうかがいます。このレースは中近別線の細切れで山口選手には熊本の中川選手が付けました。初手は三谷竜生(奈良101期)選手・山口選手・菊池岳仁(長野117期)選手・野口裕史(千葉111期)選手の順でした。先に菊池選手からの関東ラインが出て、野口選手もほぼ同じタイミングで動きました。
山口:展開は二人のもがき合いになるかもしれないけど、関東ラインが先に出切ってしまったら菊池選手が野口選手を出すか出さないかはタイミング次第でしょうから、その辺を意識しながら走れていました。
―三谷選手が菊池選手の後ろでイン粘りかと思いましたが4番手に下げました。
山口:それもあって自分は6番手になってしまって。しかも本当に寒くて!何もしていないのに脚が固まってきまして...。最終2コーナーで仕掛けられないといけなかったんですが3コーナーで漸くってレースでした。
―6番手からショート捲りで2着に届きました。前2走に比べて良くなっているように見えました。
山口:いやぁ、先行した菊池選手が2周を駆けてますから。それを考えると"伸びたように見えた"ってところでしょう。
―3走した山口選手の状態はどうでしたか。
山口:変わらず、ですね。肩も急に良くなるものではないのでアップも庇いつつ出来る範囲でしかやれませんでした。
―さていよいよ決勝戦を迎えました。ここまで山口選手は前回りの競走でしたが藤井侑吾(愛知115期)選手が勝ち上がってきました。
山口:侑吾さんは連日積極的な走りで実際決勝のレース中も後ろで付いていてスピードを緩めず凄かったです。
―初手の隊列は藤井侑吾選手・郡司浩平(神奈川99期)選手・平原康多(埼玉87期)選手・高橋築(東京109期)選手・取鳥選手。関東2車は単騎で超細切れでした。山口選手がスタートを取って藤井選手が前受けだったんですが...?
山口:侑吾さんはあんまり前は取りたくないなと話していたんですがスタートの牽制が長引きそうなら「前でいいよ、そこは任せる。」と言われました。実際のレースでは平原選手が単騎なので前は取らないし、結果押し出される形で自分が取りましたね。
―対戦相手の中では郡司選手が連勝で勝ち上がりました。
山口:郡司選手が仕上がっていました!取鳥選手も抜け目ないですし平原選手の貫禄が違うし、自分は状態が万全でないことを考えれば皆強いんですけど郡司選手の三日間の強さが際立ってました。
―しかし一番強気なレースをしたのは藤井選手でした!
山口:侑吾さんは突っ張るような話はそこまでしていなかったんですけどやっぱり引くと後ろまで下げさせられますから、侑吾さんの考えは引くよりも突っ張るだったんじゃなかいかと思います。
―取鳥選手は軽く抑えにきたようでしたね。藤井選手は下げると見越してヤワに抑えたというか。
山口:そうでしたね。突っ張った後、そのままペースで踏むのかなと思ったんですが侑吾さんは寧ろ緩めず踏み上げたので邪魔しないようにと着いていきました。これは絶対に先行するぞ、やる気が漲るのが後ろで付いてても伝わってきました。侑吾さん自身が後ろを見たりする邪魔にならないよう視界に入らないようにしてました。
―ただそうなると郡司選手がスンナリの4番手です。
山口:ええ。ですが打鐘からペースが上がったので最終HSではまだ仕掛けられないだろうと。けど侑吾さんがもう一回ダッシュしたときにビジョンを見て車間を空けたときには郡司選手が迫ってましたね。ダイジェストVTRだと真後ろでしたけど郡司選手の鬼気迫る圧といいますか、郡司選手が迫るさまが凄いプレッシャーに感じました。
―レースを観る側としてはシンプルな二段掛けでもリアルタイムで迫りくる郡司選手の捲りのスピード!
山口:あと侑吾さんが赤板で突っ張って駆けていた展開と僕自身絶好だったので緩めず全開で踏む侑吾さんの頑張りを絶対に無駄にしちゃいけないというのがありました。
―ゴールした直後のお客様の歓声は聞こえましたか?
山口:自分が1着でゴールできたのは分かりました。つづいて実況も聴こえてきて「実に一年三か月ぶりの優勝!」というひとことが胸にジーンときました。あ、そんなに経つのかぁって。レース後に侑吾さんから「良かったな!」って言ってもらえて。立川記念の最終日は今こうやって思い出してもグッと込み上げてくるものがありますね。
―久々のGIII優勝から2週間ほど経って何か気持ちの面の変化はありましたか。また今年の目標はなんでしょうか。
山口:万全の状態でないのでこれまで通りに身体の動かし方使い方を考えながらのトレーニングは変わらずに。年末でひとつの区切りがついて年が明けたらまたゼロから頑張ろうと思っていた中で一番のスタートダッシュが出来たのでこのまま波に乗れたらと思っています。目標は...まぁ目標を上げる以上過去より低いものではいけないので一昨年の成績以上をと考えています。
―さて冒頭のお話にありましたように2月からは特別競輪が始まります。まずは全日本選抜競輪(豊橋)です。そこへむけた意気込みは?
山口:GIの日程がここ数年で変わって前期開催のうち四日制が全日本選抜だけになりました。短期決戦ではあるんですが自分としては四日制が精神的にも負担が少ないので、そこで結果を残したいなと思います。
―では最後にオッズパーク競輪の読者の皆様と山口拳矢ファンへメッセージをお願いします。
山口:去年は成績も振るわず結果も残せなくてレースをご覧になってフラストレーションが溜まる走りだったと思いますが、今年はおかげ様で一年の最初のレースで幸先の良いスタートを切ることができました!今年は去年の分まで巻き返せるようにGI戦線で活躍できるように、せめて決勝は勝ち上がれるように頑張ります。これからも応援の程、よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
九州地区の競輪場でレース実況を中心に活動中。
出身地は大阪。1976年生まれ。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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2年ぶりにオッズパーク杯ガールズグランプリへ出場し見事優勝した石井寛子選手(東京104期)。昨年1年間の戦いは苦しいものだったと振り返ります。乗り越えられたのは応援してくれる皆さんのおかげ、と話してくれました。ガールズグランプリ優勝の話を中心に伺いました。
山口みのり:まずはオッズパークpresentsガールズグランプリ2024、優勝おめでとうございました。
石井寛子選手:ありがとうございます。
山口:優勝して少し時間が経ちましたが、率直なお気持ちはいかがですか?
石井:もう気持ちは2025年に向いていますね。今年の初戦が地元の京王閣だったので、私の中ではグランプリと同じくらいの気持ちで戦いたくて入りました。結果としては決勝で2着と負けてしまいましたけどね。
山口:決勝は久米詩選手(静岡116期)ともがき合う凄いレースでしたね。
石井:勝てなかったですね。ちょっと力んじゃった部分もありました。でもそれでハッキリと、グランプリは過去のことなんだと思えます。
山口:では昨年の振り返りから伺います。2023年のガールズグランプリはデビュー以来初めて出場が叶いませんでした。2024年こそという思いはあったと思いますが、賞金争いやご自身の成績についてはどう感じていたんでしょうか?
石井:「2024年は絶対グランプリに出るぞ」と決めて、最初は良かったんですが夏に勝てなくなってしまいました。グランプリ出場を掲げているのに賞金ランキングは圏外だったので、失敗したなと思っていました。なのでそこからは、賞金ランキングを見るのをやめました。
けどそれは決してグランプリ出場を諦めた訳ではなく、ベクトルを違う方向へ向けただけです。勝てない中、体が動かない中で、どう練習をするか、レースをするかを考えること。そしてやはり応援してくれている人のことを大切に考えてレースをしました。
その後9月くらいからようやく優勝ができるようになってきたという、ジェットコースターのような1年でした。
山口:昨年もインタビューをさせていただいた時も、応援してくれる人へ感謝して走ると仰っていましたが、それは1年間通して変わらなかったんですね。
石井:そうですね。一番強く感じたのは、8月の『女子オールスター競輪』の予選2で1着を取った時でした。一番私が勝てなかった時期で、しかもそれが3か月くらい続いてしまい苦しい時でした。初日ドリームレースで7着と酷くて「こんな走れない私がここにいる意味はあるのかな」と落ち込んでいました。でも、オールスターは応援してくれる方がいるから出られるレースなので、「初日に酷かった私が、どう2日目を走ろうか。私のやりたいレースは何だろう?」と考え動いてみたら1着が取れました。しかも酷かった初日の感覚とは全く違う、いつもの私の動きができたんです。決勝でまた戻ってしまい7着だったんですが、2日目の感覚が忘れられません。
ゴールをした瞬間から涙が止まらず、インタビューでお客さんの前に出ても泣き続けていました。自分ではそこまで辛くないと思っていても「私、苦しかったんだな」と思いました。
オールスターという舞台で、私が1着を取れたこと。その舞台は、応援してくれる方が投票してくれたから出られたレースということ。それを考えるとやっぱりファンの方への感謝なんだなと再確認したんです。
山口:確かなものとして感じたんですね。ではそこから調子も立て直せたとのことですが、ただそこからでもグランプリ争いには少し遠い位置でしたよね。
石井:そうですね。私の出場は競輪祭女子王座戦で決まったので、まだまだ遠かったです。最後までギリギリ戦ってようやく7番手で出場が決まりました。
山口:グランプリ出場が決まった時はいかがでしたか?
石井:2023年にグランプリに出られなかった時は、賞金争いで負けて出られませんでした。今回も同じようなギリギリの戦いで出られました。なので嬉しいという気持ちが100%ではなかったです。
それは私も8番手(補欠)を経験しているので、争っていた相手の気持ちもわかるし、出られなくて初めて感じたものもあったからだと思います。「すごい世界だな、みんな人生をかけてやっているんだな」と感じました。
山口:いろんな思いがあって、2024年は、それまでの10年間とは違ったグランプリだったんですね。
石井:そうですね。
山口:今年の共同記者会見と前夜祭はいかがでしたか?
石井:共同記者会見は1年に一度、かなり緊張をする場所ですね。7人が金屏風の前に座って話すのは何年経っても慣れないですね。ただいつもピリピリしている雰囲気ですが、今年は少し和らいだ部分もありました。
山口:12月はグランプリへ向けてどう過ごしましたか?
石井:レースを休ませてもらったので、調整の必要がない強めのトレーニングでしっかり仕上げました。2024年は練習メニューを変えた部分があったんですが、それがかみ合ってきた感覚もありました。
山口:2年ぶりにグランプリシリーズの前検日入っていかがでしたか?
石井:久しぶりだなとやっぱり感じました。2023年に出ていない分、緊張するのはもったいない、雰囲気を楽しみたいなと意識をして過ごしていました。
山口:ではレースを振り返ります。スタートして佐藤水菜選手(神奈川114期)が前からの組み立てでした。そこはどう感じましたか?
石井:意外でした。私は7番車だったので初手は後方になると想定して動いたんですが、佐藤選手の動きはびっくりしました。彼女がどういう組み立てなんだろうと想像し、仕掛けを迷った選手もいたと後から各選手の振り返りの記事を読みました。それくらい佐藤選手のオーラというか存在感はありました。
山口:坂口楓華選手(愛知112期)が位置が取れずに下がってきた時はいかがでしたか?
石井:最初の位置だと私が一番後ろだったので、一度先に動くべきだなと思っていたんですが、ちょうど坂口選手が下がってきたので「これはチャンスがあるかもしれない」と前に入れました。彼女がどこかでは仕掛けると思って準備をしていたんですが、打鐘が鳴っても動く気配がなく、2センターあたりで一気に坂口選手が仕掛けていったので、ダッシュがすごくタイミングがずれて追走も車間が空いてしまいました。しかも前で仕掛けようとしていた児玉碧衣選手(福岡108期)と坂口選手の接触もあり、私はその後なんとか追いついた感じでした。
山口:佐藤選手も坂口選手の後ろに飛びつく動きがあったんでしょうか。
石井:そうかもしれませんが、坂口選手のダッシュが良く、私もなんとか追走できたので私まで前に出られたのは良かったです。
山口:最終バックストレッチで2番手の位置でした。優勝インタビューでも「良い位置すぎてパニックだった」と話していましたね。
石井:そうですね。佐藤選手を乗り越えた2コーナーあたりで「あれ、もしかして2番手?」と焦り、最終バックでは「一旦冷静になろう」と心を落ち着けました。でもそれは経験があったからなんです。
2024年3月のコレクション(取手)で絶好の位置だったのに最終バックから捲りにいって差され3着だったレース、その前にも何度か同じようなレースで勝てなかった経験が蘇ってきたから、必死に自分で「落ち着いて」と言い聞かせました。そこで一回後ろを確認しました。それはどんなに苦しくても後ろを見るというのは教訓にしているからです。
そこで児玉選手の捲りが見えたんですが、前の坂口選手もかかっていたので捲り切れないかもしれないと判断して、後は前を向いて自分が勝てるタイミングで抜きにいきました。
山口:真後ろに佐藤選手がいたというのはどうでしたか?
石井:佐藤選手が仕掛けてくる雰囲気は最終バックでは感じなかったので、私は自分の目で見えた児玉選手や、前で先行している坂口選手の方を意識していました。
山口:2着とは1車輪差ということで、ゴールをした時に優勝はわかりましたか?
石井:はい。優勝できたのはわかりました。ゴール付近にカメラがたくさんいたのもわかって「これ絶対撮られる」と思ってとっさに手で顔を覆ったんです(笑)
山口:え?(笑)
石井:息があがって、ゼーゼーハーハーしている顔が嫌なんです(笑)だから手で隠したら、それが外から見たら泣いているように見えたらしいんですよ。
山口:そう見えるかもしれません(笑)
石井:その写真を見たり、生で見ていたファンの方が「あの時もらい泣きした」と後から聞きました。
山口:泣くかもしれないタイミングですからね(笑)
石井:それを聞いたのは、レースが終わって3時間後くらいに私が競輪場を後にする時でした。出待ちの方がそんな時間にもかかわらずいてくださったんです。その時に「泣いていたでしょ!」と言われ「いや、実はこういうことなんです」と説明したら「え?あの写真や映像を見てもらい泣きしたファン、たくさんいるよ」と言われて知りました。
立川記念の時に優勝報告会をさせてもらいこの話をしたんですが、実際にゴールした後に撮られた写真はバンバン使われているから、「隠して良かった!」と思っています(笑)
山口:正解だったんですね(笑)
石井:はい(笑)
山口:でも実際私も、涙の優勝インタビューになるのかなと想像していました。それは平塚のオールスター競輪のことがあったからだと思うんです。でも笑顔満点でしたね!
石井:はい。今回はもし優勝をしても絶対泣かないと決めていたんです。それは私一人で優勝できた訳ではないからです。
関わってくれた方、支えてくれた方、応援してくれた方が99人いたとして、そこに実際に走った石井寛子を加えて100人で戦ってその結果勝てた。私はただ代表として走っただけの100分の1なんです。みんなが優勝させてくれた。だから「優勝できてやったー!」ではなく、「みんな見てるかな?優勝できたよ」と。一緒に戦って、その代表として優勝インタビューを受けているイメージです。表彰式もみんなで優勝できた表彰式でした。
ただみんなのことを思った時は一瞬泣きそうになったんですが、そこは落ち着いてとまた言い聞かせました(笑)感謝の気持ちを持てましたね。
山口:そのイメージは素敵ですね。
石井:はい、でも本当にそういう気持ちでした。
山口:では冒頭にも伺いましたが、今年2025年もスタートしています。今年の目標やテーマは何ですか?
石井:メモしているので、見て言いますね。今年のテーマは「常にチャレンジャーであること」です。
山口:女王として見られる1年間ですが、そうではなくチャレンジャーなんですね。
石井:その通りです。やっぱりどうしても「女王」と言われるとそちらに引っ張られることも多いです。だから常に意識するようにテーマにしました。
私、すぐ切り替えたいタイプなので、優勝した後も「喜ぶのは次の日まで。そこからは2025年に向けて意識を切り替える」と言い聞かせたんですが、やっぱり会う方がたくさん「おめでとう」と言ってくださいます。それはすごく嬉しいし良いことなんですが、「おめでとう」は昨年のことなのでどうしても引っ張られてしまう。喜びでずっとフワフワしているのではなく、おめでとうと言っていただいた後は、しっかり切り替えて地に足を着けて頑張ろうと思っています。
結果として初戦の京王閣は優勝できませんでしたしね。だからもう一度自分を奮い立たせています。常に挑戦者でありたいです。
山口:ありがとうございます。後、石井選手に聞きたかったことがあったんです。神山雄一郎(栃木61期/2024年12月24日引退)さんの引退はどう感じられましたか?
石井:誤解を恐れずに言うと、率直な気持ちは、すごくショックでした。聞いた時は「え......?」と固まってしまいましたね。年末は代謝もあるし引退を決める方もいらっしゃいますが、誰よりも神山さんの引退が一番ショックでした。
山口:そうですよね。何度もインタビューで「目標は神山雄一郎さん」と仰っていたのでどうしても聞きたかったんです。
石井:私の勝手な思いで言ったら怒られるかもしれないけど、70歳くらいまで現役をやっていただいて、いつまでも先を走り続けて欲しかったです。神山さんがいるから私も頑張ろう、あそこまでいくんだと、目標でいて欲しかったですね。寂しいです。
山口:日本競輪選手養成所の所長になるとの発表がありましたね。
石井:はい、伺いました。そちらも重要で責任のあるお仕事だと思うので、応援させていただきます。
山口:ありがとうございます。この先の目標はありますか?
石井:少しでも長く現役を続けること。そして神山さんの通算勝利909勝を目標にしたいです。でも数字の目標を掲げちゃうと、その数字を達成した時に気持ちが切れてしまうかもしれないので、まずは一つ一つですね。
この前レースの時に話していたんですが、「競輪学校」という組織ができて以降は1,000勝を達成した方はいないみたいなんです。目指したいねと。その前にまずは神山さんを目標にです。
山口:最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。
石井:2025年も応援してもらえるように、一走一走丁寧に走っていきます。そして常に挑戦者でいたいので、練習もしっかり頑張ります。また現地に来て、もしくは画面越しで応援してもらえたら嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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昨年も数々の激戦が繰り広げられた2024年の競輪界。今回はその頂点に立ちました古性優作選手にお忙しい中お時間をいただきお話を伺いました。
ひたむきに最後まで走り切るレースを、泥臭くも諦めず戦いぬくスタイルでファンを魅了してやまない古性選手に2025年の目標も伺いました。
― 古性選手、あらためまして競輪グランプリ優勝おめでとうございます!
古性:ありがとうございます!
― さて年末の大一番を控えてそこへ向けどのような準備をなさいましたか。
古性:いやもうひたすらにトレーニングですね。脇本選手と近畿各県から参加してくれた若手も加わった合宿を行いました。
普段やっているものにプラスアルファです。いつもやってること以上にフィジカルメンタルの双方の刺激をもらいました。
― 合宿中ってケアも併せておこなうんですか?
古性:いや逆ですね。合宿中はとにかく追い込んで疲労をため込んでいきます。それが徐々に取れていき、仕上がりはグランプリ当日の本番で。なのでトレーニング中のコンディションは良くはないんですよ。
― そうなんですね!グランプリへ向けたプラスアルファとは?
古性:スピードとパワーです。対戦相手は皆んな強いです。それは一年を通じていろんなレース、いろんな場面で感じました。何より脇本選手も仕上げますし自分もそれにしっかり続いて最後までレースを走り切る姿をお客様に見てもらいたいですから。
― そしていよいよグランプリ。2021年の制覇と同じ静岡競輪場です。
古性:富士山をのぞむ静岡バンクは何か大きなことが起こるような、良い出来事が待ってるようなそんな予感はしましたね。
― レースの作戦は?
古性:中団が理想とは考えていました。
― 後方から北井選手が動いたあと打鐘をめがけて脇本選手がすかさず発進しました!
古性:脇本さんの先行は後ろでついててめちゃくちゃ強かったですし、僕自身も一年で一番といっていいくらいの状態でしたね。
― 初手から3番手に清水選手がいました。
古性:それは想定外でしたし、おそらく動かず周回していくだろうと思うと嫌な位置にいるなと思いましたね。
― ですが脇本選手の先行はかかっていました。最終BSはほぼ一列棒状でした。
古性:脇本さんは去年一年で最高の仕上がりだったと思います。
― その脇本選手の先行をゴールは差し切りました!
古性:グランプリへ向けたトレーニングの結果、僕自身の仕上がりも。でも今年一番のデキでなければ脇本さんを抜けなかったですね。それくらいのパワフルな先行でした。
― ゴール後そして表彰式のお客様の歓声はいかがでしたか。
古性:そりゃもう凄かったですし有難いの一言につきますね。
― 年明けには地元岸和田競輪場の鏡開きで優勝報告会もなさいました。
古性:大変な人数のお客様が集まっていらしてびっくりしました。熱心に応援してくださるお客様がいることで力になりますし、一層頑張ろうという気になりますね!
― 表彰式では2025年の展望にも触れられました。今年の古性選手の目標は?
古性:とりあえずGIの決勝を外さないこと、そして勝ち上がるからには優勝できるようにと考えています。
― 各所のインタビューで「ダブルグランドスラム」というフレーズを聞きました。ダービーそして競輪祭への意識は?
古性:もちろんあります、けれど他のタイトルも気を抜かず狙っていく姿勢は変わりません。
― 昨年は地元岸和田の高松宮記念杯を北井選手が獲り、平塚オールスターを古性選手が獲り...と近畿勢対南関東勢の対決もみどころでした。
古性:まぁ、たまたまそんな流れでもありましたけど、昨年のグランプリがそうだったように清水も新山も眞杉も平原さんも、強い人たちが皆走ったわけです。
ことさら南関勢を意識というのはないです。それよりも強いメンバーの中で自分のレースをやっていくことに気持ちは向きますね。
― 表彰式では来年のグランプリは近畿9人で走りたいというリップサービスも。
若手選手のお話で寺崎選手が、そして昨年躍進した窓場選手の名前がよく上がりました。
古性:窓場君に関しては学校時代から強かったですから逆に今まで出てこなかったのが不思議なくらいでしたよ。頑張る材料を得て方向性が定まったんじゃないですか。奮い立つきっかけのようなものを掴んだのだと思います。
― 古性選手が考える近畿のこれからの選手たちにとって必要なことってなんでしょう?
古性:なんでしょうね。うーん、自分で考えてしっかりトレーニングをするしかない。まずはこれかなと思います。
― 自分で考えるという話が出ましたが...、古性選手は余暇の時間や開催中に読書を欠かさないとうかがいました。
古性:ええ。小説とか娯楽のためのものでなく自分の関心事をテーマにした本を選びます。
― 最近読んだ中でおすすめの本ってありますか?
古性:うーん。読み終えたらすぐに捨てるので...、申し訳ないですが題名がわからないですね(笑)
一冊丸々濃い内容なものでなくとも抜粋々々で参考になりそうな事柄を拾っていく読み方もしますね。
― トレーニングのヒントなども本から得られるんですか?
古性:練習や身体つくりはパーソナルトレーニングがついているし、本だと間違いがあったりしますし必ずしも今の自分にマッチする内容とも限りません。
うわべだけの知識をつけてしまわないよう気を付けては読みますね。
― さて2024年の競輪グランプリ優勝で最高獲得賞金記録を更新しました。
古性:ええ。ですがあまりこだわってはいないです。3億8千万という数字を意識して目標にしてしまうよりも今まで通りにGI優勝を目標に今年も変わらず戦っていきたいですね。
― では最後に記事をご覧になったオッズパーク競輪読者の皆様と古性優作ファンへ向けてメッセージをお願いします。
古性:いつも応援ありがとうございます!皆様の応援の力にも支えられて2度目のグランプリ優勝を果たすことができました。
今年も期待に応えられるよう頑張って走りますので引き続き応援の程よろしくお願いいたします!
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
九州地区の競輪場でレース実況を中心に活動中。
出身地は大阪。1976年生まれ。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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全員が121期という同期対決を制してヤンググランプリ2024の頂点に立った愛知の纐纈洸翔(こうけつひろと)選手(愛知121期)にヤンググランプリの振り返りと今年の目標についてお話を伺いました。
大津:ヤンググランプリ優勝おめでとうございます。
纐纈:ありがとうございます。
大津:少し日が経ちましたがお気持ちはいかがですか。
纐纈:優勝したなっていう思いはありますが、今はもうなんとも思ってはないですね。
開催に行って他県の選手から「優勝おめでとう。」って言ってもらえるので、そういうのではうれしいです。
大津:ヤンググランプリを迎えるにあたって状態はどうだったのですか。
纐纈:その前の岐阜と伊東の開催が調子悪くて着も全然良くなかったので、このままじゃまずいなと思っていたんですが、岐阜が終わってから本番までの間に立て直すことができました。
長い時間自転車に乗ったり練習もできたので戦える状態まで仕上がりました。
大津:中部地区は村田選手と二人でしたが前後関係はすぐに決まったのでしょうか。
纐纈:現地に行って村田(祐樹選手 富山121期)さんにどうしますか?って聞いて、僕は付きたいですって話をしたら「普段から人の後ろには付かないし、前でやろうと思っていたよ。」と村田さんも言ってくれたんで僕が番手になりました。
けっこうすんなり決まりました。
大津:KEIRINグランプリに出場する選手の場合は少し前に並びが決まりますが、事前に話し合いなどもなかったのですか。
纐纈:そんな早めに決めてても僕の場合は練習内容も変わらないですし直前で良いかなって思って村田さんに連絡を入れるでもなく、その場で話したって感じですね。
大津:師匠の鰐渕(正利 愛知65期)選手からはアドバイスはありましたか。
纐纈:最初で最後のヤンググランプリだし付く付かないは自由にしていいよ、と。
あとは自力選手が多いもんで最後は内が空くかもしれないから、内に行ってみても良いかもねって言っていただきました。
大津:番手戦に対しての苦手意識などもなかったですか。
纐纈:人の後ろに付くのは二回目だったので苦手意識も得意意識も特にありませんでした。
大津:戦前では中野(慎詞 岩手121期)選手や太田(海也 岡山121期)選手に注目が集まっていましたが意識はありましたか。
纐纈:僕も含めて他の7人全員があの二人の力が抜けていると思っていたので、なんとかしたいって思っていました。
大津:今回は全員が121期のレースで感慨深いものもあったんじゃないですか。
纐纈:養成所の時は競走訓練などありましたけど、同期だけで走るってのは最初で最後というか今後もなかなかないと思ったので、なんか楽しかったですね。
大津:静岡競輪場の印象はどうですか。
纐纈:正直苦手でした。チャレンジの時は特進できたんですが上がってからは勝ち上がりも2回くらい逃しててイメージはあんまり良くなかったです。
大津:雰囲気も普段のレースとは違う気もするのですが、その点はいかがでしたでしょうか。
纐纈:うーん、(KEIRIN)グランプリの選手が入るのとは入れ違いだったので、そこまでピリついた感じはなかったです。
大津:発走機に着いた時もいつもと変わらない感じですか。
纐纈:そうですね、いつもと変わりませんでした。
お客さんの声援やヤジも聞こえてたしジャンの音も聞こえてました。緊張もしませんでした。
大津:もともと緊張はしないタイプですか。
纐纈:あんましないです。
大津:スタートは村田選手も前に出る動きがありましたが、どのような作戦だったのでしょうか。
纐纈:一番後ろだけは嫌でした。
僕はスタート早くないんですが頑張って出てみましたけど、結局後ろからになっちゃって「あ~、ごめんなさい。」って思ってました。
大津:想定した中では一番最悪なケースからのスタートになったんですね。
纐纈:東矢さんもけっこうスタート早かったんで後ろ攻めになっちゃいましたね。
大津:その中で周回中はどういうことを考えてましたか。
纐纈:もう仕方ないなと。レースが動いたときに誰か飛ばせたらいいなって考えてました。
誘導を切ったときにかなりペースが上がって「村田さんこんな踏んでいくのか。」って。
後藤(大輝選手 福岡121期)さんが来た時に東矢(圭吾選手 熊本121期)さんを飛ばしたかったんですけど出来なくて、一番後ろになっちゃうなって最終ホームではやばいなぁって感じてました。
大津:中部勢から車券を買ってるファンからすると苦しい位置だなって思いますもんね。
纐纈:走ってる自分も思いました。こりゃ、まずいぞって。
大津:ただそこから村田選手が巻き返していきました。
纐纈:まだこんなに脚が残ってるんだってビックリしながら付いてました。
大津:纐纈さん自身の脚はどうでしたか。
纐纈:静岡に入る前に長い距離乗ってたので自分は脚には全然来てなくて周りも全部見えてましたし、もし村田さんがダメなら外にいこうかなって考えたりもしてましたけど村田さんの脚力が凄くてあそこから頭まで行っちゃうんじゃないかなってくらいのスピードでした。
大津:最後の2センター付近からを振り返っていただけますか。
纐纈:外に行ったら絶対に間に合わないと思って内を見たら開いてて村田さんには申し訳なかったのですが内に行かせてもらいました。
大津:師匠のアドバイスが活きた瞬間ですね。
纐纈:海也さんと慎詞さんがもがきあってて2センターくらいで海也さんがキツそうだったんで開く前に踏み込んでおかないと間に合わなかったのでイチかバチかで内に行ったら開いた感じですね。
大津:最後はとらえたって感触はありましたか。
纐纈:突き抜けた感触はあったんですが、ほんとに優勝したかわかりませんでした。
でも、お客さんがおめでとうって言ってくれて優勝したんだなぁって思いました。
大津:ヘルメットを投げ入れるシーンもありました。
纐纈:こんなにお客さんが多い中で優勝したことがなかったので最高に気持ちよかったです。
大津:121期の卒記チャンプがここでも頂点に立ちました。本当に勝負強いですね。
纐纈:みんなにも言ってもらえるんですけど自分ではあんまりわからないです。
大津:愛知支部の方々がSNSで応援している動画も大反響でした。
纐纈:僕もあとで観たんですが、あんなに応援してくれていたんだとうれしかったです。
大津:周りからの反応も凄かったんじゃないですか。
纐纈:終わって携帯を開いたらかなり多くの連絡が入ってて驚きました。
師匠も見に来てくれてて「良かったね。」って言ってもらえました。
師匠は年明けが誕生日でしたが最高のプレゼントができました。
大津:ご自身へのプレゼントは何か買いましたか。
纐纈:実は走る前に買ってたんです。
大津:えっ!?
纐纈:本当は走った後にネックレスを買う予定だったんですが、車のオイル交換に行かなきゃいけなくなって、たまたまお目当てのお店がそっち方面だったので買っちゃいました。
大津:年始一発目が和歌山記念でしたが自分の中で意識の変化はありましたか。
纐纈:自力でヤンググランプリを獲ったわけじゃないですし、獲ったから変わったってのはないです。
優勝したからいきなり脚力が上がるわけでもないので、焦らずに今まで通り自分のペースでやっていけたらいいなって考えています。
大津:3勝という幸先のいい結果だったように思います。
纐纈:初日は勝ち上がれて良かったんですが勝ち上がりに失敗したのが反省点です。
3日目4日目は勝ちましたけど、やっぱり勝ち上がりの段階でしっかりと結果を残さないとダメですね。
大津:今年一年の目標を教えてください。
纐纈:まだ呼ばれるか分かりませんが3月に地元記念があるので呼ばれたら決勝にいきたいです。
大津:5月には名古屋で日本選手権競輪(GI)もあります。
纐纈:なんとか出れそうです。去年のオールスター以来のGIです。
その時は全く歯が立たなかったので、今度は力勝負できるようにしたいです。
地元ですし気合も入ります。
大津:中部地区を今後背負っていく選手として期待されるファンも多いと思います。
纐纈:同県の藤井侑吾(愛知115期)さんがめちゃくちゃ強いので続けるように頑張りたいです。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様に一言お願いいたします。
纐纈:今年も精一杯頑張りますので応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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